こにしき(言葉・日本社会・教育)

関西学院大学(2016.04~)の寺沢拓敬のブログです(専門:言語社会学)。

「日本人の英語力は92位」という怪しいランキングを吹聴する人がいますが、マスメディアや識者は安易に飛びつかないようにして下さい。

お断り:この記事は,1年前のほぼ同名記事を,ごく一部に加筆したうえで,再掲したものです。 怪しい英語力ランキングの季節 11月は,英語教育関係者にとって頭が痛いニュースが流れる時期です。 それは,「日本の英語力は世界で××位!また下がった!えらい…

EF英語力ランキング2024発表直前!緊急討論スペース

2024年11月11日(月)の22:00から「EF-EPI 英語能力ランキング2024,発表直前緊急討論スペース!」を開催します。 twitter.com 共同ホストに,「英語業界のおかしなランキングを考える会」の会員の3名(以下)をお迎えしてお送りします。 奥住桂埼玉大学准教…

刊行!和文文献で史上始めての言語政策論の教科書

先月,『言語政策研究への案内』という本が出ました。 言語政策研究への案内|くろしお出版WEB 和文文献ではおそらく史上初の言語政策論の教科書です。 私も「第3部第5章 量的研究」というメソドロジーの章を担当しています。 内容は,統計的アプローチに関…

11月16日,日本語教育学会で発表します(パネルセッション:日本語教育政策研究における社会調査と二次分析)

2024年度秋季大会|大会・イベント|日本語教育学会 https://www.nkg.or.jp/event/taikai/20240528_2638751.html 日本語教育政策研究における社会調査と二次分析 神吉宇一(武蔵野大学) 寺沢拓敬(関西学院大学) 佐藤剛裕(横浜デザイン学院) 本林響子(…

言語社会学ワークショップで講演(2024年9月28日@東大駒場)

9月28日15時より,東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻・本林響子さん主催<言語社会学ワークショップ>で講演します。 以下引用。 第3回 言語社会学研究ワークショップ 「ことばと社会」に関する研究は昨今急速に広がりを見せ、言語社会学・言語…

テキストマイニングで書かれた論文を査読するのは難しい

テキストマイニングを分析手法に使った学術論文が増えているけれど,これの学術的評価(具体的には査読)はめちゃくちゃ難しくないですかという話です。 私の業界では,既存のソフトやサービスに突っ込んだだけで自前で細かい下処理・プログラミングを行って…

国際英語論はメリトクラシーを乗り越えられるか

こちらの記事の続き 国際英語の既存の規範を言語差別・マイクロアグレッションと厳しく批判する論文(かどや,2023) - こにしき(言葉・日本社会・教育) 反差別英語教育論と国際英語論 - こにしき(言葉・日本社会・教育) メリトクラシーという難題 もう…

反差別英語教育論と国際英語論

以下の記事の続き。 国際英語の既存の規範を言語差別・マイクロアグレッションと厳しく批判する論文(かどや,2023) - こにしき(言葉・日本社会・教育) 反差別英語教育論との関係 では,同論文の評者なりの文脈化を行う。 まず指摘したいのは,先行実践・…

国際英語の既存の規範を言語差別・マイクロアグレッションと厳しく批判する論文(かどや,2023)

以下は,かどやひでのり著「英語のなにが問題で,なにがなされるべきか―国際英語における言語規範の自律化と解放」(『ことばと社会 多言語社会研究』25号[2023年]所収)の論文評である。 かどや論文(以下「同論文」)は,一言でいえば,国際英語に関する…

ネット調査(など)の補正が応用言語学調査でも可能なのかを論じた論文が出ました(Research Methods in AL)

私の論文が、Research Methods in Applied Linguistics に掲載されました。 Terasawa, T. (2024). More accurate estimation for nonrandom sampling surveys: A post hoc correction method. Research Methods in Applied Linguistics, 3(3), 100152. https…

アジア30カ国の英語格差を比較計量分析した論文が出ました(World Englishes 誌)

アジアバロメーターを使ってアジア30ヵ国の英語格差の程度とパタンを比較した論文が出版されました。興味がある方はメッセージくださればPDFをお送りします。 Terasawa, T. (2024). Relationship between English proficiency and socioeconomic status in A…

ゼミで実験的にCDA実習を行いました。

私の社会学部のゼミ(社会言語学/言語社会学)では,今年度,新趣向として実験的にCDA(批判的ディスコース分析)を取り入れています。 CDAのよいところは以下。 実際に経験的分析を行わせやすい 他方で,人対象の調査ではなくドキュメント分析が主であるた…

6月23日,CELESで「英語力ランキング批判」という共同発表を行います

6月22-23日に富山大学で行われる中部地区英語教育学会で,奥住さん(埼玉大学)・浦野さん(北海学園大学)と「英語力ランキング批判:EF-EPI,TOEFLスコア,英語教育実施状況調査」という口頭発表を行います。内容は,タイトルそのまんまです。 タイトル 英…

共著論文出ました:大学英語入試改革(四技能試験)の政策過程分析

私たちの論文が Current Issues in Language Planning から出版されました。筑波大院生の須藤爽さん,ブリティッシュコロンビア大学PhD Candidates の梶ヶ谷毅さん・青山 良輔さん,同大教授の久保田竜子さんとの共著です。 Terasawa, Takunori, So Sudo, Ta…

久保田竜子先生講演会(6月8日,土曜日)

2024年6月8日(土)の関西学院大学大学院言語コミュニケーション文化学会2024年度講演会において,ブリティッシュコロンビア大学の久保田竜子先生に講演頂きます。 タイトルは「言語教育における人種とことば:交差性に根ざす正義を目指して」。一般参加も可…

