2023年福岡県議選にあたっての日本共産党の県政政策
福岡県の人口は約510万人で全国5位、財政力指数は全国9位(総務省「統計でみる都道府県のすがた2022」)、工業製品出荷額は全国10位(経済産業省「2020年工業統計調査」)、農業生産額は16位(農林水産省『2020年生産農業所得統計』)です。問題は、こうした福岡県が有する内発的な力を、県政が県民福祉の増進のために生かせているのかどうかです。
福岡県政は、財界が望む大型開発などを優先し、国のいいなりに社会保障費の削減、県職員の削減をはじめとする「行財政改革」を進めてきました。
新型コロナパンデミックのなかでその矛盾が浮き彫りになりました。感染症対策の唯一の司令塔である県の保健所は21から9へと半分以下に減らされ(政令市を含めれば36から18に)、人口10万人あたりの保健師数は41/47位となっています(総務省「統計でみる都道府県のすがた2022」)。この間全国で新型コロナ感染者の多くを受け入れてきた公立・公的病院ですが、5つあった県立病院を1つに減らしてきました(その1つの県立太宰府病院も、指定管理者制度に)。県立児童養護施設や障がい者入所施設などの福祉施設も次々と民間移譲され、この20年あまりで3200人余の職員が減らされています。
1月2日現在、福岡県の新型コロナ死亡者数は累計2300人を超え、人口100万人あたりの死亡者数は456・9人、全国15位です。国いいなりで医療・公衆衛生の体制を後退させてきた結果、新型コロナの感染拡大への対応がまったく追いつかず、「保健所崩壊」「医療崩壊」、救急搬送困難、自宅「療養」死が相次いで、多くの県民が命を落としたことを真剣に反省をすべきです。
保健所を減らしていなければ、県立病院が5つあれば、どれだけの人が助かったでしょうか。ところが福岡県は、医療・公衆衛生体制を再建するどころか、保健所や県立病院の人減らしを「成果」として自慢し、地域医療構想のなかで、県内の許可病床をすでに4000床減らし、2025年までにさらに3000床削減する計画を進めています。
また、県民の暮らしも深刻です。福岡県の労働者の40%が非正規雇用で、女性は54%が非正規雇用(2017年総務省就業構造基本調査)で、時給1000円未満の労働者が38・16%(2021年福岡県賃金実態調査)にのぼります。子どもの貧困率も、全国平均よりも高いままです。その県民に、長引くコロナ禍と物価高が襲っています。
ところが、2022年度予算では、他の自治体でも行っている事業復活支援金の上乗せや、静岡県で実施された学生へのひとり5万円の給付などの独自支援策は盛り込まれず、少人数学級についても県独自の予算がない4県の一つです。
一方で、大型開発優先の姿勢は変わっていません。2022年度予算でも、福岡空港へのアクセス道路に5億4000万円、小倉東断層を跨ぐ危険で採算の見通しもない下関北九州道路(事業費は3500億円の見通し)の調査費に771万円余りを計上し、大企業のもうけのためなら大盤ぶるまいです。
岸田文雄政権は、中国との軍事対決を強める米国に追随し、大軍拡と改憲、憲法違反の戦争そのものである「敵基地攻撃能力の保有」に突き進んでいます。県内の自衛隊と基地は、集団的自衛権行使の安保法制のもとで、米軍と一体に再編・強化されつつあり、とりわけ、航空自衛隊築城基地は米軍の出撃基地としての整備がおこなわれ、日米共同訓練も強化が図られています。福岡県を戦場にするこうした動きにも、福岡県はまったく国に異議を唱えず、いいなりです。
日本共産党県議団は、県民と力をあわせて県政を動かし、数々の県民の願いを実現してきました。
少数会派の日本共産党の主張がなぜ実現できたのか。それは、そもそも日本共産党の提案が県民の切実で緊急な要求であり、そして党県議団は、県民の声をまっすぐ県政に届け、県民の目線で県政をしっかりチェックし、道理ある批判と積極的な提案を行い、実現するまでトコトン頑張るからです。「世論」と「道理」、そして、「あきらめない」、日本共産党ならではの力です。
たとえば、子どもの医療費助成制度の拡充や少人数学級などは、この40~50年間にわたって、県民の運動とともに日本共産党が県議会で一貫して主張し続けたことで、やがて他党の議員も主張するようになり、知事も公約したり国に要望したりするようになり、実現してきたのです。
最近の実績をいくつか紹介します。
党県議団は、新型コロナ禍から県民の命と暮らしを守るために、各分野の運動団体のみなさんとも連携して、節目ごとに繰り返し緊急要望を行ってきました。
県は当初、病床確保数を760床とし、党県議団の増床要求にも応じませんでした。そればかりか、10床以上を確保した医療機関にしか重点医療機関に指定しないという県独自のルールを作り、病床確保料に差別的な扱いを設け、医療機関が増床に協力するうえでの障害となりました。国会議員団と結んで独自ルールの撤廃を求め、実現することができました。その後、2021年の県知事選で、現在の知事は大幅な増床を公約せざるを得なくなり、現在では約2000床を確保しています(2022年9月現在)。
