沖縄県は、25日に開いた「アドバイザリーボード会議」終了後、会議開始前の知事や委員の雑談部分の報道を控えるよう、報道各社へ通知した。その後、会議外の発言であることに「留意」するよう再通知し、事実上、報道への制限はなくなったものの、公の場での発言にいったんは報道の制限を求めた県の姿勢に、識者は「問題がある」と指摘する。
知事の「ゼレンスキーです」との発言は雑談の冒頭にあった。その後には知事が、日米首脳会談で台湾有事での軍事的関与を明言したバイデン米大統領の発言の真意を尋ね、委員が回答する場面があった。
県は本紙取材に、「雑談部分」は「バイデン氏発言に関するやりとり」との考えを示した。報道を控えるよう伝えたことは「予定外のやりとりで、委員も報道される前提で話しているか分からないため」とした。
報道を控えるよう通知した「雑談」に、県が「ゼレンスキー発言」を含んでいたのか、真意は不明だ。
ただ、取材が案内され、各社が録音、撮影する公の場での発言を封じようとした県の姿勢には疑問が残る。そもそも委員の発言は、県主催の会議で、知事の質問に答えた結果だ。
専修大の山田健太教授(ジャーナリズム論、言論法)は一般論とした上で「公式な発言でないとしても、オープンな頭撮りの場での発言は、公的な場における発言ともいえる。都合が悪いとの理由で後から報道を止める行為には問題があるだろう」と指摘した。
会議は午前9~11時ごろまで開催され、冒頭部分だけ取材が許可された。
(政経部・大野亨恭、大城大輔)
報道を止める行為は問題
山田健太専修大教授の話 頭撮りの場は、公的な場での発言とも言える。都合が悪いとして後から報道を止める行為には問題がある。発信した情報が誤っていたなど、どうしても報道してほしくない、止めなければならないことがあったのであれば合理的な理由を示した上で、その場で報道機関に通知すべきだろう。
一方、知事は公人の発言となるが、第三者の立場の各種委員会などの委員には頭撮りなどメディアの「ルール」は周知されていない場合が多い。公式な審議会の議事録作成でも基本的には全発言内容の確認をする。委員も全て報道されるとは思っていなかったとも考えられる。
それを踏まえると、県側が委員の発言の可否などを含め、会議をしっかりと取り仕切ることが大切だ。(ジャーナリズム論、言論法)