長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計

金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要

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サマリー

◆65歳以上世帯の金融資産残高は、2023年度末(1,129兆円程度)から2035年度末(1,601兆円程度)にかけて1.42倍に増加し、全体に占める比率は51%程度から53%程度まで上昇すると試算される。日本の家計金融資産に関しては、高齢世帯に資産が偏在していることがよく知られているが、こうした状況は当面続き、むしろ偏在度合いは幾分高まる見込みである。

◆認知症・軽度認知障害者の有病率と高齢世帯の金融資産残高のデータに基づくと、認知症者の2023年度末の金融資産残高は126.6兆円程度(全体の5.8%程度)、軽度認知障害者は同167.7兆円程度(同7.6%程度)であったと試算される。2035年度末には、認知症者が221.9兆円(同7.3%程度)、軽度認知障害者が251.8兆円程度(同8.3%程度)となり、今後10年程度で、それぞれ95兆円程度、84兆円程度増加すると試算される。

◆日本のような「超高齢社会」において、高齢者は、金融犯罪を含む様々な金融面の課題やリスクに備えておくことが重要となる。金融経済教育などを通じて、国民が超高齢社会において有用と考えられる金融商品・サービスなどに関する知識を学べるようにすることが望ましい。また、金融機関や地方自治体、地域包括支援センターなどの地域機関が連携して高齢者支援を行うことも重要になると考える。

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