PCR等検査についても、県は当初、国と同様に「必要な方」「感染していると疑うに足る正当な理由がある者」に限定していました。県議団は面的な検査や社会的な検査を行うように再三に渡って求め続け、県民誰もができる無料検査が実現しています。
日本共産党が、2015年の県議選で議席空白を克服してから、真っ先に取り組んだのが「正規の先生を増やして少人数学級を」と求める取り組みでした。
県内の全小中学校、特別支援学校を対象にしてアンケート調査などを行い、関係団体との懇談を重ね、教員不足の解消を何度も県に求めました。その結果、2015年には県立高校を含めて791人(政令市除く)だった教員採用数は、2019年には1275人となり、その後も1200人前後の正規採用を続けています。
2020年には、政府が1クラス40人(小1のみ35人)と定められている公立小中学校の学級編成標準を2025年度までに全学年35人以下に引き下げると決めました。小学校の全学年の学級規模の一律の引き下げは40年ぶりです。これは、コロナのもとで苦しんできた子どもたちに少人数学級をという多くの県民の運動が実ったものであり、全国知事会など地方自治体、校長会や教育委員会の全国団体が求め、教職員組合や保護者、多くの教育研究者、市民による粘り強い運動が続けられて、みんなでつくりだした重要な一歩です。長年にわたる県議団の論戦も、間違いなくその一翼となりました。
企業・団体献金も政党助成金も受け取らず、あらゆる利権に無縁な党だからこそ、住民の立場から行政の不正や不公正をチェックできます。そして、住民の立場で行政と議会を監視できる党だからこそ、財源も示して積極的な提案ができます。
たとえば、日本共産党だけが不要な巨大ダム建設を一貫して批判し続け、多発する豪雨災害のもとで、河川整備を優先し、流域治水への転換をすべきだと繰り返し求めてきました。この間、その正しさが証明されました。
過大な需要予測にもとづいて不要なダム建設を進めた結果、県内の上水の1日最大供給量159万トンに対し、供給能力は250万トン(2020年度『福岡県の水道』)にも達し、高額の水道料金が自治体と住民を苦しめています。
国民や自治体の声におされた政府は、2018年の西日本豪雨も受けて、ダムや堤防などハード対策中心から、災害危険区域の開発規制など流域全体を対象にした「流域治水」対策をすすめることを決定し、県も方針を転換しました。
これに先立ち、党県議団は、河川の整備、しゅんせつ、ダムの水量を大雨の際に引き下げる弾力的な運用を求めてきましたが、北九州市の紫川や飯塚市の明星寺川などでは河川改修や排水機場の増強が行われ、被害が減少しています。昨年まで5年連続で水害が起こっている久留米市でも、5か年計画の「総合内水対策事業」が始まっています。
こうしたもとで、2023年の県議選の争点は、「新自由主義と改憲・大軍拡、民主主義と地方自治破壊の自公政治としっかり対決し、県民の命と暮らしを守れるのはどの党、どの候補者か」「国いいなり、大企業には大判ぶるまい、県民の苦難を解決する県独自の施策の実行には消極的――そんな県政をきちんと批判できて、県民要求の実現へ本気の提案できるのはどの党、どの候補者か」にあります。
県議会(定数87・欠員4)の会派構成は、日本共産党2人、自民党38人、民主県政(立憲・国民・社民)20人、緑友会(自民系)11人、公明党9人、他、自民系無所属3人です。自民・公明など国政与党の会派が、7割超の議席を独占し、県政を牛耳っています。
私たちは、国政上の対決構図は、「自民・公明・補完勢力」対「市民と野党の共闘」であると考えており、引き続き野党共闘の発展のために力をつくします。しかし、福岡県政においては、残念ながら日本共産党以外の会派は、自公政権いいなり、大企業奉仕の福岡県の予算、決算にすべて賛成の「オール与党」となっており、議会の大事な役割であるチェック機能さえ果たせていません。こうした県議会だからこそ、日本共産党の躍進が必要です。
2022年9月県議会では、国葬強行や統一協会問題をただしたのは日本共産党しかありませんでした。2022年10月6日の候補者発表の記者会見の終了後、あるメディアの記者が言ってきた言葉を紹介します。「日本共産党は、今度の選挙はがんばらないと厳しいですね。日本共産党がいないと、県議会はとんでもないですよ。今度の議会も、国葬問題や統一協会問題を追及したのは日本共産党だけだった。頑張ってください。」
「維新の会」は、国政では「野党」を名乗りながら、自民党以上の右翼的立場に立って大軍拡と改憲の先兵となり、野党共闘攻撃の先兵となっており、当初予算に賛成した国民民主党とともに自公政権の「補完勢力」です。維新は、県議会には議席がありませんが、両政令市では「なんでも賛成」のオール与党の一員です。北九州市議会の維新は、オリパラ汚職の徹底解明を求める意見書に自民・公明とともに反対し、維新の福岡市議は「なりすましビラ」をまいて辞職に追い込まれました。
国政でも県政でも自民・公明の悪政ときっぱり対決する日本共産党だからこそ、どんな問題でも堂々とものが言え、積極的な提案ができます。
2023年県議選で日本共産党の県議会議員が増える意義について、県民のみなさんに3つのことを訴えます。
第一に、日本共産党の県議会議員を増やして、「住民福祉の機関」として福祉と暮らしを守る県政の役割を前進させる選挙にしようではありませんか。
