イベロアメリカ金のビスナガ「El ladrón de perros」*マラガ映画祭2025 ⑩ ― 2025年04月18日 16:28
イベロアメリカ映画部門の金のビスナガ受賞作「El ladrón de perros」

★もう一つの金のビスナガ作品賞に選ばれたビンコ・トミシックの「El ladrón de perros / The Dog Thief」は、2024年6月開催のトライベッカ映画祭でプレミアされるや、グアダラハラ、ミュンヘン、AFIラテンアメリカ、リオデジャネイロ、トルコのアンタルヤ・ゴールデン・オレンジ、インド、マル・デル・プラタ各映画祭、翌年にはスウェーデンのヨーテボリ、そしてマラガにやってきた。共同監督での長編はあるが本作がソロデビュー作品である。監督紹介は後述しますが、まずは作品紹介から。
*マラガ映画祭2025授賞式の記事は、コチラ⇒2025年03月28日
「El ladrón de perros / The Dog Thief」
製作:Color Monster / Zafiro Cinema / Calamar Cine / Easy Riders Films
監督:ビンコ・トミシック
脚本:ビンコ・トミシック、サム・ハイライ
撮影:セルヒオ・アームストロング
音楽:ウィサム・ホジェイ
編集:ウルスラ・バルバ・ホプフナー
製作者:アルバロ・マンサノ・サンブラナ、エダー・カンポス、マティアス・デ・ブルギニョンBourguignon、ガブリエラ・メーレMaire、(エグゼクティブ)ナディア・トゥリンチェフ、フランチェスカ・ノイア・ファン・デル・シュタイ、ほか
データ:製作国ボリビア=チリ=メキシコ=フランス=イタリア、2024年、スペイン語、ドラマ、90分、撮影ボリビアのラパス、配給販売 Luxbox、公開チリ2024年8月、ボリビア同年10月、他
映画祭・受賞歴:トライベッカ映画祭2024ワールドプレミア、グアダラハラ映画祭イベロアメリカ部門(アルフレッド・カストロが生涯功労賞、フランクリン・アロがメンション受賞)、ミュンヘン映画祭シネビジョン・コンペ、AFIラテンアメリカ映画祭、リオデジャネイロ映画祭、アンタルヤ・ゴールデン・オレンジ映画祭(フランクリン・アロ主演男優賞)、インド映画祭、マル・デル・プラタ映画祭、ケララ映画祭、以下2025年、ヨーテボリ映画祭、マラガ映画祭イベロアメリカ映画(金のビスナガ作品賞)、マイアミ映画祭(マリンバス賞ノミネート)、モスクワ映画祭、フォルケ賞2024ラテンアメリカ映画部門ノミネート、イベロアメリカ・プラチナ賞2025オペラ・プリマ賞&価値ある映画と教育プラチナ賞ノミネート、第20回サンティアゴ映画祭SANFIC(フランクリン・アロ男優賞)、ハバナ映画祭脚本賞、リマ映画祭審査員特別賞、プンタ・デル・エステ映画祭(ウルグアイ)監督賞受賞、他

(監督も出席したボリビア公開イベント、2024年10月15日)
キャスト:アルフレッド・カストロ(セニョール・ノボア)、フランクリン・アロ・ワスコ(マルティン)、テレサ・ルイス(セニョリータ・アンドレア)、マリア・ルケ(グラディス)、フリオ・セサル・アルタミラノ(ソンブラス)、ニノン・ダバロス(アンブロシア夫人)、クレベル・アロ(モネダス)、他
ストーリー:15歳の孤児マルティンは首都ラパスの広場で靴磨きをして働いている。先住民であることを隠すため毛糸の帽子を被っている。差別されないためである。亡くなった母親の友人グラディスの家で暮らしている。彼の上得意であるセニョール・ノボアは独り身の洋服仕立屋で、美しいジャーマンシェパードが唯一の友である。マルティンは彼を父親ではないかと思いはじめている。マルティンは彼に近づくため予想もしない行動に出る。

(ジャーマンシェパードを連れて靴磨きに来るセニョール・ノボア)

(セニョール・ノボアとマルティン)

(ジャーマンシェパードとマルティン)
★監督紹介:ビンコ・トミシック・サリナス、チリの監督、脚本家、製作者。2014年、初短編「Durmiente」(アルゼンチン、16分)が、フィクナム、グアダラハラ、カリ、サンパウロ、バンクーバー、各映画祭に出品される。同年制作会社「Calamar Cine」を設立、2016年、フランシスコ・エビアと共同監督した「El fumigador / Cockroach」(チリ=アルゼンチン、80分)が、第20回PÖFFタリン・ブラックナイツでプレミアされ、サンティアゴ映画祭SANFIC 2016で「ベスト・ナショナル・フィルム」を受賞する。2018年、短編「Aicha」(アルゼンチン=ボリビア=チリ、11分)は、ビアリッツ、グアダラハラ、シカゴ、ロカルノアカデミー2019で上映される。2024年「El ladrón de perros」で長編ソロデビューを果たした。本作はカンヌのシネフォンダシオン・レジデンシアとベネチアのビエンナーレ・カレッジ・シネマによって企画されました。短編は英語字幕入りで見ることができます。

(監督とフランクリン・アロ、グアダラハラ映画祭2024)

(「El fumigador / Cockroach」)
★キャスト紹介:ボリビアのラパスを舞台に監督と同胞である受賞歴を誇るアルフレッド・カストロとオーディションで起用されたボリビアのフランクリン・アロを軸に展開します。カストロはチリを離れてスペインの国籍を取り二重国籍(キャリア紹介は以下)。アロは12歳のときから実際に靴磨きをして働いていた。先住民は学校で差別される。何とか自分の人生を変えたいと考えていたときオーディションが開催されることを聞いて応募した。今は靴磨きを恥じていないし誇りを持つことができたが変えるのは簡単ではないと、マラガ映画祭のインタビューに答えていた。
*アルフレッド・カストロのキャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2024年05月23日

(フランクリン・アロ)

(時々学校にも行くマルティン)
★脇を固めるのはメキシコの女優テレサ・ルイス(ナタリア・ベルスタインの『ざわめき』)、マリア・ルケ(マテオ・ヒルの『ブラックソーン』)、アンブロシア夫人を演じるのはボリビアの女優ニノン・ダバロス、そのほかは本作でデビューしている。アルフレッド・カストロとテレサ・ルイスは、キャリア紹介をしています。
*テレサ・ルイスのキャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2023年01月28日
★スタッフ紹介:撮影監督のセルヒオ・アームストロングは、チリのパブロ・ララインのピノチェト三部作(08~12)(『トニー・マネロ』、『ポスト・モーテム』、『ノー No』)ほか、『ザ・クラブ』(15)、『ネルーダ大いなる愛の逃亡者』(16、ペドロ・シエナ賞)、『エマ、愛の罠』(19)などララインの代表作を手掛けている。また金獅子賞をラテンアメリカに初めてもたらしたロレンソ・ビガスとタッグを組んだ『彼方から/フロム・アファー』(15)、ベネズエラ出身だがメキシコに移住して撮った『箱』(21)などを手掛けている。他にチリを脱出してアメリカで製作しているセバスティアン・シルバやマイテ・アルベルディの『イン・ハー・プレイス』(24)も撮っている。
★音楽監督ウィサム・ホジェイは、レバノン出身だがフランスを拠点に活動している映画音楽の作曲家。カミラ・ベルトランのスリラー「Mi bestia」(24、コロンビア=フランス)を担当、映画はシッチェス映画祭イベロアメリカ映画賞を受賞している。製作者のアルバロ・マンサノ・サンブラナは、「映画はラテンアメリカの、またはボリビアの現実を反映している。資金不足で映画製作は難しいが、この映画の成功で力を得た」とマラガで語っている。

(アルバロ・マンサノとフランクリン・アロ、マラガ映画祭2025、プレス会見にて)
エバ・リベルタードの「Sorda」*マラガ映画祭2025 ⑨ ― 2025年04月14日 13:24
金のビスナガ「Sorda」は監督エバと主演者ミリアム姉妹の二人三脚

(エバ・リベルタードとミリアム・ガルロ姉妹)
★季節が往ったり来たりで心身共に疲れます。第78回カンヌ映画祭の名誉パルムドールにロバート・デ・ニーロ受賞のニュース、審査委員長がジュリエット・ビノシュとアナウンスされたきり、他のメンバーは未発表です。昨年のグレタ・ガーウィグに続いて今年も女性が選ばれましたが、最初の女性委員長を務めたのが2014年のジェーン・カンピオン、ビノシュが3人めというから呆れます。コンペティション部門ノミネートもこれからです。トランプ関税は映画界も無傷というわけにいかないし、我が国もトランプに笑顔を向けながらしぶとく抵抗してもらいたい。
★マラガ映画祭作品賞金のビスナガ受賞作「Sorda」は、監督にエバ・リベルタード、聴覚障害者の母親役に実妹のミリアム・ガルロが扮したドラマです。ガルロ自身7歳のとき薬害で聴力を失っており、アイディア誕生の経緯などもドラマチックのようです。ヌリア・ムニョスと共同監督した2021年発表の同タイトルの短編が下敷きになっており、第25回マラガ映画祭2022短編部門の銀のビスナガ観客賞を受賞している。来年あたりの公開を期待して作品紹介をいたします。成功にはガルロのパートナー役を演じたアルバロ・セルバンテスの好演を上げる批評家が目につきましたが、二人揃って銀のビスナガを受賞しました。

(左から、ヌリア・ムニョス、ミリアム・ガルロ、エバ・リベルタード、マラガFF2022)

