Tansaが国葬文書の開示を求めて提訴したことは、スローニュースと日刊ゲンダイが報じた。
【スローニュース】
「国葬文書」隠蔽を非営利メディアTansaが提訴!情報公開の形骸化は民主主義の危機だ
【日刊ゲンダイ】
「安倍国葬文書」隠蔽で国を提訴 非営利報道機関「Tansa」が“閣議決定政治”に一石
スローニュースと日刊ゲンダイの記事からは、ジャーナリズムの実践を職業とする者同士、共に闘うぞという意思が感じられる。
これは、報道機関として当たり前の姿勢だ。
政府は、国葬に関する重要な文書を「記録を取っていない」「捨てた」と主張している。コントのような話だ。先日、イギリスのジャーナリストと話をする機会があり、国葬文書の件を話したら、彼女は爆笑していた。別件の議題があってミーティングをしていたのに、笑いが収まらずその議題にスッと戻れなかった。
ここまで為政者にバカにされて、「ああ、そうですか」と報道機関が見過ごせるわけがない。
ところが、見過ごす人たちがいた。「記者クラブメディア」の人たちだ。
怒りはどこから結集するのか
提訴した9月30日は、2回記者会見した。
一つは、Tansaと弁護団が所属する自由人権協会が主催の記者会見。自分たちで会場を借りて開いた。
もう一つが司法記者クラブでの会見だ。東京地裁が入る建物の中に司法記者クラブはあり、裁判の取材を担当する各社の記者たちが詰めている。提訴の記事なら書くだろう、そうすれば今回の裁判がより広く伝わると考えた。起訴状はもちろん、これまでの経緯をまとめた資料、問題点をクリアに理解してもらうための図まで用意した。
司法記者クラブに所属する5、6社の記者が、会見に参加するにはした。だがどこも報じなかった。
そもそも参加しなかった社が多い。司法記者クラブで各社は、個室を与えられていて、会見場までは徒歩10秒前後。それでも部屋に閉じこもって出てこない。
記者クラブメディアの人たちに悪気があるとは思わない。鈍感で怠慢なのだ。その方が無自覚な分、恐ろしい。
情報公開法という法律をないがしろにしてでも、国家運営の重要な情報を隠す。記録し、公開し、検証するという民主主義の基本を破壊する。このような行為を政府に許しているのは、権力監視という報道機関としての務めを果たしてこなかったからだ。その自覚がないのだ。
岸田首相が、国葬を閣議決定で実施することについて「内閣法制局としっかり調整した」と発言したのは、2022年7月14日の記者会見のことだった。その後、Tansaが「しっかり調整した」記録を開示請求した。官邸側の主張は「記録を取っていない」「捨てた」。
この官邸側の主張は、「記録・保存に値するような協議はしていない」と言っているのに等しい。記者たちは、岸田首相に記者会見で「しっかり調整した」と嘘をつかれたことになってしまう。なぜ、怒らないのか。
怒りが結集しないと、政府には勝てない。だがどこから、怒りが集まってくるだろう。
市井の人たちからだと私は思う。Tansaの今回の裁判を応援するため、寄付をしてくれた人たちからのメッセージを読んでいると、怒りが伝わってくる。この熱が社会に伝播していくことで、事態は変わる。
編集長コラム一覧へ【寄付者からのメッセージ】
「国民は、徹底的に舐められてます」
「国会に諮らず、重要事項を閣議決定で済まし、情報公開、公文書管理を意図的に崩壊させることは許されない。Tansaの提訴に当方の怒りを上乗せします」
「本来、国会で十分審議されるべき重大事案が、閣議決定の名のもとに、国民を軽視し、いとも簡単に進んでいく。 そして、メディアも野党も追及しない。 こんなのあり、これでいいの!! の思いがずっとくすぶってました。 今回、Tansaの提訴は私の喜び希望です。 風穴を開けるよう応援しています」
「 閣議決定で、どのように討論されたのかも明らかにできない国は、お金を出した国民をばかにした、民主主義の国とはいえません」
「記録は国民の財産です」
「ニュースで見て対応の酷さに驚いた問題だったので、Tansaさんが切り込んでくれて嬉しいです。 応援してます」
「うまく風穴があいて、充満した煙が一掃される日が1日でも早くきますように」