キッズルームのあるマンションの日常とは? 子どもたちのコミュニティーを眺めてみた

マンションのキッズルーム

はじめまして。趣味でインターネットにブログ記事を書いたりしている赤祖父と申します。普段はIT系会社員として生計を立てております。現在43歳で、41歳の妻と9歳(小3)の息子、5歳(保育園年中)の娘との4人暮らしです。

2020年4月、息子の小学校入学に合わせて、現在住んでいるマンションを購入しました。

購入したマンションには、同じマンションで暮らす子どもたちが自由に利用できる「キッズルーム」があり、息子も毎日のように通って、友達と楽しそうに過ごしています。

今のマンションを選んだのはキッズルームがあるから、というわけではなかったのですが、キッズルームがあることで、結果的に子どもたちにとっていい環境で暮らすことができているなと感じています。そこで今回は、キッズルームのあるマンションの日常とはどんなものなのか、子どもや親にとってどんな影響があったのかなど、私たち家族の一例を少しでもお伝えできればと思います。

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マンションを買ってみたら「キッズルーム」があった

長らく「賃貸派」だった私が、マンションの購入を考えるようになったきっかけは「息子の小学校入学」だった。小学校に入ると気軽に引越しができなくなることを考え、腰を据えて住める家を考え始めた。

賃貸派vs購入派の議論はよく見ていたが、購入に必要な情報を真剣に集めていったら、わが家の場合は買ったほうがよいという結論に至った。

そう考えた一番の要因は、やはり「同じ家賃(相当)でよりクオリティーの高い家に住める」こと。また、ちょうど周囲に「購入派」の人が何人かいて「◯年住んでいたのに売却したら値上がりしていて、◯年分の家賃が実質タダになって、何ならもうかった」みたいな実例を教えてくれたためだ。それに、サラリーマン最大の武器ともいえる「与信パワー(多額の銀行のローンを組める信用力)を持ち腐れていてはもったいない」とも教えられ、確かにそうだと思った。

マンションを購入するにあたって、物件の候補をいくつか絞った。そのうちのある一つの物件が、比較的土地勘のある場所で、かつ引き渡しタイミングが息子の進学タイミングにぴったりだったので、これも縁だろうと思って購入を決意。マンション購入の最後の一押しは「縁」だと聞くが、本当にそう思う。

購入時は特に意識しなかったが、そこは共用部にキッズルームがある物件だった。

マンション内には息子の同級生も多く住んでおり、また違う学校だが同じ学童に通う子も住んでいる。キッズルームは、そんな子どもたちが夕方、夕飯までの時間に集まり遊んでいる場所。このような子どものライフスタイルは、購入時には完全に想定外だった。もちろん良い意味で。

マンション購入時に通勤や通学、買い物や病院などの交通の便にはいろいろ想像を巡らせたつもりだったが「子どもたちだけの遊び場やコミュニティー」については考えたこともなかったと気付かされた。

実際、親としてはマンション敷地内にあるキッズルームになら、安心して子どもを送り出せる。交通事故に遭ったり不審者に遭遇する心配がなく、いざ何かあればすぐ呼び戻せる安心感もある。

違う小学校に通う子同士も集まり、学校のつながりだけでない横のコミュニティーが増える場としても機能しているようだ。同じ学童の学年違いの子と遊ぶこともあるらしい。

自分が群馬県の田舎の小学生だったときは小学校以外のコミュニティーがなく、友人関係も学校が全てだったので、仮に学校で問題があったらそこで「詰んで」いたかもしれない。一方で今の息子のようにいろいろなコミュニティーがあることを体感していると、仮にどこかのコミュニティーで問題があったとしても、気持ちとしての受け止め方は全然違うのだろうと想像する。

私の息子は夕方に学童から帰ってきたらランドセルを放り投げ、ゲーム機を手にしてすぐに走ってキッズルームに向かうのが通例である。

キッズルームから垣間見える、令和の子どもの世界

では実際、子どもたちはどのようにキッズルームを活用しているのか。

私は在宅勤務が多く、仕事の合間や仕事が早めに終わると、キッズルームの様子を遠くからのぞいたり(ただし、過度に視線を送らないようにし、また大人が介入しなければならない問題が起こらない限りは干渉しないように留意している)、息子からもいろいろと話を聞いているのでご紹介したい。

