安全牌という侮辱とビビリ童貞の責任回避

  
 昨日の酔っ払い女子の電話の続きです。
  
 彼女は、弱冠二十歳でありながら、酒に強く、生まれて初めて酔い潰れて、記憶を失った、と言ったわけです。
 実際に、酒に強かったですし、実際に、昨日のことはいくらか記憶を失っていました。
 原因は本人が言うには「風邪薬を飲んで飲み会に参加してしまって、はじめて酔いがこんなに回った」とのことでした。
  
 記憶している範囲では、「飲み会に誘ってきた男性社員が、やたらと私のことを送りたがっていたから、これはヤバいと思って、それだけは避けようと『いえ、自分で一人で帰ります』と宣言したところまでは記憶がある」と。
 で、「どうやってか電車に乗って、自分の最寄の駅の手前で、車掌に『終点です』と言われて電車を降りたことは記憶している」と。
 で、「タクシーの運ちゃんと話をした記憶はあるけど、どうやって乗って、どうやって支払ったのかの記憶は全くない」と。
 私に電話をかけたこと、私から電話がかかってきたことは、完全に記憶から欠落しているわけです。それはいい。良くは無いがいいだろう。
 だがちょっと待って欲しい。
 その「送る」と言った男性社員は、危険だから自力で帰ると強く思いながら、あんた、俺は完全な安全牌と思って、夜中に電話してきたんかい。
 まぁ、実際に手は出さないけどさ、出さないんだけれども、それはそれで、どうよ? とか思うわけですよ。どうなの?
 「この人は安全だから頼んじゃお」というのはね、なんか、友達という関係にしても「使ってる」感が滲み出てね?
  
 なんとなくわだかまりがあった私は、別の女性に、顛末を話したわけです。で、聞いてみました。「どうよ?」
 「私は、自分が女として思うのは、完全な安全牌というのは設定しないね」
 どゆこと?
 「それは『酔った頭の中で』という注釈は含むけれど、瀧澤さんならいいやと思わない限り、それは迎えに来て、とは言わない」
 まぁ、確かに一年前にしょっちゅう遊んでいた時期には、そういう関係になれたといえばなれたような気もしますが、逆にそのときに、全く手を出さなかったからこそ、安全牌扱いを受けたような気がしなくもないわけです。
  
 何はともあれ、他の男は危険だから送ってもらうのを断ったけど、あなたには送ってもらうのを頼んだんだね、というのを、酔ってない状態で、私に言ったわけです。
 これは「アンタは手を出さない安全牌だ」と言っているか、あるいは「そのままホテルでも良かったけど」と言っているか、論理的にはどっちかだと受け取られるわけです。もちろん、そこまで考えてないかもしれませんが。
 しかしまぁ電話をかけたことすら完全に忘れてるわけですから、それこそ「安全牌」と軽く見られたと思えるわけです。なんだかなぁ。信頼されていると喜ぶべきなのか? 全く腑に落ちない話です。
  
 で、その相談をした女性は「今回はどうか知らないけど、酒の勢いを借りるという事だって有り得るわけで」というわけです。なるほど。まぁ、今回の件では全く関係ない感じですけどね。
 前にも書きましたが、「冷静な状態のときに、改めて自分を選んで欲しい」という童貞ファンタシーというのがあるんですよ。夢見る童貞。
 「酒のせい」とか「失恋の自棄」とか「その場の勢い」とか「金銭など精神的な負い目」とか「覚醒剤で意識朦朧」とか「腕力で無理矢理」とか、そういうものを利用して付け入るというのはイヤなんですよ。僕は真実の愛を信じています。キラキラ
 そしてですね、実際に冷静な理性で私を選んで納得して了解して欲しい、とか無駄に律儀に確認取りたがるのですよ。頭でしっかり考えて、そして私を受け入れて欲しい、と。
 しかしですね、女性の中には、逆に「酒の勢い」「雰囲気に流されて」「寂しかったからつい」「○○さんが無理矢理に私の……」みたいな、外部や自分に言い訳の理由付けを欲しているということだってある、ということです。そりゃそうですわね。充分に普通にそこいらじゅうに溢れている有り得る話です。エクスキューズが欲しいわけですよ。
  
 そんな女性と童貞が顔を合わせたとき、こんなに隙を見せてんのにコイツは何をしてんねん、と呆れるわけですわ。
 違う見方をすれば、童貞は自分が責任を負いたくないのかもしれません。相手も「冷静に理性で受け入れた」となれば、行為の責任は双方に均等にある、ということになるわけですから。ある意味逃げ腰及び腰。
 逆から見ればそれは、女性の「自分の意思ではなくて、不可抗力で止む無く」というエクスキューズの機会を、童貞は奪っているわけだ。迷惑なんだよ、全く。
 そういう面があるにもかかわらず、童貞は純粋(と書いてバカと読む)にも「相手が理性的に選んでくれるのが嬉しい」なんて思っているわけです。やっぱり嬉しいのですよ。そして無意識下で責任回避に安心している、というわけですわ。
  
 ただね、「これは普通にOKサインでしょう」とか思っても、非モテ童貞の場合だと、当たり前に普通に拒絶されたりするから、ビビリで責任回避がちょうど良いのかもしれません。
 フェミニズムの立場から見るとしても、男だけが責任を負うというのも不健全でしょう。