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「小惑星『リュウグウ』粒子に微生物汚染」論文にJAXAが反論
2024.12.05 17:00
小惑星「リュウグウ」の粒子に微生物汚染が見つかったとする論文について宇宙航空研究開発機構(JAXA)が反論している。
国際隕石学会の学会誌「Meteoritics & Planetary Science」に11月13日付けで掲載された英ロンドン王立大学のMatthew Genge氏による論文では、JAXAから配分された、リュウグウの試料(サンプル)について、地球上の微生物の枯草菌である可能性を指摘している。
論文について、JAXAは、サンプルはJAXAから窒素封入された状態で届いているため、開封後にサンプル準備以前の汚染は考えにくく、それ以後の分析の段階で汚染を受けた可能性が高いという議論を行っており、帰還時のサンプルの取り扱いでの汚染管理の重要性を指摘する内容と説明する。
論文の議論でも言及しているように、JAXAからは全てのサンプルを窒素環境下で初期記載、保管、専用容器に密封され、大気に触れることなく研究者に配分しているため、微生物汚染が起きる可能性は極めて低いと説明する。
年1〜2回の頻度でリュウグウ粒子の初期記載、保管を行っている環境(クリーンチェンバー)の有機物や微生物について汚染評価しているとJAXAは主張。有機物については米航空宇宙局(NASA)のジョンソン宇宙センターによる「OSIRIS-REx」のサンプルと同程度以下の濃度であること、その他の微生物汚染評価で微生物コロニーは検出されなかったことは確認され、報告されていると解説する。
こうした事実から、論文で指摘しているような微生物汚染はJAXA内のプロセスでは起きておらず、配分を受けた研究者の実験室環境で発生したと推測している。
今回のリュウグウ粒子のような国際公募研究では、各研究責任者が研究計画を提案し、国際的な専門家による査読を経て採択されたテーマに必要なサンプルを配分しているとJAXAは説明する。
今回の論文の元になった公募研究も、こうしたプロセスに基づいて採択、配分されたものと解説。元々提案されたテーマはリュウグウ粒子と地球上で見つかる微隕石との比較研究であり、論文の内容とは相違があると主張する。JAXAとしては、地球外のサンプルの微生物汚染を目的とした論文の内容に基づいて、サンプルを分配する際の研究提案を評価、選定していないとしている。
Genge氏による論文では、配分されたリュウグウ粒子A0180を大気下でX線でのコンピューター断層撮影(CT)による分析後に片面研磨片で電子顕微鏡で観察すると、研磨面の表面に繊維状や棒状の炭素物質が確認されたと記述。その形状や時系列での観察から数の増減から、地球上の微生物である枯草菌である可能性を指摘している。