(短編「Sorda」のポスター)
「Sorda / Deaf」
製作:Distinto Films / Nexus CreaFilms / A Contracorriente Films / Diverso Films
協賛ICAA / RTVE / Movistar Plus+/ 7TV Región de Murcia
監督・脚本:エバ・リベルタード
助監督:ミゲル・ガゴ
撮影:ジナ・フェレール・ガルシア
音楽:アランサス・カジェハ(カリェハ)
編集:マルタ・ベラスコ
美術:アンナ・アウケル
録音:ウルコ・ガライ
キャスティング:イレネ・ロケ
衣装デザイン:デシレ・ギラオ、アンヘリカ・ムニョス
メイクアップ&ヘアー:メルセデス・カルセレン・ロペス、クリスティナ・ゴメス・マルキナ、ミリアム・サンチェス
プロダクションデザイン:エレナ・カサス、ゴレッティ・パジェス
製作者:ミリアム・ポルテ(Distinto Films)、ヌリア・ムニョス・オルティン(Nexus CreaFilms)、アドルフォ・ブランコ()、(エグゼクティブ)アマリア・ブランコ(A Contracorriente Films)他
データ:製作国スペイン、2025年、スペイン語、ドラマ、100分、撮影地ムルシア、2024年7月クランクイン6週間、公開スペイン4月4日、配給A Contracorriente Films
映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2025パノラマ部門観客賞、CICAEアートシネマ賞受賞、マラガ映画祭2025スペイン映画部門作品賞金のビスナガ、主演女優賞(ミリアム・ガルロ)、主演男優賞(アルバロ・セルバンテス)、観客賞、ASECAN賞(アンダルシア・シネマ・ライターズ、オペラ・プリマ部門)、Feroz Puerta Oscuraフェロス・プエルタ・オスクラ賞など受賞、D'A Film Festival(バルセロナ映画祭)正式出品
キャスト:ミリアム・ガルロ(アンヘラ)、アルバロ・セルバンテス(夫エクトル)、エレナ・イルレタ(アンヘラの母エルビラ)、ホアキン・ノタリオ(アンヘラの父フェデ)
ストーリー:聴覚障害者のアンヘラは陶芸工房で自立して働いている。一緒に暮らしている聴覚パートナーのエクトルは、手話を習得して聴覚障害者のコミュニティにも完全に溶け込んでいる。アンヘラは読唇術を学んで間もなくやってくる赤ちゃんを喜びに浸りながら待っているが、赤ん坊が到着すると彼女が努力して築き上げてきた世界のバランスが崩れはじめます。彼女をかつてのような障害者の地位に引きずり下ろし始める。自分と娘にとって何がよく、何がよくないかの決定を迫られる。自分の居場所が分からなくなった聴覚障害者の心の旅が語られる。


(ガルロ、リベルタード監督、セルバンテス、マラガFF 3月15日フォトコール)
★監督紹介:エバ・リベルタード、1978年、ムルシア州モリーナ・デ・セグラ生れ、監督、脚本家、戯曲家、マドリード・コンプルテンセ大学社会学科卒業。ヌリア・ムニョス・オルティンと共同監督したファンタジー「Nikolina」(20)で長編デビュー、ムニョスとのコンビで短編「Leo y Alex en plano siglo 21」(19、6分)や「Sorda」(21、18分)を撮る。後者はアバンカ映画祭、イベロアメリカン短編映画祭など国内外の映画祭の受賞歴多数、ゴヤ賞2023短編映画賞にノミネートされる。短編「Mentiste Amanda」(24、16分)を同じくヌリア・ムニョスと共同監督、メディナ・デル・カンポ映画祭作品賞受賞、ゴヤ賞2025短編映画部門の候補に選出されたがノミネートは逃した。他にTVミニシリーズ、SF「Heroes del Patrimonio」(18)、劇作家としてはコンプルテンセ大学、メキシコのケレタロ自治大学のような独立系の劇団のために執筆や演出を手掛けている。長編「Sorda」は単独で監督した第1作である。

(ヌリア・ムニョスと共同監督した短編「Mentiste Amanda」のポスター)

(共同監督ヌリア・ムニョスと)
★キャスト紹介:ミリアム・ガルロ、1983年、ムルシア州モリーナ・デ・セグラ生れ、映画、舞台女優、視覚芸術を専門とするアーティスト、コンテンポラリー・ダンサー、手話のスペシャリスト、フェミニスト活動家である。7歳のとき服用していた薬でほぼ聴力を失う。ミリアムによると両親が気づくのが遅れたため難聴が進行した由。マドリード・コンプルテンセ大学で美術を専攻、アート、創作の修士号を取得する。最初画家を目指したが、現在は演劇、映画の女優にシフトしている。4匹の犬と自宅の農地で鶏を飼っている。育てている鶏の卵以外は食べないベジタリアン、短編「Sorda」の舞台になった。短編、長編の「Sorda」のほか、「Nikolina」に出演している。

(飼い犬とくつろぐミリアム、ムルシアのモリーナ・デ・セグラの自宅にて)
★エクトル役のアルバロ・セルバンテス、1989年バルセロナ生れ、俳優、製作者。DVD発売やNetflix配信で観る機会があり認知度もそこそこあるように思えますが果たしてどうでしょう。当ブログでは出演した『1898:スペイン領フィリピン最後の日』などの作品紹介はしておりますが、セルバンテスの纏まったキャリア紹介はしていない。これからも活躍が期待できる俳優の一人としてアップします。ジェマ・ブラスコ監督の「La furia」で主演女優賞を受賞したアンヘラ・セルバンテスは実妹。今回揃って銀のビスナガのトロフィーを手にした。

(セルバンテス兄妹、マラガ映画祭2025、3月23日フォトコール)
★1995年、子役としてホアキン・オリストレルのTVシリーズ「Abuela de verano」でスタート、今年のマラガ映画祭ソナシネ部門の作品賞を受賞したイバン・モラレスの「Esmorza amb mi / Desayuna conmigo」まで数えると約60作に出演している。映画デビューはシルビア・ムントがマラガ映画祭2008銀のビスナガ監督賞を受賞した長編デビュー作「Pretextos」ですが、最初に字幕入りで見ることができたのは、『ザ・レイプ 秘密』の邦題でDVDが発売された「El juego del ahorcada」でした。かなりショッキングな邦題でしたが、オリジナルも「処刑ごっこ」と穏やかではなかった。
*『1898:スペイン領フィリピン最後の日』の作品紹介記事は、コチラ⇒2017年01月05日
*「Adú」の作品紹介記事は、コチラ⇒2021年01月24日
*「Ramón y Ramón」の紹介記事は、コチラ⇒2024年08月25日
★代表作を年代順に列挙すると、
2008「Pretextos」(カタルーニャ語)シルビア・ムント、共演ライア・マルル
2008「El juego del ahorcada / The Hanged Man」『ザ・レイプ 秘密』スリラー、監督マヌエル・ゴメス・ペレイラ、インマ・トゥルバウの同名小説の映画化、ゴヤ賞2009新人男優賞にノミネート、共演クララ・ラゴ
2010「Tres metros sobre el cielo」『空の上3メートル』フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ、フェデリコ・モッキアの同名小説の映画化、脚本ラモン・サラサール、共演マリオ・カサス、マリア・バルベルデ
2012「El sexo de los ángeles」『バルセロナ、天使のセックス』ハビエル・ビリャベルデ、マラガ映画祭2012銀のビスナガ助演男優賞受賞、DVD2013発売
2012「Tengo ganas de ti」『その愛を走れ』フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ、『空の上3メートル』の続編、フェデリコ・モッキアの同名小説の映画化、脚本ラモン・サラサール
2016「1898, Los últimos de Filipinas」『1898:スペイン領フィリピン最後の日』歴史ドラマ、サルバドール・カルボ、スペイン俳優組合ノミネート、共演ルイス・トサール、エドゥアルド・フェルナンデス、カラ・エレハルデ、Netflix配信
2018「El árbol de la sangre」『ファミリー・ツリー 血族の秘密』フリオ・メデム、Netflix配信
2020「Adú」サルバドール・カルボ、共演ルイス・トサール、アンナ・カステーリョ、メリリャ駐在の治安警備隊員を演じた。ゴヤ賞2021助演男優賞ノミネート、Netflix配信(字幕なし)
2021「Loco por ella」『クレイジーなくらい君に夢中』ダニ・デ・ラ・オルデン、共演ルイス・サエラ、クララ・セグラ
2022「42 segundos」ダニ・デ・ラ・オルデン、共演ハイメ・ロレンテ
2022「Malnazidos」『マルナシドス-ゾンビの谷-』ハビエル・ルイス・カルデラ、
Netflix配信
2023「Eres tú」『だから、君なんだ』アラウダ・ルイス・デ・アスア、Netflix配信
2024「Ramón y Ramón」サルバドール・デル・ソラル、サンセバスチャン映画祭2024オリソンテス・ラティノス部門正式出品、ペルーとの合作
2025「Sorda / Deaf」エバ・リベルタード、マラガ映画祭2025銀のビスナガ主演男優賞受賞
2025「Esmorza amb mi / Desayuna conmigo」イバン・モラレス、主演、マラガ映画祭ソナシネ部門銀のビスナガ作品賞、観客賞など受賞
◎メディナ映画祭2021「21世紀の俳優」を受賞

(銀のビスナガ主演男優賞の受賞スピーチをするセルバンテス)
★短編、TVシリーズは割愛しましたが、オリオル・フェレルの「Carlos, Rey Emperador」(『カルロス~聖なる帝国の覇者~』2015~16、17話)は彼にとって素晴らしい転換点になった(フォトグラマス・デ・プラタ、スペイン俳優組合賞などにノミネート)。神聖ローマ皇帝カール5世(スペイン王カルロス1世)を演じた。イサベル・デ・ポルトゥガル役のブランカ・スアレス、エルナン・コルテス役のホセ・ルイス・ガルシア・ぺレス他、ナタリエ・ポサ、スシ・サンチェス、エリオ・ペドレガルなどベテラン演技派との共演が刺激になったようです。7ヵ月以上に及んだ撮影では、季節の区別なく酷暑の中でも常に重たい衣装を着用しなければならず大変だったと語っている。また約20作くらい出演している短編ではダビ・ペレス・サニュドの「Un coche cualquiera」(19)で、CinEuphoria 2021の男優賞にノミネートされている。

(カルロス1世に扮したアルバロ・セルバンテス)
音が溢れる社会の中で身振りと思考のあいだの繋がりを確立する困難さ
★本作のテーマは聴覚障害者が聴者の世界で直面する問題を探求しているが、聴覚障害そのものがテーマではなく、自分の居場所を探す女性の心の旅のようです。アンヘラはたまたま耳が聞こえなかった。娘が生まれる前の日常はエクトルの努力の甲斐もあって穏やかであった。生まれる子供の聴覚がどちらになるかは半々だったが、娘はたまたま耳が聞こえるほうだった。赤ん坊は読唇術も手話も分からない、どのようにして言葉を教えたらよいのか分からない。声を出せないアンヘラは当然パニックに陥る。アンヘラが求めていた調和のとれた家庭生活、母親としての絆が得られない。先に娘との絆を築いたエクトルに嫉妬して苛立つアンヘラ、エクトルの「どうして欲しいんだ、夫も娘も耳が聞こえないほうがよかったのか?」というセリフに象徴されるように危機が訪れる。アンヘラの矛盾した複雑な感情の揺らぎ、忍耐強さ、エゴイズム、硬直性などが語られる。

