World Energy Watch
再生可能エネルギーの接続保留問題
高収益保証が招いた投資バブル
FITが失敗する理由
2014/10/22
再生可能エネルギーの買い取り価格は、全国どこでも同じだ。となると、採算を良くする方法の一つは、日照時間が長い土地で事業を行い発電量、収入を増やすことだ。もう一つは、投資額を下げることだ。投資額の大半を占める設備の費用は、メーカーによる差はあっても、全国ではあまり違いはないとしても、工事費、人件費と設置場所の土地代あるいは土地の賃貸料は場所により異なる筈だ。さらに、設置のためには広大な土地が必要になる。1000kWのメガソーラーと呼ばれる設備であれば、周りに日照を遮るものがない場所に20000平米程度が必要だ。
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日照に恵まれた場所は、図の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の日照マップで判断可能だ。北海道東部、東北の太平洋岸、北関東、山梨、長野、愛知、四国南部、南九州などが日照に恵まれている。この中で広大な土地が安く手に入るとなれば、人口密度から判断すると北海道東部、東北、南九州などだ。人口密度が最も少ない47位は北海道だが、福島県40位、宮崎県39位、鹿児島県36位、大分県33位だ。14年7月末現在の新規設備認定量は表の通りであり、利便性が高い関東での計画が多いものの、人口密度が相対的に低く、土地代も安い高収益が望める南九州等での事業が進んでいる。ちなみに、既に発電が開始された設備量は、認定量のうち15%にも満たない。
'); document.writeln('さて、ここで問題が生じる。人口密度が低いということは大きな送電容量が必要とされておらず、送電線の容量もないということだ。そこに発電設備が多く作られると当然送電できない事態になることもあり得る。九州、北海道などで接続が難しくなるのは、人口密度が低い場所に設置することで収益が有利になるため事業者が特定の地区に集中したためだ。
'); document.writeln('欧州で見限られるFIT
'); document.writeln('FITで事業者に有利な買い取り価格が設定され、高収益が保証されると、太陽光発電事業に異業種から参入が相次ぐ。その結果、発電量が増え、家庭と産業に影響を与えるほど電気料金が上昇し、FITの制度を維持することが難しくなることは欧州諸国が経験済みだ。
'); document.writeln('スペインでは、電気料金の上昇による支持率低下を恐れた政権が電力会社に買い取り料金を負担させた結果、太陽光設備の大量導入により負担額が増えた電力会社が破産に追い込まれる事態となった。慌てた政府は遡及して買い取りを中止したが、その結果大きな混乱を招き、事業者による訴訟も行われた。
'); document.writeln('イタリアでは事業用の太陽光発電設備が政府の予想を大きく超え導入されたため、一時制度の適用を中止し、半年後に事業用の設備導入量に上限を設け、買い取り価格も減額する形で再開することになった。
'); document.writeln('ドイツでは、夫婦と子供一人の標準家庭での買い取り額の負担が年間3万円に達するほど電気料金が上昇したために、再生可能エネルギー導入法が改正され、FITが原則廃止され、今後事業用太陽光発電設備からの電気は市場で売却されることになった。また、設備導入量についても目標値が設定されたが、今までの導入量を大幅に下回るものになった。EU委員会も、FITを廃止するドイツ方式を採用するように加盟各国に勧告している。
'); document.writeln('IRR8%という高収益保証が招いた投資バブル
'); document.writeln('バブル期にワンルームマンションへの投資がブームになったことがある。購入不動産を担保に容易に借り入れを行うことができたので、賃貸による収入と借入金の金利負担による節税をうたい文句にし、個人を対象にワンルームへの不動産投資を勧める企業が多く登場した。
'); document.writeln('いま、太陽光発電事業も同じような状況になっている。資金さえ用意できれば、何もしなくても太陽光発電事業の組成を行っている企業から案件を買える。接続費用を抑えるために50kW以下に分けられた案件も多くあり、ワンルームマンションへの投資と変わらない。投資家は10年程度での資金回収が保証されている。
'); document.writeln('案件を売っている事業会社はどうやって収益を上げているのだろうか。北海道あるいは南九州のように土地が安い場所で事業を行うことにより、IRR8%以上の収益が見込める事業に仕立て、ネットで紹介されている案件を見る限り、10%程度を投資家に渡し、残りを自社の収益にしているのだ。ネットで検索すれば、数多くの案件の紹介を見ることができるが、案件によっては10%以上の収益が保証されている。FITで保証されている8%より、かなり高い利益をあげることが可能な案件が数多くあるということだ。