令和の子どもにとって「Wi-Fi完備」はマスト条件

私のマンションのキッズルームはWi-Fi完備なので、息子と周りの子どもたちの遊びといえば、ゲーム機を持ち寄って一緒にゲームをするのが主流である。

昭和の小学生だった私は、当時友達の家に行ったり来てもらったりしてゲームをしていたが、このように互いの家ではなく共有スペースで遊んでくれるのは気安いので助かる。

平成の小学生たちもコンビニ前や公園でゲーム機を持ち寄って遊んでいたし、今もそんな例はたくさんあると思うが、今後、令和の子どもが集まる場にWi-Fiはマストの条件になっていくのだろうと思う。

もちろん、みんなで近くの公園で遊ぶこともままある。

キッズルームでゲームをする子どもたち

「おやつの買い食い」が楽しいのは今も変わらない

マンションの敷地内に駄菓子屋やコンビニはないが自販機があり、そこで食べ物や飲み物を買い食いするのがはやっているらしい。自分が子どものときと変わらず、今どきの子どももやっぱり買い食いはしたいのだなと思った。自販機は少し味気ない気もするが、それでも友達との飲食は楽しいものだろう。

最近は私が趣味のクレーンゲームで取ってきた箱入りの駄菓子を息子に託して、子どもたちに消費してもらっている。家族で食べきれないくらい取りすぎるので助かっている。


持っていくお菓子の例
持っていくお菓子の例

息子は子どもたちの間では”食料の売人”と呼ばれているらしく(もちろん子どもたちからお金は取ってません!)、息子もまた「これはすぐ売れるな!(繰り返しですがお金は取ってません)」とか「これはあまり人気ないかも」とか教えてくれるので、次に取ってくるお菓子の参考にしている。

結構な量を持たせても基本的には”完売”してくるので、育ち盛りの子どもたちの食欲は侮れないものだと再認識している。もちろん息子も含め、友達もおやつを食べた上で夕飯もしっかり食べていると聞いている。

好きなゲームの「派閥」争いで人間関係を学ぶ子どもたち

息子と風呂に入りながらその日のことを聞く。そこではキッズルームでトラブルがあったとか、仲直りしたとかいう話も出てくる。

例えばメンバーの中で「どのゲームで遊ぶか」で派閥ができたりするらしい。マイクラ派、スマブラ派、あつ森派、スプラ派……のように割れて「お前はマイクラ派に入るのか、入らないのか!」などといった勧誘・引き抜きがあったりするとのこと。その交渉が決裂するとゲーム機のフレンド登録からもブロックしたりされたりするらしい。しかし子どもらしく翌日には仲直りできたりして、そうするとブロックを解除してもう一度フレンドになったりするそうだ。

子どもらしくサッパリしつつも、しっかりとブロックや再フレンド登録の手続きを噛(か)ましたりするあたりは、いかにも令和の子どもならではという感じだ。

私はちょっとした人間関係のいざこざは彼らにとってよい経験だと思っているので、よほどの深刻な状況でなければ静観するよう心がけている(そのためによく話を聞くようにしている)。

子どもたちの連携を感じた“ある出来事”

ある日、こんなことがあった。あるキッズルームメンバーの子の弟(4歳くらい)が家から勝手に出て行方不明になってしまったというのだ。息子が急きょ帰ってきて在宅勤務していた私に報告してくれたので、仕事を止めてキッズルームに行った。

子どもたちもその日は皆ゲームなど放り投げてその件に対応しており、心配して「誘拐されたんじゃ?」「マンションの外に出ていった?」と議論をしている。敷地内だし誘拐はさすがに……とも思ったが、子どもたちはいたって真剣だ。

子どもたちは思い思いに、その子がマンション敷地外に出ていったかどうか警備員に聞いたり、駐車場や駐輪場にまでその子を探しにいったり、たまたま敷地内を歩いている大人に聞き込みしたりしていた。

