目下のところ、日本のB型肝炎ワクチンの問題は2つあり、
1つは、接種を希望している人が増えているのに在庫不足や流通の課題があります。
(来年の医学生や看護学生、医療者、警察の人用のも足りるのか心配になります)
もう1つは各国が公費でユニバーサルに接種しているのに、日本では任意で費用負担があること。
お子さんがB型肝炎に感染して、急性肝炎で入院したら医療費は補助がありますが(こども医療の無料化)。
水痘と同じですね。ワクチンで予防したら8千円前後の自己負担で、発症したら抗ウイルス薬は無料。
(高齢者になって帯状疱疹になったら、高額な抗ウイルス薬もペインコントロールの為の薬も自分で払いますが)
B型肝炎や水痘のウイルスは、一度感染したら体内にウイルスが潜んでおり、将来の健康リスクになることがわかっていますので、なぜ軽視されたままなのかよくわかりません。
さらに、話題が増えてきたところで、また医学的に適切ではない語りも見かけるようになりました。見ているソースや情報の質が悪いとちがうところにいいっちゃうのは、他のことと同じ。
MMRワクチンは自閉症になる!で、HPVワクチンは不妊になる!でしたが、B型肝炎ワクチンでは多発性硬化症を発症(再発)させる、という話があります。海外ではもう古い話題なので、会議案件にもあがりませんが、継続して有害事象モニタリングと安全性評価は行われています。
当事者にとっては、例えばインフルエンザの時期に感染したり発症するのが怖いですし(感染症契機に体調が悪くなる)、ステロイド剤で治療をしている人もいますので、周囲で感染症が流行するのも怖いことです。
(このような患者さん達のためにも集団免疫は重要です)
多発性硬化症の発症は20~40代に多く、性別でみると女性が男性よりも発症率が高いことが知られています。詳細な原因は解明されていません。
諸外国の研究では人種によって発病率が異なることや、地理的な偏り(北に多い)等の指摘も行われています。
ヘルペスウイルスのひとつHHV6との関連性が検討されていますが、発症した人から他の人には感染性はありません。
日本では毎年700人前後の新規症例がありますが、個人によって異なる多彩な症状について「神経内科」の医師を受診し、複数の検査を受けます(単独でわかる検査はない)
医療費については特定疾患医療費公費負担制度を使うことができます。
そして、ワクチンとの関連性についての研究ですが、まずは日本語でサマリーが読めるものから。この2つはどちらも関連性否定の結論。
MSは男性より女性での発生が多いことが知られているので、看護師対象のコホート調査がこちら↓。1976 年から 121,700 例と、1989 年から,116,671 例の比較。
発症数がとても少ない病気なので、サンプル数を大きくし、コホートで見ていかないとそもそもわかりにくいんですね。
Vaccinations and the Risk of Relapse in Multiple Sclerosis
B 型肝炎ワクチン接種と多発性硬化症のリスク(N Engl J Med 2001; 344 : 327 - 32)
患者さんにとっては症状再発も気になりますので、こちらも紹介。フランスの研究。
ワクチン接種と多発性硬化症の再発のリスク(N Engl J Med 2001; 344 : 319 - 26)
※フランスについてのその後の事情についてはこちらも参照。
研究者ではなく、患者団体はどのような見解でしょうか。
多発性硬化症の患者団体のワクチンについての記載
http://www.nationalmssociety.org/living-with-multiple-sclerosis/healthy-living/vaccinations/index.aspx
"Many people with MS have concerns about the safety of routine vaccinations. This document provides recommendations based on the best-available evidence."
まず、エビデンスを元に考えます、です。
ワクチン全体と、ワクチン個別の研究・データを検討した記載が並びます。
たとえばB型肝炎ワクチン。
"The hepatitis B vaccine is recommended for all children, adolescents, and adults who are at risk of contracting this potentially life-threatening disease.