(「あなただけが完璧な親で、一人で育児を楽しんでいる」と夫を非難するアンヘラ)

(聴覚障害者のコミュニティでは幸せなアンヘラ)
★アンヘラは娘と会う前の出産時に既に異変を体験していた。分娩室は聴覚障害者のコミュニティでも親しい友人たちの集まりのように安全ではない。陣痛が激しくなると看護スタッフたちはアンヘラが耳が聞こえないことを忘れてしまう。自分たちの指示に従わないアンヘラに慌てる、出産の凄さに度肝を抜かれたエクトルも極度の緊張から手話で上手く指示を伝えられない。アンヘラの存在を許容していた社会が突然機能しなくなる。普段は完璧に思えた関係も大波が来ると役に立たない。公共の場で目に見えない聴覚障害は、目に見える視覚障害のように視覚化されない。アンヘラも白い杖を使用していたわけでも盲導犬と一緒でもなかった。


(娘に言葉を教えるアンヘラ)
★音が溢れる社会の中で身振りと思考のあいだの繋がりの確立には困難がともなう、音が聞こえることとそれが言葉として聞こえることは同じではない。耳の聞こえない母親が耳の聞こえる赤ん坊に「どうやって言葉を教えるのだろうか」が本作のアイディアの出発点だったという。聴者の世界に適応するよう育てられているため聴覚障害者あるいは難聴者は社会から見えにくくなっている。それぞれ異なった世界に帰属しているのに可視化されていない。監督は「アンヘラは聴者の世界に対して準備できているが、世界はアンヘラに対して準備できていない」と、ベルリン映画祭のインタビューで語っています。またエクトルという人物造形には、分身として監督が少し投影されており、セルバンテスには撮影開始1年前にオファーをした。手話を学ぶ時間が必要だったからと語っている。予告編だけでは舌足らず、鑑賞後に改めてアップが必要です。
マラガ―スール賞のカルメン・マチ*マラガ映画祭2025 ⑧ ― 2025年04月06日 15:27
カメレオン女優カルメン・マチの強かな生き方

(マラガ―スール賞を受賞したカルメン・マチ、2025年3月15日)
★後回しになっていた今年の特別賞マラガ―スール賞の受賞者カルメン・マチのキャリア&フィルモグラフィー紹介です。1963年1月7日マドリード生れ、マリア・デル・カルメン・マチ・アロヨ、両親ともスペイン人だが、父方の家系はイタリアのジェノバのアーティスト一家である。1980年、17歳でヘタフェのタオルミナ劇団に入り、初舞台はロルカの「血の婚礼」だった。1994年ホセ・ルイス・ゴメスが主宰する演劇学校ラ・アバディアに入団、バリェ=インクランの「貪欲、欲望と死の祭壇画」、「ベニスの商人」などの舞台に立つ。演劇関係では最高賞Max賞に、2011年「Falstaff」(シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』の登場人物)で助演女優賞、2009年「Platonov」(チェーホフの『プラトーノフ』)助演女優賞、2008年「La tortuga de Darwin」(フアン・マヨルガ作、ダーウィンによってガラパゴス諸島からイギリスに連れてこられた海亀ハリエット役)で主演女優賞を受賞している。ほかソフォクレスの悲劇『アンティゴネ』(2015~17)やチェーホフの『桜の園』(2019)に出演している。
★映画デビューは遅く、主役に起用されたのはハビエル・レボーリョの「La mujer sin piano」で、カセレス・スペイン映画祭2009の女優賞を受賞した。続くエミリオ・アラゴンのデビュー作「Pájaros de papel」はラテンビート映画祭2010で上映された後、『ペーパーバード 幸せは翼にのって』の邦題で公開され、監督と来日した。役柄からイメージするのとは違った華奢な体型とその物静かな雰囲気に驚かされた。同年ナチョ・G・ベリリャの「Que se mueran los feos」では、ハビエル・カマラと共演、彼の小姑役を演じた。

(「Pájaros de papel」のフレームから)
★そして観客動員数1000万人、スペイン映画興行成績ナンバーワンとなったエミリオ・マルティネス=ラサロの「Ocho apellidos vascos」出演である。翌年のゴヤ賞ではコメディ作品の受賞はないという大方の予想を覆して、カラ・エレハルデの助演男優賞、ダニ・ロビラの新人賞、マチの助演女優賞の3冠をゲットした。以来引っ張りだことなり、続編「Ocho apellidos catalanes」はネットフリックスで配信された。

(ゴヤ賞2015助演女優賞のトロフィーを手にしたマチ)

(共演者のカラ・エレハルデと)
★主演作が多くなり、なかでアルゼンチンのマリナ・セレセスキーのシリアスドラマ「La puerta abierta」の娼婦役に起用され、ゴヤ賞2017で初めて主演女優賞にノミネートされた。その他フォルケ賞、フェロス賞もノミネートに終わったもののスペイン俳優組合賞を受賞した。テレレ・パベス、アシエル・エチェアンディアなどが共演した。アレックス・デ・ラ・イグレシアの「El bar」、「アイーダ」の共演者エドゥアルド・カサノバのデビュー作「Pieles」など、Netflix配信、ミニ映画祭、公開などで日本でも認知度が高くなりファンが増えてきた。作品紹介記事は、当ブログでアップした一覧を添付しているので参考にしてください。ネットフリックスやプライムビデオで配信されたなかで既に配信が終了している作品もあります。

(『クローズド・バル』のフレームから、左端にカルメン・マチ)

(高評価の「La puerta abierta」のポスター)
★私生活は公にしないのでミステリアスな部分も多いが、20年来のパートナー、ミュージシャンのビセンテとは「結婚にも子供をもつことにも怖れがある」そうです。


(20年来のパートナー、ビセンテと仲睦まじく買い物)
受賞歴:2013年メモリアル・マルガリーダ・シルグ賞、2017年マドリード金のメダル受賞、2024年芸術功労賞金のメダルを各受賞している。
◎主なフィルモグラフィー◎
1999「Lisa」短編、カルロス・プジェ
2002「Hable con ella」『トーク・トゥ・ハー』ペドロ・アルモドバル、看護婦役
2003「Descongélate!」『チル・アウト』ドゥニア・アヤソ&フェリックス・サブロソ
「Torremolinos 73」『トレモリーノス73』パブロ・ベルヘル、美容院の客
2004「Escuela de seducción」ハビエル・バラゲル、ウエートレス役
2005「Vida y color」『色彩の中の人生』サンティアゴ・タベルネロ
2006「Lo que sé de Lola」ハビエル・レボーリョ
2009「Las abrazos roto」『抱擁のかけら』ペドロ・アルモドバル
「La mujer sin piano」ハビエル・レボーリョ、主役、カセレス・スペインFF女優賞受賞
2010「Pájaros de papel」『ペーパーバード 幸せは翼にのって』エミリオ・アラゴン、
ラテンビート2010女優賞受賞
「Que se mueran los feos」ナチョ・G・ベリリャ、主役ナティ
2011「La piel que habito」『私が、生きる肌』ペドロ・アルモドバル、結婚式招待客
2013「Los amantes pasajeros」『アイム・ソー・エキサイテッド!』ペドロ・アルモドバル
2014「Ocho apellidos vascos」エミリオ・マルティネス=ラサロ、メルチェ役、
ゴヤ賞2015助演女優賞受賞
2015「Perdiendo el norte」『夢と希望のベルリン生活』ナチョ・G・ベリリャ、
ベニ・マリン役
「Mi gran noche」『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』アレックス・デ・ラ・イグレシア
2015「Ocho apellidos catalanes」『オチョ・アペリードス・カタラネス』
エミリオ・マルティネス=ラサロ、メルチェ/ カルメ役
2016「Las furias」ミゲル・デル・アルコ、カサンドラ役
「La puerta abierta」マリナ・セレセスキー、娼婦ロサ、スペイン俳優組合賞受賞
2017「El bar」『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』
アレックス・デ・ラ・イグレシア
「Pieles」『スキン~あなたに触らせて』エドゥアルド・カサノバ
2018「Thi Mai, rumbo a Vietnam」『ティ・マイ 希望のベトナム』パトリシア・フェレイラ、
主役カルメン・ガラテ
「La tribu」『ダンシング・トライブ』フェルナンド・コロモ、ビルヒニア母親役
モンテカルロ・コメディ映画祭2018主演女優賞受賞
2019「Perdiendo el este」パコ・カバジェロ、ベニ・マリン役
「Lo nunca visto」マリナ・セレセスキー、主役テレサ
2020「Nieva en Benidorm」ネオノワール、イサベル・コイシェ、警官マルタ役
「Un efecto óptico」フアン・カベスタニー
2021「El cover」ミュージカル、セクン・デ・ラ・ロサ、マリエ・フランセ役
2022「Amor de madre」『僕とママの”じゃない”ハネムーン』パコ・カバジェロ、母親役
「Rainbow」ミュージカル、パコ・レオン
「La voluntaria」政治ドラマ、ネリー・レゲラ
「Cerdita」『PIGGYピギー』コメディ・ホラー、カルロタ・ペレダ、母親役
2024「Tratamos demasiado bien a las mujeres」シリアスコメディ、クララ・ビルバオ、主演
「Verano en diciembre」カロリナ・アフリカ、主演母親役
2025「Aída y vuelta」パコ・レオン、アイーダ・ガルシア・ガルシア役
★TVシリーズ、進行中の出演を含めると80作を超える。従って初期の端役、短編、TVシリーズは割愛しています。今回リストアップしての印象は、映画でのノミネート数に比して受賞が少ないということでした。TVシリーズ「7 vidas」(99~06、204話)では2000年から参加して98話出演、本作のアイーダ・ガルシア・ガルシア役の人気に乗じてスピンオフした「Aída」(05~14、238話)では101話に出演している。両シリーズともシチュエーションコメディ、後者の受賞歴はフォトグラマス・デ・プラタ(2004,2005,2007)、オンダス賞2008、スペイン俳優組合賞2005と多いが、疲れはてて自ら降板を願い出ている。そしてリターン・コールで再登場したのがTVでなくスクリーン、今年公開予定の「Aída y vuelta」である。授与式に駆けつけてくれたパコ・レオンが監督している。彼はルイスマ・ガルシア・ガルシア役で全238話に出演しており、新作でも勿論出演しないわけにいかない。みんな少しずつ老けましたが元気です。

