今日は、プレスリリース(ニュースリリース)の書き方について。編集部には日々いろいろなリリースが届くのですが、なかには、かなりの破壊力をもって「リリースをチェックする気力」を失わせる、強烈なダメリリースがあるのです。そのいくつかを紹介しましょう。
※2009-11-16 当初「仏の顔」などの「聖☆おにいさん」関連のネタを埋め込んでいましたが、元ネタを知らない人にはわかりづらいうえにネタとしても意味が薄かったので書き換えました。
Web担編集部では、インターネットマガジン時代からのリリース宛先を含めて、日々届くリリースをチェックしているのですが、IT/ウェブ/マーケ系なので、届くリリースの数は1週間に1000~2000件ほど。そんななかから、救いようのないリリースを、メールソフトの「ダメリリース」フォルダに保存しておくのが密かな趣味だったりします。
リリースのチェックにはあまり時間をかけられないので、ざっとタイトルを眺めて媒体に合いそうなものをピックアップしていくのですが、ほとんどのリリースは、
○○社が△△なサービス□□を◇日に開始
のような件名になっています。助かりますね。
でも、件名から内容がまったく判断できないリリースメールも意外と多く、チェックのリズムが崩れて萎えるのです。
私のメールソフトの「ダメリリース」フォルダにあった、実際に届いたリリースメールの件名をいくつかご覧いただきましょう。
- プレスリリース
- プレスリリースの送付
- リリースご送付の件
- プレスリリースのお願い0826
- 本日配信のリリースについて
- 報道関係者の皆様
- 弊社新製品販売開始のお知らせ
- 弊社新製品の発表資料を送付させていただきます。
→ リリース宛先に来てるメールなのでリリースなのはわかってます。件名で内容がざっくりわかるようにしてください。
- ニュースリリース原稿をお送りします
→ 原稿ではなく完成版でお願いします。
- 掲載をお願いします。
- プレスリリースの掲載について
→ その件名では掲載するべきかどうかを判断できません。
- プレスリリース配信希望です。
- プレスリリース配信依頼
→ 配信しているのはあなたです。うちは通信社ではありません。
- ニュースリリース受付
- ニュースリリース申し込み
- 弊社へのプレスリリース送付
→ リリースを送っているのはだれですか?
- 【要確認】プレスリリースについて
- 【重要】リリースを送信致します
→ 先頭に姑息なマーカーを付ける暇があったら内容を書いてください。
こんな件名からリリース内容がわかるような能力は備えていませんので、内容がわかる次のヒントを探ります。こういった場合でも差出人から内容をざっくりイメージできる場合もありますからね。でも、そういったリリースに限って、差出人名は……
- 個人名(社名なし)
- press release
- メールマネージャー
- プレス
会ったこともない人の個人名だけで業務内容を判断できる特殊能力は持っていませんので、ここでも落胆(件名がしっかり内容を伝えていれば差出人が個人名でも気にならないんですけどね)。
とはいえ読者さんに伝えるべき情報を見逃すわけにはいかないので、リリースチェックのリズムが崩れることにイライラしながらもメールを開いてみます。すると、最初に目に飛び込んで来た1文が、
インプレスR&B プレスリリース御担当者様
→ うちは「インプレスR&D」です(現在はインプレスビジネスメディアですが)。
続く本文は、
お世話になっております。私、○○株式会社の△△と申します。
さて、早速ではございますが、本日メールさせていただきましたのは
貴社サイトへのニュースリリース掲載をお願いでございます。
リリース本文につきましては添付させていただいておりますので、
内容を見ていただき是非ご掲載をお願いできればと思います。
→ 丁寧な文面と反比例するように、情報ゼロ。
その添付ファイルはというと、ファイル名が
press_release.pdf
まったくもって判断のキーがありません。
場合によってはメールで8MBとかの添付ファイルを送ってくるリリースもあり(オンラインゲーム系に多い)、そういう場合は最低限の素材だけ送って、選択肢としての画像は自社サイトのリリースコーナーで素材として出してほしいのに、と……。
インターネットによって、ニュースリリースをだれでも手軽に出せるようになったのはいいのですが、記者や編集者には、そのぶん多くのリリースが届いており、「リリースを見てもらう」ライバルも増えていることを理解して、受け手のことを考えたリリースを出してもらえると助かります。
せめて、Web担に掲載されている
・ニュースリリースの書き方&活用基礎講座
→ http://web-tan.forum.impressrd.jp/l/3013
という素敵な連載の記事にひととおり目を通していただけるとありがたいです。
コメント
ひどいね
どれだけ上から目線なんだよ
これのどこが上から
これのどこが上から目線?もし本当にそう思ってるなら、この記事で書かれてること以前に問題があるような
どんな問題ですか?
