「部落解放・人権確立第43回全九州研究集会」が29日、佐賀市で始まった。九州の行政職員や教員、企業関係者ら約3700人が参加した。部落解放同盟中央本部の片岡明幸執行副委員長が特別講演で、被差別部落の地名リストの書籍化などを巡る裁判について報告した。出版禁止を命じた高裁判決を評価しつつ、差別と闘う決意を示した。
片岡氏は、川崎市の出版社「示現舎」に書籍出版などの差し止めを求めた訴訟の経過を説明した。昨年6月の二審東京高裁判決では一審判決より出版禁止の範囲を拡大しており、「プライバシー侵害で判断した一審判決を修正し、『差別されない権利』を認めてくれた」と指摘した。
また、出版社側が全国の被差別部落の住宅や墓地、公共施設などを撮影した動画をネット上に出している問題も示し、「各地で首長が法務局に削除を要請している」とした。
東京大大学院の鈴木宣弘教授による講演もあった。鈴木氏はフランスなど欧州の農家は国の補助金で手厚く支えられている点を挙げつつ、「世界一、保護がないのが日本の農家。地元の安心安全な食品を買い、踏ん張る農家を応援しよう。安価でリスクある食品を食べないことが、種や農業を牛耳ろうとするグローバル企業の思惑を排除できる」と強調した。
集会は部落解放同盟九州地方協議会などでつくる実行委員会が主催で、「第35回差別と人権を考える佐賀県民集会」と同時開催となっている。最終日の30日は八つの分科会が行われる。(大田浩司)