(TV出演メンバーで撮る映画「Aída y vuelta」の出演者たち)
★ロス・ハビスことハビエル・アンブロッシ&ハビエル・カルボが製作、監督したミュージカル「La mesías」(23、全7話)とディエゴ・サン・ホセ創案、エレナ・トラぺ監督の「Celeste」(24、全6話)、前者はメシアの到来を妄想するファナティックな老母モンセラット・バロ役(6~7話に出演)、後者はラテン音楽のスーパースターのセレステの脱税を証明するというミッションを受けた税務捜査官役、TV部門のフォルケ賞2024女優賞とフェロス賞にノミネートされ、フォトグラマス・デ・プラタを受賞している。

(マルサの女を演じたTVシリーズ「Celeste」から)

(有能な税務捜査官を好演した「Celeste」のポスター)
◎カルメン・マチ関連記事一覧◎
*「Ocho apellidos vascos」キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2015年01月28日
*『ペーパーバード 幸せは翼にのって』の紹介記事は、コチラ⇒2014年05月17日
*「Las furias」の紹介記事は、コチラ⇒2016年02月26日
*「La puerta abierta」の紹介記事は、コチラ⇒2017年01月12日
*『クローズド・バル~』の紹介記事は、コチラ⇒2017年01月22日/02月26日/04月04日
*『スキン~あなたに触らせて~』の紹介記事は、2017年08月20日
*「Nieva en Benidorm」の紹介記事は、コチラ⇒2021年02月11日
*「El cover」の紹介記事は、コチラ⇒2021年05月18日
*『PIGGY ピギー』の紹介記事は、コチラ⇒2022年12月19日
第28回マラガ映画祭2025〈特別賞〉授与式*マラガ映画祭2025 ⑦ ― 2025年03月31日 15:16
カルメン・マチのマラガ―スール賞
★受賞者のキャリア紹介も中途半端のままですが〈特別賞〉の授与式のフォトをアップしておきます。映画祭上映または公開が期待できそうな作品紹介は、ぼちぼちアップしていきます。資金調達の困難が大きな問題となっているイベロアメリカ映画の本数が少なかったのが気がかりです。
◎マラガ―スール賞(スール紙とのコラボ)授与式3月15日、セルバンテス劇場にて
カルメン・マチ(1963マドリード、女優)
★金のビスナガ受賞者は、授与式に先だって地中海を見下ろす遊歩道アントニオ・バンデラス通りに手形入りの記念碑を建ててもらえる。マラガ生れのバンデラスはマラガ名誉市民で、本祭にも毎年多額の資金提供をしてマラガ市の発展に尽くしている。

★登壇したのは人気TVシリーズ「Aída」で共演したメラニ・オリバーレスと「Un efecto óptico」のペポン・ニエトほか、監督兼俳優のパコ・レオン、監督兼劇作家ミゲル・デル・アルコ、キャスティング監督ルイス・サン・ナルシソ、監督ナチョ・ガルシア・ベリリャとメディアプロ・グループの総指揮者ラウラ・フェルナンデス・エスペソ、彼女とメラニ・オリバーレスがトロフィーをカルメンに手渡した。


◎レトロスペクティブ賞―マラガ・オイ(マラガ・オイ紙とのコラボ)授与式3月21日
セルバンテス劇場にて
ギレルモ・フランチェラ(ギジェルモ・フランセーリャ、1955ブエノスアイレス、俳優)
★アウト・オブ・コンペティション作品、ハビエル・ベイガの「Playa de lobos」に主演、セルバンテス劇場の舞台には、監督以下、共演者ダニ・ロビラ、製作者のヘラルド・エレーロとマリエラ・ベスイエフスキー、アルゼンチンから駆けつけた俳優のオスカル・マルティネスなどが登壇しました。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2025年03月14日

(受賞祝いに馳せ参じた仲間たちに囲まれて・・・)
★受賞者は「ユーモアがふんだんにあるだけでなく、物語の進行にそって突然暗闇が表面化するような作品が大好きです」とコメントした。

◎マラガ才能賞―マラガ・オピニオン(マラガ・オピニオン紙とのコラボ)授与式3月18日、
セルバンテス劇場にて
エレナ・マルティン・ヒメノ(1992バルセロナ、女優、監督、脚本家)
★プレゼンターは、監督で脚本家のクララ・ロケ、プロデューサーのマルタ・クルアニャスとアリアドナ・ドット、俳優のオリオル・プラの4名でした。それぞれ受賞者とコラボしてきた仲間です。マルティン・ヒメノは「2作とも自分が主演監督してきましたが、将来的にはもうしないと考えている。というのも書いて、演じて監督するのは理想的ではないからです」コメントした。2作とは「Júlia ist」と「Creatura」です。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2025年03月14日


◎リカルド・フランコ賞(スペイン映画アカデミーとのコラボ)授与式3月17日、
セルバンテス劇場にて
ロラ・サルバドール(1938バルセロナ、作家、脚本家、監督、製作者)
★コラボしているスペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテ以下、フェルナンド・レオン・アラノア監督、脚本家カルロス・マリネロ、脚本家でDAMA*会長のビルヒニア・ヤグエ、キャスティングディレクターのセシリア・バヨナスとリカルド・フランコの娘ロラ・フランコが登壇した。ロラ・フランコとは長い付き合いということです。受賞者は「ここ数年脚本家の仕事は悪くなってきている。知性の名のもとに現れたテクノロジーによって重要性が軽視されている」とAIに脅威を感じているということでしょうか。
*DAMA:Derechos de Autor de Medios Audiovisuales 視聴覚機関著作権。2022年6月就任した。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2025年03月14日


◎ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞、授与式3月19日、セルバンテス劇場にて
マリア・ルイサ・サン・ホセ(1946年マドリード、女優)
★プレゼンターは、半世紀にわたってスペイン映画で活躍した女優を讃えたスペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテ、お祝いに駆けつけたのは、受賞者の伝記を上梓した作家でジャーナリストのパスクアル・ベラ、ジャーナリストのルイス・アレグレ、AraFilmFest 会長ホセ・アントニオ・アギラル、マラガのオペラ歌手カルロス・アルバレスと全員男性シネアストたちでした。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2025年03月14日


◎ビスナガ栄誉賞、授与式3月20日、エチェガライ劇場にて
アレハンドロ・アグレスティ(1961年ブエノスアイレス、監督、脚本家、製作者)
★本祭メインディレクターのフアン・アントニオ・ビガルからトロフィーを受け取った。プレゼンターのビガルは受賞理由をこの国際的に傑出したシネアストを「アレハンドロ・アグレスティは、疑う余地のない才能と映画の重要性を携えて多くのジャンルを超えてきた監督、アルゼンチンにとどまらず国際的な基準となる映画つくりをしてきた。彼の作品はシネマ愛好家が寄せる興味に応えている」とヨーロッパやハリウッドでも製作している映画作家の功績を強調した。

(左端フアン・アントニオ・ビガル、中央受賞者)
★受賞者アグスティは、「受賞は驚きと感謝でいっぱい、ここに立っていることに感動しています。私はマラガには一度も来たことがなかったからです。このように素晴らしい町と素敵な人々に出会えるなんて」とスピーチした。

(トロフィーを手にしたアレハンドロ・アグレスティ)
★彼とタッグを組んだスターには、ヤン・デ・ボンの『スピード』で一躍有名になったサンドラ・ブロックとキアヌ・リーブスのコンビを起用した『イルマーレ』、その共演者クリストファー・プラナー、監督自身も出演した「No somos animales」(13、『ノー・アニマルズ』)のジョン・キューザックとアル・パチーノ、そのほかセシリア・ロス(00、「Una noche con Sabrina Love」)、カルメン・マウラ(02、「Valentin」)など枚挙に暇がない。
★移住していたオランダと合作した1986年の「El hombre que ganó la razón」(86)は、ベルリン、カンヌ、サンセバスチャンと権威ある映画祭に出品された。1996年にはアルゼンチンの軍事政権下(1976~84)で行方不明になった犠牲者の子供たちが抱える疎外感をテーマにした「Buenos Aires Vice Versa」は、マル・デル・プラタ映画祭だけでなく海外も含めて多くの映画祭に出品され受賞している。2006年のワーナーブラザースが製作した前出の『イルマーレ』(「La Casa del Lago」)が、アルゼンチン出身の監督でハリウッドに進出した最初のシネアストになりました。
第28回マラガ映画祭2025結果発表*マラガ映画祭2025 ⑥ ― 2025年03月28日 09:01
金のビスナガは聾者の母親が主人公のエバ・リベルタードの「Sorda」

★3月22日アルベニス映画館、第28回マラガ映画祭2025授賞式が10日間の日程を無事こなして閉幕しました。模様は国営テレビ(La 2 de TVE)で放映されました。金のビスナガは、スペイン映画がエバ・リベルタードの「Sorda」、本作は作品・主演女優(ミリアム・ガルロ)・主演男優(アルバロ・セルバンテス)・観客賞の4冠、下馬評通りの受賞、批評家と観客の評価に乖離がなかった『タパス』(05)以来と報じられた。イベロアメリカ映画はチリのビンコ・トミシックの「El ladrón de perros」で、共に副賞として8,000ユーロが授与されます。

(左から、ミリアム・ガルロ、エバ・リベルタード監督、アルバロ・セルバンテス)
★総合司会者は「El 47」でゴヤ賞2025助演男優賞を受賞したサルバ・レイナと、昨年に続いてジャーナリストでTV司会者のエレナ・サンチェスでした。「金のビスナガ」は作品賞のみで、審査員特別賞以下すべて「銀のビスナガ」です。

(総合司会者サルバ・レイナとエレナ・サンチェス)
★ガラはコルドバ出身の歌手マリア・ホセ・リェルゴ(1994)の "La bien pagá" で幕を開けました。彼女はマルセル・バレナの「Mediterraneo」の “Te espera el mar” でゴヤ賞2022オリジナル歌曲賞を受賞しています。中盤に会場を盛り上げたのが、オルタナティブロック・ミュージシャンのソエル・ロペス(Xoel アコルーニャ1977)、“Tierra” を朗唱しました。しんがりがマラガ出身のシンガーソングライターのエル・カンカ(El Kanka、1981)が “Pasa la vida” で会場を沸かせました。

(マリア・ホセ・リェルゴ)