google newsからなんとなく面白そうなタイトルなので前半部を閲覧しました。
広報でもWebでもなんでもないサラリーマンですが、「give and takeの関係じゃないの?」って疑問を感じましたよ。
協力関係にあるのだから「おねがしします」って感じじゃないんすかね。しかも、地道に一対一で。
「殿様商売」がうらやましいです。
中途半端。 ディスる
中途半端。
ディスるならディスる。ネタにするならネタにする。
これじゃあまるで女の陰口。
納得
ひと目で内容がわかる件名にしろってのはよく言われたなぁ。
社内向けでもそうなんだから、社外向けならもっと気を使わないと。
Re: 納得
編集部の安田です。
生産的なコメント、ありがとうございます。
> ひと目で内容がわかる件名にしろ
メールやビジネス文書の基本ですね。
リリースも広報担当さんからプレスに向けた情報伝達なので、気を遣わなきゃチャンスを逃すことが多くなるし、相手に響く形で伝えればチャンスが広がる。同じリリースを打つなら、チャンスは多くつかめるほうがいいですからね。
どれだけ技術やネットワークが進化しても、結局は人と人とのやりとりだってことは忘れたくないですね。
記者はバカ
これはダメリリースじゃなくて「ダメメール」の例だろう。
どんだけダメな記者なんだ。
そうそう 結局、この
そうそう
結局、この記事にしてもタイトルは付いてるが中身と合ってない・・
お取引先軽視
一つ一つの指摘は正しいし、おっしゃる通りそういう配慮のある連絡をなさるのが各社の広報担当者の務めだとは思いますが、しかしインプレスとしても各社のリリースを「載せてあげている」んじゃなくて、「載せさせていただいている」んじゃないでしょうか。
社名や担当者を特定していないにしろ、お取引先のメールを晒して「萎える」とか「印象が悪い」とか、そういうのは社会常識としてやはり逸脱しているのではないでしょうか。
個人のブログならまだしも、インプレスという会社のブログに載せているのですから、このようにお取引先軽視のエントリは、読者もお取引先も気分を害すると思いますがいかがでしょうか。
定型文でも構わないので、各社に丁寧な文体でお願いのメールでもした方がよっぽど建設的ではないでしょうか。
Re: お取引先軽視
編集部の安田です。建設的なコメント、ありがとうございます。
> 各社のリリースを「載せてあげている」んじゃなくて、「載せさせていただいている」んじゃないでしょうか。
こういった基本的な感覚、確かに薄れてきていたかもしれません。
改めての気づき、ありがとうございます。
そうですよね、編集部というのは情報をもっている方がいてこそ成り立っているんですからね。
> 定型文でも構わないので、各社に丁寧な文体でお願いのメールでもした方
直接お会いしてお話しする方には、こういったポイントはお伝えしているんですが、面識もない各社にメールというのもなかなか……
公開の場での記事として書いたのは、そういった、つながりのない大勢の、(本職ではないかもしれないけど)リリースを書く仕事をしている方に、リリースを受ける側がどうそれを見ているのかを「なるほど」と知って、どうすればいいのかのヒントを知っていただくためなのです。
記事のポイントはメールの件名の付け方でもなく、差出人の表記でもなく、最後の
> 「リリースを見てもらう」ライバルも増えていることを理解して、受け手のことを考えたリリースを
というところと、
> ・ニュースリリースの書き方&活用基礎講座
> → http://web-tan.forum.impressrd.jp/l/3013
この記事を改めて世に知ってもらうことだったのですが……
でも、このコメントで、改めて良い気づきをいただけました。ありがとうございます!
ひとまず一礼
最終ゴールは見込顧客へメッセージを送ることですから、外堀を埋める気持ちでリリースを発信しなくてはいけないということを肝に命じておきたいと思います。
Re: ひとまず一礼
そうですよね、リリースを出す方は、プレスに出しているようで、最終ゴールはお客さまですよね。
そういった意味では、プレスに対しては
> 外堀を埋める気持ちで
この表現、うまい!