日本共産党の議席は、県民の苦難解決、県民要求の実現、県民の命と暮らしを守るために欠くことができない議席です。日本共産党県議団は、県民の利益にたって、批判すべきは批判し、県民の切実な願いを県政に届け、積極的な提案で県政を動かします。
第二に、日本共産党の県議会議員を増やして、岸田自公政権が進める県民を苦しめる悪政に対して、県民のもっとも明確で断固たるノーの審判をくだそうではありませんか。
憲法違反の「国葬」強行、統一協会と自民党との深刻な癒着、コロナと物価高への対応の無為無策に対する県民の怒り、「大軍拡と改憲ノー、憲法9条を生かす外交を」「物価高騰から暮らしを守り、新自由主義を転換してやさしく強い経済を」という切実で緊急な県民の願い――これらを、最もはっきりと突きつけることができるのは、県議選での日本共産党の勝利・前進です。
第三に、日本共産党の県議会議員を増やして、福岡県における「市民と野党の共闘」の本格的な発展のための推進力を強くしようではありませんか。
野党共闘が確固として発展している、東京、高知、沖縄と福岡の決定的違いは何でしょうか。東京は、日本共産党が都議会議員19/127人で野党第一党(立憲15)。高知は、県議5/37人で、自民党に次ぐ第二党(公明党2)。沖縄は、県議7/48人で、与党第一党です。
いま、県内でも市民と野党が力をあわせ、国と地方の政治を変える新しい流れが成長しています。その本格的な発展のためには、県議会における日本共産党をのぞく「オール与党」体制の壁を乗り越えなければなりません。そのためには、県議会での日本共産党の躍進が決定的です。
2023年県議選での日本共産党の目標は、現有2議席を絶対に確保し、議席を増やすことです。同時に、県議会議席を絶対に空白にしないことです。
日本共産党にとって、2023年の県議選は、国政選挙での後退から、必ず反転攻勢を実現する選挙になります。2022年の参議院選挙の後退した得票を起点に、得票を大きく躍進させて、県議会議席を増やすことが目標です。
そして、日本共産党の県議会議席を絶対に空白にしてはなりません。
日本共産党が議席をなくした4年間(2011年5月~2015年4月)は、県民から出された多くの請願に、紹介議員のなり手がなく、県議会に提出すらできませんでした。日本共産党の県議がいなければ、多くの県民の声は門前払いになるのです。
前述したように、2015年に日本共産党の県議会議席の4年間の空白を克服してからの8年間、党県議団は、巨大開発の浪費など県行政を県民目線で厳しくチェックし、大幅に増えた住民の請願の紹介議員として住民の声を議会に届けるなど、県議会が様変わりと言える状況が生まれました。
この4年間では、相次ぐ豪雨災害からの生活となりわいの再建、「何より命」の新型コロナ対策、物価高騰対策、子ども医療費の無料化・助成の拡充などの子育て支援の強化、教員の正規採用を増やすなど教育条件の整備、河川整備の前進をはじめ防災対策の強化など、切実な県民要求をまっすぐに県政に届け、さまざまなことを実現し、県民の命と暮らしを守るかけがえのない役割を発揮しています。
県民のみなさん。県議会に日本共産党議員がいるといないとでは大違いです。こんどの県議選で、何としても日本共産党の議席を確保し、さらに増やしていただきますよう心から訴えます。
いまの情勢は、日本共産党にとって、相当な奮闘なしには県議会議席を空白にしかねない厳しさとともに、頑張れば大きく躍進できる可能性もあります。この両面をしっかりみなければならないと考えています。
日本共産党にとって、今度の県議会議員選挙の難しさは、国政選挙で連続後退した直後の選挙であり、2022年参議院選挙比例得票の政党順位では立候補予定の定数2・3・5の選挙区はいずれも勝てないことなど、わが党が立候補予定しているいずれの選挙区も、議席獲得は容易ならざる状況です。
同時にいま、頑張れば日本共産党が大きく躍進できる可能性がある情勢が進展しています。岸田内閣の支持率が続落、低迷していることに示されているように、参議院選挙後、明らかに潮目が変わりました。改憲勢力が豪語していた「黄金の3年間」どころか、岸田自公政権はあらゆる分野で行き詰まり、自民党政治はかつてない危機に陥っています。
この背景には、安倍・菅・岸田政権の10年が、新自由主義と「戦争する国」づくりの大暴走によって、日本の政治・経済・社会をとことん悪くしたことがあります。「アベノミクス」で格差と貧困がさらに深刻になり、日本は、世界でも例外的な「賃金が上がらない国」「成長できない国」に落ち込みました。安保法制強行など立憲主義・民主主義・平和主義の破壊が進みました。「森友・加計・桜を見る会」問題、統一協会と自民党などの深刻な癒着、憲法違反の安倍元首相の「国葬」強行など、政治モラルの退廃が底なしになっています。ところが、岸田自公政権には、コロナ禍と物価高から暮らしと経済を立て直す展望もなく、東アジアの「軍事対軍事」の悪循環を解決する外交努力もなく、いっそう暮らしと平和を脅かす道をつきすすんでいます。