(エル・カンカ)
★セクション・オフィシアルの審査員は、審査委員長メルセデス・モラン(アルゼンチンの女優)、プチョ(Vetusta Morlaの歌手)、ピラール・パロメロ(監督、脚本家)、カルロス・マルケス=マルセ(監督、脚本家)、エストレージャ・アライサ(メキシコのグアダラハラ映画祭ディレクター)、ダニエラ・ベガ(チリの女優、歌手)、イレネ・エスコラル(女優)、ベレン・クエスタ(女優)の8名でした。パロメロ監督、マルケス=マルセは、金のビスナガ受賞者です。
★今年のマラガ映画祭は、連日のように雨が降ったりやんだりの天候には恵まれないエディションだった。しかし上映作品は260作にもなるレベルの高い作品が上映されたそうです。セクション・オフィシアルも22作、アウト・オブ・コンペティションも21作と例年より多く、ボルハ・コベアガ、マリア・リポルなどベテラン監督が多いこともあり、コンペより興味を惹く作品が目につきました。今年から観客賞の投票を50%ずつに分け、それぞれに授与することにした由。最初の受賞者はベテラン監督のフリオ・メデムの「8」が獲得しました。
★本祭のメインディレクターを続投しているフアン・アントニオ・ビガルは「観客、産業界、マスメディアが私たちに求めているもののバランスを考慮した」、「今のように怒りが充満し互いに攻撃的な世の中では、文化は常に指針となり、マラガは進むべき最良の道となっている」と自画自賛した。しかしスペイン映画が15作、イベロアメリカ映画7作は本数的にも不公平ではないでしょうか。
*第28回マラガ映画祭2025セクション・オフィシアルの受賞結果*
◎金のビスナガ作品賞(スペイン映画、副賞8.000ユーロ)
「Sorda」エバ・リベルタード監督、製作Distinto Films / Nexus CreaFilms /
A Contracorriente Films
★監督は「本作はムルシアの農村の片隅から始まり、金のビスナガに辿りつくことができました。この長い旅はひとえに多くのシネアストの努力とムルシアTVの協力のお蔭です。夢の実現に力を貸してくださった全ての人々に感謝を申し上げたい」とスピーチした。本作専属の手話通訳士が一緒に登壇した。
*プレゼンターは、審査委員長メルセデス・モランと審査員ダニエラ・ベガ


(エバ・リベルタード監督、フォトコール)
◎金のビスナガ作品賞(イベロアメリカ映画、副賞8.000ユーロ)
「El ladrón de perros」ビンコ・トミシック監督、製作Color Monster /
Zafiro Cinema / Calamar Cine
★来マラガは製作者のアルバロ・マンサノと主役を演じたフランクリン・アロのふたりだけでした。製作者と配給元のエドゥアルド・カジェが登壇した。カジェが「最近ボリビアのプロダクションがイベロアメリカ映画賞を受賞しています。全てのボリビアの人々に捧げます」とスピーチした。アレハンドロ・ロアイサ・グリシの『UTAMA~私たちの家~』が2022年に金のビスナガを筆頭に監督賞、批評家審査員特別賞など受賞している。
*プレゼンターは、審査員ピラール・パロメロ、同カルロス・マルケス=マルセ


(アルバロ・マンサノとフランクリン・アロ、フォトコール)

◎審査員特別賞(銀のビスナガ)
「Los Tortuga」ベレン・フネス監督
★監督と製作者がスピーチした。他に監督賞、脚本賞を受賞した。
*プレゼンターは、審査員ベレン・クエスタ、俳優カルロス・バルデム

◎監督賞
ベレン・フネス(「Los Tortuga」)
*プレゼンターは、カンヌ映画祭2024女優賞のカルラ・ソフィア・ガスコン、ゴヤ賞2025主演女優賞のカロリナ・ジュステでした。

◎主演女優賞(‘マラガ・パラシオ・ホテルAC’(今回は2名)
アンヘラ・セルバンテス(「La furia」ジェマ・ブラスコ監督)
★レイプ事件のトラウマを抱えた被害者を演じた。「Sorda」で主演男優賞を受賞したアルバロ・セルバンテスは4歳上の実兄です。他に本作は助演男優賞、編集賞の3冠でした。

ミリアム・ガルロ(「Sorda」)
★聾者の母親を演じたが、実際に聴覚障碍者でもあり、スピーチは手話を交えて喜びを語りました。エバ・リベルタード監督の実妹、視覚芸術を専門とするアーティスト、演劇、ダンス、女優と多才。

(自ら手話をまじえてスピーチするミリアム・ガルロ)

(二人の受賞者、アンヘラとミリアム)
◎主演男優賞(今回は2名)
アルバロ・セルバンテス(「Sorda」)兄妹で主演俳優賞を同時に受賞するのは珍しい。

マリオ・カサス(「Molt lluny / Muy lejos」ヘラルド・オムス監督)


(二人の受賞者、アルバロとマリオ)
◎助演女優賞
マリア・エレナ・ぺレス(「Perros」ヘラルド・ミヌッティ監督)
★受賞者欠席でビデオ出演、代理が受け取った。


(ビデオでスピーチした受賞者)
◎助演男優賞
アレックス・モネール(「La furia」)

◎脚本賞
ベレン・フネス&マルサル・セブリアン(「Los Tortuga」)


(それぞれにトロフィーが渡された)
◎音楽賞
フィリペ・ラポソ(「Lo que queda de ti」ガラ・グラシア監督)


◎撮影賞
アルバン・プラド(「Sugar Island」ジョアンヌ・ゴメス・テレロ監督)


◎編集賞
ディダック・パロウ&トマス・ロペス(「La furia」)

◎批評家審査員特別賞
「Molt lluny / Muy lejos」ヘラルド・オムス監督



(主演のマリオ・カサスとヘラルド・オムス監督)
◎観客賞(エルパイス紙)
「Sorda」エバ・リベルタード監督

(監督と本作専属の手話通訳士)

◎アウト・オブ・コンペティション観客賞
「8」フリオ・メデム監督



★監督賞審査員特別メンションに、セリア・リコ・クラベリーノの「La buena letra」と、サラ・ファントバの「Jone, Batzuetan / Jone, Aveces」が受賞した。ポルトガル語映画「Una quinta portuguesa」は無冠に終わりました。割愛しているセクション・オフィシアル・ソナシネ(金のビスナガ)、ドキュメンタリー(銀のビスナガ)には副賞として4.000ユーロ、短編映画、短編アニメーションには2.000が与えられます。
★観客動員数は108.000人、期間中に来マラガした人々が散財したお金は、チケット代、ホテル代、飲食代含めて約2.175.000ユーロだった由、馬鹿にならない数字です。さて、第29回マラガ映画祭2026は、3月6日~3月15日とアナウンスされました。
セクション・オフィシアル(イベロアメリカ映画)*マラガ映画祭2025 ⑤ ― 2025年03月23日 21:20
チリのビンコ・トミシックの「El ladrón de perros」が金のビスナガ受賞
★作品紹介が終わらないうちに受賞作が発表になってしまいました。作品賞「金のビスナガ」は、イベロアメリカ映画賞がビンコ・トミシックの単独監督デビュー作「El ladrón de perros」、スペイン映画賞はエバ・リベルタードの「Sorda」、本作は観客賞もゲットしました。他、ベレン・フネスの「Los tortuga」が銀のビスナガ審査員特別賞と脚本賞、ヘラルド・オムスの「Molt lluny」が銀のビスナガ批評家審査員特別賞を受賞しました。全受賞作は授賞式を含めて後日アップ予定。
*セクション・オフィシアル(イベロアメリカ映画)*
1)「Culpable cero」アルゼンチン=スペイン、2024年、110分、コメディドラマ
監督:ヴァレリア・ベルトゥチェリ(ブエノスアイレスのサンニコラス1969、長編2作目)、舞台女優としてスタートを切る。TVや映画に出演、2018年「La reina del miedo」で監督デビュー、サンダンス映画祭女優賞を受賞する。モラ・エリサルデ(デビュー作)、ブエノスアイレス大学で映像&音響デザインを専攻卒業する。2012年広告編集者としてキャリアを切り、TVシリーズの編集(「Morko y Mali」)やビデオクリップを制作する。2018年、宣伝広告と並行して映画プロジェクトの監督や脚本も手掛けている。
*ベルトゥチェリ監督キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2018年04月10日
脚本:ヴァレリア・ベルトゥチェリ、モラ・エリサルデ、マレナ・ピチョト
製作:Pampa Films / Gloriamundi Producciones
キャスト:ヴァレリア・ベルトゥチェリ(ベルタ・ミュラー)、セシリア・ロス(カローラ)、ユスティナ・ブストス(マルタ)、ガイア・ガリバルディ(オリビア)、マルティン・ガラバル(ラミロ)、メイ・スカポラ(グレース)、マラ・ベステッリ(サンドラ)、ルシア・マシエル(グアダ)他

(左からヴァレリア・ベルトゥチェリ、モラ・エリサルデ、2025年03月18日)

2)「El diablo en el camino」メキシコ=フランス、2024年、108分
監督・脚本:カルロス・アルメリャ(メキシコシティ、長編3作目)、イギリスの映画学校(CCC)とロンドン映画学校で学ぶ。短編「Tierra y pan」がベネチア映画祭2008短編部門の金獅子賞を受賞、そのほか受賞歴多数。ドキュメンタリー「Toro negro」は共同監督だが、サンセバスチャン映画祭2005でオリソンテス賞、ハバナ映画祭サンゴ賞を受賞、モレリア映画祭でも上映された。長編デビュー作「En la estancia」(15)はロッテルダム映画祭でプレミアされ、グラマドやサンディエゴなど国際映画祭で受賞している。2作目「Animo juventud !」(20)はモレリアFF、釜山青少年映画祭にノミネートされた。TVシリーズ多数。
製作:CIMA / B Positivo Producciones / Tita B Producciones / Zensky Cine /The42Films 他
キャスト:ルイス・アルベルティ(フアン)、マイラ・バタジャ(イサベル)、アケツァリー・ベラステギ Aketzaly Verastegui、リカルド・ウスカンガ、オスワルド・サンチェス、ロベルト・オロペサ、他


3)「El ladrón de perros / The Dog Thief」ボリビア=チリ=メキシコ=仏=伊、2024年、
90分、トライベッカ映画祭2024上映
監督・脚本:ビンコ・トミシック・サリナス(サンティアゴ・デ・チリ1987、長編単独デビュー作)、監督、脚本家、製作者。2014年、制作会社 Calamar Cine を設立。フランシスコ・エビアとの共同監督作品「El fumigador」(16)が、PÖFFタリン・ブラックナイツでプレミア上映され、SANFIC 2016 でナショナルフィルム賞を受賞した。カンヌ映画祭シネフォンダシオンとベネチア・ビエンナーレ・カレッジ・シネマ・プログラムで企画された。マラガ映画祭2025イベロアメリカ映画賞金のビスナガ受賞。
製作:Color Monster / Zafiro Cinema / Calamar Cine
キャスト:アルフレッド・カストロ(セニョール・ノボア)、フランクリン・アロ(マルティン)、テレサ・ルイス(セニョリータ・アンドレア)、マリア・ルケ(グラディス)、フリオ・セサル・アルタミラノ(ソンブラス)、ニノン・ダバロス(セニョーラ・アンブロシア)


