チャットボットのUX:価値ある会話デザインの方法

Jennifer Leigh Brown

Jenniferは、UX戦略、研究、およびデザインの取り組みを15年間にわたって行ってきました。ユーザーを楽しませる、より強いブランドを構築しています。 。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Chatbox UX: Crafting a Valuable Conversation

チャットボットはすべて同じではありません。では、チャットボットの良し悪しを決めるものは何でしょうか。

良いチャットボットとは、ユーザーがより効率的に何かを達成できるようにしてくれるものです。中でも優れたものは、チャット体験自体を楽しくしてくれます。一方で悪いボットは、ユーザーの時間を無駄にしたり、意味が通らない返答をしたり、ユーザーをイライラさせたりして、離脱率を高めてしまう可能性があります。

誰も好んで悪いチャットボットを作ろうとはしません。しかし、過去にチャットボットをデザインした経験がないと、開発の大変さに気づかなかったり、あるいは技術がすべてだと思ってしまっているかもしれません。その結果、ユーザー体験を向上するどころか、損ねるようなチャットボットが完成する可能性があるのです。

プロセスを自動化したり問題を解決したりできるチャットボットを作るためには、計画性、ライティングスキル、イテレーション、そして継続的な努力が必要です。革新的な技術であっても、ユーザーのニーズを理解し予測し、適切な体験を構築するための人材が必要なのです。単にたくさんの会話内容を生成するのではなく、ユーザーにとって価値のあるチャットボットを考え、デザインする方法をここで学んでいきましょう。

ボットの基本:チャットボットを 「賢く」するもの

ボットとは、タスクを自動化するコンピュータプログラムです。会話型または「チャット」のインターフェイスを使用して人間と関わっているボットを「チャットボット」と言い、テキスト入力か音声入力を使用して、人間が会話するときのやりとりをシミュレーションします。

チャットボットは、情報を取得するような簡単なアクションを達成したり、顧客とコミュニケーションするような実用的なサービスを提供したりできます。予約についての質問や食べ物の注文、天気のチェックなどの、人間を介したやり取りが必要ないすべてのタスクは、チャットボットで効率的に行うことができます。

チャットボットには人工知能(AI)を使用するものと、しないものがあります。シンプルなチャットボットは、規則や意思決定ツリーを使用してチャットをすることもあります。ただし会話のルートは限られており、ユーザーは決められた選択肢から選ぶことになります。

プログラムされた応答の代わりに、AIチャットボットは、機械学習や自然言語処理システムを使用してユーザーと会話することができます。機械学習では、データを取り込み、応用し、「学習」した結果を基に、継続的に更新されるアルゴリズムを使用することでデータと応答をテストします。ユーザーは質問をすると、チャットボットはその情報を解読して応答し、ユーザーの入力をより多くのデータに変換していきます。賢いチャットボットは、ユーザーのニーズに「気付い」て、さまざまなケースに対処できます。 たとえば、Chatbot Magazine Beginner's Guideや、best AI chatbotsにあるリストを参照してください。

余談:AIと機械学習の違いとは

AIとは、人間が通常行う「インテリジェントな」作業を実行するコンピュータシステムを包括する概念です。機械学習は、機械が自分の応答を自身で改善するためにデータを使用するAIの応用です。自然言語処理は、機械学習を応用します。これらの単語の違いについてはこちらをご覧ください。

チャットボットを作るべきか否か

チャットボットを作る理由は、「チャットボットが欲しいから」ではありません。新しい、楽しいものであるという理由だけで、チャットボットを作るのは良い考えではありません。チャットボットがビジネス上の目標を達成し、実質的な収益を得るのに役立つ見込みがあるのであれば、冗談や従順な態度以上のものが必要になります。チャットボットは目的を持ち、ユーザーのニーズを満たさなければなりません。チャットボットがあることでより簡単に、より速く、より良くできるタスク、サービス、プロセスが特定できないのなら、おそらくチャットボットは適切な解決策ではないでしょう。

チャットボットがユーザーや企業の目的に適した解決策であるとき、上手く実装すれば、次のような利点が得られます。

  • ブランドの親和性とロイヤリティが向上する
  • ブランドの考えと個性が強化する
  • 競合他社と差別化できる
  • エンゲージメントとインタラクションの時間が増加する
  • コンバージョン率が高まる
  • 人間とやりとりする前に、より充実した顧客サポートができる