戦後、自民党は、日本共産党へのデマ攻撃と日本共産党排除の政界再編を繰り返し、日本共産党の前進を抑え、自らの延命をはかってきました。しかし、それは同じことの繰り返しではなく、その一歩一歩が国民との矛盾を蓄積し、その行き詰まりを深刻にし、自民党政治はもろく弱いものになっています。
大局的・客観的に見るならば、日本はいま、新しい政治を生み出す「夜明け前」です。ただ、社会の「夜明け」は自然には訪れません。異常な対米従属と財界中心の政治のゆがみを根本からただす綱領をもつ日本共産党を躍進させ、みんなで力を合わせて日本の「夜明け」をつくろうではありませんか。
日本共産党はいま、国民とともに攻めに攻めて、政治の転換の大きな流れをつくる運動とともに、党員と「しんぶん赤旗」読者を大きく増やし、どんな逆風でも選挙に勝てる強く大きな党をつくるために全力を尽くしています。みなさんのご協力を心からお願いします。
新型コロナウイルス感染症の流行が長期化しているうえに、急激な物価高騰が追い打ちをかけるもとで、住民のもっとも身近な存在である地方自治体が、住民の命と暮らしを守るという本来の役割を果たすことの重要性と課題を改めて浮き彫りにしました。
自公政権は、国民の命と暮らしを守る対策は無為無策のまま、新自由主義の「地方行革」を自治体に押しつけ、地方自治を壊す政治をすすめています。日本共産党は、この悪政と対決し、福岡県政が憲法に定められた「地方自治の本旨」に則って運営され、県民が安心して住み続けられるよう全力で奮闘します。
物価高騰は、暮らしと営業、医療、農業などあらゆる分野に深刻な影響を及ぼしています。飲食店からは「油の高騰で大変。営業努力だけではやっていけない」との悲鳴が上がり、農家からも「肥料や飼料の値上がりは深刻」との悩みが寄せられています。コロナ禍で命を守るために奮闘している民医連の病院では、「水光熱費だけでも、前の年と比べて1カ月で300万円増えている」「食材費の高騰で、病院給食の赤字がかさんでいる」と言います。
しかし、福岡県の対策は、まったく不十分です。県は2022年9月補正予算で、肥料、飼料には支援策を計上したものの、高騰分の全額を支援するものになっていません。中小事業者については「特別融資」の創設などを行ったものの、事業者が望む持続化給付金と同水準の給付金の再支給などの直接支援はほとんどありません。医療機関に対する物価高騰対策は、「国に要望する」というだけで、予算には計上しない態度です。
日本共産党は、コロナ禍で矛盾が噴き出した“強きを助け、弱きをくじく”新自由主義の政治を転換し、“やさしく強い経済”にする5つの改革――①消費税の5%への減税とインボイスの中止、②政治の責任で「賃金が上がる国」にする、③社会保障と教育予算を経済力にふさわしく充実させる、④気候危機打開の本気のとりくみ、⑤ジェンダー平等の視点をつらぬく(農業分野では、高騰する肥料・飼料代の差額の補填、水田活用交付金削減の中止などの緊急課題とともに、食料自給率向上に責任を負う農政への抜本的な転換)の一つひとつが、いよいよ緊急で切実な課題となっており、実現するために奮闘する決意です。
これらを実行すれば、“経済の持続的な好循環”が県内どの地域にももたらされます。同時にこれは、「貧困と格差が広がるばかり」「少子化と人口流出が止まらない」「慢性的な人手不足で事業の継続もままならない」という地域のゆきづまり、「経済成長ができない」「競争力が落ちるばかり」「危機に弱い社会」という日本のゆきづまりを打ち破る唯一の道です。
大企業・財界の意を受けた自民・公明政権による労働法制の規制緩和で、わが国の非正規雇用の割合は、1980年代の約2割から約4割に倍増しました(福岡県も同様)。若い人や女性では、半数以上がパート、アルバイト、派遣、契約などの非正規雇用です。ヨーロッパの国々の非正規雇用の割合は1割前後です。日本は経済の4割を非正規労働者が支える異常な“労働者使い捨て社会”です。そして、コロナ危機でかつてない数の非正規労働者が真っ先に仕事と収入を失ってきました。そして、貯えもなく、物価高のなかで困窮しています。
賃金が正社員の3分の1程度の非正規労働者の拡大は、正社員も含めた労働者全体の賃金・労働条件を引き下げる大きな圧力になっています。とくに、責任が重くなり仕事が終わらない正社員も、低賃金のために長い時間働くかダブルワークしなければならない非正規労働者も、長時間労働になっています。長時間労働は、健康に重大なだけでなく、子育てや介護などの家族的責任を果たせないなど、ジェンダー不平等社会の大きな要因です。
日本では、1人当たりの実質賃金がピーク時の1997年と2020年を比べると64万円も減っており、平均賃金も韓国にも抜かれて先進国最低です。深刻なのは、働く人の3人に1人が年収200万円未満のワーキングプア層になっていることです。とりわけ福岡県は、時給1000円未満の労働者が約4割、時給1500万円未満の労働者が約75%(2021年福岡県賃金実態調査)と、全国屈指の“低賃金”県です。最低賃金の引き上げは、福岡県で働く人全体の賃金を押し上げる一番確実な政策です。
