- saitamacolabo
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今日はなぜメディアミックスに漫画家が細かく口出しするのか。 そしてなぜうざがられてしまうのかということを 解説してみたいと思います。 これは漫画家がキャラクター作りでなにをしてるのか… という解説にもなりますのでゼロから1を生み出すといわれる職業を 皆さんに少しでもご理解いただければと思います。 まず今のエンタメの流れから説明しますと どこも自社でIPを持ちたがります。 つまりアニメ制作会社、テレビ局、漫画配信会社、 ゲーム会社などがオリジナル作品を作って、自社で著作権を得たい訳です。 原作者という著作権者がいると グッズの販売、タイアップの相談、様々な企画で許諾が必要で なおかつ、そういった売り上げのほとんどを原作者、 出版社が絡む作品ならば出版社も 持っていくことになります。 ですから、動きやすく、かつ会社の売り上げを伸ばせるため 自社IP(ザックリいうと著作権)が欲しいのです。 実際にやってる例は多々ありますが、失敗も多いので特に話題にもなりません。 キャラを立たせて、物語を紡げないとどんなコンテンツも失敗します。 漫画家もそうです。この2つがちゃんとしてないと ヒット作にならない。 なので、ヒット作に乗っかるというのは リスクもないですし、楽です。 著作権者にお金を払って許諾を得れば 魅力的なキャラとストーリーを使えるわけです。 ただこの著作権の使用料にも今後変えていかなきゃいけない 要素があるので、そこはまた次回… ここで「魅力的なキャラとストーリー」と書きましたが 実際作るのは大変です。 ちょっと、ダメな例を挙げて心苦しいのですが わかりやすいので解説します。 とある有名俳優さんのドラマがありましてそのストーリーが 昔バンドをやってたけど、挫折して、今は家業の病院を継いで 医者になった主人公。けれど夜な夜な昔のバンド仲間と 音楽バーに集まって語り合ってる… というものでした。 ああ!これはダメだと思いました。 まず、夢破れて音楽を諦めた人のほとんどが 音楽自体を避けるようになります。 もちろん例外もありますが、大抵、諦めた夢にはもう 近づきたくない。 漫画家も漫画家で成功するのを諦めて 筆を折った人は、漫画を見なくなることがほとんどです。 なのに、昔のバンド仲間と音楽を語ってる… これちょっと、俳優さんがかっこ悪くなってる… セオリーとは違うキャラ設定を入れると そこに説得力を持たせるためのたくさんのエピソードが 必要になってきます。 なので、音楽を諦めた人は日常に音楽のない生活を送らせた方が その先のストーリー展開が楽なのです。 で、医者です。 家業が病院なら、バンドを始めるのも難しいです。 両親とどんな確執があったんだろう… 勘当同然で音楽の道を目指したんじゃないのか どうやって戻ったんだろう。勉強は? などなどたくさんの裏設定を考えたのですが ドラマに答えはなく、結果的に 「ああ…俳優さんに白衣を着せたかったんだ」 という想いに至りました。 このように、漫画家は一人のキャラが物語を紡ぎ始める スタートラインに立つまで 膨大な生い立ちを作り込んで、スタートラインに立たせます。 生まれた家柄、両親の性格、子供の頃のエピソード どうかすると本一冊書けるほど用意する時もあります。 それがキャラクター設定であり、キャラの履歴書です。 セリフ一つにダメ出しをする 原作者がうざがられる理由にこれがあるのですが 状況は全く違うことをわかってほしいです。 「このキャラならこういうセリフを言うだろう」の許容範囲を 逸脱し始めるとやはり、口出ししたくなります。 セリフが違うのではなくてキャラが違ってくるからです。 こういうことが何回も続くと 「とにかく一言一句違わないで。そうすれば楽だから」 ってことになるんです。 ここには「原作とちょっとでも変えたら許さない」 という意志はないんです。 自分の原稿もあるし、監修にも時間がかかる上に わかり合えない…誰だって揉めたくはないですしね。 クリエーターには尊敬の念と信頼があるので 脚本家にもそういう気持ちで臨みますが こういう「これは違う、これも違う」ということが 続くと、 「ああこの人は、うちの子の育て方が理解できないのだ。 だったらマニュアル通りにやってくれれば 間違いないって伝えよう」ってことになるのです。 さらには「自分がやったほうが早い」と… このキャラ作りのそもそもの工程や作業、想いなどが 伝わっていなければ、ただ「口うるさい」と 言われてしまいます。 こういうことは、編集部を介した伝言ゲームでは伝わりません。 みんなが顔を突き合わせて、定期的に想いのすり合わせを する必要があるのです。 ああそうだったのだ、そういうことなんだっていう 「納得」が生まれます。 さらにこうしたすり合わせが互いの仕事に対する 「リスペクト」に繋がります。 (もうちょっとツリーで続きます)
2024-02-12 10:53:15原作者が生んだ子供の子育ての苦労話、想い、 大事な子供を預けるにあたって やってほしいこと、やっちゃいけないこと こういうことを話す場が必要です。 納得がリスペクトに変わっていくと 仕上がる作品も違ってくるわけです。 魅力的なキャラとストーリーを紡げる人と それができなくて乗っかる人との間には 元々理解し得ない大きな溝があるんです。 もちろん、この話し合いの場で、乗っかる人たちも すべての打算を吐き出すべきです。 この俳優をこう使いたい、こう売りたい、 こう魅せたいなど… 耳を傾けない漫画家はいないと思います。 ゼロから1を作り、それが1以上になるメディアミックス。 許諾した以上は本当に楽しみなんですから。 是非、原作者には監修料というのを発生させて 共にいいものを作るチームづくりを目指してもらいたいです。 長々と書きましたがいかがでしょうか。 仕事にトラブルはつきものです。 トラブルの種は芽が小さいうちに都度都度摘み取った方がいい。 大きくなってしまうと手がつけれないことがほとんどです。 わたしもゲーム化の時にどんどん違う流れになって これは言わなければ!と思い 制作チーム全員を呼んで、話し合いの場を設けました。 そこで、たくさんのリスペクトが生まれました。 「話せばわかる」ということだと思います。 編集部の方も原作者の意向をただ伝えるのではなく 心のケアをして、最大の味方でいつつも バランスを持って、時には話し合いのセッティングを していって欲しいと思います。 漫画家を取り巻く環境が少しでも改善されますように…
