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映画・ドラマ

現代の女子高生がタイムスリップして特攻隊員と恋に落ちる? ゆるふわ戦争ファンタジーもついにここまで来たのか

特攻隊がテーマといえば、『永遠の0』とかしょーもない話が目白押しだが、それにしてもこれは一線を越えてしまった感がすごい。 movies.shochiku.co.jp 公式サイト掲載のあらすじが以下。 親や学校、すべてにイライラして不満ばかりの高校生の百合(福原遥…

関東大震災時の虐殺が映画になったのは喜ばしいが、なぜそこで取り上げるのが福田村事件なのか。

関東大震災時に発生した、朝鮮人、中国人、一部日本人をも含む数千人が殺された大虐殺事件。 事件発生から百年後の今、ようやくこの事件をテーマとした劇映画が作られ、一般公開されることとなった。 eiga.com このこと自体はもちろん喜ばしいことなのだが、…

インタビュー記事を読む限り、『ONODA』のアラリ監督は小野田寛郎の実像をまったく分かっていない。

前回記事で取り上げた映画『ONODA』のアルチュール・アラリ監督に、「地球の歩き方」がカンヌでインタビューを行っている。しかし、予告編を見ても、このインタビュー記事[1]を読んでも、アラリ監督が小野田寛郎の実像を理解していたとはとても思えない。 ア…

小野田寛郎を英雄扱いしてきただけでも大概だが、今度はその嘘を世界にまで広めるのか?

映画『ONODA』がカンヌでスタンディングオベーションという惨事 ゴーストライターが暴露せざるを得なかったほどひどい手記のデタラメ 小野田はとっくに戦争が終わったことを知っていた 小野田はジャングルに潜んで何をしていたのか? 小野田はなぜ津田氏のル…

『日本のいちばん長い日』-- 名作と言われるこの映画も、改めて見直してみたら愚かな茶番劇でしかなかった。

半藤一利の原作をほぼ忠実に映画化した、岡本喜八監督の映画『日本のいちばん長い日』(1967年)。日本の降伏に至る最後の数日間、とりわけ8月15日の「玉音放送」までの24時間を、息詰まるような緊張感で描いた名作と評価されている。 以前見たときは確かに…

いろいろ引っかかるところが多すぎる『インターステラー』

最新作『TENET』の公開に合わせて、クリストファー・ノーラン監督の前作『インターステラー』がAmazon Primeで見られるようになっているので改めて見直したのだが、どうも科学考証的に引っかかるところが多すぎて素直に楽しめない。 一般的には、SF映画の設…

『私は貝になりたい』―― 戦後日本人の被害者意識を正当化した「不朽の名作」

『私は貝になりたい』は、1958年にラジオ東京テレビ(現在のTBS)がテレビドラマとして制作し、芸術祭文部大臣賞を受賞するなど、テレビドラマの名作として高く評価された作品だ。続いて翌年にはドラマ版と同じ橋本忍の監督により映画化もされている。 ドラ…

【映画】エクス・マキナ ― まあ、「強いAI」が実現したらこうなるよね、というお話

スタッフ・キャストなど 監督・脚本:アレックス・ガーランド ケイレブ:ドーナル・グリーソン エヴァ:アリシア・ヴィカンダー ネイサン:オスカー・アイザック キョウコ:ソノヤ・ミズノ あらすじ 世界最大の検索サービス企業ブルーブック社でプログラマー…

自ら『主戦場』を宣伝してくれる右派出演者たち

映画『主戦場』の衝撃 日本軍性奴隷(いわゆる「従軍慰安婦」)問題を扱ったミキ・デザキ監督の『主戦場』が、ドキュメンタリー映画としては異例の大ヒットとなっている。 何も知らない日系米国人の若造など丸め込むのは簡単だと見くびった右派の「論客」た…

「空母いぶき」で佐藤浩市の演じる総理が安倍なら、揶揄どころか美化だろうw

24日から公開の映画「空母いぶき」で首相役を演じている佐藤浩市の、ある発言が大炎上するという「事件」があった。 火元は阿比留瑠比(産経新聞記者)のFacebook投稿だという。 lite-ra.com きっかけは産経新聞の御用記者・阿比留瑠比がFacebookで5月10日夜…