しかも、2022年10月の消費者物価指数の上昇率は3・6%と、40年8カ月ぶりの急激な上昇となった一方、賃金上昇率は1%程度で、実質所得はマイナスが続いています。最低賃金は、2022年4月の総合物価指数(最低賃金を決める基準)を受けて、同年10月に3・3%引き上げられましたが、同月の総合物価指数が4・4%に跳ね上がり、物価高騰が最低賃金を上回っています。
他の先進国では、消費税減税ととともにコロナ禍での経済対策の“切り札”として、最低賃金の引き上げをちゅうちょなく実行してきました。さらに、世界的な物価高騰のなかで、欧米では、最低賃金を引き上げる国が相次ぎ、フランスやドイツでは今年すでに3回、最低賃金を引き上げました。2022年11月現在、円換算でドイツはおよそ1734円に、フランス1598円、イギリスはおよそ1596円に引き上げており、各国では日本をはるかに上回る最低賃金になっています。
2022年10月から、福岡県の最低賃金は30円アップで時給900円になりますが、このペースで毎年引き上げたとしても、1000円を突破するのに4年、1500円を突破するのに15年もかかります。
福岡県の最低賃金=時給900円で1日8時間、週40時間で働いても、年収でおよそ138万円にしかならず、「ワーキングプア(働く貧困層)」の水準です。全労連の調査によれば、最低限必要とされる生計費は、東京都でも福岡県でも時給1600円余です。時給1500円は、8時間働いて残業なし・週休2日で月約25万円になります。時給1500円は、憲法25条の観点から、人間らしい生活をおくるための最低限の要求です。
時給が1500円になれば、どのまちでも必ず地域経済が活性化し、どの業種でも売り上げが増えることは疑いようがありません。これはこの間、最低賃金を大幅に引き上げてきた他の先進国でも試され済みです。
くわえて、最低賃金に地域間格差をつけて、都市と地方の賃金格差に拍車をかけているのは、世界でも日本だけです。東京の最低賃金の時給1072円と福岡の最低賃金の時給900円で1年間(週40時間×4週×12月)働くと年収で約33万円の格差があります。全国知事会も求めている「全国一律」にすることで都市と地方の賃金格差を是正するとともに、どのまちで働いても若い人たちが働き続けられる賃金水準(時給1500円)にならなければ、賃金の安い地域からの若い人の流出をとどめることはできません。
その実現のカギは、中小企業の賃上げへの直接支援の抜本的強化です。この10年間、政府がやってきた「賃上げ減税」は、黒字の企業しか対象にならないもので、賃上げどころか、実質賃金が年平均27万円も減ったのですから、完全な失政です。
中小企業は今、コロナ、物価・原材料の高騰、過剰債務という三重苦のなかで賃上げは厳しい状況です。全国の都道府県の最低賃金審議会は、政府に対し、7府県が中小企業の賃上げへの直接的支援、10府県が税・社会保険料の減免、新たな助成金の創設など、直接支援の改善・強化を要求しています。日本共産党は、大企業の内部留保課税で生み出す10兆円の財源で、そうした中小企業の賃上げ支援策を行うことを提案しています。
2012年以降のアベノミクスの10年間で、資本金10億円以上の大企業の内部留保が約150兆円増えて、過去最高の約483兆円(2020年)にまで積み上がっています。自民・公明政権は、この期間に、大企業の法人税を28%から23%に下げ、大企業優遇税制を拡大し、約40兆円もの減税が大企業に行われました。アベノミクス以降の大企業の内部留保の増加分に、時限的に5年間年率2%を課税します。
これは「一石三鳥」をねらった提案です。一つは、ゆきすぎた大企業優遇の減税の一部をとりもどし、税の不公平をただすこと。二つ目に、大企業自身の「賃上げ」と「グリーン投資」を控除して促すこと。そして三つ目に、そのうえで出る総額10兆円の財源で、最低賃金を時給1500円にするための中小企業支援をします。
最低賃金を引き上げるための中小企業対策として、アメリカは2007年から2011年の5年間で8800億円の減税をして41%引き上げ、フランスは2003年から2005年の3年間で2兆2800億円の社会保険料の事業主負担分の軽減をして11・4%引き上げました。5年間で10兆円の中小企業支援という規模は、最低賃金を56%引き上げる(2022年10月からの改定額の全国加重平均額961円を1500円にする)のに、十分な金額です。
国や自治体の非正規職員の7割が年収250万円未満です。非正規職員の時給1500円への引き上げは5000億円程度で実現できます。
「公契約」とは、国や地方自治体の事業(工事、サービス、物品調達等)を民間企業等に発注・委託する際に結ぶ契約のことです。具体例として、施設の建設工事、公共施設管理・運営、清掃、保育園、病院医療事務、学校給食、学童クラブ、窓口業務、生活相談支援、介護・障がい者福祉施設、情報管理等、私たちの生活に密着する多くの事業が、「公契約」として民間委託の対象となっています。
「公契約条例」とは、自治体が発注する公共工事・業務委託等に従事する従事者の賃金・報酬下限額を設定し、自治体・受注者の責任等を契約事項に加えることを定めた条例で、ILO(国際労働機関)第94号条約に基づいています。