4)「Nunca fui a Disney」アルゼンチン、2024年、74分
監督:マティルデ・トゥテ・ヴィサニ(ブエノスアイレス1989、デビュー作)、ブエノスアイレス大学の映像&音響デザイナーとしての学位を得る。監督、脚本家、フィルム編集者。2017年「Rosa」で短編デビュー、長編第1作である「Nunca fui a Disney」は第25回BAFICI(ブエノスアイレス国際インディペンデントFF)で監督賞を受賞している。第2作の準備中。
脚本:マティルデ・トゥテ・ヴィサニ、アグスティナ・マルケス・メルリン
キャスト:ルシア・マルティネス・ラグ(ルシア)、アレハンドラ・ボルヘス、アルマ・フロレス、フランシスコ・アンテロ、ヘレミアス・サラテ、ルシアナ・ロメロ、ヤミラ・アスクアガ


5)「Perros」ウルグアイ=アルゼンチン、2025年、102分
監督・脚本:ヘラルド・ミヌッティ(デビュー作)、社会コミュニケーションを専攻、10年間ジャーナリストだった。2013年ウルグアイ文化教育省の奨学金を得て映画を学んでいる。短編「Hogar」(18)は、ビアリッツ・ラテンアメリカ映画祭で審査員特別メンションを受賞、グアダラハラ映画祭コンペティション部門にノミネートされている。長編デビュー作は、
製作:Cinevinay / Cimarrón(The Mediapro Studio)
キャスト:ネストル・グツィーニ、マルセロ・スビオット、マリア・エレナ・ぺレス、ノエリア・カンポ、ロベルト・スアレス、カタリナ・アリジャガ、マヌエル・タテ、ソレダード・ペラヨ


6)「Sugar Island」ドミニカ共和国=スペイン、2024年、90分、ドキュメンタリー
テッサロニキ映画祭2024 WIFT 賞、ベネチア映画祭ヤング審査員賞ほか受賞、
マラガ映画祭2025銀のビスナガ撮影賞(アルバン・プラド)受賞
監督:ジョアンヌ(ヨハンヌ)・ゴメス・テレロ(ドミニカ共和国1985、ドキュメンタリー3作目)、ドキュメンタリー監督、脚本家、製作者、キューバの国際映画テレビ学校 EICTV の講座のコーディネーター。カタルーニャ映画視聴覚上級学校ESCACで映画配給修士課程卒業。短編ドキュメンタリー「Bajo las carpas」(14、52分)で監督デビュー、2016年「Caribbean Fantasy」を発表している。
脚本:ジョアンヌ・ゴメス・テレロ、マリア・アベニア
製作:Tinglado Film / Guasábara Cine
キャスト:イェリダ・ディアス Yelida Diaz、フランシス・クルス、フアン・マリア・アルモンテ、ルス・エメテリオ、ヘネシス・ピニェイロ、ディオゲネス・メディナ


7)「Violentas mariposas」メキシコ、2024年、101分、モレリア映画祭2024、
メキシコ公開2024年10月
監督・脚本:アドルフォ・ダビラ(長編デビュー作)、監督、脚本家、製作者、メキシコシティのメトロポリタン自治大学 UAM でデザインを専攻した後、フルブライト奨学金を得て、ワシントンのアメリカン大学で映画を学び、ニューメキシコのサンタフェにある人類学フィルムセンターでも学んでいるなど多才。広告映画、ドキュメンタリー、ミュージックビデオ、短編5作を撮っており、現在長編2作目が進行中。
製作:Neural / Mandarina Cine
キャスト:ディアナ・ラウラ DI(エバ)、アレハンドロ・ポーター(ビクトル)、ノルマ・パブロ(テレ)、ソフィー・アレクサンダー・カッツ(ロラ)、ジェルマン・ブラッコ(マテオ)、レオナルド・アロンソ(ラウル)、フアン・ルイス・メディナ(ムニェコ)、ヤヨ・ビジェガス(レオン)、他


セクション・オフィシアル(スペイン映画)*マラガ映画祭2025 ④ ― 2025年03月20日 21:50
★前回に引き続いて、主にスペインが製作国の映画をアップしました。
7)「La terra negra / La tierra negra」スペイン=パナマ、2024年、98分、スペイン語、カタルーニャ語
監督:アルベルト・モライス(バレンシア、長編4作目)
脚本:アルベルト・モライス、サムエル・デル・アモル
製作:Olivo Films / Elamedia / Dexiderius Produccciones / Garra Produccciones
キャスト:ライア・マルル(マリア)、セルジ・ロペス、アンドレス・Gertrudix、アブデラティフ・Hwiidar、ロサナ・パストル、アルバロ・バゲナ、マリア・アルビニャナ、トニ・ミソ、ブルノ・タマリト


8)「Lo que queda de ti」スペイン=ポルトガル=イタリア、2024年、91分
監督・脚本:ガラ・グラシア(シウダーレアル県バルデペニャス1988、デビュー作)、マドリード・コンプルテンセ大学で視聴覚コミュニケーションを専攻、ロンドンのキングストン大学大学院で監督及び脚本を受講している。短編3作目「Evanescente」(12分)はマラガ映画祭2024短編部門で上映、フォルケ賞にもノミネートされた。
製作:Potenza Produccciones / Bastian Films / Fado Filmes / Sajama Films /
Garbo Prodezioni 協賛 ICAA / マドリード共同体、アラゴン州政府、他
キャスト:ライア・マンサナレス(サラ)、アンヘラ・セルバンテス(エレナ)、ルイ・デ・カルバーニョ、アンナ・テンタ、イグナシオ・オリバル、ナタリア・リスエニョ


9)「Los tortuga」スペイン=チリ、2024年、109分
監督:ベレン・フネス(バルセロナ1984、長編2作目)、デビュー作「La hija de un ladrón」がサンセバスチャン映画祭2019セクション・オフィシアルにノミネート、グレタ・フェルナンデスが銀貝女優賞を受賞している。
脚本:ベレン・フネス、マルカル・セブリアン
製作:Oberon Media / La Claqueta PC / La Cruda Realidad / Los Tortuga La Pelicula AIE / Quijote Films
キャスト:アントニア・セヘルス(デリア)、エルビラ・ララ(アナベル)、マメン・カマチョ、ペドロ・ロメロ、ロレナ・アセイトゥノ、メルセデス・トレダノ、セルヒオ・イェルペス
*「La hija de un ladrón」&監督紹介は、コチラ⇒2019年07月23日


10)「Molt lluny / Muy lejos」スペイン=オランダ、2025年、100分、カタルーニャ語、
オランダ語、字幕上映、2025年4月11日スペイン公開予定
監督・脚本:ヘラルド・オムス(バルセロナ1983、デビュー作)、短編「Inefable」(21)はマラガ、グアダラハラ、バルセロナなどの映画祭に出品され、ウエスカ映画祭やアルカラ・デ・エナレスなどで受賞している。
製作:Zabriskie Films / Revolver Amsterdam
キャスト:マリオ・カサス(セルヒオ)、ダビ・ベルダゲル、イリヤス・エル・ウアダニIlyass El Ouahdani、ジェティ・マチュリンJetty Mathurin、ハネケ・ファン・デル・パールトHanneke van der Paardt、Reinout de Vey Mestdegh、ラウル・プリエト、ナウシカ・ボニン、ダニエル・マドラン


11)「Ravens / Cuervos」(邦題『レイブンズ』)スペイン=フランス=日本=ベルギー、2024年、116分、字幕上映、日本公開2025年3月28日
監督・脚本:マーク・ギル(マンチェスター、長編2作目)、脚本家、監督、写真家、ミュージシャン。デビュー作「England is Mine」(17、『イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語』公開)、短編「Full Time」(13)など。
製作:Minded Factory / Vestapol Films / Ark Entertainment / The Y-House / Katsize Films
キャスト:浅野忠信(深瀬昌久)、瀧内公美(深瀬洋子)、ホセ・ルイス・フェラー、古舘寛治(深瀬助蔵)、高岡早紀(南海)、池松壮亮(正田モリオ)


12)「Ruido」スペイン=メキシコ、2024年、85分
監督:イングリデ・サントス・ピニョール(バルセロナ、デビュー作)、ESCACで学ぶ。イサベル・コイシェがプロデュースした短編「Beef」がバジャドリード映画祭2019で上映、マイアミ映画祭2020でイベロアメリカ部門の短編映画賞を受賞、ゴヤ賞2021短編映画部門にノミネートされている。
脚本:イングリデ・サントス、リュイス・セグラ
製作:Sábado Pelíclas / Playtime Movies / Filmin / La Corte 協賛 ICEC / ICAA
キャスト:ラティファ・ドラメ(ラティ)、ジュディシュ・アルバレス・バルガス(ジュディ)、アサーリ・ビバン


13)「Sorda / Voslse」スペイン、2025年、100分、ベルリン映画祭2025パノラマ部門観客賞受賞作品
監督・脚本:エバ・リベルタード(ムルシア州モリーナ・デ・セグラ1978、デビュー作)、マドリード・コンプルテンセ大学卒、監督、脚本家、社会学者。ヌリア・ムニョスと共同監督した短編「Sorda」(21、18分)がゴヤ賞2023にノミネート、続く「Mentiste, Amanda」(16分)はメディナ・デル・カンポ映画祭2024で作品賞を受賞している。
製作:Distinto Films / Nexus CreaFilms / A Contracorriente Films
キャスト:ミリアム・ガルロ(アンヘラ)、アルバロ・セルバンテス(エクトル)、エレナ・イルレタ、ホアキン・ノタリオ


14)「Todo lo que no sé」スペイン、2025年、113分
監督・脚本:アナ・ランバリ・テリャエチェ(デビュー作)、バスク大学で美術を専攻した後、マドリード映画研究所で映画を学んでいる。
製作:Naif Films / 39 Escalones Films / The Other Film / Robot Productions
キャスト:スサナ・アバイトゥア(ラウラ)、フランシスコ・カリル、ナタリア・ウアルテ、アネ・ガバライン、アンドレス・リマ、イニャキ・アルダナス


