先週は「2017年紙+電子の出版市場は1兆5916億円」「共同通信の記事差し替えに批判殺到」「小室哲哉氏への文春砲に批判殺到」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2018年1月22日~28日分です。
マンガ大賞2018、ノミネート12作品が決定〈コミックナタリー(2018年1月22日)〉
本屋大賞に続いてマンガ大賞もノミネート作品が発表。以下の12作品です。私の推しは『映画大好きポンポさん』ですが、単巻だと受賞は難しいかもなあ。ずっとノミネートされ続けている『ダンジョン飯』がそろそろ受賞するターン?
posted with amazlet at 18.01.29
KADOKAWA / メディアファクトリー (2017-08-26)
posted with amazlet at 18.01.29
小学館 (2017-01-27)
売り上げランキング: 782
posted with amazlet at 18.01.29
講談社 (2017-10-23)
売り上げランキング: 362
posted with amazlet at 18.01.29
KADOKAWA / エンターブレイン (2017-08-10)
posted with amazlet at 18.01.29
講談社 (2017-08-23)
売り上げランキング: 1,740
posted with amazlet at 18.01.29
秋田書店 (2018-01-16)
posted with amazlet at 18.01.29
秋田書店 (2017-12-09)
売り上げランキング: 1,158
posted with amazlet at 18.01.29
講談社 (2017-11-17)
売り上げランキング: 1,079
posted with amazlet at 18.01.29
竹書房 (2017-07-29)
売り上げランキング: 623
約束のネバーランド 7 (ジャンプコミックスDIGITAL)
posted with amazlet at 18.01.29
集英社 (2018-01-04)
売り上げランキング: 54
posted with amazlet at 18.01.29
講談社 (2018-01-17)
売り上げランキング: 281
posted with amazlet at 18.01.29
講談社 (2017-11-22)
売り上げランキング: 332
January 2018 Report: US online book sales, Q2-Q4 2017〈Author Earnings(2018年1月22日)〉
Author Earningsから久しぶりにレポートが。2016年10月に報告されていた「Small / Medium Publisher」のeBookシェア急増は、「Large Academic Publishers」が要因だったとのこと。学術出版社が電書に力を入れ、単価が高いぶん伸びも急だったということのようです。
2017年の米国書籍市場は前年比1.9%の伸び ビッグタイトル不在で伸びはやや鈍化〈カレントアウェアネス・ポータル(2018年1月23日)〉
アメリカの印刷書籍市場は、まだ伸びているのですね。なお、調査会社のNPDグループは、ニールセンからアメリカの書籍市場調査を譲渡された企業とのことです。統計の連続性は保たれているのかな?
千代田区が区立図書館ホームページ公開停止の経緯・理由等を公開 不正アクセスによりウェブページを作成するプログラムが改ざんされる〈カレントアウェアネス・ポータル(2018年1月23日)〉
ずいぶん長いあいだ公式サイトが止まっていると思ったら、不正アクセスが原因だったとのこと。その情報が出てくるまでに3カ月かかるって、どんだけお役所仕事なのか。指定管理なのに。
Kindleアプリが「マンガのまとめ表示」に対応したぞー!〈ギズモード・ジャパン(2018年1月23日)〉
やっと対応。恐らく、アップル「iBooks」が先に対応したので、主に日本向けのローカル仕様であっても、開発稟議が通しやすくなったのではないかと思われます。とはいえまだAndroid版のみ、並び順を「シリーズの順番」に設定すると一部のコミックだけがまとめて表示されるという程度の話。記事中にある「Kindleはようやく他に追いついた」という一文は、明らかに言い過ぎ。ライブラリ機能が充実している他の電子書店に対し失礼です。
トーハン・近藤副社長、「物流問題にICタグでイノベーションを」〈文化通信(2018年1月23日)〉
有料会員ではないのでほとんど読めないのですが、タイトルだけでピックアップ。ICタグの話っていつの間にかフェードアウトしてしまったので、どうなっているのか気になっていたんですよね。Facebookで「ICタグってなぜコケたんだっけ?」と疑問を投げかけたら、いろいろ興味深い情報が集まってきたので、その投稿を貼っておきます。コメント欄参照。
Google、「Playストア」でオーディオブックの提供を開始 〈INTERNET Watch(2018年1月24日)〉
Googleもオーディオブック販売に参入。スマートスピーカー「Google Home」で聞くことも可能ですが、現時点では英語設定のGoogleアシスタントのみ対応とのこと。ちなみにオトバンクが「FeBe」で配信中の2万3000点から、7000点以上を「Google Play ブックス」に提供しているそうです。
出版物流にもクライシス 撤退・値上げ続出で取次苦境〈日本経済新聞(2018年1月24日)〉
最近よく言われている「出版物流クライシス」についてのまとめ。発売日をずらすことにより、負荷分散を図る動きが進んでいます。「出版物流が疲弊するなか、読者へ確実に出版物を届ける手段である電子書籍にいつシフトするのか。出版社は決断を迫られている」という締めの一文が、ちょっと謎。電子は、大手はすでに取り組んでいるので、中小出版社に向けた言葉かな? 店頭販売からネット通販にシフトしている点には触れていないのも謎。
