出馬表明の記者会見をした頃の宇都宮は、市民本位の選挙を進めようとしていた。(会見は5月27日)
記者会見後、田中とジャーナリストの横田一は宇都宮にぶら下がり、野党との選挙協力について尋ねた。
宇都宮は次のように答えた―「野党はあっちに行ってろという考え方なんだ」「私が候補者兼事務局長兼選対本部長みたいかなあ」
野党共闘信者には信じ難いだろうが、ねつ造ではない。音源がある。
前回(2016年)の都知事選挙で、宇都宮は民進党(現立憲)の枝野幹事長(当時)と共産党の小池書記局長から引き摺り降ろされた。
7月11日午後5時30分頃、宇都宮は2人からホテルニューオータニに呼び出され、撤退を迫られたのである。告示3日前のことだった。
宇都宮は野党の御都合主義に振り回された苦い苦い経験を持つ。それだけに今回こそ市民本位の選挙を戦いたい、という信念を強く持っていた。
ところが選挙戦が始まると様相は違っていた。街頭演説が事態を象徴していた。まず野党幹部が入れ替わり登壇して長広舌をふるう。これで1時間を超す。聴衆が疲れたところで、やっと宇都宮が登場する。
立・社・共の3党合計して、支持率がやっと二ケタに乗る。お世辞にも人気があるとは言えない野党各党の幹部が延々演説をぶつのだ。これを好んで聞きたいと思う有権者がどれほどいるだろうか。
「政党のための選挙になっている」。宇都宮選対の内実に精通した人物はこう指摘する。
築地女将さん会は、築地市場の移転問題で奔走してくれた宇都宮に絶大な信頼を寄せる。ただ選挙になると微妙なズレが出てくる。
女将さん会のあるメンバーは「宇都宮さんをもちろん尊敬している」としながらも「●●党に利用されたくないから」と言って政党色の強い街宣などとは距離を置く。
深刻なのが選挙ボラだ。ある男性ボラ(30代)は「宇都宮さんの選挙を手伝いたくてボランティアを始めたのに、日増しに政党が前面に出てくるようになった。嫌気がさす」とこぼす。
5日にあった投票の結果、立憲、共産、社民などが支援する宇都宮候補は、自公が推す現職の小池に大敗した。
有権者は冷め、選挙ボラは嫌気がさす・・・こんな選挙を続けている限り、自公政権は安泰だ。
(文中敬称略)
~終わり~