公契約の現場では、深刻な実態があります。談合問題からはじまった「入札改革」で、競争入札でのダンピング(極端な安値)での入札が横行し、そこで働く労働者の賃金にしわ寄せされています。公共工事では、建設労働者の賃金の平均日額が民間工事を下回る場合が多く、しかも年々引き下げられています。民営化された保育所や民間に委託された清掃など、自治体が発注する委託・契約では、年間の所得が200万円にも及ばない不安定な労働が広がっています。国や自治体が、そこで働く労働者の賃金を考慮せず、コスト削減一辺倒で発注することが、「官製ワーキングプア(働く貧困層)」を大量に生んでいるのです。
各地の自治体で、安値で受注した民間業者が立ち行かなくなって事業を続けられなくなり、ゴミ収集事業が大混乱になるといったことも起きています。2006年に埼玉県ふじみ野市で起きたプール事故は、そうした「安上がり行政」の最悪のケースです。「安かろう、悪かろう」の公共サービスが、質の確保を難しくし、住民の利益を大きく損なっています。生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件を定めることは、公共サービスの質を向上させ、賃金を底上げして貧困をなくし、地域経済の活性化にもつながります。
新型コロナウイルスの感染拡大により、日常生活を支えるのに必要不可欠な仕事を担う従事者(エッセンシャルワーカー)の存在が注目されています。エッセンシャルワーカーである公契約の現場従事者の賃金水準を守り、ダンピング受注を排除し、新型コロナであらためて注目されているSDGs(持続可能な開発目標)、労働施策総合推進法等を地域の政策に取り入れて地域の活性化を図っていくために、公契約条例の重要性を地域で認識・共有し、条例制定運動を進めていくことが求められています。
「公共サービス基本法」では、「公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備に関し必要な施策を講ずるよう務めるものとする」としていますが、あくまで努力義務にすぎません。
「公契約法・条例」のメリットは次の点です。
多くの自治体で、労働組合や中小企業団体、住民が力を合わせ、受託業者で働く労働者の適正な賃金を確保できる仕組みをつくる公契約条例の実現をめざす運動が広がっています。
2009年9月、全国で初めて千葉県野田市で公契約条例が制定されたことを契機に、公契約法・公契約条例による公契約の適正化を求める取り組み・運動が全国的に広がっています。
公契約条例(公契約基本条例、公共調達基本条例などを含む)を規定している自治体は、2022年8月現在で、全国77自治体(賃金条項型:直方市を含む27自治体、賃金条件を明記しない「基本条例型(理念型)」:50自治体)で公契約条例が制定されるに至っています。
直近のデータではありませんが、すでに2016年5月26日時点で、公契約法・条例の実現を国や自治体に求める意見書などを採択した議会は、42都道府県898区市町村にまで広がっています(全建総連調査)。日本共産党は各地で、住民と協力して議会で積極的な提案を重ねています。
日弁連は、2011年に「公契約法・公契約条例の制定を求める意見書」を総務大臣、厚生労働大臣、主要な自治体約120か所に提出しました。「当連合会は、全国の地方自治体に対し、貧困問題・ワーキングプア及び男女間賃金格差の解消の見地から公契約に基づいて労務に従事する者たちの適正な労働条件を確保するために、公契約を規制する条例(公契約条例)を積極的に制定することを要請する。また、国に対し、上記趣旨を踏まえた法律(公契約法)を制定すること、及び公契約条例制定に向けて全国の地方自治体を支援することを要請する。」とあります。
最近でも、日弁連は、「地方自治の充実により地域を再生し、誰もが安心して暮らせる社会の実現を求める決議」(2021年10月15日採択)をあげ、「社会保険料の軽減等の実効的な中小企業支援を図りつつ、最低賃金法を改正して全国一律最低賃金制度を実施するとともに、公契約法・公契約条例を制定し、賃金の引上げと賃金の地域間格差の解消を図るべきである。」と主張しています。
介護職員や保育士の平均給与は全産業平均より「月5万円低い」など劣悪な労働条件は長らく放置され、現場は慢性的な人手不足に苦しんでいます。また、自民・公明政権は「看護職の賃金水準は全産業平均に比べて高い」と言いますが、それは夜勤や残業手当を含めた賃金です。それがなければ、全産業平均よりも低いというのが実態です。OECD諸国との比較でも、ルクセンブルグの看護師の賃金を100とすると、日本は40・7です。高い専門性と責任が求められるのに、非常勤職員の平均時給はコンビニのバイトと大差がないという実態です。
そこにコロナ禍が直撃、長期化し、現場の疲弊は極限に達しています。ただでさえ人手不足のところに離職者が急増し、募集しても来てくれない。受け入れたくても受け入れられない、深刻な“ケア崩壊”状態が広がっています。
県内の産業別就業人口をみても、年々比重が増え続けているのは医療・介護・福祉・保育などのケア労働者だけです。ほとんどの自治体でトップの卸売・小売業と並ぶか次ぐ比重で、福岡県全体で7人に1人、北九州市をはじめ高齢化がすすむ市町村では5人に1人がケア労働者です。
