teruyastarはかく語りき

TVゲームを例に組織効率や人間関係を考える記事がメインのようだ。あと雑記。

学生のうちに読んでおきたい「闇金ウシジマくん」「ナニワ金融道」


闇金ウシジマくん 14 (ビッグコミックス)


ウシジマくんは、トサン(10日で3割の利子)、トゴ(10日で5割の利子)
という法律違反の暴利でカネを貸す「闇金」が主人公の話。
読むだけで滅入る漫画なので、読むのは精神状態が良好のときにしたい。



ナニワ金融道(5) (講談社漫画文庫)


ナニワ金融道は、年率40%(当時)の法律規定で貸す「街金」(消費者金融)の話。
こっちは担保や信用を取り、法に基づいて動き、細かい法律的な話含め、
社会で働くそれぞれの思惑や商売上のごまかし方、抜け穴など
いろいろ為になる話も多い。



友人に勧められて最近読んだのだけど、
これは学生の時に読んでたら
僕自身、結構意識変わってたろうなと思う。


世の中、頭のトロい奴が食い物にされる


この2つの漫画では、様々な騙し方でハメられ
落ちていく債務者が描かれる。


欲をかいたり、単に迂闊で、洞察力もなく、知識も無い、
「ちょっとした事を知らなかった」「気づかなかった」だけで、
人生を持っていかれる。

無知であることが罪かのように。



そういう「失敗例の宝庫」としてみると、
これらの漫画にはとても価値がある。
つまりゾッとする「他人の失敗例」を強く印象づけておくことで、
同じ失敗へおちいらないよう意識を高く保てる。


なぜ学生は、社会で使うわけでもない勉強を今しないといけないのか?


この漫画からひとつ言えるのは、
自分の頭で考えて、騙されないためにだ。


「わけわからん古文(契約)を読み解く国語力」
「原材料や物が出来上がる仕組みの基礎である理科」
「その物が動く原理を学ぶ物理」
「歴史と社会情勢の成り立ちとルールをその原因から学ぶ社会」
「複利も学べる算数。会計、金融にも繋がる数学」


そういう土台となる地頭を鍛えておかないと、
分からない。気づかない。
応用ができなくなる。


「別に、借金さえしなければいいんでしょ」という話ではない。
詐欺に巻き込まれるのは、家族、恋人、同僚、友人、社長など、
付き合い上「完全に無視して手を切るわけにはいかない」ところから、
自分も徐々に巻き込まれるパターンもたくさんある。
そのために、知っておいたほうがいい知識はもちろん、
洞察力につながる学問をきっちり学んでおく実感が高まる。


搾取される側の悲劇


こういう漫画を見て強烈に思うのは、
「低学歴ヤバい」
「搾取される側は悲惨だ」

ということ。
(ナニワ金融道は借金だけでなく
真面目な労働者や資本主義の矛盾みたいなことも結構書いてある)


学生の内に読んだほうがいいというのは、
「社会人直前に読め」ということではなく、
在学中に読むほうがより危機意識が高まり、
勉強することの価値をより強く感じると思うから。


世間的な常識として、「いい大学といい就職先のための勉強」と
親や先生から言われてもリアリティが薄いけど、
ウシジマくんのような描写で描かれると、
「こうなったらまじヤバイ」という、
胸に締め付けられるものがあるので
こういう毒のある漫画のほうが教育効果高いんじゃないだろうか。


社会人になる前に、毒の耐性を高める


風俗や暴力関係のエログロ描写や、
ある意味「悪いことにはまらない知恵」というのは
「悪いことをする方法」も同時に学ぶわけで、
一種の毒ではあるのだけど、
社会にでる前こそ、ある意味漫画ごしだからこそ、
こういう毒にちょっとづつ耐性をつけること
が必要と僕は思う。



以下はそれぞれ読んだ感想。


ウシジマくん初期エピソードと、最近のエピソードの結末の違い

闇金ウシジマくん 23 (ビッグ コミックス)


まだ連載中なんだけど、
連載初期は犯罪そのものの結構えげつないハメ方で金をぶんどったり、
風俗に沈めたりして、
それぞれのエピソードにまったく救いがなく後味が悪い。


でも、後半に当たるエピソードの登場人物はマイナスになったり、
手ひどいダメージを受けたとしても、
一応前向きに再スタートするというなんとかいい形で終わる。
なので後半のエピソードの方が読んでる側としても
精神衛生上良かったりする。



漫画でこういう方向性の転換があるのは、
アンケート結果や編集者に左右されるというのをよく聞くのだけど、
ウシジマくんも、さすがに週刊誌として読者の気持ちを沈める漫画は
一部強烈に反響悪かったのでは? と考えてしまう。


個人的に、より「毒耐性」として有効なのは
後味が悪く救いのない結末の方だと思うので、
その方が「ウシジマくん」としての価値を高めるのではと思うのだが、
連載できなくなるのも問題だし、
今の人気は上がってるのか下がってるのか興味ある所。

ほんとに「ウシジマくん」は存在するのだろうか?