2024-02-12 10:53:16@shinjomayu 夢破れたバンドマンの設定のお話‥共感しかありません クラシックピアノを30年近くやりましたが色々あって辞めてからはピアノを触れなくなりました。あんなに好きだった演奏会にも行けなくなりました。こう、心がすごく苦しいんですよね、なんか。よく説明できないけど、避けている自分がいます
2024-02-12 14:21:52@sougiya72 ホントそうですよね。夢破れた悔しい気持ちがピアノによって呼び起こされる。活躍してるピアニストを見て、自分には才能がなかったって苦しくなる。投稿者さんのお気持ち、このポストだけでも伝わります。これが共感力。いいキャラにはそれが標準装備されてます。
2024-02-12 15:02:49@shinjomayu めちゃくちゃわかりやすい! まゆたんは直感鋭いのに論理的という鬼に金棒ー
2024-02-12 11:33:44@fukuhara_ystd もっと深く解説したかったんですが なにせ長文になってしまって😅これで伝わると嬉しい‼️☺️
2024-02-12 12:05:08@shinjomayu バンドマンの話とてもしっくり来ました。あと「白衣着せたいだけ」もあるあるだよなーと。 原作者が口を出したくなる理由をもっと認知させて行く必要があると思いました。
2024-02-12 17:30:22@shinjomayu はじめまして。 読ませる書き込み、ありがとうございます。 夢破れた大人の過去とそれに連なる現在の話は相当練り込みが必要ですよね。 自分も夢を捨てた側なのでもう見向きもしたくない話については唸らされます
2024-02-12 16:59:32@shinjomayu ページをめくって新しい人生を始めるだけでは必ずしも十分ではありません。 時には本も変えなければなりません!!
2024-02-12 17:57:11@shinjomayu これ、大小ありますが、お仕事全般に言える事かなと。 営業、企画、設計、工場、現場。 どこのプロセスも必死。それゆえに、一体感がない案件は殆ど失敗します。最低でも、誰かが割りを食ってまた再発。 なので、担当者が一堂に会してのつかみ合い上等なミーティングが大切だと思いますね。
2024-02-12 17:17:03@shinjomayu 製品設計の世界でも似ていて、仕様から作り上げて商品の形にすると、あーした方が良い、なんでこーしなかった?とか。そういう輩をコントロールするとこまでが仕事みたいな変な世界。
2024-02-12 14:27:20@shinjomayu @sougiya72 思い当たります。私も漫画家になるのをあきらめて以降、持っていた雑誌単行本を捨てて、よほど好きな作品でなければ見ることはありません。 今貴重な単行本もあったので、惜しかったなあと思うことはありますがw
2024-02-12 17:46:06@shinjomayu 設定にはストーリーの根幹になる設定とそうでない設定があってでもそれをわかってるの作者だけなので、メディアミックスの際はプロデューサー側と作者の話し合いが大切ってことかな? 作者がこの設定にはこういう意図があります、って伝えればじゃあそれに抵触しないような改変にしようってなるし
2024-02-12 15:28:14このメディア側の言い分には聞き覚えがある。新聞の科学欄で専門分野の技術を取り上げたいというので情報提供したが、相手の理解に不安があったので「原稿ができたら見せて欲しい」と言ったら、報道の自由があるのでそれはできないと断られたことがあるんだよね。問題の根幹は同じところにあるようだ。 twitter.com/chitokusenchi/…
2024-02-10 00:12:44辻村深月さんの小説『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」のドラマ化企画を講談社側が一方的に中止させたとしてNHKが訴えた裁判が昔ありました……。完膚なきまでにNHKが敗訴しましたが。 pic.twitter.com/Yg53ia6Wlb
2024-02-04 16:47:33科学者・研究者から、よく「相手のストーリーに合うコメントを執拗に要求された」とか「話したことと違う内容の記事になった」という話を聞く。こういうのも著作者人格権と同様に保護してほしいものだ。人生かけて追求している知の結晶をぞんざいに扱われたら、そりゃ怒る人もいるよ。
2024-02-10 00:16:43「・・まあそういう可能性もなくはないですね」みたいに言うと「じゃあそうなんですね」とか、言い切って欲しい、みたいに言われたこともあるけど、そういって確認を求められたのは、まだマシだったんだなあとしか言いようがない。
2024-02-10 00:19:02ああ、ちなみにサイエンス・ゼロのスタジオ解説に出たときは、ちゃんとしてました。内容全般にかなりコミットさせてもらえたし、まだ出来てないことを変に煽るようなインパクト主義もなかった。科学解説をずっとやってる人たちだったからだろうなと思う。
2024-02-10 00:28:47