【書評】石橋毅史さんの「『本屋』は死なない」を読んだ。

この本が発行されてから、ボクの近所の小さな書店では、目立つ位置にかなりの量が平積みしてありました。たぶん今でも積んであります。ボクは「街の小さな書店」に明るい未来は無いと思っているのですが、このタイトルを書店で見て、書店員や書店主がどういう思いで平積みにしているかが想像できてしまって、逆に店頭では買う気がしませんでした。なんだか生々し過ぎちゃったんですよね。

「本屋」は死なない

「本屋」は死なない

posted with amazlet at 12.06.24

石橋 毅史

新潮社

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結局、購入のきっかけはTwitterのタイムラインで評判になっていたからですが、書店で見た記憶が無ければスルーしていたかもしれません。買おうと思った瞬間に何も考えずにAmazonで検索してポチってしまったのですが、どうせならその書店まで行って買うべきだったな、と今にして思います。

著者の石橋毅史さんは、出版専門の業界紙である新文化社の元記者です。フリーランスになってはじめて書いた書籍のようで、あとがきにはこんなことが記されていました。

編集者なくして「本」は生まれない――よくいわれることだが、はじめて本を書いて、そのことを実感した。

終章にはこんなことも記されていました。

僕にとってもっとも思い出深いインタビューの最後に、彼は言った。

本屋をやったことのない人間に本屋のことは絶対にわからない。あなたもそうだよ。よく聞いて、理解してくれたと思う。でも、わかってはいないんだ。

これ、ボクは書店に限った話ではないと思うのです。本で読んで得た知識や、聞きかじった程度のことでは、本当のことはわからない――いろんな所でそういう声は目にします。例えばプロスポーツ選手やオリンピック金メダリストのインタビューを聞いたり書いた本を読んでも、当事者でなければ絶対にわからない部分というのはあるはずですし、圧倒的大多数の一般市民にはそれを体験することもできないわけです。

しかしその言葉を、「書籍」を扱う側の人間が言ってしまうというのは、是非はともかく、なんとも複雑な気分にさせられます。そもそも書籍というのは、人が生まれ死ぬまでの限られた時間では体験できないことを、知識として得るためのものだと思うのです。

そして恐らく、インタビューでこの言葉を発した書店主の方は、そんなことはボクに言われるまでもなく判っているのでしょう。言葉だけでは100%伝えることなどできやしないのです。「でも、わかってはいないんだ。」という言葉を発せずにはいられなかった。

その書店主の気持ちは、ボクには想像することしかできません。「わかってもらえるとは思わないけど、やっぱりわかってほしい」からそういう言葉を発してしまったのでしょう。そしてその言葉をこの書籍を通じて受け止めたボクには、わかろうと努力をすることしかできないのです。


さて少し話は変わりますが、いま書店はどういう状況に置かれているのでしょうか。こんなデータがあります。

書店数は減る一方ですが、坪数合計は増え続けています。つまり、街の小さな書店がどんどん潰れて、そのかわりに大型の書店がどんどんできているというのが現状です。

序章に書かれている、書店員の能力という話が面白い。

大型書店には毎日、大量の新刊が入荷する。そのひとつひとつを売場のどこ並べるかを決めるには、ろくに読みもしないのに内容をわかっているという特殊な能力が必要になる。

(※太字部分は、本文中では傍点です)

詳細は省きますが、1冊あたり30秒くらいで内容を把握してしまうそうです。30秒でわからない本は、商品としては弱い、と。そしてそれは特別なことではなく、担当を持っている書店員なら誰もやっていることだというのです。大量に入荷する本をさばくには、そうするしかないと……。

もともと、街の書店というのはどういった本を入荷しどう並べるかによって特色があったらしいのですが、店舗の大型化や店員が未熟なアルバイトばかりだったり、取次のPOSシステムによって在庫管理されるようになり、どんどん個性を失っていっているようです。コンビニ化しているといったところでしょうか。

著者の石橋毅史さんはそういったトレンドに対し嫌悪感を抱き、「街の小さな書店」がどのようにしたら生き残っていけるかという視点で、日本各地のこだわりをもったカリスマ的な書店員を取材しています。何か著者なりの結論があるというわけではなく、取材の中で感じたことを綴っているだけという部分もあったりするのですが、今後書店が生き残っていくためにはどうしたらいいかを真剣に考え真摯に綴った文面からは、書店員に対する「頑張れ!」というエールが感じられます。エールを受け取った書店が、平積みする理由が判る気がしますね。

コンビニは確かに便利ですが、あまり個性はありません。マクドナルドなんかもそうですが、徹底的にマニュアル化された動きというのは、ムダがない分味がない。そこに「人間関係」が醸成される余地はあまりありません。日本全国どこへ行っても同じような店舗ばかりで、同じような商品が並べられているという状況は、あまり面白くないですよね。

Amazonは非常に便利です。便利ですが、検索履歴や購入履歴からリコメンドされた商品を、ボクはめったに買うことがありません。なんかツボにハマらないんですよね。たまたまエントリーを書くために調べものをしていて、たまたま目についたAKB48のCDをクリックしただけで全く興味など無いのに、アルゴリズムで自動的にリコメンドしてくる――ボクのことを知っている「人」であれば、絶対そんなことはしないはずです。

逆に、なんとなく寄ってみた書店で、思いがけず素晴らしい本と出会う――そんな経験は何度もあります。そういう意味では、ソーシャルネットワークで繋がっている人からの情報というのは、比較的「思ってもみなかった」ような購買意欲をかきたてられますね。「この人が薦める本なら、読んでみようかな」と。

そういう方向に、なにか今後の活路があるのではないかなーという気がします。書店に限った話ではなく、また、実店舗に限った話でもなく。

コメント

  1. 名無しさんだよ@えもん より:

    (本を)ろくに読みもしないのに内容をわかっているという特殊な能力

    速読を極めるとまれに身につくようです。

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