愛はブーメラン

台湾の高校生が、学園祭でナチスの扮装&段ボール製ティーガー戦車でのパレードを行い、イスラエルやドイツの交流団体(いずれも台湾を国家として承認しておらず、国交がないので、大使館にあたる機能を有する)が遺憾の意を表明・抗議するという事態になっています。


台湾の高校生がナチスのコスプレ。ダンボール製のティーガー戦車と共にパレードしながらハイル・ヒトラーの敬礼。イスラエル、ドイツ激怒で国際問題に - 鋼鉄的日記 台湾の高校生がナチスのコスプレ。ダンボール製のティーガー戦車と共にパレードしながらハイル・ヒトラーの敬礼。イスラエル、ドイツ激怒で国際問題に - 鋼鉄的日記
リンク先によれば、これは歴史上の人物をモチーフとするイベントで、このクラスはヒトラーをテーマとし、武装親衛隊のコスプレをしたもよう。指導をしたのは歴史の教師だとのことで、東アジアによく見られる、西洋の歴史認識に対する甘さがこちらでも出てしまったようです。

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リンク先の画像を見る限りでは、かなり力の入ったコスプレです。ハーケンクロイツの幟をこんなに揃えるのはたいへんだっただろうな、と思わされるし、段ボール製のティーガーも手作りの味わいに好感が持てます(そういう問題じゃない)。


とはいえ、高校の学園祭でナチ軍装と戦車の展示、というと、世代の古いアニメファンの中には、押井守監督の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を思い出す人も多いと思われます。

この作品では、学園祭前日という非日常を何度も何度も繰り返す、ラムの夢の中の世界が舞台になっているわけですが、ここで、ラムやあたるや面堂が所属する友引高校2年4組の出し物として準備されているのが、メガネの発案による「純喫茶第三帝国」。室内にはハーケンクロイツや鉄十字などの意匠があしらわれ、天井にはハーケンクロイツ型の照明。そして面堂が持ち込んだレオパルト戦車(なおこれはナチス時代のものではなく、戦後の1960年代に生産された西ドイツ軍の主力戦車である)が展示されているという、浮世離れのしたものでありました。

『うる星やつら』という漫画自体が、高校2年生を何度も繰り返す(夏休みやお正月は何度も出てくるが、入学式や卒業式はない)構造になっているのを、さらにミニマムにした物語といえますが、原作者の高橋留美子はこの映画を気に入っていない、というのも有名なエピソードではあります。この作品のモチーフは、その後の学園ものアニメにも大きな影響を与え(『涼宮ハルヒの憂鬱』の「エンドレスエイト」もこれに近い話だし、2012年のアニメ『えびてん』第10話は全体のストーリーや構図のみならず、エンディングテーマや校長先生の声優まで同じにするなど、徹底したパロディを行っている)、1984年の時点で日常系アニメというジャンルの本質を突いた先駆的作品ですが、アニメ作中のモチーフを現実に持ち込んだら目も当てられない事態になる、というのは日本でも台湾でも逃れられない宿命なのですなあ。


  • 【MV】愛はブーメラン カバー SEINA Cover "Love is Boomerang" URUSEIYATSURA 2 BEATIFUL DREAMER


(女性シンガーSEINAによる、主題歌『愛はブーメラン』カバーのMV。ルックスをとやかく言うつもりはないがもう少しメイクのやりようはあったと思うし、あとワンカットで撮るというコンセプトは理解できるが衣装がズレたら撮りなおすぐらいの丁寧さは欲しかった気がする)