相手に伝える、と、相手に伝わるは違う
反論してる人は、広報担当者ではないのでしょうね。
確かにここはWeb担当者のフォーラムですが。
広報担当としてはリリースが、記者にどう受け取ってもらえるかについて
ものすごく気を使うのは「あたりまえ」です。
リリース内容が記事として掲載されたいと願うのなら
細かいささいなことにも配慮するのは「あたりまえ」です。
SEO対策などで、細かい細かいことに気を配って
Webを作るのに労力を惜しまないのと同じぐらい
リリースの配信にも気配りするべきだと思います。
全部の記者が同じ感覚かどうかはわかりませんが
こんな風に重箱の隅っこのようなことですら
わざわざ教えてくれているだけでもありがたいです。
Re: 相手に伝える、と、相手に伝わるは違う
前向きのコメントありがとうございます。
> 反論してる人は、広報担当者ではないのでしょうね。
おっと、編集部からは書きづらい意見の表明、ありがとうございます。
> SEO対策などで、細かい細かいことに気を配って
> Webを作るのに労力を惜しまないのと同じぐらい
> リリースの配信にも気配りするべきだと思います。
なるほど、良いたとえですね。
個人的に気になったのは、
> 重箱の隅っこのようなこと
いえいえ。内容としては些細なことですが、決して重箱の隅ではなく、大きなポイントですよ。
リリースを出される方にとっては1通1通のリリースでも、記者/編集者の元には多くの会社さんからのリリースが日々大量に届いているということを認識していただきたかったのです。
そして、記者/編集者がリリースに最初に触れる部分、つまりリリースの「顔」となる「タイトル」「差出人」「本文冒頭のリード」をどう書くかは、重箱の隅ではなく、広告クリエイティブにも匹敵する重要ポイントなのです。リリースの中身は本質的には、事業部の人がどういった製品/サービスを作っているかですからね。
でもそんな点よりも、私がメッセージを伝えたかったセグメントの方に読んでいただけていることのほうがありがたいです。ご愛読&フィードバックありがとうございます!
ああ、すみません。
ああ、すみません。言葉が足りんかったです。
> 重箱の隅っこのようなこと
は、「反論している人にとっては、一見重箱の隅っこに思えるようなこと」と
書きたかったんです....と言ってもアトノマツリ。
安田編集長が元記事で言わんとしていることは
広報担当者なら知っておいて、また実践しておいて
得することはあっても、損することはないと感じました。
確認したところ、当社リリースはご指摘の箇所はクリアしているようでしたが
これまでに試行錯誤しながら、いくつもの失敗を繰り返しながらのクリアだったように思います。
試行錯誤していた頃に、この記事があったらよかったのにー。
大丈夫ですー
> 「反論している人にとっては、一見重箱の隅っこに思えるようなこと」と
なるほど、納得。
たしかに、リリース配信に携わっていない人にとっては、「単なるメールの書き方でしょ」ととらえられても不思議はない内容なんですよね。
フォローありがとうございます。
> これまでに試行錯誤しながら、いくつもの失敗を繰り返しながらのクリアだったように思います。
私の書いたのはプレス向けの話ですが、ブロガーさん向けに書くときはまた違うでしょうし、ソーシャルメディアの隆盛でプレスの意識も変わってきていますから、これからも試行錯誤は続くのだと思います。
それでも、受け手も人間であることをココロに留めておけば、今後の試行錯誤もうまくいきますよ!