B型肝炎ワクチンは、すべての子ども、思春期の人、リスクのある成人への接種が推奨されています。(B型肝炎は命を脅かす病気)
In 2002, after carefully examining the published, peer-reviewed scientific and medical literature addressing the possible relationship between hepatitis B vaccination and diseases of the nervous system, the National Academy of Sciences’ Institute of Medicine (IOM) determined that there is no association between hepatitis B vaccination and the onset of multiple sclerosis. "
B型肝炎ワクチンと神経系の病気が関係する可能性について、査読のある科学的、医学的な文献の検討が行なわれた結果が2002年に公表されました。
National Academy of SciencesにあるIOMは、B型肝炎ワクチンと多発性硬化症については関連性がないと結論づけました。
この問題についての論点と必読文献はCDCの関連ページにあります。
このテーマについて語る前にまず読みましょう。
FAQs about Hepatitis B Vaccine (Hep B) and Multiple Sclerosis
関連があるんだ!と主張する場合は反証となる科学的な文献の提示が必要になりますが、Youtubeとか非専門ブログとか怪しげなリンクではなく、専門的な情報にあたりましょう。
日本で多発性硬化症の治療指針を出しているのは日本神経学会です。
多発性硬化症治療ガイドライン2010
ワクチン否定主義についての全体像を理解することも参考になります。
Vaccine denialism
1つは、接種を希望している人が増えているのに在庫不足や流通の課題があります。
(来年の医学生や看護学生、医療者、警察の人用のも足りるのか心配になります)
もう1つは各国が公費でユニバーサルに接種しているのに、日本では任意で費用負担があること。
お子さんがB型肝炎に感染して、急性肝炎で入院したら医療費は補助がありますが(こども医療の無料化)。
水痘と同じですね。ワクチンで予防したら8千円前後の自己負担で、発症したら抗ウイルス薬は無料。
(高齢者になって帯状疱疹になったら、高額な抗ウイルス薬もペインコントロールの為の薬も自分で払いますが)
B型肝炎や水痘のウイルスは、一度感染したら体内にウイルスが潜んでおり、将来の健康リスクになることがわかっていますので、なぜ軽視されたままなのかよくわかりません。
さらに、話題が増えてきたところで、また医学的に適切ではない語りも見かけるようになりました。見ているソースや情報の質が悪いとちがうところにいいっちゃうのは、他のことと同じ。
MMRワクチンは自閉症になる!で、HPVワクチンは不妊になる!でしたが、B型肝炎ワクチンでは多発性硬化症を発症(再発)させる、という話があります。海外ではもう古い話題なので、会議案件にもあがりませんが、継続して有害事象モニタリングと安全性評価は行われています。
当事者にとっては、例えばインフルエンザの時期に感染したり発症するのが怖いですし(感染症契機に体調が悪くなる)、ステロイド剤で治療をしている人もいますので、周囲で感染症が流行するのも怖いことです。
(このような患者さん達のためにも集団免疫は重要です)
多発性硬化症の発症は20~40代に多く、性別でみると女性が男性よりも発症率が高いことが知られています。詳細な原因は解明されていません。
諸外国の研究では人種によって発病率が異なることや、地理的な偏り(北に多い)等の指摘も行われています。
ヘルペスウイルスのひとつHHV6との関連性が検討されていますが、発症した人から他の人には感染性はありません。
日本では毎年700人前後の新規症例がありますが、個人によって異なる多彩な症状について「神経内科」の医師を受診し、複数の検査を受けます(単独でわかる検査はない)
医療費については特定疾患医療費公費負担制度を使うことができます。
そして、ワクチンとの関連性についての研究ですが、まずは日本語でサマリーが読めるものから。この2つはどちらも関連性否定の結論。
MSは男性より女性での発生が多いことが知られているので、看護師対象のコホート調査がこちら↓。1976 年から 121,700 例と、1989 年から,116,671 例の比較。
発症数がとても少ない病気なので、サンプル数を大きくし、コホートで見ていかないとそもそもわかりにくいんですね。
Vaccinations and the Risk of Relapse in Multiple Sclerosis
B 型肝炎ワクチン接種と多発性硬化症のリスク(N Engl J Med 2001; 344 : 327 - 32)
患者さんにとっては症状再発も気になりますので、こちらも紹介。フランスの研究。
ワクチン接種と多発性硬化症の再発のリスク(N Engl J Med 2001; 344 : 319 - 26)
※フランスについてのその後の事情についてはこちらも参照。
研究者ではなく、患者団体はどのような見解でしょうか。
多発性硬化症の患者団体のワクチンについての記載
http://www.nationalmssociety.org/living-with-multiple-sclerosis/healthy-living/vaccinations/index.aspx
"Many people with MS have concerns about the safety of routine vaccinations. This document provides recommendations based on the best-available evidence."
まず、エビデンスを元に考えます、です。
ワクチン全体と、ワクチン個別の研究・データを検討した記載が並びます。
たとえばB型肝炎ワクチン。
"The hepatitis B vaccine is recommended for all children, adolescents, and adults who are at risk of contracting this potentially life-threatening disease.
B型肝炎ワクチンは、すべての子ども、思春期の人、リスクのある成人への接種が推奨されています。(B型肝炎は命を脅かす病気)
In 2002, after carefully examining the published, peer-reviewed scientific and medical literature addressing the possible relationship between hepatitis B vaccination and diseases of the nervous system, the National Academy of Sciences’ Institute of Medicine (IOM) determined that there is no association between hepatitis B vaccination and the onset of multiple sclerosis. "
B型肝炎ワクチンと神経系の病気が関係する可能性について、査読のある科学的、医学的な文献の検討が行なわれた結果が2002年に公表されました。
National Academy of SciencesにあるIOMは、B型肝炎ワクチンと多発性硬化症については関連性がないと結論づけました。
この問題についての論点と必読文献はCDCの関連ページにあります。
このテーマについて語る前にまず読みましょう。
FAQs about Hepatitis B Vaccine (Hep B) and Multiple Sclerosis
関連があるんだ!と主張する場合は反証となる科学的な文献の提示が必要になりますが、Youtubeとか非専門ブログとか怪しげなリンクではなく、専門的な情報にあたりましょう。
日本で多発性硬化症の治療指針を出しているのは日本神経学会です。
多発性硬化症治療ガイドライン2010
ワクチン否定主義についての全体像を理解することも参考になります。
Vaccine denialism