またチャットボットは、ユーザーを理解するための豊富なデータが手に入る、素晴らしい情報源でもあります。チャットボットは、訪問時間、クリック数、離脱したポイントなどの単純な分析を超えて、ユーザーの言語、感情、ニーズに関するデータを収集したり、チャットセッション中に直接フィードバックを求めることができます。人工知能は、コンテンツやサービスのアイデアを生み出し、不満を明らかにしたり、より良いボットを構築する機会を特定することができます。

チャットボットの目的と計画

非常に多くの製作における選択肢と、コード、テンプレート、インストラクションなどのAIプラットフォームへのオープンアクセスがあるので、すぐに開発に取り掛かりたくなるかもしれません。確かに実験してみるのは素晴らしいことですが、まずは体験をデザインする時間を取ることで、チャットボットとユーザー双方にとってより良い結果が生まれます。

Smashing Magazineの記事によれば、「標準的な会話型チャットボットを構築することすら、非常に難しい」のです。チャットボットプロジェクトを計画し、無意味な会話を避けるために、以下の手順を踏みましょう。

1. 目的と戦略を定義する

二人組のR&Dプロジェクトであろうとカスタマーサービス部門のタスクであろうと、チャットボットを作るための正当な理由が必要です。チャットボットの目的と製作に投資する根拠を明確にするために、以下の質問に答えてください。

  • ユーザーはどんな人ですか?
  • 彼らは何を望んでいますか?
  • チャットボットはどのようなサービスを提供しますか? どのような問題を解決できますか? 一般的なタスクを、より簡単に、より速くすることはできますか?
  • ボットはどのようにしてユーザーに価値をもたらしますか? 何がユーザーにとって役に立つのでしょうか?
  • ボットは、ビジネスやマーケティングの目標とどのように関連していますか?
  • これは、会社とブランドから見て、適切なカスタマーサービスモデルですか?

2. 機能の輪郭を描く

チャットボットが満たすべきニーズを見つけたら、その具体的な機能の輪郭を描きましょう。すべてのタスクや経験が、チャットボットのインタラクションに上手く移行できるわけではありません。ボットがすべきこと、してはいけないことを定義して、使用事例をリストアップしましょう。これにより、開発作業のみに集中し、完成品への期待値を管理することができます。

この作業は、ステークホルダーかチームが初めてチャットボットを製作するのであれば特に重要です。最初に議論をして全員のコンセンサスを得て、あとになって誤解や失望が生まれないようにしましょう。

たとえば、ボットはハードコーディングされたストレートパスを使用するのでしょうか、それとも動的でインテリジェントな意思決定エンジンにするのでしょうか? 顧客の質問を掘り下げられる、洗練されたチャットボットを実装する必要があるのでしょうか、それともシンプルな線形モデルで十分なのでしょうか?

ヒント:まずはシンプルなものから始めましょう。ユーザーのニーズに対応するのに必要なものを構築し、過度に設計してはいけません。そのチャットボットの長所1つに焦点を当てて、補完的な機能はあとで追加しましょう。シンプルで満足のいく解決策を損なうような、複雑な機能を加える前に、何が機能していて、何がしていないかを確認してください。

3. 成功を定義する

チャットボットを実装したあと、どのようにチームは成功したかどうかを判断するのでしょうか? 結果を示せるように、測定可能な指標を設定しましょう。指標はステップ1で決めた戦略に関連するべきで、ボットが提供しているサービスに依ります。たとえば、「Xによるスタマーサービスコールの削減」、「Yページへのトラフィックの増加」、「ある製品を見つけるためのZによるユーザー効率化時間の改善」というような定義ができるでしょう。

GoogleのChatbase、Dashbot、Botanalyticsなどのツールは、ユーザーがボットとインタラクションしている様子を示し、ボットの会話のフローと効率を改善するためのインサイトを提供してくれます。チャットボットに直接フィードバックの質問をさせて、指標を集めましょう。「これはあなたが探しているものでしたか?」「あなたの問題は解決できましたか?」というように、ユーザーに正確さと有用性について質問してください。答えが肯定的でない場合は、チャットボットが良好な応答をしているかどうか確認しましょう。この点については、後程詳しく紹介します。

4. きっかけとシナリオを特定する

チャットボットは、どのようにユーザー体験を阻害することなく、統合させるのでしょうか。ユーザーがチャットボットに遭遇したときのきっかけのアクションと入り口地点をまとめましょう。ユーザーは何をしていましたか、何を見ていましたか? また、チャットボットに手伝ってもらって、何をしたいのでしょうか? 