漫画は「リアル」ではなく、「リアリティ」なんだと言われるけど
借りる人の描写には物凄い「リアリティ」がある分、
取り立てる「ウシジマくん」の方は
ほんとに法的にも危険なやり方が成り立つのか?
という疑問は残る。


闇金ウシジマくんの取材協力者の話。

Business Media 誠:『闇金ウシジマくん』の関係者が語る、“優しい闇金”の真相(後編) (1/2)
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0910/19/news011.html


僕は漫画『闇金ウシジマくん』のストーリー作りに協力している。
主人公のウシジマくんは正規業者でありながら、
ヤミ金業者のように振る舞っている。
客が逃げるとつかまえて、縛って、竹刀で叩いて……
といった感じでとにかくすごい。


しかしウシジマくんのようなタイプは前近代的。
実際、ヤミ金業者の人に『闇金ウシジマくん』を読んでもらったところ、
「こんな人はいないよ」と言われてしまった(笑)。
ウシジマくんのような正規業者でありながら、
暴力的な取り立てを行うことは漫画の世界の話。
現実は違う。

またソフト闇金の中でも、金利が40〜80%で貸しているソフトな業者と、
金利は高いが応対がソフトな業者――この2つのタイプがある。
実際に、応対がソフトな闇金と借りている人の会話を聞いてみたところ、
友だちのような感じだった。


例えば「またギャンブル? しょうがないねえ」
といった感じで話していることが多い。
借りる側が「貸してよ」といえば、ソフト闇金はすぐに貸してくれる。
「今週、返済がきついんだけど」ということであれば、
「じゃあ、ジャンプ(繰越す)して、来週で」といった感じだ。


そうした会話の中に威圧的な言葉はないが、
ルールを踏み外したときには「やるよ!」
「長い付き合いだから、分かるだろう!」といった雰囲気も漂っていた(笑)。
しかし基本的には信頼関係のようなものを築いていて、
正規の業者と比べ“ウェット”な関係だ。
こうした関係の中で、
ソフト闇金は5万円や10万円といったお金を出し入れして稼いでいる。
(ç•¥)



警察は「お前、ヤミ金だろう」と問い詰めてみるものの、
その男は強気な姿勢を崩さなかった。
「ナニ言ってるんですか? 僕は彼女の友だちで、
 彼氏のことで相談を受けていたんですよ」と反論した。


さらに「彼女は僕のことを何て言っているんですか?」と、警察に質問した。
なぜその男は警察に対し強気でいられるかというと、
彼女が裏切らないということを分かっていたから。
その男は彼女に何年もお金を貸していたので、
自分を裏切れば彼女はどうすることもできない、
ということを分かっていた。

つまりその男と彼女の間には、ヘンな信頼関係ができていたのだ。
(ç•¥)


またこの問題は民事不介入なので、
被害者本人が訴えないと、警察は動いてくれない。
ソフト闇金のうまいところは、お客に被害者意識を持たせていないところ。
自分が被害者だと感じなければ、その人は警察や弁護士に相談しないからだ。


こういう描写は確かにウシジマくんにも出てくる。
しかし、それだけだとウシジマくんが目立って活躍することはない。
漫画としても成立しづらい。
そこで前近代的な「ウシジマくん」を漫画的に描くのだけど、
でも本当に怖いのは「ウシジマくん」ではない。


ウシジマくんが出てこないエピソード


最近はそういうエピソードが増えたけど、
この漫画は取材にもとづく「弱い人のリアリティ」こそ
胸に訴えるものがあるので、
別にウシジマくんみたいな取り立て超人が出てこなくても
闇金があるだけで成立する。


むしろほっといても自堕落に落ちて行く人間こそ怖い。
弱い人間が一番怖い。


だからウシジマくんがほとんど出てこなくてもストーリーは進められ
逆に、ウシジマくんが普通な人ほど弱い人間が引き立つので、
そういう意味でも、現在の路線変更になってるかもしれない。


