「80時間残業しないと減給」

http://www.asahi.com/national/update/1218/OSK200812180095.html
19日の朝日夕刊に載っていた記事。過労死で亡くなった被害者は直近の4ヶ月の時間外労働が平均98時間に達していたという。妻の病気の件で労基署いったり、一応労災について調べた経験もちょっとはあるからわかるけど、労災は基本的に質より量。単純にいって月80時間を超えているかがすべてだから、これはまちがいなく労災適用。実際記事中にも労災認定の記述もある。
しかし記事内容にはびっくりである。大庄の給与体系にある一般職19万4500円に対して1行の但し書きがあるというくだり。

「時間外(労働が)80時間に満たない場合、不足分を控除するため、本来の最低支給額は12万3200円」とされていた。

 ようは元々は12万3200円が一般職の初任給なわけだ。しかも残業代も軽く電卓片手に計算するとこんな感じである。

一般職    194500円
最低支給額  123200円
残業代     71300円
残業代の時給 71300/80=891.25円
通常1.25増しだから基本的な時給は713円

713円って社員の時給としてはありえない額だと思う。今どきパートでもなかなかないぞ。大庄さんかなり無茶苦茶やっていたんだなと思う。まあだからこそ居酒屋チェーン店で1部上場するくらいに成長したんだろう。
記事の中で朝日の取材に対して大庄の広報担当者はこうコメントしている。

「月額19万4500円は80時間残業した場合の給与を一つのモデルとしているに過ぎず、長時間の時間外労働を強いているわけではない」と反論。「サービス業である以上、残業が必要な場合もある。給与体系は採用時の会社説明会などで詳細に伝えている」と説明している。

まず思うことだが、「80時間残業を一つのモデル」にするなよということ。そして「長時間の時間外労働を強いているわけではない」というけど、モデルにあげること自体に問題がある。
2chnとかでもこの記事についてのスレでていたけど、グーグルで「大庄 残業」で検索かけると就職用のナビサイトでのこの会社の情報がヒットするので引用する。
http://rikunabi2010.yahoo.co.jp/bin/KDBG00200.cgi?KOKYAKU_ID=0530222001

大卒・短大卒・専門卒 月給 19.8万円(基本給+役割給)

たしかに残業代には触れていない。一般的にはこういう金額を提示して採用時の会社説明会で細かく、もちろん残業代80時間に満たない場合についても説明しているのだろうと思うわけだ。
しかしキャッシュで表示させるとこういう表記になる。
http://72.14.235.132/search?q=cache:pHFX4CNXIxsJ:rikunabi2010.yahoo.co.jp/bin/KDBG00200.cgi%3FKOKYAKU_ID%3D0530222001+%E5%A4%A7%E5%BA%84+%E6%AE%8B%E6%A5%AD&hl=ja&ct=clnk&cd=10&gl=jp
http://209.85.175.132/search?q=cache:Ji8rz1c2XPMJ:https://gakusei.enjapan.com/2010/company_view/15572+%E5%A4%A7%E5%BA%84%E3%80%80%E5%88%9D%E4%BB%BB%E7%B5%A6%E3%80%80%E6%AE%8B%E6%A5%AD%E4%BB%A3&hl=ja&ct=clnk&cd=7&gl=jp

給与 08年4月初任給
【営業職】
大卒・短大卒・専門卒月給 19.8万円(残業代別途支給)
新入社員モデル年収 330万円(月給19.8万円+残業代)
【調理学校・物流職】
大卒・短大卒・専門卒月給 19.4万円(残業代別途支給)
【総合職(本部スタッフ)】
大卒月給 19.4万円(残業代別途支給)
短大卒・専門卒月給 17.8万円(残業代別途支給) 