迷子になった子を探す子どもたち

真相としては、管理人や警備員を巻き込んで探している間に、その子が敷地内をフラフラ歩いているところを心配したマンション住人の方が見つけて保護してくれており、事なきを得た。

ただ、探している最中の子どもたちがすごいテンションになってしまったので、保護者としてそれを収めるのに苦労した。一方で、そういう子どもたちのキッズルームコミュニティーを中心に、マンションの友達の困りごとに一丸となって取り組む強い絆を肌で感じた出来事だった。

解決した後、迷子になった子の兄は「みんなが一緒に探してくれてうれしいよ。みんなに復讐(ふくしゅう)しなきゃ」と言っていたので「こういうときは『お礼』ね」と大人として教えてあげた。

「子どもたちのコミュニティー」を生むキッズルームがあって良かった

購入条件としてはまったく気にしていなかったキッズルームだが、今は付いていてとても良かったと思っている。

一戸建てのいわゆる「ご近所付き合い」のようなつながりが希薄になりがちな都会のマンション暮らし(同時にそれが良いところでもあるが)において、子どもたちが子どもたちだけで放課後勝手に、それでいてセキュリティーが高く安心安全に集まれる場があることは、とても価値があるものだとしみじみ感じる。

公園のような体を動かす遊びは難しいが、夏も冬も一定の気温だし、雨も気にならない。現代らしくWi-Fiがつながっているので、ゲーム機を持ち寄って対戦や協力プレイで遊ぶことができる。

マンションのパンフレットなどでは、キッズルームの使い方の例として「日中に育休中の親とよちよち歩きの子が……」といったものが多く、確かに小さな子どもを遊ばせながら親御さん同士が談笑している姿も見かける。しかし当然といえば当然だが、私のマンションの場合そのような世代の利用は夕方前までになり、夕方以降、夕飯時くらいまでは小学生が主体になる。小学生が集まって遊んでいる様子はパンフレットにもなかったので想像していなかったが、そういう使い方もあるのだなと実際に住んでみて気付いた。各社はぜひ、次のパンフレットにはこのほほ笑ましい様子を追加しておいたほうがよいと思う。

私は団地暮らしを経験したことはないが、昭和の団地でよく見かけたような敷地内の公園コミュニティーもこんな感じだったのかな、と少しうらやましく思う。

ジムがある! プールがある! といった具合にマンションの共用部が充実しているところは購入時に目を惹(ひ)かれるものだが、一方で管理費ばかりかさんであまり使わない……というような話も聞いたりする。そのような施設は私のマンションにはないので、実際のところは分からない。しかし、子育て世代でマンションを検討している方は、キッズルームの有無や内容には着目してみるとよいのではないかと思う。

ちなみにだが、私の住むマンションのキッズルームは貸切可のパーティースペースを兼ねていて、キッチンが付いている。また在宅勤務に使えるスタディールーム(キッズルームと分かれているので子どもたちも近づかない)や、孫に会いに来た祖父母が泊まれるようなゲストルームもある。

敷地内に家とは別の作業場や逃げ場があるのは、とても助かる。遅い時間に勉強している学生もいるし、週末にはパーティーをしている人たちも見かける。共用施設が積極的に利用されている様子は住人としてもマンションが「活きている」感がしてよいものだと思っている。

マンションの住み心地や満足度は、どうしても親の価値観で決めがちになる(得てして通勤時間や資産価値といったところばかり見てしまいがちですよね……)。しかし、子どもを含めた家族にとってどうか、親から離れて勝手に遊べるようになった子どもにとってどうか、という点も考慮してみると、より自分たちに合った物件探しができるかもしれない。あくまで個人の一例ではあるが、参考になればうれしく思う。

著者:赤祖父

赤祖父

1980年群馬県生まれ。東京在住。IT系企業に勤めるサラリーマンで2児の父。鉄道旅行と、インターネットで読んだり書いたりするのが趣味。好きな食べ物はヨーグルト、好きな飲み物は飲むヨーグルト。

Twitter:@akasofa / ブログ:光景ワレズANNEX

編集:はてな編集部
イラスト:アベナオミ