チャットボットがサポートする必要のある、さまざまなインタラクションを計画するために、ユーザーペルソナのシナリオを書きましょう。もしユーザーペルソナが無ければ、ユーザースタディを行いましょう。ユーザーが新規訪問者なのか、再訪者なのか、別のサイトの広告やリンクをクリックして来たのかによって、チャットボットの最初のエンゲージメントや会話フローを変更する必要があるかもしれません。これらのシナリオは、あとで会話のスクリプトをテストする際も便利です。

5. ブランドを反映したチャットボットのペルソナとパーソナリティを設定する

ペルソナは必須ではありませんが、ペルソナを作成すると、インタラクションの計画や、スクリプトの作成が簡単になります。ボットには、会社、ブランド、インタラクションするユーザーに適したパーソナリティが必要です。クリエイティブながらも、会話文の中で、会社のスタイルガイドに沿った言葉やトーンにしましょう。

ペルソナがあれば、ライターは適切な言葉と文法を決定しやすくなり、対話に一貫性を持たせ、チャットボットに複数の人格がないようにすることができます。 パーソナリティを備えた天気のチャットボットであるPonchoを参考にしましょう。どんなパーソナリティにしろ、ユーザーを侮辱したり、けなしたりしてはいけません。

チャットボットの会話を作成する

会話体験の輪郭を描くことは、チャットボットをデザインする上でもっとも難しく、もっとも楽しい場面でもあります。始めに、協力してアイデアを出し合ったり、ホワイトボードを使って相談したり、鉛筆をつかんでスケッチを始めたりしましょう。プロジェクトにマッチしていて、自分の頭やチームがもっとも働くアイデア出しの方法を選択してください。ユーザーにとって価値あるものを提供するために会話をデザインしているのであれば、どのツールを使うのかは問題ではありません。これらの提案を使用して会話を設計します。

経路とフロー

  • 想定し得るトピック、機能(ボットが手助けできること)、会話の経路の大枠を作る。
  • パターンを探し、カテゴリーや機能のグループにアイデアを分類します。 こちらのECサイトの例では、「未知の商品」「既知の商品」「既知のブランド」「既知のカテゴリー」というグループを使用しています。
  • motion.ai、xmind、mindnode、twineなどのツールを使用して、ツリーダイアグラム、決定プロセスのフローチャート、マインドマップを作成することで、情報を視覚的に整理し、関係性を示しましょう。
  • 会話が計画通りに進み、ユーザーも理想的な方法でタスクを達成するという、「幸せな」経路(Googleの例)から始めてください。
  • 探索的なルートに分岐しましょう。これらは、ユーザーがまだタスクを達成していない段階で起こりうる追加の会話です。
  • 最後に、エラーなどの特殊なケースに対応しましょう。チャットボットが理解できない、応答するデータがないなどの、ユーザーが予期せぬアクションを実行した場合に対処する緊急のルートを設計してください。ユーザーが画像を送信し「このスニーカーを見つけてください」と言ったり、「asdfsdfs」というような無意味なテキストを入力したりしたら何が起こりますか? 「ごめんなさい、わりません」という行き止まりの文字列で応答するのではなく、ユーザーに別の道か、終了するオプションを提供しましょう。

Googleの、ゲームの会話からそれた際の会話修復の提案方法

境界と制約

会話の種類は無限に存在します。ユーザーはどんなことでも、どんな形式でも聞くことができます。ユーザーがチャットボットと対話するとき、プログラムは相手の意図が何であるかを判断し、単語のバリエーションと構文を解読する必要があります。ユーザーが何をしたいのか、何を求めているのかを理解しなければなりません。ユーザーの意図は、テキストではっきりと宣言することも、選択肢を設定することも、インタラクションに基づいて推測することもできます。ユーザーが入力したものと、それに対してボットが取った返信やアクションとの間には、マップが必要です。ユーザーの意図はそれ自体大きな課題なので、AIのチャットボットではないときに注目しましょう。意図に関してさらに知りたい場合は、AI開発者が知るべき重要な概念を読んでください。