おいちょっと待て!なんだよこの残業代別途支給って。明らかにこれ事件発覚後に改ざんしたってことじゃないのか。キャッシュも時間によってどんどん変わっていくだろうけど、たぶんどこかのサーバーに残り続けるだろう。しかし19.8千円残業代別途支給といざ入社説明会で伝えるという「時間外(労働が)80時間に満たない場合、不足分を控除するため最低支給額は12万3200円」の但し書きの相違は大きな問題だと思う。残業代別途支給とうたっていて実はそれがコミであるというのは虚偽ではないかということになる。
いくら景気が悪くなったからといってこれはないだろう。明らかな違法行為じゃないかとも思う。もっともこの会社はずっとこんな調子で社員に過酷な労働強いてきたんだろう。だからこそ1971年創業の会社が30数年で売上約900億、店舗数約940店舗を有する上場会社に成り上がったということでしょう。思えば庄やとかやるき茶屋はけっこう利用したものな〜。
でも上場企業になったら、こういうやり方してはいけないと思うよ。やっぱりコンプライアンスの世の中。大企業は社会的責任を問われるのだから。とりあえず大庄さんはもっと叩かれるべきだろうな。採用時の虚偽、月80時間もの残業を当然とする社風、そういうの基本的な部分において。
しかし月80時間の残業か、こういう世の中だとほとんどサービス残業とかでこういう過酷な労働強いられることが当たり前に行われているのだろうとも思う。朝日の記事中にも日本労働弁護団常任幹事棗一郎弁護士の談話が最後に載っている。

近年の「派遣切り」や「人減らし」で一人ひとりが担う業務量が増えたことにより、多くの労働者に残業が重くのしかかっている。企業が強気に出て、社員に過酷な残業を命じるケースも目立ち、特に小売業やサービス業でその傾向が強い。「残業は必要な時に限り、最小限度で命じることができるもの。恒常的な残業が当然とされていること自体がおかしい」

たしかにそうなんだろうね。不景気で人減らしに加速がかかっている。業績を守るためには経費削減。一番の削減策は人件費だ。とはいえ会社回すためにはそこそこの員数は必要。となれば残った人員におはちが回る。まあ普通に考えてもそういうことなんだろう。
自身の経験でいえば、月100時間以上の残業とかもけっこうやってきた。最初に入った本屋は大学で商売してたから、新学期の教科書販売時期は超がつく繁忙時期。朝9時から夜8時、9時なんていうのが2〜3ヶ月続いたもんだ。まあ若かったからできたんだろうな。後初めての仕事だったから、仕事ってそういうものみたいな感じでもあった。すれてなかったんだな。でもきちんと残業代出たよ。春先の給料につけちゃうと社会保険とかあがるからって、夏に一括でもらっていたようにも思う。気分としてはボーナスが2回出るようなもんだったかな。
後、30代の半ばにある出版社で営業責任者やっているとき。これはもう残業とかいうレベルじゃなかった。一番酷い時は、朝から晩まで外回り、会社戻ると会議や打ち合わせ、深夜に事務処理の繰り返しとかが一年くらい続いたかな。週に1〜2回会社泊まったり、明け方サウナ行ったりを繰り返したっけ。でもやっぱりこういうのは続かない。体壊す前にやめちゃったけど。
仕事を続けていくと、ある時期には滅茶苦茶仕事が集中してこなさなくてはいけないことがある。本人的にも仕事が一番面白くなるし、ある意味仕事を回す、会社を回す醍醐味みたいな部分もあるにはある。そういう時の残業とかってけっこう苦もなくこなせるものだ。でもそれを果てしなく会社都合で強いてはいけないんだと思う。企業も社会的な存在なんだから。
今秋以降の世界同時不況、ある意味恐慌前夜みたいな状況にあって、毎日派遣切り、雇い止めとかのニュースが連日流されている。いずれ派遣やパートだけでなく正社員にもリストラの波が押し寄せる。そういうご時勢のなかで社員を酷使する企業を当然視するような風潮だけはとどめないといけないと思う。
大庄さんもこの際だから雇用を改めてみたらどうだろう。残業を当然視する社風を改めて、とりあえず最低支給額12万3200円でいいから、今どんどん首切られている派遣やパートさんをどんどん社員化する。残業はなし。労働採算性は低くなり、利益を圧迫するかもしれない。すでにいる社員からはノー残業で収入下がるという不満もあるだろう。でもそうやってそれぞれがちょっとづつ損してでもやらないとワークシェアリングができないとも思う。崩れた企業イメージをアップさせるにはそのくらいやらんと。
そういえばおそらく大庄とはシェア争いしているだろうワタミグループは積極的に雇用を増やすみたいなことをどこかの記事でみたようにも思う。ワタミはライバルの敵失と今の雇用情勢の中でイメージアップをねらっているんだろうな。