東野幸治はアンタッチャブル山崎に憧れる


東野幸治といえば氷の心を持つお笑い芸人として有名ですが、そんな彼でもアンタッチャブルの山崎弘也(やまざき・ひろなり)についてだけは、同じお笑い芸人として一目置いているところがあるらしい。

18 日に放送されたテレ朝系「アメトーーク」は「後輩の山崎に憧れてる芸人」と題して、東野幸治の山崎に対する想いが結実した一時間となっていた。しかも「東野プレゼンツ」、すなわち東野が言い出した企画だという。

山崎に憧れていると称してスタジオひな壇に並んだのは東野のほかに関根勤、FUJIWARA 藤本、TKO 木下、たむらけんじというメンバー。「後輩の山崎に憧れてる」というしばりがあるため必然的に年長者が集うことになったにしろ、妙に腹にイチモツ抱えてそうな中堅ベテラン勢が揃ったのは偶然だろうか。

くりぃむしちゅー有田や伊集院光など山崎とリアルに近しい先輩二人は不在だった。もちろんスタジオにいても全然おかしくはないのだけれど、そうなると「後輩なのに“憧れ”の対象として持ち上げる」というややコント風な企画の主旨からは微妙に外れてしまうような気もする。ちなみにエピソードにはふたりとも名前が出ていた。

Wikipedia の東野幸治の項目を眺めてみる。ひたすら人間性が疑われかねない東野幸治のエピソードが連ねてあってたいへん面白い。今田耕司の項目よりも遥かに充実している。

もちろんそんな冷酷非情でドライで他人に無関心というような面ばかりではない。今田の唯一無二と言っていい「相方」だし、島田紳助のリリーフ司会も務められる。トライアスロンにも真剣。ただし基本的には「誉め」に関してのストライクゾーンは狭い。なんでもリスペクトみたいな大らかさは公の態度として表してない。

そこへもってアンタッチャブル山崎を憧れの対象と公言するのは意外っちゃ意外だ。

しかし現在のお笑い界において図抜けた「ハートの強さ」であり「手数の多さ」であり「漫才師としての実力」であり、あるいは「非吉本」であるという、いずれも自分に無いものばかりを併せ持っているアンタッチャブル山崎に対して東野幸治が「憧れる」というのは、実は必然ですらあるのかも知れない。

山崎については東野以外の 4 名もいろいろ語っているが、あくまで「東野プレゼンツ」ということで本更新では東野の発言を特にピックアップしていく。

他人に興味のないはずの東野がアンタッチャブル山崎のことばかりを語っています。




・オープニング

「アンタッチャブルの山崎さんを、個人的にすごい憧れてて、(この企画を)やりたい、ということで」


・白シャツ&白ネクタイという山崎の全身写真を見ながら

「たまーに大阪の番組でジャケット脱いで山崎のフリして、こういう憧れというか、今東京でなかなかこんなんするとまんまパクッてると思われるけど、ローカルではちょいちょいやってんで」


・前歯とアゴを出すみたいなおとぼけ顔をマネたい

「あと登場の顔も、たまに使わしてもうたりしてんねん。あの、このへん(前歯とアゴ)出すでしょ。ちょっとね、やりたいんだよね」


・手数論

「あのねやっぱり『手数』が違うのよ。ボケる手数が。たしかにそのちっちゃいボケやけど、打ち続けてたら知らん間に『必殺ブロー』になったりとか、ずっとするし。結局、結局いろんな人がおっても山崎がおったら山崎中心になるのよ。結局ボケのやつもつっこまざるを得ない。これボケの人にしたらすごい屈辱的なこと」


・山崎がゲストで出た「笑っていいとも」

「いいともボクこないだ見てたけど、宮迫がゲストで登場する回の。『パパ芸人コーナー』みたいなのがあったんですよ。それの宮迫らが登場する前に『アンタッチャブルですどうぞ』ってゲストで来て。ほんでタモリさん筆頭に全員が山崎いじって、生放送やのに、まぁ紹介だけで 8 分くらい使って」

宮迫「しゃべり続けて、ぼくら出たらコーナー終わってしまったんです」


・ゴールの見えないノープラン

「我々意外とプロって、『ゴール』を一応最初に設定決めてて(他人のトークを)盗んだりとか邪魔したりするけど、(山崎は)ノープランで、盗んだはええけど『なんやあんまおもろないな』思って返すときがある。『えぇーッ?』っていう」


