2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

アイヌの神様と私の神様

昨日の三上さんのエントリー「二風谷の記憶4:流れる水をよごさないように」を読んだとき、“ながら族”の私はモーツァルトの『魔笛』の第一楽章の最後の部分を聴いているところでした。それは高僧ザラストロの行いを称える人々の合唱になだれ込もうとする箇…

アバドが仕事から降りたらしい

先日、『魔笛』の録音をこのブログで俎上に乗せたクラウディオ・アバドが10月3日に予定されているカーネギーホールの今年の開幕コンサートをキャンセルしたとニューヨーク・タイムズが伝えている。記事によると三週間前から一切のコンサートをキャンセルし、…

ミッテンヴァルトの思い出

8月の末に熱海のお宅にお邪魔した山本さんから個人的にとても懐かしい写真をもらいました。おそらく1998年の冬ではないかと思うのですが、山本さんご夫妻がサバティカルでミュンヘンの大学に1年滞在なさった時にも、熱海に呼ばれるように「遊びに来てくださ…

携帯小説の隆盛とわたくし

数日前観たNHKのニュース番組で携帯小説がテーマになっていた。携帯小説だか、ケータイ小説だかいうものがすごい勢いで読まれていて、それらのうちよいものは講談社など大手の出版社が単行本にして百万を超えるヒットをしているというではないか。この番組を…

flickrをさぼっている話

写真コミュニティサイトのflickrを始めたとこのブログで書いたのは6月のこと。■初めてFlickrで遊んでみた(6月7日)しかし、けっきょく、その後一週間もしたら嫌になって利用をストップしてしまい今に至っている。理由は「時間」にある。flickrに目を付けた…

「二風谷の鳥瞰図は描けないかもしれない」と三上さんは言った

三上さんと一緒に訪れたアイヌの聖地である二風谷では、ダムと萱野茂さんの私設資料館を見学しましたが、写真の素材としてはまことに難しい場所でした。大事なものはやはりダムのそこに沈んでしまったのではないか。土地の中心が空疎になってしまったのでは…

海外の新聞は写真もいい

アメリカの新聞にはうまくイラスト、グラフィックデザインが使われているという話を書いた。そのことはずっと感心していたことだったのだが、写真の質の高さについて気が付いたのは、つい先日のことだ。イラストの話を書くために久しぶりに紙版のニューヨー…

外国語で会話をする二人

戦前に書かれたものを読むと、その本題が何であるかの如何に関わらず、昔の文化人の教養の高さに畏怖の念を覚えることになるのだが、文化人とは言わない、いったい大正時代に大学を出たインテリないしインテリもどきの学力の程度は、その当時の世界的水準に…

写真と文章が拮抗する写真入りエントリー二題

今朝は実に素晴らしい二つの写真付きのエントリーを読んだ。 ひとつは『Emmaus'』の「覚えている」。河の小さな堰堤を水が流れ落ちていくさまを真正面から大胆な構図で切り取った一枚と、認識と存在をめぐる一文。数日前のエントリーで、写真を説明するだけ…

遅めの夏休みの残りの数日は

北海道旅行から帰ってから5日間、一度借りた本を図書館に返しに出た以外は家の中にたれこめて、芥川龍之介の『河童』と村上春樹のエッセイを読んだのと大リーグの放送を観た以外は、ほとんどすべて撮影した写真のアフターケアとブログ書きに費やしていた。た…

アメリカの新聞のイラストの素晴らしさ

ニューヨーク・タイムズの優れているところ、感心することに記事を図解するイラストの秀逸さがある。ここでニューヨーク・タイムズを引き合いに出しているのは、たまたま僕がニューヨーク・タイムズしか知らないからで、ワシントン・ポストでも、シカゴ・ト…

『東京Eden』の愉楽

比較的最近『横浜逍遙亭・写真帳』を見つけてくれた『東京Eden』のmatさん(松下さん)は、ときどきとても優しいコメントを下さる。matさんのコメントは励ましに満ちていて頂戴するのが嬉しい類のものだ。そして、さらりと真実味のある批評をお書きになる。 …

写真旅行記は退屈だと思った

いや、自分でやっておいて言うのも反則ですけれど、写真にキャプションめいた文章をつけてつないでいくブログは単調になる嫌いがありますね。 これが文章だけだと、「この一文ではこういうことを言おう」と訴えるメッセージを決めて作文にかからざるを得ない…

桂の大木、羊蹄山、名水、洞爺湖

藻岩山を下り、三上さんの運転するレガシーは羊蹄山麓を目指して峠越えにかかる。札幌の奥座敷、定山渓温泉の手前にある小さな温泉地、小金湯温泉にある桂の大木を見る。いくつもの幹が集まって大木を形成している。樹齢700年と言えば、この木が生まれたのは…

オロフレ峠、倶多楽湖、アヨロ海岸、地球岬、天勝の天丼

初めての北海道旅行も最終日。 登別の温泉宿も三上さんがその情報網を駆使して選んでくれた。有り難いこと、申し訳ないことに、私は行って泊まるだけ。登別グランドホテルはとても気持ちの良い宿だった。 登別の“地獄”を見物。たくさんの観光バスが停まり、…

