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面白い原著論文見つけた。 Levy小体病における幻覚とザシキワラシ(座敷童子)との類似点ー民俗学史料への病跡学的分析の試み(神経内科 2016;84:513-9) 獨協医大神経内科から
2016-08-15 17:22:22【背景・目的】ザシキワラシの文献での初出である柳田国男『遠野物語』は佐々木喜善の語りを書き起こしたものである。佐々木による多数のザシキワラシの逸話が『奥州のザシキワラシの話』にまとめられている.これらの逸話にLevy小体病の幻覚との類似点があるかどうか検討した.
2016-08-15 17:26:44【方法】民俗学的史料への病歴に準じた分析にあたり条件を設定した.パーキンソン病でみられる幻視の特徴を参考に,覚醒時or睡眠時の別,周囲の環境の別が特定もしくは推察できる記述のあるもの,また,「言い伝え,昔話である」と明記されておらず,ザシキワラシの経験者が特定できる逸話のみを抽出
2016-08-15 17:30:46【結果】遠野地方で55話,遠野以外の奥州の23話の計78話の小節に105例のザシキワラシの逸話が挙げられていた.そのうち詳細が記述されているものが61例あり,「臥している時」など睡眠中であると推定できるものを睡眠時とし,それ以外を覚醒時とした.
2016-08-15 17:33:57その61例でザシキワラシの経験者が「祖母」や「爺様」,「家の人」など特定できるものは52例あった.35例が覚醒時で16例が睡眠時であった.経験者は,48例が成人であり,残り4例は子供であった.男性は21例,女性は9例,性別不明が18例であった.
2016-08-15 17:39:26経験されたザシキワラシのうち「子供,童子」とされているのは24例で,残りの28例はザシキワラシとは呼ぶものの子供以外であった.ザシキワラシの姿が見られたのは34例で,音声は18例,気配のみが3例であった.子供の場合でも大きさが「3寸」など現実の人間より小さいものが2例あった.
2016-08-15 17:44:4672%は座敷,奥座敷,土蔵などの薄暗い環境が示唆された.時間が特定されたのは覚醒時7例,睡眠時1例であった.覚醒時・睡眠時ともに視覚性のものが最多であったが,覚醒時には触覚をともなわなかった一方で睡眠時には56%にあたる9例でくすぐられるなどの触覚を伴うものがあった.
2016-08-15 17:48:02【考察】ザシキワラシとLevy小体病の共通点 ・薄暗い環境での幻視 ・恐怖心を伴わない ・夜間睡眠時の幻触(ナルコレプシー様の睡眠開始時REM睡眠) ・起床時の枕や布団の散らかり(REM睡眠行動障害)(ザシキワラシのいたずらによる枕返し・布団はがしに相当するもの) ・
2016-08-15 17:56:03【結論】ザシキワラシ伝承とLevy小体病の幻覚には多くの類似点を認めた.ザシキワラシ伝承の始まりにはLevy小体病と共通する生理学的機構が介された可能性がある.
2016-08-15 17:58:46