私もGoogle
私もGoogle Newsでタイトルを見て面白そうと思って飛んできた者です。貴社のサイトは初めて拝見しました。
広報とは全く無縁な者ですが、率直に申し上げて、私には少し気分の悪い内容に思えました。
意図的なのかどうなのかわかりませんが、「載せてやっている」という本音が見え隠れし、読んでいる途中で辛くなってくるのです。「仏の顔」とか出てきた所で、それ以上読み進めるのを断念しました。
これは、受け取る側の度量が大きくなければ読めない記事だと思います。編集長様にとっては単なる笑いネタなのかも知れませんが、読者を強烈に萎えさせる記事だと感じました。
修正しました
> 仏の顔」とか出てきた所で
なるほど、やっぱりそこに一番ひっかかるんですね。
別コメントへの返信にもありますが、「仏の顔」などの表現は、あるマンガが元ネタになっています。ちょっと私自身がそのマンガに夢中になっていたので、表現への気遣いが薄れていました。
ご指摘、ありがとうございます。
あと、念のために表明しておくと、
> 「載せてやっている」という本音が見え隠れし
そういった意識はないはずなんですよ。普段から、筆者さんも事業者さんも含め、情報をいただかないと編集部というのはそれ単体では何もできない組織だから、と強調していますので。
でも逆に言うと、わざわざそう強調しないと、ついつい「載せてやっている」的な意識になりがちな仕事なのも確かですね。
基本的な文章の書き方の問題かな
リリースがどうこういう以前の、読ませる文章の書き方の問題ですね。
記事、リリース、小説、エッセイ、広告コピー……など、どういう体裁であれ、基本は同じでしょう。
要点を的確に書く。
これは話し方にも通じますね。
きっと、問題のリリースを出した人は、話し方も下手だろうし、プレゼンテーションも下手でしょう。
つまりは、コミュニケーション能力のレベル。
記者が萎えるのもわかります。
そういえば、エッチ系のスパムメールの方が、「おっ?」と目を引くタイトルがついていたりします。読ませようという意図が見え見えではありますが、テクニックとしてはセオリーを踏んでいると思います。
いや、確かにテクニ
いや、確かにテクニカルな面でこの記事は妥当だと思いますよ。そこに疑問を持つ人は少ないと思います。
問題だと思うのは、れっきとしたビジネスとして情報を受けている立場の人が書いて公表したものとしては、この記事はあまりに無礼すぎるという点です。
前のコメントで「リリースを出す側へのヒントとして書いた」とありましたが、ヒントを出すために、この記事のように揚げ足取りのような事を羅列してビジネス相手を愚弄する必要が本当にあるのかどうか、大変疑問に思います。
親しい間柄の雑談ならともかく、衆目の場所に出す文章なら、ましてやビジネスとしてやっているのなら、もう少し思慮があっても良かったのではないでしょうか。
なるほど勉強になります
もう10年以上も前の話になりますが、自社商品のプレスリリースを四苦八苦しながら書いていました。右も左もまったく分からない中、日々試行錯誤の連続でした。その頃、こうした内幕暴露記事があったら(笑)どんなに嬉しかったかと、懐かしい気持ちに浸りながら楽しく拝読させていただきました。
昔のことなのでタイトルや本文をどのようにしたかはもう憶えておりませんが、インプレスさんには幾度か掲載していただいたので少しはマシだったのかもしれません。
いずれにせよ、とても勉強になる良い記事と思ったので、恥ずかしながら駄文を送らせていただきました。メディアの編集部というのは外から見ると本当に謎が多いので、こうして記者さんの視点を教えていただけると嬉しい人が大勢いるのではないでしょうか。
これからも楽しみにしております。
いかがなものかと・・・
ご自身が偉いと錯誤されているのでは。
確かに採用してほしい方のマナーとしてはおかしいところもありますが、ピックアップする側という立場ということで、上から目線になってしまっているのではないですか。
上から目線とかいっ
上から目線とかいってるひとは、たぶん『仏の顔』とかの聖☆おにいさんネタがわからないんじゃないかな?
そもそも、聖☆おにいさんネタはすべってるし。。そこ失敗だね
なるほど!
> たぶん『仏の顔』とかの聖☆おにいさんネタがわからないんじゃないかな?
なるほど!
「聖☆おにいさん」が何かわからない人は「仏の顔」とか相当上から目線な表現に見えますね。個人的に、「聖☆おにいさん」に夢中だったので、そこはネタとして流していました。
たしかにそう考えるとかなり上からっぽく見えますし、そういった些細な理由で読者さんの「内容」に触れる気が喪われてしまうのはもったいないので、修正しました。
それ以外の部分でも、読む人によっては気になる内容があるかもしれませんが、この記事で伝えたかった内容を伝えるうえで必要な内容も多いので、他の部分には手をつけずにおくようにします。
良いヒントをありがとうございます!
参考になりました。
加藤恭子さんのブログ「きょこ コーリング」から飛んできました。
私の会社での役割は基本的には営業なのですが、小さい会社なので技術的なことからマーケティング方面まで様々な業務を担当しています。今度、自社開発の製品を初めて発売することになり、どのようにプレスリリースを行うべきか?を勉強中の身です。この記事は賛否両論あるようですが、私には笑える記事でした。