アンタッチャブル山崎の挽回力

3 日に放送されたテレ朝系「アメトーーク!」の「やっぱり上戸彩芸人」を見ていて、アンタッチャブル山崎って、一度スベってからの「リカバリー」が驚異的にうまいよな、と思いました。

「後輩の山崎に憧れてる芸人」が好評を得て以来、最近では「思いついたこと言いたい芸人」「人見知り芸人」と立て続けに「アメトーーク!」に出まくっているザキヤマさん。

手数が多いぶん、実はスベることもけっこう多いです。

ただ、山崎が本当に凄いと思うのは、一度スベッてトークの勢いが落ちたあとでも、「はいスベりました」というただの尻すぼみで終わらせることなく、瞬発的に「スベったことにまつわる笑い」をたたみかけることで再び形成を逆転していくことです。

窮地に追い込まれれば追い込まれるほど力を発揮する挽回力がちょっと尋常じゃない。


・ケース1

「上戸彩ならどこまでのことが許せるか」というテーマのとき、南海キャンディーズ山里が勢いよく挙手をすると、その瞬間、勢い余って山里の衣装のボタンがはじけ飛び、スタジオの床にカタカタと落ちてしまった。

そこを見逃さなかった山崎は、しゃがみ込んでヒザをつき、床に落ちたボタンと対峙。ほどなくして「古畑仁三郎」の BGM が流れてきた。ちょっとした即興のひとりコント、タイトルは「現場検証」です。

雨上がりのふたりも

蛍原 あれ?ザキヤマさん
宮迫 現場検証!

と山崎のコントに乗っかる。

そこで間をたっぷりあけたあと、拾い上げたボタンを苦渋の表情でじっと見つめながら山崎が発した一言が



うーん、なんにも思い浮かばない

だったわけです。

これはこれで山崎らしいチャレンジ精神の発露だし、雨上がりのふたりも派手にずっこけた。「なんにもない」ことが笑いにつながってる。しかしこれではただの「スベリ芸」どまりです。

ここから山崎の驚異的なリカバリーが積み重なる。



誰かが助けてくれるかな? と思ったんですけどね

まずは言い訳。刑事コントに誰も乗ってくれなかった愚痴でもある。

続いて自分が身を投じてしまった孤立無援な状況を、別のことにたとえるのです。



まさかの「浮き輪なしで沖に出ちゃった」っていうね

このフレーズが肝だと感じました。


そしてさらには「浮き輪なしで沖に出ちゃった」の愚を、自らのポーズで体現するのです。

「まさかの浮き輪なしで沖に出ちゃった」


またこのポーズは一度やった後、さらにもう一度だめ押しで繰り返してしました。


首をプルプルさせながら。全部がおもしろいです。

蛍原 溺れちゃうパターンですね

元はといえば、南キャン山里のボタンが弾け飛んだというちょっとしたハプニングから始まって、山崎も「なんにも思い浮かばない」と死に体のくだりでした。それがいつの間にか爆笑に包まれてしまったのです。驚異です。


・ケース2

「上戸彩と恋人同士でドライブに行く」という設定で芸人が妄想を繰り広げる企画に山崎も参加。まずは天真爛漫な上戸彩のキャラクターをなぞりながら快調にトークを展開していく。

助手席の上戸彩に話かけるというていで



雨さんもさ、けっこう俺にハマっててさ今。やりやすいよねアメトーーク

などとさりげなく不遜な本音めいた発言をまぶしたりしている。

しかしそのあと会話はだんだん尻すぼみになって、まったく笑いが起きなくなってきます。次第にスタジオがザワザワし始める。

ここで関根さん

関根 これ、ノープランだぞ!

いいタイミングで指摘がありました。


すると山崎はここから挽回し始める。

 


あれ? ちょっと待ってごめん。トークの道まちがえたかも知れない

あくまで「ドライブ」の設定は崩しません。「トークの道まちがえたかも知れない」は、さっきの「浮き輪なしで沖に出ちゃった」に匹敵する当意即妙ぶり。


続いて、慌ててカーナビをチェックする仕草をします。



ごめんごめん、オチがない道しか出ないんだけど


さらに山崎は「窓の外」を二度見。どうやら検問に遭遇したらしい。



はい? なんですか? 免許?

あ、「お笑い免許」ですか? 「お笑い免許」のほうは今日持ってませんので

「上戸彩と妄想デート」という本筋の部分とは最終的には関係なくなってます。

それでも、途中でザワザワしても一貫して攻め続けた結果、ドライブに引っかけたうまいことを言い出して、やっぱり笑いをかっさらってしまうザキヤマさん。

諦めないことが肝心という教訓が得られます。