外注を信じると馬鹿をみる?(第1回)
発注側と外注で異なるビジネスゴール
外注とうまく協力して成果を出していくためには、発注側としてあらかじめ認識しておく大前提があります。それは、発注側と外注ではビジネスゴールが異なるということです。発注側のゴールは、ある施策による事業の成長(収益の向上)ですが、外注のゴールは発注側に施策を実施してもらい、その費用を回収することです。
どんな外注も発注側の成功が我々のゴールだと言いますが、それは嘘です。外注の収益源が発注側の施策費用である限り、より多くの施策費を回収することがビジネスゴールなのです。中長期的にみれば、発注側の成功が施策費用の増額につながり、外注の成長にもつながりますが、外注の事業は投資事業ではありません。外注にも今期の売上目標があり、発注側の事業の成長を待っているわけにはいきません。発注側が提出される見積もりに対して高額だと感じている一方で、外注が予算不足と嘆くすれ違いは、それぞれのビジネスを考えると当然の結果ともいえます。もちろん、こうした外注ばかりではなく、ビジネスパートナーとして互いに成長していける良い関係を築くこともできます。
別の見方をすると、施策に対するそれぞれのテーマは、発注側はコストの「最適化」であるのに対し、外注はコストの「最大化」なのです。乱暴な言い方をすれば、外注は施策の実施がゴールですから、その施策の成功にはあまり興味がないのです。今後も発注側とビジネスが続けられる程度に成果が出せればいいのです。発注側は施策が失敗(売上や利益が伸びなかった)しても施策費は外注に払う必要があり、外注のゴールは達成されてしまうのです。
さらに、実際に施策を実施するスタッフは、普段あなたが接している営業やディレクタとは別のスタッフです。現場のスタッフたちは、もっと違うところを目指して仕事をしていることもあります。僕は、以前に外注として広告などのデザインをやっていましたが、その頃は自分のデザインする広告がデザイナとしていかに評価されるか、そしていつか広告賞が取れるデザイナになることを目指して仕事をしていました。そんな外注のスタッフばかりではないですが、なかには、発注側の目的とは異なる部分にこだわりを抱き、実績や自分の腕をみがくために仕事をしている人もいるということを、頭の片隅に置いておくといいでしょう。
あなたの会社の商材に興味があるとは限らない
もう一点忘れてはならないのが、外注は発注側の事業にあまり関心がないことです。外注は複数の発注元を抱え、複数の業界相手に仕事を請けていることがほとんどです。四六時中、あなたの会社のことだけを考えている余裕はありません。
BtoCの商材であれば、普段から商材に触れる機会があり、身近に利用者がいるためにある程度業界のことを想像することはできますが、BtoBの特定の業界向け商材などの場合は、発注側と出会って初めて業界や商材の存在を知ることも多く、あなたの業界の知識はゼロだと考えておくのがいいでしょう。外注はあなたほど、会社の事業やブランド、そしてその背景を知らないのですから、あなたの代わりを務めることはできないのです。高い費用を払っているのだからと外注を過信する、あてにするのは禁物です。
成果がでないのは外注が悪い?
では、成果が出ないのは発注側と外注ではゴールが異なり、発注側の業界や商材の知識が少ないこと、外注の能力不足が原因なのでしょうか。
成果をあげるため、場合によっては外注に担当変更を申し出て、優秀な担当をつけてもらうように依頼する方法もあります。しかし、予算が大幅に増額でもしない限り、優秀な担当がつく可能性は極めて低いです。優秀なスタッフは給料も高いですから、大規模なプロジェクトを担当します。
別の方法として、外注先を変えてみる方法もあります。予算が変わらないのであれば、外注の企業規模を現在より小さくすることで、外注の売上関与度が大きくなり、現在より手厚い対応が受けられる可能性があります。しかし、丁寧だからといって仕事の成果が出せるとは限らないことも忘れないでください。予算が大幅に増額でもしない限り、あなたは今の外注と、または今とあまり能力の変わらない外注とこれから成果を出していかなければならないのです。
担当者変更や外注先変更は、問題の先送りであることが多く、成果を期待するのは難しいでしょう。外注を使って成果を出すには、あなた自身が外注との仕事のやり方を変え、外注にその分野のプロとして能力を存分に発揮してもらう外注コントロール術を身につけることです。
あなたがきづけば、外注は変わる
どこかのキャッチコピーではないですが、あなたが外注との仕事のやり方を変えるだけで、結果は大きく変えることができるのです。
特にWeb担当者の業務は、まだ一般社会に広くノウハウが浸透しているわけではなく、企業独自の文化や担当者の能力に依存するケースが多いため、外注へ丸投げしてしまうケースも珍しくありません。しかし、発注側の製品やサービスを一番理解しているのは、発注側の担当者です。そのため、外注を使って成果をあげるためには、まず、発注側として何をしないといけないかを理解し、準備しておくことが大切です。
より具体的な発注のポイントについては、次回でお伝えします。
- 外注任せではなく、どうしたら外注が成果を出せるのかを発注側は考えていく必要がある。
- 成果をあげていくには、発注側(Web担当者)の知識やスキルの向上も欠かせない。
本連載が、電子書籍になりました! タイトルは「Web担当者が知っておきたい『禁断の外注コントロール術』」です。
Web担当者の業務範囲は、制作や運営だけでなく、アクセス解析、インターネット広告やSEOに加え、ソーシャルメディア活用など多岐にわたり、それぞれ業務の内容もますます複雑化しています。そんな中で一定の成果を出していくには、もはや1人2人の手では足りず、社外の人の力を使わないとも対応できなくなっています。
本書は、Webの発注側にいる人が、社外の人の能力を最大限に活かす方法、ノウハウが収録されています。発注側と外注側のゴール・目標の違いを認識することからスタートし、成果を出す目標設定やツールの使い方、社外の人のモチベーション管理方法、対人関係能力の磨き方まで、発注・外注両方を経験している著者が、自らの経験を元に、丁寧に解説しています。
要点がコンパクトにまとまっているので、Web担当者になってから間もない人、自分以外の人の力を借りてもっと成果を上げたい人、気づきが満載です。ご一読のほど!
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コメント
施策が失敗しても、
施策が失敗しても、発注側はちゃんと外注に支払いますか??
請負や委託契約ばかりで、実質出来高制みたいな物でしょ。