だから「ウシジマくん」がどうあろうと、
この漫画の価値は「弱者のリアリティ」にこそあると僕は思う。


ナニワ金融道

ナニワ金融道(4) (講談社漫画文庫)


昔BSマンガ夜話にも取り上げられ、
見てみようと思いつつ今日まで読まなかったのは
絵がへ、、絵に味わいがありすぎて好みと違ったのと、
字が多すぎてマンガとしては楽しめなさそうだったから。


でも、読んでみたらかなり面白かった。
特に後半、
主人公に彼女ができてその女がやたら機転がきく出来た女だったり、
相手側も、マルチ商法や主人公達を謀る詐欺集団だったり、
それまで貸す側のワンサイドゲームになりがちだった話を
お互い高度な騙し合いの様相になって来るあたりは
ちゃんとマンガとしての面白さと、
金融詐欺の細かい話が見事に昇華されている漫画だと思う。

けっこう下品な作品


言葉の使い方や、エロ描写(この絵でエロとは言わないけど)など、
リアリティといったら、リアリティなんだが、
もうちょっとなんか表現方法なかったかなあと。


いや、真面目な人が読むとそういうところだけで
「読む価値なし」と判断されてももったいないので、
それが作者の味として読者が慣れるよう期待したい。


主人公が勤める帝国金融は現代も成立するか?


例えば作中、金利40%となってるけど、
バブル終わりの90年代の話であって
2011年現在はグレーゾーン金利も廃止され「利息制限法」で最大20%。
しかも総量規制で、年収の3分の1までしか借りれないことになってる。


そのせいで小規模な消費者金融はバタバタ潰れてるので、
帝国金融も正直厳しい所だろう。
この規制で多重債務へは発展しにくくなって、
そういうストーリーは成り立たなくなる。


作者は故人となってしまわれたが、
青木雄二プロダクションから、
「新ナニワ金融道」が2000年代から連載してるようだ。
新ナニワ金融道 12 (SPA COMICS)新ナニワ金融道外伝 3 無惨禿頭詐欺!!編 (GAコミックス)


これはこれで、時代にあったナニワ金融道を読めるかもしれないので
今度ネットカフェでもいったときに物色してみたいと思う。

マルチ商法の人達の本音


物語後半で出てくるマルチ商法の人達が本音を漏らすシーンがある。

この仕事は、人間が長い人生で培ってきた
友人知人の縁をきれいさっぱり現金に変えてしまうものなんや。


法的には無店舗販売として問題ないものの、
末端の会員(消費者)が割を食うのでその説得ための品質だの、
週1回の決起集会だの、
マルチ商法で稼げる人、稼げない人の思考回路対比が見てて面白い。


マルチは夢を持ち、製品の中身の質を自分では正確に判断できない人、
かつ社会経験に揉まれてない、主婦、公務員、
特に毎年の新社会人、大学生などターゲットにされやすい。


しかし、このエピソードでは本音を語るところまでで
別にマルチ商法を倒すとか、
マルチから騙し取るいう結末にはならない。
それがほんとに高品質で良心的な価格でも、
漫画のように実際は二流品を掴まされても、
結局、製品の品質に買う側が納得してそれを使うのであれば
れっきとした合法商売ということなんでしょう。
ほんとに高品質で良心的な価格なら
人間関係がどうこうということも無いだろうしね。


したたかすぎる登場人物達を見て


ホステスだろうが、どこぞの社長だろうが、
印刷会社、大家、ヤクザだろうが
この漫画の人物はみんな裏でぼったくるねw


でもそれは商売としては当たり前かもしれない。
一見さんには厳しく、相場も何も知らない人から取れるだけ取る。
しかも、自分の社員や舎弟の無知にすら容赦無い感じは
社会の現実として学生の人は知っておいて損はないと思う。


相見積もりなどの交渉、
社員として成果を上げ、
給料の交渉を出来る立場としての人材紹介会社(人材派遣ではない)への登録とか、
あるいは経理に近い人への接触も含め、
自社であれ、他社であれ、製品やサービスの
自分から見えないブラックボックス部分をすぐに仮説検証、
仮計算して数字に出来るか?

というのは、大事なことだとこの漫画を通じて感じるしだいです。


他人の失敗から学べ。
全部を自分で体験できるほど長生きはできないのだから。


マーク・トウェイン


闇金ウシジマくん 1 (ビッグコミックス)新ナニワ金融道1 復活銭闘開始!!編 (GAコミックス)新ナニワ金融道外伝 1 驚愕借金粉砕!!編 (GAコミックス)ナニワ金融道 全10巻セット  講談社漫画文庫