卒論は「論文を書く練習」、修論は「研究をする練習」、博論は「研究者になる練習」
前に何度か「卒論は『論文を書く練習』、修論は『研究をする練習』、博論は『研究者になる練習』」と呟いたけど、それぞれについてちょっと問わず語りしてみる。
2011-08-09 09:26:08卒論は「論文を書く練習」。大抵の学科では内容よりも「卒論を書き上げた」という事実が重視される。だから、実験・調査・製作そのものよりも、卒論という名の「論文」をアカデミックなスタンダードに合わせて書くことを最優先にするべき。
2011-08-09 09:28:44卒論で生まれて初めて論文を書く学生が注意すべき点:1.IMRAD方式を身に付ける。目的を語り、それを達成するための方法を示し、実施した結果と顛末を綴り、それが妥当な帰結か否かを傍証をもとに論じる。2.目次から先に書く。雑誌の編集も内容取材の前に目次から作り始めて構想を練るのだ。
2011-08-09 09:34:27卒論生が実験・調査・製作に臨んで注意すべき点:1.IMRADストーリーに沿ったこと「だけ」をまずする。計画外のことに手を出すとまとまらない。脱線は余裕ができてから。2.指導教員の要求通りの手順を守る。さすがに卒論生には教員も安全牌を回すものなので、とりあえずやってみよう。
2011-08-09 09:38:55卒論を書く段階で学生が注意すべき点:1.一つ章を書くたびに教員か先輩に見せて意見を求める。未経験の学生が書く論文の大半は、大抵最低限の約束事も守れてない。締切間際で手遅れになる前に、経験者にその都度直して貰おう。2.感想文を書くのは×。論文は「科学的事実の報告書」です。
2011-08-09 09:45:20卒論発表に際して学生が注意すべき点:1.やってないこと・わからないことは正直に言う。「研究」という営為においては、それらは「また後で追加でやれば良いこと」。それを認めるのは恥ではない。2.事実誤認にはきちんと反論する。たとえ相手が学科長でも、研究の世界では事実の正しさが優先。
2011-08-09 09:50:50卒論全体を通じて学生が体得すべきこと:1.研究という営為が、「研究して得られた知見の提唱→批判→反駁→再批判→再反駁→再々批判→…」というサイクルから成る、ということ。そのサイクルを経て、人類は徐々に真実に近付く。
2011-08-09 09:55:15卒論全体を通じて学生が体得すべきこと:2.批判も反駁も研究内容に対して行われる。大事なことは人類が真実に近付くこと。個々人の優劣や好悪を云々することではない。あなたの卒論が批判されても、それは知見や学説への批判であって、あなた個人への批判ではない。それがアカデミズムの慣習。
2011-08-09 10:06:19朝の続き。修論は「研究をする練習」。卒論に比べて、研究としての完成度がある程度問われるようになり、不受理や再審査も時々聞く。また、本人が進学した際には1本目の、卒業していくなら引き継いだ人が投稿論文に仕上げるケースも多いので、ある程度投稿論文1本分に準じる「質」が求められる。
2011-08-09 14:16:30修士院生が研究を立案する際に注意すべき点:1.文献調査を気合入れてやる。将来的に投稿論文になる可能性のある研究なので、「それもう他の誰かがやってるよ」というオチは許されない。2.結果の出そうな計画を立てる。修論は結果が求められるので、コケると留年の危険性が。教員とよく相談を。
2011-08-09 14:24:49修士院生が実験・調査・製作に臨んで留意すべき点:1.卒論の反省を必ず生かす。これ大事。修論になった途端に初心に返るべからず。2.気がかりな点は絶対に放置しない。投稿論文は、本人が気がかりな点があると査読が通らない。必ず気がかりな点は精査し改善すること。後を引き継ぐ人のためにも。
2011-08-09 14:47:40修論を書く際に学生が注意すべき点:1.IMRAD形式中で、イントロで提起した問題は必ず結論で落とし前をつける。これがないとストーリーが破綻する。2.できれば仮説(後付け可)を設定し、検証した体裁にする。これなら傍から見て「一応でも結果が出た」風になる。投稿論文移行時にも重要。
