世間における柳生宗矩のイメージの変遷
だいぶ前に書いた話(【柳生宗矩の変遷。あるいは「ザ・ニュー宗矩!!」】d.hatena.ne.jp/hisane/2009030…)が言及されてたのを見つけたので、読み返してみる。「世間(創作作品含む)における宗矩のイメージの変遷」についての話ですが、ふと、続きが書けるかもなあと思ったり。
2014-05-23 02:14:00以下、記事の抜粋:柳生宗矩のイメージの変遷
こないだ国会図書館に行った時、
史料とは別に立川文庫の「柳生重兵衛」があったので、
そっちも読んでみたのですが、そこに描かれている宗矩が、
「将軍家剣術指南役の偉い人」
「厳格かつ息子想いの剣の達人」
だったので、
今更ながら、なんでこういう風に書かれてる人物が、
暗黒ヘタレ野郎と化したのか、とつらつら考えたついでに、
世間における宗矩像の変遷を順を追って辿ってみることに。
【その1:史料上の柳生宗矩」】
…「徳川実紀」「玉栄拾遺」「不動智神妙録」
「月之抄」などの史料上の宗矩。
または「兵法家伝書」などの自著から浮かび上がる宗矩。
「剣の名人にして政治家。能やタバコが好きで、
人の選り好みもあるし、付届けも適当に受け取って、
それを説教されたりもする。割と人間臭い。
身内(家光・沢庵・十兵衛・その他弟子)には好かれ、
尊敬されていた。所謂”柳生但馬守宗矩”」
【その2:逸話上の柳生宗矩】
…「日本武術神妙記」などの逸話集における宗矩。
「剣の名人。一種の悟りを開いたような人物。
基本的に人を斬らない。斬ったのは大坂の陣の七人斬りのみ」
【その2裏:江戸柳生以外の流派における逸話上の宗矩】
…「正傳新陰流」「一刀流三祖伝」「ニ天記」など、
江戸柳生以外の流派の逸話で描かれた宗矩。
「将軍家剣術指南役だが、自流派の宗家に実力で劣る人物。
剣術よりも政治力、話術などで栄達した」
(※達人であることは否定しないが、
”自流派の宗家には劣る”という点がポイント)
【その3:戦前の作品上の宗矩】
…立川文庫や吉川英治「宮本武蔵」など、
戦前の創作作品上で描かれた宗矩。
「将軍家剣術指南役。謹厳実直な剣の名人」
【その4:五味康祐作品の宗矩】
…「柳生武芸帳」を筆頭とする五味作品内の宗矩。
「将軍家剣術指南役にして大目付。幕府の闇を担う人物。
目的のためには冷酷非情な手段も厭わないが、
私利私欲では動かない。
剣才・謀才の両方を備えた黒幕。
俗に言う”暗黒宗矩””ブラック宗矩”」
【その5:山岡荘八作品の宗矩】
…「柳生宗矩(春の坂道)」を筆頭とする山岡作品内の宗矩。
「剣術のみならぬ将軍家(特に家光)の師父。
天下の平和のために己の全てを捧げた剣聖にして求道者。
俗に言う”白い方の宗矩””ホワイト宗矩”」
【その6:「魔界転生」における宗矩】
…「魔界転生」における宗矩。
「将軍家剣術指南役にして大目付。
有能な幕臣にして剣の達人だが、
幕府や家の為に”自分”を押さえ込んだ人物。
”十兵衛との対立”という要素が追加されることで、
”乗り越えるべき壁/敵”としての存在となる」
【その7:「柳生一族の陰謀」など映像作品における宗矩】
…「柳生一族の陰謀」などにおける宗矩。
「キャラそのものは”その6”の宗矩に準じるが、
私利私欲が大きな動機のひとつとして存在する。
これも十兵衛と対立し、敵として敗れる存在」
【その8:隆慶一郎作品の宗矩】
…「影武者・徳川家康」を筆頭とする隆慶作品内の宗矩。
「秀忠の側近。裏仕事の実行部隊の頭。
剣才/謀才を備えるが、基本的に主人公のかませ犬。
私利私欲で動く。
俗に言う”暗黒ヘタレ野郎””僕らのアイドル宗矩くん”」
「じゃあ、最近はどうなの?」
これ書いたのは5年前ですが、この頃の世間における宗矩と言えば、【その8:隆慶作品の宗矩】が比較的多かったのですけど、最近は随分変わってきてるなあと思うところ。
2014-05-23 02:16:54例えば、もう9年前になるイン殺さんのこの記事(【伝奇病患者の柳生宗矩】internet.kill.jp/d/200503.html#…)で紹介されてる創作作品における宗矩画像だと、こんな有様な訳ですよ。最後のはともかく。 pic.twitter.com/wdv05tloHC
2014-05-23 02:21:22