思えばこの連載も長くなったもので、ドナルド・トランプ氏が1度目の当選を果たした8年前にも、筆者はせっせと「トランプ・ウォッチング」の記事を書いていた。
2016年12月9日配信の「トランプ氏のツイッターの読み方を教えよう」という記事では、「トランプ氏の情報発信は、『つかみ』が上手いが『ふかし』も入る」などと、懐かしき「トランプ=プロレス論」を展開している。当時のトランプさんのフォロワー数はまだ1700万人だったというから隔世の感がある。今の「X」では9624万人ですからな。しかもイーロン・マスク氏が味方になっている。
トランプ次期政権では本当にインフレが再燃するのか
そして再び、「トランプ占い」の需要が高まる日がやって来た。筆者もこのところ毎日のようにいろんな場所に呼ばれては、「来年はどうなるのか。トランプ政権のリスクをどう見るべきか?」といったお尋ねを受けている。その中でもFAQの最たるものはこの疑問である。
「次期政権が関税を引き上げると、来年のアメリカ経済はインフレが再燃するはずだ。そのことをトランプさんはわかっているのだろうか?」
だいたい、こんな風にお答えしている。
よろしいですか、トランプ第1期政権は2018年から関税を引き上げています。そのときはインフレにはなりませんでした。なんとなればドル高が進んだから、関税による輸入価格の上昇効果はほとんど帳消しになったのです。
理屈からいえば、関税を上げれば輸入が減り、貿易収支が改善するので通貨が強くなるのは自然な流れである。ただしこのときは、前年の2017年末に「トランプ減税」が成立したことが大きかった。景気が過熱気味になってアメリカの長期金利が上昇したし、連銀が2018年からQT(量的引き締め)に踏み切ったこともドル高の一因となっている。
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