会話が迷子にならないようにするには、境界線を決める必要があります。チャットボットにオープンエンドの質問をさせないでください。質問に関連する回答を計画できなくなってしまいます。もちろん、人の名前やメールアドレスを尋ねるときなど、いくつかオープンエンドの質問が必要な場合があるでしょう。そのときも、回路の数を制限しない限り、予測は到底不可能です。

もう1つの方法は、ユーザーの応答を、既定の限られた選択肢に制限することです。 「何を手伝いましょうか?」とは尋ねずに、「Xをしますか、Yをしますか?」と尋ねます。たとえば、「連絡先を見つけますか、サービスリクエストを提出しますか?」というように尋ねましょう。多くのチャットボットはボタンやメニューも表示しています。これらのUI要素をユーザー入力とともに使用すると、ボットが本当にユーザーを助けることができる会話に焦点を当てることに制限されます。

対話と原稿

対話の原稿作りには時間とスキルが必要です。PullstringというMattelのHello Barbieで使用しているAIプラットフォームでは、ライターのチームが8000もの対話を準備し、彼女の言葉が信頼でき、一貫性があり、バービーブランドに相応しいかどうか確かめています。この話せるバービーは、Webのチャットボットやアプリよりもずっと複雑ですが、重要なのは、強力なテクノロジーにも、適切な会話体験の構想に専念する人々が必要だということです。

  • 人が普通に話しているように書きますが、ボットが人間のふりをすることはやめましょう。だますことはできませんし、不快感を与える可能性があります。
  • 演劇の台本のように書いたり、または実際の会話から会話を切り出したりしてみましょう。
  • 個人的な対話で話を逸らしてはいけません。簡潔で生産的な会話をしましょう。パーソナリティがあまりにも少ないとボットは機械的になりますが、多過ぎるとユーザーの気を散らしてしまいます。
  • 「はい」、「うん」、「お願いします」というようなコミュニケーションのスタイル、フレーズ、単語のバリエーションを調整しましょう。Smashing Magazineの音声体験のデザインに関する記事には、フレーズマッピングテーブルの例があります。
  • 構文が異なる可能性がある場合には代替案を作成します。時間を基準にして「おはよう」と「こんにちは」を切り替えたり、再訪したユーザーには、新規ユーザーとは違う挨拶したりしましょう。
  • ボットは、人々が否定的だったりまたは毒づいたりしているとき、何と言うでしょう。「不満を抱えているようですね。サポートセンターに連絡しますか?」と聞いても、ユーザーの不満は解決しないかもしれませんが、無言のチャットボットや賢いだけのチャットボットの応答よりは優れているでしょう。
  • 予期せぬ状況で使用できる緊急用のフレーズを書きましょう。「わかりません。 [email protected]にメールでご連絡しますか。」と表示することで、代替の経路が提供されます。

台本が完成したら、それを声に出して読んでください。聞いてみることで、おかしいところに気付いたり、ボットのペルソナと自然にフィットしていないものを特定したりすることができます。

設計初心者へ:良い第一印象を与える方法

あなたのチャットボックスで行動に移すときに、オンボーディングによって、ユーザーに良い印象を与え、彼らに再訪してもらえるようにしましょう。

  • 期待を管理しましょう。チャットボットができることとできないことについては、正直に伝えましょう。インタラクションが始まる段階で、制限があることを説明してください。
  • 使い方について人々をガイドしましょう。例を提供し、ユーザーが使い始めるときに手助けします。
  • 標準的な会話の慣習通りに作りましょう。挨拶とイントロダクションから始まり、質問を受け、結論で終えます。
  • 繰り返すことで、理解した内容を確認し、エラーを減らしましょう。
  • 辛抱強く、ユーザーに十分な回答時間を与えましょう。文章、タイピング、発言、思考力、読解力によって、対話のスピードは異なります。
  • 何よりも、対話を短くシンプルに保ちましょう。ユーザーは何かを達成しようとしているのであり、おしゃべりをしに来ているのではありません。ユーザーの時間を尊重し、できるだけ早く簡単に本題に入りましょう。チャットボットが役に立てば、ユーザーはもう一度チャットに戻って来るようになるでしょう。

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