札幌“三上ワールド”探訪

すでに三上さんがこちらでお書きになっているとおり、この日の前半は“三上ワールド”に遊んだ。これは私からお願いして、わざわざ今回の旅行のコースに組み入れていただいたもので、野次馬根性的な要請にも二つ返事でお応えいただいた三上さんにはあらためて…

アイヌの聖地、湖を望む温泉、野ブドウ

北海道旅行の様子を写真でご紹介します。まずは一日目。新千歳空港に降り立ち、札幌に到着するまで。 6時半発の便なもので、家を出たのが5時過ぎ。眠い目をこすりながら一路北海道へ。行きはポケモンジェットに乗ったぞ。 新千歳空港で三上さんにお迎えいた…

北大キャンパス、小さいおうち、カモおばさんと鳩おじさん、毛ガニ

三上さんとすすき野で晩ご飯を食べながら楽しく歓談したのちにホテルに戻り、けっきょく寝入ったのは12時過ぎだったが、5時には目が覚めてしまった。11時に三上さんと落ち合うまでは市内散策の時間。三上さんのアドバイスもあって、ホテルにほど近い北大キャ…

二段跳びで二風谷へ

昨日は7時羽田発の飛行機に乗るために、まだ空も暗い4時40分に床を出た。やっと頭がしゃきっとしてきた頃にはもう新千歳空港にいて、笑顔の三上さんの出迎えを受ける。着陸直前の飛行機の小さな窓越しに北海道の大地がちらと見え、その瞬間、重たい曇天と緑…

蝦夷地巡礼

三上さんと北海道旅行に関するやりとりをさせて頂くなか「蝦夷地巡礼」ということばを送っていただいたことに刺激を受けていたら、当の三上さんが「エゾ」にこだわったエントリーをお書きになったので、びっくりしてしまった。■地名の記憶:「カイ」の謎 (…

旅行者の目は当てになるか

明日から短いけれど、私の個人史にとっては貴重な体験となる初めての北海道旅行に行ってきます。今回の旅行では三上さんというこれ以上を望めない伴侶を得て、たぶんそのおかげで通りすがりの者では普通は見えないものを見ることができるはずだとわくわくし…

Let's Go Hokkaido!

月曜日から二泊三日で生まれて初めて北海道を訪れることになった。『三上のブログ』(id:elmikamino)の三上さんに二度東京でお会いし、「ぜひ、北の島へ!」とお誘いを頂いたことがいつも頭の片隅にあった。よし、遊びに行こう!と思い切った次第である。いつ…

「穴」と「Siedlung」

三上さんのレポートが面白かった。お住まいになっている札幌南部の土地に、かつて先住民族が岩山の壁を削って作った「穴」があるという。ふつうの住宅街と隣り合わせの場所にこうした遺跡がふつうに残っているのが人口百万人の大都市の話だということからし…

ワールド・トレード・センター

写真は我が家の壁にかかっている記念の一枚。1999年の春にブルックリン橋のたもとで当時まだ小さかった3人の子どもたちと一緒のところを妻が撮ったものだ。この後、私たち家族は、後ろに写っているブルックリン橋をわたってワールド・トレード・センターの展…

記念撮影

「写真屋さん、いちまい撮ってんかー」 「はいはい、よろこんで。いきますよお」 「ちゃんと丸いの入れてや」 「丸いの?」 「丸くてぴかぴか光る、きれいなやつやねん」 「あっ、観覧車ね。おやすいご用です。では、いきますよお」 「茶色い建物も入ったか…

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「世界に一つだけの花」以降の世界で

二冊続けてナチスのプロパガンダ、広い意味での広告宣伝に関わる話を読んで、自然と連想に誘われたのは末の息子が始めた高校野球。ブログに書くには季節はずれの感はあるけれど。「甲子園に、恋をした」「夢の甲子園に向けて」 大会を主催する新聞社は、これ…

カフェのない人生

フルトヴェングラーの評伝つながりで、音楽評論家の長木誠司が著した『第三帝国と音楽家たち』を読んだ。1998年の発行、ヒトラー政権下のドイツにおける政治と音楽の関わりを実証的に追った労作である。 長木の著作は、音楽之友社の「音楽選書」のシリーズの…

頂に立つことは問題ではない

昨日、靴職人の山口さんの番組を観て感銘を受けたことを文章にしたが、書いた直後から筆が滑ったなという思いにとらわれている。山口さんの仕事や人柄を伝える番組を観て「へえ」と思ったことは嘘ではないのだけれど、ただ、だからと言ってこのブログでトピ…

継続するということ

トゥーサンと開高健の遅筆の話を書いたら、偶然に同じような話に出くわした。 この数日、ドイツ人の指揮者でフルトヴェングラーと親交のあったシェンツラーという人が書いた『フルトヴェングラーの生涯』を読んでいたのだが、そこに作曲家のモーリス・ラヴェ…