自宅を引っ越しました(住所更新のお願い)

私の自宅住所をご存知の方へ(おもに出版社の方?)。 2024年5月27日に新しい住所に引っ越しました。 マンション内引っ越しなので,マンション名までは同一です。 古い住所の部屋番号三桁に「100」を足して「1」を引くと新住所です(要するに+99)。 例(架…

英語教育政策論 (3):英語教育政策をめぐるイデオロギー

某授業で作った英語教育政策概論のハンドアウトを,こちらに少しづつアップしていきます。きちんとした文章化はしていませんので,理解しづらい部分があったらすみません。質問があったら遠慮なくコメント欄にどうぞ。 一連の記事はこちら イデオロギー イデ…

対応分析 ca() の出力を maptools() で自動的に描画するR関数(カテゴリ数が多い集計表向け)

対応分析 ca() の出力をデフォルトで出力しようとすると,カテゴリ数が多い集計表だと字が重なって何がなんだかわからなくなります。 # Rデフォの swiss データを使った描画 res.ca <- ca::ca(swiss) plot(res.ca) これを解決するためにmaptools()が便利です…

英語教育政策論 (2):政策過程

某授業で作った英語教育政策概論のハンドアウトを,こちらに少しづつアップしていきます。きちんとした文章化はしていませんので,理解しづらい部分があったらすみません。質問があったら遠慮なくコメント欄にどうぞ。 一連の記事はこちら 政策過程の「理念…

PC、買い替えて最初に入れたソフト

PCを買い替えたのでメモ(以前の状況(5年前)) Adobe Acrobat Aspell(新しい秀丸ではWin10以降の標準辞書を使えるので不要。設定をen-USではなくen-CAにするとブリティッシュスペリングにも対応) CCleaner Open Shell Dropbox DeepL desktop Evernote Fi…

英語教育政策論 (1):政府の統制と現場の自律性

某授業で作った英語教育政策概論のハンドアウトを,こちらに少しづつアップしていきます。きちんとした文章化はしていませんので,理解しづらい部分があったらすみません。質問があったら遠慮なくコメント欄にどうぞ。 事前・事後統制:政府の統制と現場の自…

奈良教附属小「代名詞の指導不足」という意味不明

一昨日,奈良教育大学附属小学校の「不適切」な教育課程が,フジサンケイ系のメディアで報道されました。 大半に「国歌」指導せず、道徳は全校集会で代替 国立奈良教育大付属小、法令違反教育常態化 - 産経ニュース それを受けて,昨日,学校側が記者会見を…

「日本人就労者の英語使用調査 2021-22」サイトを開設しました。

以前に行った「日本人就労者の英語使用調査 2021-22」のウェブサイトを開設しました。 https://english-use-in-japan-survey.jimdosite.com/ 調査開始直後から,以下のブログページで調査の概要を説明していました。 terasawat.hatenablog.jp しかしながら,…

言語経済学と言語能力の商品化:日本における英語力の賃金上昇効果を中心に

※以下は,こちらの原稿の下書きです。 1. はじめに 本稿では、言語の商品化を構成する諸現象のうち、言語能力に注目する。つまり、「言語能力の商品化」を検討する。 言語の商品化と一口に言っても多様な現象を含む。ただ、諸現象が必ずしも厳密に区別されて…

批判的応用言語学と権威主義(あるいはミーハー志向)

批判的応用言語学の「批判的」とは,狭い意味での「批判的思考」(いわゆるクリシン)を意味するものではなく,あらゆるタイプの観念・知・体制に対する根本的な批判です1。(近代を特徴づける学問知,言語観,社会観,文化観,教育観 etc.) しかし,なんで…

木村 2021「ポストモダン言語論を問いなおす」論文,読後メモ

先日のこちらの読書会 での論文メモ。 非常に示唆に富む論文で,考えたいことが山のように湧いてくる素晴らしい論文でした。以下にダラダラと書いていますが,個人的にもっとも響いたのは,「自明なことをなぜわざわざドヤ顔で言うの?」という話です。これ…

メモ:科学的英語学習論における「科学的」の2つの意味。

A. 既存の科学との連続性 科学としての権威が高いほかの学問(典型的には自然科学,ただしメソドロジー学問[統計学等]は除く)と何らかの接続をすること B. 手続きの洗練度 データに基づく因果推論,および,変数作成の手続きの透明化 ↓ ↓ ↓ Bあり Bなし A…

お知らせ:修論指導に関して

私(寺沢拓敬)は,2024年度から,関西学院大学大学院言語コミュニケーション文化研究科における修士学生を受け入れるようになりました。いわゆる「修論の指導教員」という意味です。私の研究室で修士学生として研究を希望される方は同研究科受験をご検討く…

「日本人の英語力は87位」という怪しいランキングを吹聴する人がいますが、マスメディアや識者は安易に飛びつかないようにして下さい。

お断り:この記事は,1年前のほぼ同名記事を,ごく一部に加筆したうえで,再掲したものです。 怪しい英語力ランキングの季節 11月は,英語教育関係者にとって頭が痛いニュースが流れる時期です。 それは,「日本の英語力は世界で××位!また下がった!えらい…

(追記:録音アップしました)EF英語能力指数2023発表直前緊急スペース開催

後日談(追記 2023年11月18日) 無事にスペースが終了しました。録音がありますので,様子を知りたい方はお聞きください。途中で音声トラブルが発生し,前半と後半にわかれてしまいました。 前半:https://twitter.com/i/spaces/1dRKZEwbRerxB?s=20 後半:ht…