・ブラックマヨネーズとの比較そして相方柴田の話

「ブラマヨもすごいじゃないっすか。バラエティでね、おもしろいでしょ? ボケとツッコミで言い合いながら笑いをどんどんどんどん増幅するパターンですけど。コイツ(山崎)のすごいのは、残念ながら柴田関係ないねん。そこやねん。ほんで柴田は柴田で己で勝手に『動物好き』って言い出して。ブラマヨみたいにやるほうが芸人として気持ちいいよ。でも相方どうやら『そんなんちゃうなぁ』って」


・M-1 最強伝説 in 大阪

「だって(アンタッチャブルが) M-1 優勝した年の準決勝を、なんか大阪で、噂によるとたしか出場したんですって。(コンビふたりとも)“東京の子”じゃないですか。スケジュールの都合で東京出れなかったから大阪に行ったんですよね。大阪って意外とその標準語の漫才ってあんまり受け容れずらいんですよ。そこでもいちばんウケたらしいですよ」

※山崎は埼玉、柴田は静岡出身


・「ダウンタウン病」を乗り越えて

「『ダウンタウンさん病』ってあるじゃないですか。お笑い芸人の。ダウンタウンさん以降に、ついつい漫才とかコントするときにやっぱりボケがポーカーフェイスで、そっからもうすごいみんな似てる芸風がいっぱい集まって。ほんで聞いたんですぼく(山崎に)。『どうやったん? デビュー当時』って言ったら、正直最初のデビュー当時はちょっとポーカーフェイスやったんですって。こんなん(笑顔でピース)ぜんぜんちゃうんすよ」


・「ロンドンハーツ」と「アメトーーク」だけまとめた VTR を見た

「ちょっとすごい破壊力よね! 正直最初『クールポコ状態』が『しょーもな』って思ったけど、こんだけカブせられたら」

※『クールポコ状態』=「やっちまったなぁ!」


・山崎まとめ VTR のディレクターズカット版は 60 分の長さだという

「ちょっとそれ、くれませんかね? 60 分欲しいです、すいませんちょっとください。笑ろたわー」


・山崎は「ポストさんま」か

「よくテキトーテキトーって言うて(山崎のことを)高田純次さんやって言いますけど、ぼく意外と実は高田純次さんのフリしたさんまさんタイプやと思ってるんですよ。あと 10 年後怖いよ。10 年後ホンマに『 27 時間テレビ』の顔ですよ。27 時間ずーっと、いや、正直見たいですよ『 27 時間コイツ何すんのやろ?』と思って」


・ここで山崎本人がスタジオに登場。ハイペースでとばす

「ちょっと待ってくれ。あのさ、オレいつもの山崎が好きやねん。今日『1.5倍』やから」


・山崎ヘラヘラする

「ほんまズルいわー。ツッコんでウケたらすっごい笑顔やもん。柴田(のことを)もっと愛したれや」


・いったい山崎は何を目指しているのか

「何を目指しているっていうか、冠番組とかもっとやりたい、何かしたいとか…(あるの?)」

※山崎「あ〜、う〜ん、無いです」


・ひな壇のたむらけんじをいなす

「(たむけんが)一生懸命喋ってんのにさ、軽くいなすなや! 失礼! 先輩に失礼! だってコイツめっちゃホンマになんか『あ、これ退屈や』『無いな』思ったらすぐ向こうむく」


・非コンパクト

「ホンマにふつう芸人ってコンパクトにむだな言葉ばーっと削ぎ落としてオチまで早く行きたいやん。(山崎は)真逆ですもんね」


山崎本人がスタジオに出てきてからは東野もツッコんだり乗っかったりと、東野が言っているようにすっかり山崎ペースになってしまった。たしかに番組としては段階を踏んで盛り上がっていったけれど、むしろ本人がまだいない状態で東野を初めとした先輩芸人たちが山崎のことを分析的に言及しているのがとても興味深かった。

そして番組中、山崎が出てくる前も出てきた後も、終始、東野幸治がこれまでテレビで見せたことのないくらい愉しそうな笑顔を浮かべていたのが、なにより印象的だった。