ケア労働者の大幅な賃上げは、その比重からも地域経済への直接的なインパクトは相当なものです。それは、地域に若い人が働き続けられる大きな雇用の場を生み出すことになり、人手不足の解消で事業者が積極的に事業を展開できるようになり、さらに雇用が増えることになります。また、人手不足が解消されてケアの受け入れが増えれば、家族が働けるようになり、地域産業全体の人手不足の解消にもつながります。
こうした結果、働き続けられる若い人たちがそのまちに定着し、家族を持ち、子どもが増え、保育のニーズもまた増えることになります。とくに、介護の分野の待遇改善は、高齢化がすすんでいる自治体ほど経済が元気になるチャンスがあります。これほど、住民に喜ばれ、どのまちでも一石何鳥もの効果のある経済対策が他にあるでしょうか。
厚生労働省が公表している「『外国人雇用状況』の届出状況」によると、2021年10月末現在、日本国内で外国人労働者を雇用している事業所数は28万5080カ所(前年比1万7837カ所、6・7%増)、外国人労働者数は172万7221人(前年比2893人、0・2%増)で、2007年に届出が義務化されて以来、過去最高を更新しましたが、増加率は前年4・0%から3・8ポイント減少しました。
福岡県で働いている外国人労働者の人数は、2019年10月現在、5万2530人で、2018年より14%増加しました。福岡県で外国人を雇用している事業所数は8850で、2018年より16%増加しました。近年、福岡県にいる外国人労働数は急増しています。2015年10月と比べると、4年間で2倍ほど増えました。それに伴い、外国人を雇用している事業所も同じ間に86%増えています。
全国では、労働者数が多い上位の在留資格では、身分に基づく在留資格(永住者・定住者など)は58万328人(全体の33・6%、前年比6・2%増)、技能実習は35万1788人 (全体の20・4%、前年比14・3%減)、資格外活動(留学を含む)は33万4603人(全体の19・4%、前年比10・6%減)となっています。外国人労働者のうち、派遣・請負で働いている人が、全体の19・9%を占めています。
本県の在留資格別(2019年10月現在)でみると資格外活動が2万2185人で全体の42%と最も多く、次いで「技能実習」が1万3611人で26%、就労ビザが8366人で16%、身分系の在留資格が7660人で15%です。福岡県は、資格外活動の割合が全国の倍、技能実習の割合が全国より6ポイント多くなっています。
福岡県内の外国人労働者を国籍別(同上)でみてみると、ベトナム人が最も多く1万7520人で全体の33%を占め、次いで中国人1万2038人で23%、ネパール人7813人で15%、フィリピン人4079人で8%となります。
2019年10月の時点で、福岡県の産業別での外国人労働者数は次の通りです。製造業:1万981人(21%)で、このうち食料品製造業:5510人(11%)。卸売業、小売業:1万497人(20%)。サービス業:8189人(16%)で、このうち職業紹介・労働者派遣業:5018人(10%)。宿泊業、飲食サービス業:6138人(12%)で、このうち飲食業:5678人(11%)。
外国人労働者の中には、言葉のハンディなどにつけこまれ、最低賃金を割り込む低賃金で働かされ、パスポートや預金通帳をとりあげて自由を奪われるなど、さまざまな人権侵害に苦しんでいる人たちがいます。
近年政府は、在留資格を次々と追加しながら外国人労働者の受入れを行い、技能実習生、留学生、日系人保護の建前をとりながら、実際はいずれも安価な労働力として利用しています。2018年12月、「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立し、2019年4月に施行され、新しい在留資格「特定技能」による外国人労働者の受入が始まりました。
改定入管法は、受入れ業種や規模、人数など、具体的なことは全て省令以下に委ねる白紙委任法であり、法律の体をなしていません。新設される「特定技能1号」の在留資格は、1年ごとの更新制です。また、在留の前提となる雇用契約は1年以下、例えば3カ月の短期契約も可能です。さらに、派遣契約も排除していません。結局、「特定技能」は、5年を上限として雇用契約や在留期間を短期で繰り返す外国人の非正規労働者をつくり出すものです。これは、外国人労働者を雇用の調整弁とするものにほかなりません。
「特定技能」は、技能実習生からの移行を前提にしています。実際、受入先14業種のうち13業種が実習生からの移行を前提とし、その多くが8割から10割の移行を見込んでいます。「特定技能」は、人手不足分野の劣悪な労働条件でも従順に働く単純労働力として外国人労働者の受入れを拡大し、そのために、深刻な人権侵害の構造が明らかな外国人技能実習生を、更に最大5年、安価に働かせ続けようとするものです。技能実習を前提とした特定技能による外国人労働者の受入は断じて認められません。