15)「Una quinta portuguesa」スペイン=ポルトガル、2024年、114分、
ポルトガル語・スペイン語、字幕上映、スペイン公開2025年5月9日予定
監督・脚本:アベリナ・プラト(バレンシア1972、長編2作目)、監督、脚本家、大学では建築を専攻、デビュー作「Vasil」(22)は、ワルシャワ映画祭で上映され、バジャドリード映画祭ではカラ・エレハルデとイワン・バルネフが主演男優を受賞している。シネマ・ライターズ・サークル賞2023を受賞など受賞歴多数。フェルナンド・トゥルエバ、セスク・ゲイ、ハビエル・レボーリョなどの助手をしている。
製作:Distinto Films / O Som e a Fúria / Jaibo Films
キャスト:マノロ・ソロ(マヌエル)、マリア・デ・メデイロス(アマリア)、ブランカ・カティック(オルガ)、リタ・カバソ(リタ)、イワン・バルネフ、ルイサ・クルス


★次回はアルゼンチン、ウルグアイ、メキシコなどイベロアメリカ映画をアップします。
セクション・オフィシアル作品22作*マラガ映画祭2025 ③ ― 2025年03月18日 16:04
ダニエル・グスマンの2作目「La deuda」がオープニング作品

★肝心の作品紹介が後手に回っていますが、スペイン製作とイベロアメリカ製作に分けて、今回はスペイン映画の紹介。タイトル、製作国、製作年、監督、製作、脚本家、上映時間、主なキャストなどを列挙します。本祭は新人の登竜門と位置づけされていますが、グラシア・ケレヘタやサンティ・アモデオのようなベテラン勢が増えている印象があります。
*第28回マラガ映画祭2025セクション・オフィシアル作品*
1)「La deuda」スペイン=ルーマニア、2024年、115分
オープニング作品
監督&脚本:ダニエル・グスマン(マドリード1973,長編2作目)、デビュー作「A cambio de nada」がゴヤ賞2016新人監督賞ほかを受賞している。
製作:La Deuda AIE / Aquí y Allí Films / El Niño Producciones / 他
キャスト:ダニエル・グスマン(ルカス)、イツィアル・オトゥニョ、スサナ・アバイトゥア、ロサリオ・ガルシア、ルイス・トサール、モナ・マルティネス、フランセスク・ガリード、フェルナンド・バルディビエソ
*主な紹介記事は、コチラ⇒2015年04月12日


2)「El cielo de los animales」スペイン=ルーマニア、2024年、84分
監督&脚本:サンティ・アモデオ(セビーリャ1969、長編7作目)
製作:Grupo Tranquilo PC / Cinelab
キャスト:ラウル・アレバロ、マノロ・ソロ、ヘスス・カロサ、パウラ・ディアス、アフリカ・デ・ラ・クルス、クラウディオ・ポルタロ


3)「Jone, Batzuetan / Jone, a veces」スペイン、2025年、80分、バスク語、スペイン語
監督:サラ・ファントバ(ビルバオ、デビュー作)
製作:Escac Studio / Escandalo Films / Amania Films / ECPV
脚本:サラ・ファントバ、ヌリア・マルティン、ヌリア・ドゥンホ
キャスト:オライア・アグアヨ、ジョセアン・ベンゴエチェア


4)「La buena letra」スペイン、2024年、110分
監督&脚本:セリア・リコ・クラベリーノ(セビーリャ1982、長編3作目)、第1作「Viaje al cuarto de una madre」がゴヤ賞2019新人監督賞にノミネートされた。
製作:Mod Producciones / Misent Producciones / Arcadia Motion pictures
キャスト:ロレト・マウレオン、エンリク・アウケル・サルダ、ロジェール・カザマジョール、アナ・ルハス、ソフィア・プエルタ、テレサ・ロサノ
*紹介記事は、コチラ⇒2019年01月06日


5)「La buena suerte」スペイン、2024年、90分
監督:グラシア・ケレヘタ(マドリード1962、長編10作目)、「Siete mesas de billar francés」でサンセバスチャン映画祭2007脚本賞、「15 años y un día」でマラガ映画祭2013金のビスナガ作品賞と銀のビスナガ脚本賞を受賞。
脚本:グラシア・ケレヘタ、マリア・ルイス
製作:Tornasol Media / Arlas Producciones Cinematograficas AIE / Trianera Producciones Cinematograficas AIE
キャスト:ウーゴ・シルバ、メガン・モンタネル、ミゲル・レリャン、エバ・ウガルテ、イスマエル・マルティネス(パブロ)、パキ・オルカホ、アルバル・リコ、チャニ・マルティン、ジョセアン・ベンゴエチェア、ダニエル・ビタリェ
*主な紹介記事は、コチラ⇒2016年07月05日


6)「La furia」スペイン、2025年、107分、カタルーニャ語、スペイン語(字幕上映)
監督:ジェマ・ブラスコ(バルセロナ、デビュー作)
脚本:ジェンマ・ブラスコ、エバ・パウネ
製作:Ringo Media / RM Pelicula AIE
キャスト:アンヘラ・セルバンテス(アレックス)、アレックス・モネール(アドリアン)、エリ・イランソ、カルラ・リナレス、ビクトリア・リベロ、サリム・ダプリンセ、パウ・エスコバル、アナ・トレント


★既に第1回めの上映が終わっています。以下次回に続く。
第28回マラガ映画祭2025開幕*マラガ映画祭2025 ② ― 2025年03月17日 19:07
3人の歌手フデリネ、ラ・タニア、アントニオ・オロスコで構成されたガラ

(セルバンテス劇場、3月14日)
★3月14日(現地)、第28回マラガ映画祭2025がマラガのセルバンテス劇場で開幕しました。総合司会者は、バレンシア出身の女優、TVシリーズでお馴染みのパトリシア・モンテロ(1988)が務めました。司会者は社会における文化の重要性にふれ、「文化は人々の理性や感情の発展のために重要な手段となります。なぜなら個々人の批判精神、自覚、責任と連帯などを決めるからです」と語った。またパトリシアはマラガ映画祭の先駆的特徴として、「女性シネアストの重用」を上げました。「実際に今回のセクション・オフィシアル作品の60%が女性監督です」とも語った。数えたら22作中13作が女性監督でした。

(総合司会者のパトリシア・モンテロ)
★司会者を掩護したミュージシャンたち、最初に登場したカディス生れのJudeline(本名ララ・フェルナンデス・カストロ)は、2003年生れの22歳という若いシンガーソングライター、今宵は ”Bodhitale” を披露した。中盤にラ・タニアが登場して “El emigrante” を、しんがりをアントニオ・オロスコが務め、場内から盛大な拍手を貰いました。

(フデリネ Judeline)

(ラ・タニア)
★セクション・オフィシアル審査員8名のうち、ピラール・パロメロ監督、カルロス・マルケス=マルセ監督、歌手のプチョ(ゴヤ賞2024オリジナル歌曲賞受賞)などが登壇しました。審査委員長はアルゼンチンの女優メルセデス・モランも登場してスピーチしました。審査員紹介は後日アップしますが、女性6名男性2名とここでも女性が多い。なかにチリの女優で歌手のダニエラ・ベガ、『ナチュラルウーマン』(17)で主役を演じた。本作は監督のセバスティアン・レリオが米アカデミーのオスカー像(外国語映画賞)を手にした作品でした。本祭のメインディレクターを連投しているフアン・アントニオ・ビガルの挨拶が続きました。

(司会者と審査委員長メルセデス・モラン)
★特別賞のマラガ―スール賞以下、レトロスペクティブ賞、マラガ才能賞ほか、マラガ栄誉賞などが紹介されました。金の映画に選ばれた「Furtivos」(75、ホセ・ルイス・ボラウ監督)は、公開50周年ということが受賞理由の一つのようでした。セクション・オフィシアル、アウト・オブ・コンペティション、ZonaZine、ドキュメンタリー、短編、シネマ・コシナなど、各セクション紹介があり、最後にアントニオ・オロスコがガラを締めくくりました。この後、オープニング作品、ダニエル・グスマンの「La deuda」上映に移った。

(アントニオ・オロスコ)

(左から4人め、アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテ、
マラガ映画祭総指揮フアン・アントニオ・ビガル)

(左端ダニエル・グスマン監督、開幕作品「La deuda」)
第28回マラガ映画祭2025特別賞*マラガ映画祭2025 ① ― 2025年03月14日 19:10
マラガ映画祭の〈特別賞〉マラガ―スール賞にカルメン・マチ

★第28回マラガ映画祭は3月14日に開催(23日まで)、6つの特別賞(大賞マラガ―スール賞、レトロスペクティブ賞―マラガ・オイ、マラガ才能賞―マラガ・オピニオン、リカルド・フランコ賞、ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞、クラシック映画から選ばれる金の映画)が発表になっています。コンペティション部門にあたるセクション・オフィシアル作品(今回22作)、アウト・オブ・コンペティション作品も全て出揃っていますが、取りあえず特別賞をアップいたします。アルゼンチンの俳優、コメディアンでもあるギレルモ・フランチェラが黒一点です。当ブログではスペイン語読みのギジェルモ・フランセージャでご紹介していますが、アルゼンチンではイタリア語で呼ばれている由。各賞ともキャリア&フィルモグラフィー紹介を予定しています。ビスナガ栄誉賞にはアルゼンチンのアレハンドロ・アグスティ監督受賞が発表になっています。
*マラガ映画祭2025特別賞*
◎マラガ―スール賞(スール紙とのコラボ)
カルメン・マチ(女優)、1963年マドリード生れ、17歳で舞台女優としてデビューして以来、TVシリーズ、映画にと走り続けている。当ブログでもキャリア紹介を含めて何回も登場させていますが、マラガ―スールが未だだったとは意外です。舞台女優が長かったこと、長寿TVシリーズの「7 vidas」(98話出演、00~06)や「Aida」(95話出演、05~14)出演もあり、映画で主役を演じるのは、2009年のハビエル・レボーリョの「La mujer sin piano」まで待たねばなりませんでした。そして翌年、エミリオ・アラゴンのデビュー作「Paper Birds」主演でラテンビート映画祭2010に監督と来日した。本作は『ペーパー・バード~幸せは翼にのって』で公開された。ゴヤ賞2015助演女優賞を受賞した「Ocho apellidos vascos」までのキャリア&フィルモグラフィーをアップしていますが、後日それ以降を予定しています。
*キャリア&フィルモグラフィーの紹介記事は、コチラ⇒2025年04月06日
*「Ocho apellidos vascos」の紹介記事は、コチラ⇒2015年01月28日