2011-08-09 14:51:14修論発表に臨んで注意すべき点:1.事前に想定問答集を用意する。修論からは結果が出たか出なかったかを問われ始めるので、ツッコミも激化する。ある程度完成形を見て、予想される質問を絞るべし。2.立ち往生しても黙ってはいけない。卒論と同じだが、質疑に答えられないと再審査になることもある。
2011-08-09 14:52:49修論全体を通じて学生が体得すべきこと:1.主体的に一つの物事の計画を定めて実行するということの面倒臭さを知る。これがわかれば、民間でもアカデミアでもやっていける。2.オリジナリティを出すということの難しさを知る。これは自分でオリジナリティを出そうと頑張ってみないとわからない。
2011-08-09 14:54:35最後。博論は「研究者をやる練習」。ひとたび学位が授与されたらもう一人前。どこに行っても即戦力とみなされる立場。だから、博論を出した瞬間に「私は一人前の研究者です」と言えるだけの能力が身についているように、博論の研究全体を進め、研鑽を積んでいかなければならない。
2011-08-09 14:58:31博士院生が研究を立案する際に注意すべき点:1.最低でも3つ以上の独立した研究計画を立てる。「3報アクセプト」が審査要件のところは多い。1つは修論の発展版で良いが、他はテーマを膨らませて。2.自分が世界で唯一のエキスパートになれるネタを探す。自分がトップに立てるテーマ探しが重要。
2011-08-09 15:02:07博士院生が実験・調査・製作をする際に実行すべき点:1.絶対に1つは共同研究を含める。修了後の進路の選択肢(特に学振PDなど)を増やし、研究の幅を広げる意味からも自分の足で共同研究を取ってくること。学生相手なら研修目的で門戸を広く開いているところ(研究所など)はかなり多い。
2011-08-09 15:03:53博士院生が実験・調査・製作をする際に実行すべき点:2.あるテーマで投稿論文を書きながら、別のテーマの研究を進める。これが出来るようにならないと、修了後にPD生活になった時に研究生活が回らない。同時に2つ以上の研究を進めるのはまだ大変なので、時間差をつける習慣をここで身につける。
2011-08-09 15:05:38博士院生が実験・調査・製作をする際に実行すべき点:3.どんどん学会に出て仲良しの研究者を増やす。最後の1年間になってから就職先探しでドタバタするのはしんどい。D1のうちから外部に知り合いを沢山作って、D3になったら行き先を斡旋してくれそうな人を探しておくべし。
2011-08-09 15:07:12博士院生が実験・調査・製作をする際に実行すべき点:4.コントロール(対照)条件を意図的に(修論時より)1つ以上増やす。陰/陽性対照が確保できずにコケる研究は数多い。そういう瑕疵は特に投稿論文を目指すケースでよく露見する。手馴れたやり方以外にももう一つ対照条件を設けるべし。
2011-08-09 15:09:40博論を書く際に実行すべき点:1.全体のストーリーをいの一番に思い描くこと。PHD comicsでもセシリアが注意されていた通り、博論はそれ自体が一冊の立派な本になることが求められている。だから、3つの投稿論文をまとめるなら全てに共通する大テーマを必ず決める(無理矢理作る)べし。
2011-08-09 15:11:05博論を書く際に実行すべき点:2.全体の「イントロ⇔考察&結論」の呼応関係が最優先で、個々の章立ての「イントロ⇔考察&結論」の呼応関係に引っ張られないこと。各章ごとのストーリーをrigidに固めてしまうと、逆に全体がつぎはぎに見えてしまうことも。全体がスムーズに見える方を優先。
2011-08-09 15:22:13博論発表の際に注意すべき点:副査は自分で呼ぶor推薦する。主査は大抵指導教員だが、副査は自由度があることが多い。ここで自分に好意的な副査を呼べる程度には顔が広くなっていないと、学位取得後も苦労する。博士の3~4年間は、自分に好意的な副査を見つけるための準備期間でもあるのだ。
2011-08-09 15:25:20博士課程全体を通じて学生が体得すべき点:1.自ら人脈を作る能力。良くも悪くもアカデミアはコネ社会。共同研究も交友関係がないと始まらない。人見知りなんてしてる場合じゃない。D1ぐらいはボスにくっついていけば良いけれども、2年目以降は自分でバンバン異分野にも顔を出して行くべし。
2011-08-09 15:27:46