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中国、軌道衝突回避で米国に連絡–「コミュニケーションが実現するのは初めて」

2025.10.07 07:32

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 中国の宇宙機関、国家航天局(CNSA)が軌道上の衝突を防ぐために、米航空宇宙局(NASA)と初めて連絡を取った。米メディアSpaceNewsが報じている。

 オーストラリア・シドニーで76回目となる国際宇宙会議「International Astronautical Congress(IAC) 2025」が9月29日~10月3日に開催。宇宙の持続可能性に関連したパネルディスカッションに登壇した、NASAの宇宙持続可能性担当ディレクターであるAlvin Drew(アルビン・ドリュー)氏は、中国が自国の衛星を動かす間に、米国の衛星にその場に留まるように求めたと説明。そして、「このようなことが起きたのは初めて」と指摘した。

 CNSAは単純なメールを送っただけだが、その意義は大きいとDrew氏はSpaceNewsに説明する。「2つの公的な宇宙事業者の間で実際に双方向のコミュニケーションが実現するのは初めて」

 軌道上の宇宙機を追跡し、衝突の可能性を回避するために、米商務省は「宇宙交通調整システム(TraCSS)」を開発している。しかし、その運用にはあらかじめ衛星データを入力する必要があり、中国のように情報が欠落している場合、このプログラムには死角が存在する。

 中国は2007年に対衛星兵器実験を実施し、追跡可能な大きさの宇宙ゴミ(スペースデブリ)を3000個以上発生させた。その一部は現在も軌道上に残っている。

 米メディアPayloadによると、IAC 2025では、中国当局者らが地球低軌道(LEO)の混雑とデブリに関する懸念を表明したという。これらの問題は、中国と国際社会が協力して解決すべき問題であると強調したと報じられている。

 中国が西側の衛星事業者に接触していることも明らかにされた。

 SpaceNewsによると、IAC 2025で9月29日に開かれた宇宙の持続可能性に関連した技術セッションに登壇した、LeoLabsのシニアテクニカルフェローであるDarren McKnight氏は「OneWebが中国の衛星コンステレーションを構築している企業から連絡を受け、今後の計画を協議していることは事実」と発言した。「SpaceX(Space Exploration Technologies)も連絡を受けている」

 CNSAや中国の衛星運用事業者が、米国と衛星の動きについて協議する最近の動きは「中国の何者かから協調的なシグナルが発信されていることを示唆している」とDrew氏は説明する。「誰かが『彼らと話し合ってもいい。彼らと調整してもいい』と言っているようなものだ」

 LEOを周回するメガコンステレーションは増加するばかりだ。SpaceXの「Starlink」は約4万2000機、Amazonの「Project Kuiper」は約3200機を計画。中国の「国網(Guowang)」は約1万3000機、「千帆(Qianfan)」は約1万5000機が予定されている。

 Drew氏は「関係機関の間でリアルタイムの情報共有」が必要になると説明する。「私たちは今、その第一歩を踏み出しているところだ」

 情報がどのように共有されるかは現段階では定まっていない。しかし、国際宇宙航行連盟(IAF)や国際宇宙航行アカデミー(IAA)のような組織が協力できると、IAAでデブリ委員会の委員でもあるMcKnight氏は説明する。

 「IAAやIAFの関係者と協力し、政府が将来、最終的に採用することになる解決策につながるかもしれないアイデアが考えられている」(McKnight氏)

 メガコンステレーションで稼働する衛星は増える一方であり、運用が終了した衛星や役目を終えたロケット上段などのデブリも増加している。TraCSSのような、軌道を周回する(デブリも含めた)宇宙機の位置や軌道などを把握する「宇宙状況把握(Space Situational Awareness:SSA)」の重要性も指摘されるようになっている。

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