◎レトロスペクティブ賞―マラガ・オイ(マラガ・オイ紙とのコラボ)
ギレルモ・フランチェラ(ギジェルモ・フランセージャ、俳優、映画・舞台・TV)、1955年ブエノスアイレス生れ、祖父がイタリアからの移民。メキシコ映画の『ルド&クルシ』(08、カルロス・キュアロン)、スール賞・クラリン賞・銀のコンドル賞(助演男優)を受賞した『瞳の奥の秘密』(09、フアン・ホセ・カンパネラ)、イベロアメリカ・プラチナ賞(主演男優)を受賞した『エル・クラン』(15、パブロ・トラペロ)が公開されている。実在した営利誘拐犯を演じるのは、ストレスのたまる楽しくない役柄だったと語っている。
*『瞳の奥の秘密』作品紹介は、コチラ⇒2014年08月09日
*『エル・クラン』の主な作品紹介記事は、コチラ⇒2016年11月13日

◎マラガ才能賞―マラガ・オピニオン(マラガ・オピニオン紙とのコラボ)
エレナ・マルティン・ヒメノ(女優、脚本家、監督)、1992年バルセロナ生れ、最新作「Creatura」(23、カタルーニャ語)では、主演、脚本、監督と三面六臂の活躍、才媛ぶりを発揮している。カンヌ映画祭と併催される「監督週間」でプレミアされ、翌年のガウディ賞2024では作品賞と監督賞を受賞、ほかに助演男優・助演女優・新人俳優・編集賞を受賞している。ほかにサンセバスチャン映画祭2023ドゥニア・アヤソ賞を受賞している。既にキャリア&フィルモグラフィーをアップしておりますが、マラガ映画祭関連では、監督デビュー作「Júlia ist」(17)が ZonaZine 部門の銀のビスナガ作品賞、同右監督賞、Movister+賞を受賞している。
*「Creatura」の作品・キャリア紹介は、コチラ⇒2023年05月22日
* ガウディ賞2024授賞式の記事は、コチラ⇒2024年02月11日
*「Júlia ist」の作品紹介は、コチラ⇒2017年07月10日

★女優としてのキャリアは、ベルリン映画祭でプレミアされた後、第22回マラガ映画祭2019短編部門に出品された、イレネ・モライの「Suc de Síndria」(英題「Watermelon Juice」)に主演、銀のビスナガ女優賞、イベロアメリカ短編映画祭で主演女優賞、メディナ映画祭2019主演女優賞など受賞した。ゴヤ賞2020では監督と製作者ミリアム・ポルテが短編映画賞を受賞している。メリチェル・コレルの「Con el viento」は、マラガFF 2018 ZonaZine 部門で作品賞を受賞している。老いた母親と3姉妹という4人の女性の生き方をめぐる作品で、エレナは末娘に扮した。マラガFF でプレミアされたマリア・リポルの「No nos mataremos con pistolas」(22)は、何年も会っていなかった5人の友人の再会劇、昔の愛と傷の記憶が彼らを過去への旅に駆り立てる。アレックス・ロラ・セルコスの「Unicornios」(23、仮題「ユニコーン」)もマラガFF 出品作品、主役はグレタ・フェルナンデスですが、エレナも共演している。1979年生れの若手監督として個人的に注目しているので、以下に作品紹介をしておきます。
*アレックス・ロラ・セルコスの「Unicornios」の作品紹介は、コチラ⇒2023年03月14日

★演劇活動も活発で、バルセロナのベケット・ホールで実験演劇ラボラトリー Els malnascutsの共同設立者の一人。若者(16歳から30歳)が対象の脚本や演技のワークショップを行っている。
◎リカルド・フランコ賞(スペイン映画アカデミーとのコラボ)
ロラ・サルバドール・マルドナド(作家、脚本家、監督、製作者)、1938年バルセロナの共和派の家庭に生れる。スペイン内戦後マドリードに移り、英国学校で学んだ。1962年から70年までラジオ、新聞社、劇場、映画、TV界などで働いている。作家、脚本家、映画監督、製作者という多才なキャリアは、スペインの現代文化に不可欠な存在であり、その芸術性、社会的な影響力は際立っている。スペイン映画アカデミー AACCE、脚本家労働組合 ALMA、オーディオビジュアルメディア著作権 DAMAの創設者の一人。1980年代後半まではサルバドール・マルドナドを使用している。

★記憶に残る仕事として、1997年のピラール・ミロの問題作「El crimen de Cuenca」を上げたい。これはロラ・サルバドール自身の同名小説の映画化で、脚本も監督と共同執筆している。本作はスペイン内戦前の1910年にクエンカ村で実際に起きた冤罪事件をベースにしている。フランコ没後、既に検閲制度も廃止されていたにもかかわらず、治安警備隊による凄惨な拷問シーンが描かれていることから、彼らによる上映禁止が画策され、監督を軍法会議にかけようとさえした。本作はスペインの見せかけの民主主義が露呈した問題作、「第1回スペイン映画祭1984」で『クエンカ事件』の邦題で上映された。

(小説「クエンカ事件」の表紙)
★ハイメ・チャバリの代表作「Bearn o La sala las muñecas」(83、「ベアルン」)と「Las bicicletas son para el verano」(84、「自転車は夏のために」)の脚本を執筆している。2作ともスペイン映画史に残る名作、前者はリョレンソ・ビリャロンガの同名小説の映画化、後者は俳優、監督、戯曲家でもあったフェルナンド・フェルナン=ゴメスの戯曲の映画化である。カルロス・モリネロとタッグを組んだ「Salvajes」(01)はホセ・ルイス・アロンソ・デ・サントスの同名戯曲の映画化、ゴヤ賞2002脚色賞を監督などと受賞している。同監督とはドキュメンタリー「La niebla en las palmeras」がトライベッカ映画祭2006審査員賞にノミネートされている。ほかにキューバの女優ミルタ・イバラの監督デビュー作「Titón, de La Habana a Guantanamera」(08、ドキュメンタリー)の脚本を執筆している。ティトンとはイバラの亡夫トマス・グティエレス・アレア監督の愛称、サンセバスチャン映画祭のオリソンテス・ラティノス部門に正式出品された。
★上記以外の受賞歴では、2011年芸術功労賞金のメダル、2014年映画国民賞、2021年シモーヌ・ド・ボーヴォワール賞などを受賞、2023年カタルーニャ映画アカデミー名誉会員、2024年DAMA名誉会員になっている。
◎ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞
マリア・ルイサ・サン・ホセ(女優)、1946年マドリード生れ、非常に若いときからマドリード・フィルム現像所でモノクロの現像やフィルム編集などの分野で働き始める。その後、国際ラジオ放送局のアナウンサーの研修生になる。続いてスタジオ・モロの宣伝モデルになり、1965年、マルセル・オフュルスの「Hagan juego, señoras」(仏西合作)で映画デビューする。主にフランコ没後の民主主義移行期、Tercera Vía(第三の道)運動と称されたグループの作品に出演している。人気はあるが質的に劣る、あるいは良質だが観客がそっぽを向いて不人気、そのどちらでもない良質で興行的に成功する「第三路線」を目指した運動。

★ペドロ・ラサガのコメディ「Hasta que el matrimonio nos separe」(77、ホセ・サクリスタンと共演)、未公開だが『欲望 BESTIA HUMANS』の邦題でTV放映されている。エロイ・デ・ラ・イグレシアの「El diputado」(78、ホセ・サクリスタン、ホセ・ルイス・アロンソと共演)は、およそ20年後の東京国際レズ&ゲイ映画祭1999で『国会議員』の邦題で上映された。そのほか主役ではないが、名脚本家と言われたラファエル・アスコナが執筆したアントニオ・ヒメネス・リコの「Soldadito español」(88)、カルロス・サウラが自身の少年時代を投影させた「Pajarico」(97)では、少年の叔母役で出演した。本作は「スペイン映画祭1998」で『パハリーコ―小鳥―』の仮題で上映されている。ホセ・ルイス・ガルシア・サンチェスの「Adiós con el corazón」は良質のコメディで、フアン・ルイス・ガリアルドがゴヤ賞2001主演男優賞を受賞している。その他、アナ・マリスカル、ハビエル・アギーレ、マリアノ・オソレス、ゴンサレス・シンデ、ロベルト・ボデガス、ペドロ・オレアなど多くの監督に起用されている。

(ホセ・サクリスタンと夫婦役を演じた『国会議員』のフレームから)
★TVシリーズ出演も多く、ナルシソ・イバニェス・セラドールの「Mañana puede ser verdad」(64)、70年代からは、「Animales racionales」(72~73、4話)、フェルナンド・フェルナン=ゴメスと共演した「El pícaro」(74)、ヘスス・プエンテと共演した「Diálogos de un matrionio」(82、13話)、テレノベラ「Nada es para siempre」(00)、歌手ロシオ・ドゥルカルと共演した「Los negocios de mamá」(97、13話)、ホルヘ・サンスが主演した「El inquilino」(04、13話)などが上げられる。
★舞台女優としては、1964年、ホセ・オスナ演出の「Golfus de Roma」で初舞台を踏む。イギリスの劇作家エムリン・ウィリアムズ、スペインではガルシア・ロルカ、ホセ・ルイス・アロンソ、アドルフォ・マルシリャチ、ミゲル・ナロス、フランシスコ・ニエバ、ギリシャ悲劇を代表するソフォクレス、シェイクスピア、ロペ・デ・ベガ、カルデロン、オニールなど、現代劇からギリシャ古典劇まで守備範囲は広い。1974年ルイス・ブニュエル新人賞、1975年ア・コルーニャ映画祭トーレ・デ・ヘラクルス賞、2009年ムラ・セグンド・デ・チョモン栄誉賞、2022年ビジネス・プロフェッショナル・ウーマン BPW 組織化に寄与したことで平等発言賞などを受賞している。
◎金の映画
「Fultivos」(1975)、監督ホセ・ルイス・ボラウ(1929~)、日本のスペイン映画元年と言われた「スペイン映画の史的展望〈1951~1977〉」(1984年10月開催)に『密漁者たち』の邦題で上映されている。後日紹介予定。

(ポスター)
◎ビスナガ栄誉賞
アレハンドロ・アグレスティ(監督、脚本家、製作者)、1961年ブエノスアイレス生れ、後日紹介記事を予定しています。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2025年03月31日

(アレハンドロ・アグレスティ)
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