碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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書評した本: 『フェイクニュースを科学する』ほか

2019年02月23日 | 書評した本たち



週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


笹原和俊 
『フェイクニュースを科学する』

化学同人 1620円

フェイクニュースはなぜ生まれ、いかに拡散し、私たちの脅威となるのか。その仕組みを解明しようという試みだ。計算社会科学を専門とする著者は、情報の生産者と消費者の関係を「情報生態系」の中で考察。「見たいものだけ見る」時代の危うさが見えてくる。


小谷野敦 
『近松秋江伝~情痴と報国の人』

中央公論新社 3240円

この評伝から浮かんでくる人物像は、文学以外ほぼ社会的失格者だ。妻は愛想をつかして家出。おかげで出世作『別れたる妻に送る手紙』が書けた。また著者が「ストーカー」と呼ぶ、女性に対する執着ぶりも、『黒髪』などの作品を生む。実践=表現の作家だった。

(週刊新潮 2019年2月14日号)


なかにし礼
『がんに生きる』

小学館 1404円

著者は二度のがん闘病を経験した。切らない選択をし、珍しかった陽子線治療に挑んだ。しかし最も大きいのは、「善き人」から「正直な人間」へと意識が変わったこと。その上で、がんを理想的な病と捉え、自身を成長させようとしてきた。これは生き方の指南書だ


図書館さんぽ研究会
『図書館さんぽ』

駒草出版 1512円

週末に一日楽しめる場所として、図書館と学校と博物館を兼ねたような日比谷図書文化館、子どもたちと本をつなぎ、町の産業も支援する岩手県の紫波町図書館などを紹介する。また全国の注目すべき105館のリストも充実。図書館が目的の旅も悪くない。


小谷野敦
『とちおとめのババロア』

青土社 1512円

純次は38歳になる仏文学の准教授。ネットお見合いで知り合った相手は、なんと皇室の一員だった。ラブホテルの外でSPならぬ側衛が待機するデート。奇にして貴なる恋愛の一部始終を描いた表題作が秀逸だ。他に風俗遍歴を淡々と語る「五条楽園まで」など全5編。

(週刊新潮 2019年2月7日号)



フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ (DOJIN選書)
笹原和俊
化学同人


近松秋江伝-情痴と報国の人 (単行本)
小谷野敦
中央公論新社


がんに生きる
なかにし礼
小学館


図書館さんぽ -本のある空間で世界を広げる-
図書館さんぽ研究会
駒草出版


とちおとめのババロア
小谷野敦
青土社

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