ストーリー第9回目 シナリオライティングの参考書は何を読むべきか?
0.はーい、chimumuだよ。今日はシナリオの技術論じゃなくて、シナリオの参考書の話をするよ。
2010-05-08 00:31:351.演出はよく分からないが、ことシナリオに関しては、ぐあーと勉強するとライティングの能力はかなり飛躍すると思う。個人差はあるが、毎日走り込んでいくとマラソンのタイムが上がっていくのと一緒だ。
2010-05-08 00:32:472.シナリオは、映画をよく観て受験勉強のようにガッついて勉強すれば、技術力は上がる。とっちらかったエピソードの断片でしかなかったものをちゃんとストーリーの体をなしているものにしていくことができるようになる。
2010-05-08 00:33:343.つまり受験勉強のようにシナリオを勉強すればいいぞ、と僕は言っているわけであるが、その際にどの参考書を選ぶかというのは、その後の結構大きな差になって現れる、と思っておりまする。
2010-05-08 00:34:145.まずは「神話の構造」(クリストファー・ボグラー著)原題は Writer's Journey だ。実はこの本が出る前にジョーゼフ・キャンベルという人の神話理論があり、これがジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」に大きな影響を与えたと言われている。
2010-05-08 00:35:516.ジョーゼフ・キャンベルの神話の理論に基づいてジョージ・ルーカスがスター・ウォーズのエピソードⅣを書いたことで、この理論(神話研究とユング心理学がベース)が有名になり、クリストファー・ボグラーがこれを更に発展させて実用書にまとめたのが本書である。
2010-05-08 00:36:567.野球のダイヤモンドでストーリーを説明する僕のやり方は、この「神話の法則」で書かれていることを多少アレンジしたものである。物語は“行って帰る”ことだという構造もしっかり解説されている。
2010-05-08 00:38:058.『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』(シド・フィールド著)。これは以前、宝島別冊『シナリオ入門』にエッセンスが収められて、当時映画関係者の間で話題になったが、この度全訳がでた。が、12章までをじっくり読めばいいだろう。
2010-05-08 00:39:319.次が本命だ「ハリウッド・リライティング・バイブル」(リンダ・シーガー著)。原題は Making a Good Script Great といい、世界の映画学校でもっとも使われている教科書だと聞いたことがある。
2010-05-08 00:40:3510.特にパート1をじっくり読んだら、あとは読み飛ばせばいい。リンダ・シーガーの著書は『アカデミー賞を獲る脚本術』も翻訳されているが、そっちに手を出さないで、こちらを買うほうが全然よい。
2010-05-08 00:41:1711.次からは、シナリオの本を離れるが、物語というものを知るためには非常に役立つものだ。
2010-05-08 00:42:2212.「物語の体操」(大塚英志著)は、小説(ライトノベル)を書くためにはどんなトレーニングをすればいいかのかを解説しながら、物語の本質にアプローチするという非常にアクロバティックな物語論で、素晴らしい。
2010-05-08 00:45:1413.僕はよく“ストーリーの運動神経”なんて言葉を使うけれど、実はこの本の影響もよるものだ。この本の中にあるトレーニング方法もアレンジして、映像学校で使っている。
2010-05-08 00:45:5014.「物語の体操』の前提として同じ大塚英志の「定本 物語消費論」も非常に役に立つ。物語を考えることで、現代社会は何かということを考察するという野心的な試みだ。大塚英志の物語論は実用書の体裁をとりながらも、私とは何か、現代社会とは何かに収斂していき、興味深い。
2010-05-08 00:46:1915.そして余裕があったら『物語の作り方』(ガルシア・マルケス)も、実用書というよりは物語作成のドキュメンタリーとして、参考になるので読んで欲しい。ここから学ぶべきはストーリーをどのように話し合い、正しい方向に導いていくべきかという話し合いの技術だ。プロデューサーの必読書。
2010-05-08 00:47:4316.著者のガルシア・マルケスはコロンビアが生んだ偉大な小説家だが、若い頃は映画を志しローマの映画実験センター(国立映画学校)で学んだ。本書には、ガルシア・マルケスが中心としたグループがその場でストーリーを組み立てていく様がスリリングに綴られている。
2010-05-08 00:48:1517.では、逆に知名度が高いのだが、手を出さない方がいいと思うものも挙げておく。ちょっと怖いけど。
2010-05-08 00:48:3318.「シナリオの基礎技術」(新井一著)は非常に有名で、映画学校にいくと推薦図書として必ず置いてあるのを見かけるが、僕に言わせると手を出さない方が無難な本だ。技術の詳しい解説書にはなっているが、実用書としての使い勝手は悪い。簡単にいうとわかりにくい本である。
2010-05-08 00:49:5919.あと、すべてのシナリオの参考書に目を通したわけではないが、簡単なことをわざとわかりにくく解説しているものが目立つ。以上の中でどれか2冊ということであれば「神話の法則」と「ハリウッド・リライティングバイブル」を推す。さらにもう1冊であれば「物語の体操」。
2010-05-08 00:50:4420.ただ、もっと言えば、まったく読まなくてもよい。僕が今まで述べてきたこと、これから述べることは、これらのエッセンスをリミックスしてブレイクダウンし、極限までわかりやすくしている。これだけ頭に叩き込んで、あとは映画を観まくって、ガリガリ書いていけば必ず書けると思う。
2010-05-08 00:56:1921.あとは何を書くかだ。それは各自が決めることだ。どんな映画を観てきたのか、どんな本を読んできたのか、どんな人間とつきあってきたのか、どんな女にフラれたのか、すべてが影響する。それは僕の関与するところじゃない。
2010-05-08 00:59:4422.最後にシナリオを書くときのアプリだが、これは圧倒的にO's Editor2が優れている。残念ながらWin版しかないが、MacにWindowsのOSを乗せてでも使うべきソフトだ。値段も2000円と安い! 製作者の小沼に10000円奢ってもいいくらいだ(実際は奢らない)。
2010-05-08 01:01:1323.O's Editor2はシェアウエア。1ヶ月の無料試用期間がありフル機能で使えるようだ。http://ospage.jp/soft/oseditor2/oseditor2.html
2010-05-08 01:05:23榎本憲男 小説家 映画監督 。小説『エアー2.0』(小学館刊) 『真行寺弘道シリーズ』(中央公論新社)映画『見えないほどの遠くの空を』『森のカフェ』など