2017年の紙と電子の推定販売金額、前年比4.2%減の1兆5916億円に〈新文化(2018年1月25日)〉
出版、最後の砦マンガ沈む 海賊版横行で販売2ケタ減〈日本経済新聞(2018年1月25日)〉
とくに紙のコミックス販売額が、対前年で約13%減と大きく減少。ただ、電子コミックは17.2%増の1711億円。紙のコミックスは2016年が1940億円なので「13%減」から逆算すると1687億円。紙+電子でコミックス市場を捉えると、2016年が3400億円、2017年は3398億円で、微減ということになります。つまり、出版社はともかく、リアル書店と取次にとっては厳しい状況。
ただ、日経の言う「海賊版サイトによる被害が急増」というのはどうなのか。被害が増えているという、エビデンスはあるのでしょうか。なにしろ、電子コミック市場は若干鈍化したとはいえ、まだ伸び続けているわけです。短絡的に原因を「立ち読み」や「図書館」に求めてしまった過去の愚を、くり返してしまっているような。問題は、電子が既刊中心なのに対し、紙は新刊比率が高いこと。つまり、新刊が以前より売れてないのです。ゲームなど、他の娯楽に可処分時間を奪われているのが大きいように思うのですが。
なお、出版科学研究所の発表では、コミックスの低迷要因として真っ先に「人気作品の完結」を挙げ、「映像化作品の不振」「新規ヒット不足」ときて、4番目にようやく「電子コミックへの移行」です。「違法海賊版サイトの問題が表出しました」というのは、電子市場のセクションで触れており、コミックス(紙)の低迷要因とはしていません。
「対アマゾン連合」の様相 楽天とウォルマートの危機感〈BUSINESS INSIDER JAPAN(2018年1月26日)〉
楽天がウォルマートと業務提携。アメリカでは、Rakuten Koboの端末をリアル店舗で独占販売、電書600万作品を「Walmart.com」で販売。日本では西友とタッグで、ネットスーパーを展開します。西友はDeNAとの提携は白紙撤回とのこと。さっそくアメリカの電子出版情報サイト「Good e-Reader」でも、“Kobo is finally selling e-readers in the US via Walmart”と取り上げられています。なお、Koboの端末は、以前はボーダーズが独占販売していました。ボーダーズが2011年に破産して以降、アメリカの小売店ではKoboの端末が販売されてなかったとのことです。
Apple、「iOS 11.3」で電子書籍にテコ入れ、オーディオブックコーナーも──Bloomberg報道〈ITmedia NEWS(2018年1月26日)〉
ストアのUIが、一足先にアップデートした「App Store」のUIと統一されるとの噂。「オーディオブックのタブが新設される」というのは、下部のメニューアイコンのことかしら。いまの「iBooks」は、売場としては正直使いづらいので、改善は歓迎。WindowsやAndroid対応マダー? 不思議なのは、ブルームバーグ日本版には、この記事出ていないのですよね……なぜだろう。
デジタルカタパルト、ベトナムで翻訳出版の仲介サービスを開始〈VIETJOベトナムニュース(2018年1月26日)〉
「ソク読み」のデジタルカタパルトによる海外展開。寡聞にして存じませんでしたが、すでに韓国や中国、台湾、インドネシア、フランスなどにも進出しているそうです。
iPS細胞研の山中所長をめぐる記事に批判集中 共同通信は内容「差し替え」認める〈BuzzFeed(2018年1月26日)〉
共同通信がiPS研の論文不正に関連して、山中伸弥所長の“疑惑”を配信。その後、同じURLでタイトルを「山中所長が給与全額寄付」と上書き、内容も完全に書き換えた上で履歴も残していないことに対し、批判が殺到しています。初報をそのまま紙面に反映してしまった地方紙もあるようです。
BuzzFeedのこの記事が面白いのは、Internet ArchiveのWayback Machineにしっかり証拠が残っていて、修正履歴が時系列で追えるようになっている点。怖いのは、これをきっかけに共同通信がrobots.txtでWayback Machineを弾く設定にしてしまうこと。
記事の内容をしれっと書き換えてるメディアはこれまでもいろいろ見てきましたが、ここまで酷いのはウェブメディアでも珍しいように思います。「Welq」問題に端を発したウェブメディアの信頼性問題は、既存メディアも決して他人事ではないと思っていたのですが。
文春編集長、小室さん引退騒動「予想できず」不倫報道で〈朝日新聞デジタル(2018年1月27日)〉
共同通信同様、既存メディアに対する不信感が噴出しています。私は昨年3月、文春の記事「ベッキー禁断愛」へ雑誌ジャーナリズム賞大賞が授与されたとき、「新聞や雑誌の考えるジャーナリズムがこれ。他の受賞記事もゴシップばかり。ジャーナリズムってなんだっけ?」と強く批判をしました。扇情的なゴシップを追いかけるのは「イエロー・ジャーナリズム」と揶揄される対象であるべきなのに。とくに、不倫って本質的には当事者間だけの問題であって、犯罪でもなんでもないので、不倫報道ってほんっとくだらないと思っています。まあ、やっと世間がまともな反応をしたのかな、と。
激動の出版業界を振り返る! 毎週更新している「出版業界関連の気になるニュースまとめ」記事1年分51本+αが、今年も1冊の本になりました。詳細は下記の書影をクリック!
『出版業界気になるニュースまとめ2017』
Googleグループ「Weekly 見て歩く者 by 鷹野凌」に登録すると、毎週この「出版業界関連の気になるニュースまとめ」がメールで届きます。ときどき号外を配信するかも? ブログの更新チェックが面倒な方はぜひ登録してください。無料です。