「プロメテウス」冒頭の魅惑的な風景はアイスランドに実在した

映画「プロメテウス」は、人類登場以前の原初の地球と思われる惑星に降りていく空撮シーンから始まる。低く垂れ込めた雲を通り抜け、凍てついた荒々しい大地に近づいていくこのシーンは、この映画の中でも特に好きなシーンの一つだ。わずか2分ほどの短い場…

【映画評】思わぬ拾い物だった「プロメテウス」

リドリー・スコット監督の「プロメテウス」(2012年)。 ストーリー的には「エイリアン」シリーズの発端に位置する作品で、いま公開されている「エイリアン・コヴェナント」の直前の話にあたる。 実はこの映画、世間的にはひどく評判が悪い。ネットのレビュ…

【映画評】箸にも棒にもかからない駄作だった「シン・ゴジラ」

遅ればせながら、シン・ゴジラを観た。 もともと期待してはいなかったのだが、まあ予想以上の駄作だった。しかも、一回見ただけで、なぜこれが今の日本で大ヒットしたのか、またなぜ海外ではまったく相手にされなかったのかまで分かってしまった。その意味で…

『プライベート・ライアン』のあの場面並みの激闘をほのぼの上陸シーンに改変してしまう人々

■ 一瞬で「戦場」に引き込まれるあのシーン 戦争映画の名作『プライベート・ライアン』。冒頭数分間の現代の場面から第二次大戦当時に切り替わる際に使われるのが、ノルマンディー上陸作戦の激闘シーンだ。上陸用舟艇の扉が開いた瞬間から、あっという間に兵…

コンピューターに意識をアップロードして永遠に生きることは可能か?

ウォーリー・フィスター監督(クリストファー・ノーラン製作総指揮)、ジョニー・デップ主演の映画『トランセンデンス』で、ちょうどこのテーマが扱われている。 あらすじ(シネマトゥデイ): 人工知能PINNの開発研究に没頭するも、反テクノロジーを叫ぶ過…

永遠の0点

もちろん、あの映画のことである。 はじめに断っておくが、私はこの映画を観ていない。 観てもいない映画を批評するのは、一般的には禁じ手だろう。 だが例外もある。 おおまかなストーリーを聞いただけで既にそのダメさが明白な場合だ。 そしてこの映画は…

『男たちの大和』に出てきた機銃のことなど

関連記事: 『男たちの大和』 ― 日本人が戦争映画を作るとこうもダメ、という典型 『男たちの大和』が公開されたのが2005年。 同じ年にドイツで公開されたのが 『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』 であることを考えると、彼我のあまりの差に絶…

『男たちの大和』 ― 日本人が戦争映画を作るとこうもダメ、という典型

8月になると、夏の風物詩のように戦争関係の映画がテレビで流される。 今回はそんな中から、CATVで見た『男たちの大和』について、思うところを書いてみる。 事実としての戦艦大和の運命は映画を見るまでもなく誰でも知っていることだし、一般的な意味での…

わたしを離さないで

日系英国人作家カズオ・イシグロの同名小説の映画化作品。 架空の世界の物語である。 舞台は現代(おおむね1970年代から90年代まで)のイギリスなのだが、この世界では、ある画期的な医療技術の開発により、既にほとんどの病気が克服されており、人は事故死…

『アバター』と『アポカリプト』

久々に圧倒される思いで見た映画『アバター』のことを書いていたとき、『アバター』なんて『アポカリプト』と比べたら浅薄な駄作だ、といった主張をしている人がいる*1ことが気になったので、『アポカリプト』についても少し考えてみた。『アポカリプト』(2…

『アバター』大ヒットの意味

ジェームズ・キャメロンの『アバター』は、10年以上も首位を守ってきた『タイタニック』(これもキャメロン監督作品だが)の記録をわずか39日で抜き去り、世界興行収入歴代1位を達成した。そして、同じく米国内でも史上最高収入を記録している。3Dの効果や…