「特定技能1号」の外国人労働者の地位は極めて不安定であり、就職や解雇、住まいを始め生活のあらゆる場面で不正な利益を目的とするブローカーの介入の危険があります。受入れ企業が支援するとしていますが、支援を委託される登録支援機関には技能実習制度の監理団体が横滑りできることが明らかとなりました。登録を受けない未登録団体が営利目的で委託料を受けて行うことも認められます。これでは、支援の名の下に、狭い宿舎に労働者を押し込め、高額の家賃や水光熱費をピンはねする類いの不正行為を排除できません。
改定入管法は、新在留資格「特定技能」新設により、外国人労働者の劣悪な労働実態を放置したまま受入れを拡大するものです。今、外国人労働者問題について求められているのは、外国人労働者の基本的人権が保障される秩序ある受入れと、共に生活するための支援体制です。
「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(外国人技能実習法)が2016年11月に成立、2017年11月に施行されました。
「外国人技能実習制度」は、「技能移転」による「国際貢献」を名目としながら、その実態は、低賃金、単純労働力の受け入れであるという構造的矛盾を抱え、深刻な人権侵害を生み出し続けてきました。それにもかかわらず自公政権は、実習期間の3年から5年への延長、受け入れ人数枠と対象職種の拡大などをおしすすめています。これは人道上も許されるものではありません。
この制度は、当初から、「研修」とは名ばかりの安価な労働力の供給手段とされ、強制労働、低賃金、残業手当不払い、ピンはね、強制貯金、パスポート取り上げ、高額の保証金や違約金、強制帰国、セクハラと性的暴行など、数々の人権侵害が続発し、重大問題となってきました。こうした外国人技能実習生の実態に対し、日本弁護士連合会は、「人権侵害は構造的問題に起因する」として、その早急な廃止を求めていました。また、国連自由権規約委員会は、性的虐待、労働に関する死亡、強制労働を指摘し、米国務省は、労働搾取や人身売買への懸念を表明しています。国連人権機関、国際社会から、さまざまな懸念が指摘されているのです。
2010年の入管法改正により、それまでの「研修」を「技能実習」にかえて、労働関係法令を適用するとともに、監理団体を設けました。しかし、技能実習生をめぐる悪質な人権侵害の状況は、引き続き深刻です。
外国人技能実習生の失踪件数は、2010年の1282人から、2016年に5803人、2018年には9052人と大幅に増加しています。「『日本で働けば月給20万~30万円。1日8時間、週5日勤務。寮あり』ときいて、仲介会社に約150万円を支払い来日したが、実際には毎日早朝6時から深夜2時まで働き、休みもなく、『寮』は農機具の保管場所で、家賃として月2万円が給料から天引きされ、手元には6万円程度しか残らない。7カ月がんばったが疲れてしまい、逃げ出した」(ベトナム人技能実習生)などの事例が報告されています。
失踪した技能実習生からの聴取票は、実習生の実態を解明する上で不可欠の資料です。その提出を政府・与党が拒否する中で、野党が884枚の聴取票を調べたところ、86%が最賃割れだということが明らかになりました。暴力やセクハラなど人権侵害も浮き彫りになっています。
外国人技能実習法によっても、技能実習生は例外的な場合を除いて職場移転の自由がなく、人権侵害の根源である支配従属関係を解消することはできません。悪質なブローカーや法外な保証金を排除するための2国間取り決めが行われる制度的担保がありません。
外国人技能実習機構(新機構)は、実習認定業務他、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する業務を行います。しかし、新機構の体制・権限では、技能実習の適正な実施および技能実習生を保護するには不十分です。
介護分野での過酷な労働条件と低賃金を放置しつづけけたまま、在留資格「介護」を新設し、技能実習の職種に「介護」を追加することは、深刻な人権侵害、介護サービスの質の低下や稚拙な日本語でのコミュニケーションによる新たなトラブルなどの可能性が懸念されます。
日本では、正社員でも女性の賃金は男性の7割しかなく、非正規を含む平均給与の男女格差は年間240万円、生涯賃金で1億円近い格差です。とりわけ、福岡県は低賃金労働者が多く、その大半が女性です。それが年金の男女格差になり、年金で生活できない女性がたくさんいます。世界でも異常な日本の男女賃金格差は、国連から「性別賃金格差を縮小するため、取り組みを強化すること」を求める勧告を受けています。
「賃金の平等」は、ジェンダー平等社会を築く“土台中の土台”です。EUでは女性の平均賃金は男性の8~9割ですが、この格差を大問題として、昨年3月には、「男女の賃金格差公表を企業に義務づけ、透明化をテコに是正させるEU指令案」を発表しました。是正しない企業への罰金、ペナルティーも含まれています。ところが自民・公明政権は、男女賃金格差の公表を企業に義務づけることさえ、財界の意向をうけて拒んでいます。
男女賃金格差の是正は、福岡県のジェンダー平等の最優先の課題です。社会の半数を占める女性の年収が200万円以上アップする経済効果ははかり知れません。何よりそのことが、女性の経済基盤を男性と同等にし、地位向上、政策決定の場への進出の機会を広げることはまちがいありません。
1 / 7