'); document.writeln('案件を購入する投資家にすれば、定期預金とか国債よりも高い収益が保証され、銀行から借り入れを行っても十分利益が得られる投資になる。事業を行い、関係者が収益を上げることは、悪いことではない。しかし、FITの場合には収益の出所は電気料金だ。原子力発電所が停止し、燃料代による電気料金の上昇が続くなかで、電気料金をさらに上昇させ、一部の事業者と投資家に高収益を保証する政策はありなのだろうか。制度設計を行った時点で、欧州での問題点の多くは明らかになっていた。そんななかで、IRR8%、実際には10%以上にすることができるという高収益を消費者の負担で事業者に認めた当初の制度設計に疑問があったと言うしかない。
'); document.writeln('再エネ導入効果に関する誤解
'); document.writeln('民主党の福山哲郎議員は、14年10月7日のブログ(http://www.fukuyama.gr.jp/diary/)で次のように主張している。「再生可能エネルギーだけで九州全土の電力需要をまかなえる日がありうるということは喜ばしいことではないでしょうか。全国で見れば、固定価格買取制度によってわずか2年で原発約15基分の発電量に相当する再生可能エネルギーが設備認定されています。今すぐこれらが接続されるわけではありませんが、あと5~6年かかりながらもしっかりと接続していけば、その分だけ、高い化石燃料を買わずに済むので国富の流出を抑えることができ、CO2排出の抑制にも貢献し、地域でお金が回ります」。
'); document.writeln('この理解は全て間違っている。再生可能エネルギーだけで、九州全土の電気を賄えるようになれば、風が吹かない雨の日に備えて大容量の火力発電設備を維持しておく必要が出てくるが、再エネにより火力の稼働率が低下するために、電力会社はやがて赤字の設備を維持できなくなる。発電設備量の約40%が風力と太陽光発電設備になったドイツで今起こっている問題だ。
'); document.writeln('ドイツは電力が自由化されているために、競争に晒される電力会社は稼働率の下がった火力発電所の閉鎖を続けている。このために、停電を恐れるドイツ政府は発電設備を建設すれば、料金を支払う「容量市場」を導入する予定だ。九州全土の電気を全て再エネが賄う日が来れば、送電線の増強費用の負担もある九州の電気料金はとんでもないレベルになっており、多くの製造業は九州から撤退し、九州には、雇用を殆ど生まず地域にお金を落とさない太陽光発電設備しか残らなくなっているだろう。とても喜ばしいとは思えない事態だ。
'); document.writeln('高い化石燃料を買わなくて済み国富の流出を防ぐことになるのだろうか。これも間違いだ。再エネの発電コストは高い。化石燃料による発電の2倍くらいのコストになる。要は、化石燃料は減るが、電気料金は2倍になるということだ。化石燃料の輸入が減っても、電気料金の上昇により、輸出はもっと減るだろう。簡単に言えば、電気料金で100万円損して燃料で50万円得する話だ。差引50万円の損だ。
'); document.writeln('二酸化炭素の排出は減るだろうか。そう単純ではない。再エネの導入が進んだドイツでは、最近になり二酸化炭素の排出量が増えている。電気料金を抑えるために電力会社が天然ガスに代え価格の安い石炭の使用を増やしているからだ。石炭は天然ガスの2倍近い二酸化炭素を排出する。日本でも電気料金を抑えるためには同様のことが起こる可能性が高い。石炭の消費が進み、相対的に価格の高い天然ガスの使用が減り二酸化炭素が増加するということだ。
'); document.writeln('技術開発支援に力を入れるべき
'); document.writeln('送電容量の問題を解決するために議論が始まった。連携線の利用、送電能力増強などが議論されていくことになるが、日本企業の技術力の強化に資する施策も議論すべきだ。日本より連携線に恵まれていながら送電能力の問題に直面している欧米諸国では、揚水発電所の開発、大型蓄電技術の開発、蓄電池の効率向上、24時間発電可能な太陽熱発電技術の改良などを政府が支援している。FITが目的とした発電設備の効率改善、コスト引き下げよりも、導入量の増加は、電力供給の安定化をより重要な課題に押し上げた。
'); document.writeln(' 再エネを短期間に導入しようという政策は、消費者に大きな負担をかけることになる。さらに、技術開発支援も目標にしたFITは、技術開発ではなく、中国からの安い設備導入を支援することになってしまった。再エネの導入が、安全保障などのために必要であれば、2030年、50年などの中長期の目標を設定し、技術開発の進捗を見ながら進めるべきだ。再エネ導入を拡大するためには、これらの技術開発によるコスト削減が課題だ。今のFITの制度を見直し、電気料金の上昇を抑える政策に切り替えると同時に、将来の導入増を支える技術開発の支援に力を入れる時期に来ている。
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