「今、光の“色”が注目を浴びているってご存じですか?」
取材は、﨑山さんのこの一言から始まった。LEDの普及で、光の”色“をたやすく変えられるようになったことで、関心が高まっているらしい。確かに今までは、青白い光なら蛍光灯、黄色っぽく温かい光なら白熱灯と、器具やランプを替えないことには、照明の光の色は変えられなかった。今は、スイッチひとつでパッと色が切り替えられるようになり、生活シーンに応じて手軽に光の色が変えられるようになったというのだ。
「それで言うと、読書や勉強など、文字を読むときの光は、6200ケルビンの『昼光色』がちょうど良いんです」(﨑山さん・以下同)
「ケルビン」? 聞けばそれは、「K」で表す「色温度」の単位なのだそうだ。たき火の赤い光なら2000K。青空の白い光なら1万2000K。色温度の数値に応じて、光の色は、まさに”いろいろ“。その中で、「6200K」の『昼光色』が、文字を読むのに適していることを突き止めたのだと、﨑山さんはちょっぴりドヤ顔で教えてくれた。そしてこのときから、取材は﨑山さんとの一問一答形式となっていったのだった。
なるほど、6200Kの「昼光色」が勉強や読書向きなら、その色のLED電球を買ってくれば良いんですね!
「確かにそうなんですが……。実は、6200Kの光って、くつろぎには不向きなんです。読書や勉強をしたいときだけ使うデスクライトなら良いんですが、天井につけるシーリングライトの光を、いつも青白い昼光色で使うのは、あまりお勧めできません」
そうか! そこで、「光の色を変えられることのできる照明」の出番というわけですね!
「そのとおりです。LEDのシーリングライトには、光の色が変えられる『調色機能』付きのものがあり、家電量販店などでも売られています。そうした機能のある照明を選んで、勉強や読書のときは昼光色、くつろぐときには電球色といった具合に、光の色を切り替えれば良いんです」
了解! 光の色が切り替えられるシーリングライトを天井につければオッケーなんですね。早速、お店で買ってきまーす!
「ちょっと待った! 天井についているシーリングライトは、手元とは距離がある分、光が十分に届きにくい場合があり得ます。そんなときは手元にデスクライトを用意すれば、それだけ光源との距離が近くなり、より効率よく手元を照らすことができますよ。白熱灯と違ってLEDは手元を照らしても熱くならないので、そういう点でもお勧めです」
分かりました! 6200K、昼光色のデスクライトを買ってくれば良いわけですね! それだったら、シーリングライトは買わなくても良いですか? なるべく倹約したいので……。
「それはお勧めできません。手元だけを明るくすると、今度は光がドギツくなり過ぎて、目が疲れてしまいます。明るいところと暗いところを交互に見ることになり、目がその都度、ピントを合わせ直さなければならなくなるからです。作業対象(手元)の明るさと、周囲(部屋全体)の明るさの比(『輝度差(きどさ)』)は、3:1が望ましいと言われています。部屋全体を照らすこともやっぱり必要なんです」
ふむふむ。優先順位としては、シーリングライトを先に買うべきなんですね。
実は私、眠る前にベッドの中で本を読むのが大好きなんですが、眠る前に読書をしたいときも、6200Kの昼光色が良いのでしょうか?
「いや、眠る前はちょっと……。というのも、昼光色の白い光は、自然な眠りを誘う “メラトニン”の分泌を抑えてしまうんです。つまり、寝つきが悪くなるんですね。だから、眠る前であれば、文字が読みやすい白い光よりは、心地よい眠りにスムーズに入れる赤い光で読むほうが良いと思いますよ」
なるほど。それなら眠る前は、調色機能のあるシーリングライトやベッドサイドテーブルに置くデスクライトの電球を、赤みがかった「電球色」や「温白色」にしてみます!
「勉強や読書、就寝時だけでなく、食事や団欒の時間、くつろぎたいときなど、生活シーンによって光の色を変えてみましょう。調色機能の付いたLED照明なら、光の色が変えられますから」
ふふふ……。なんだか一気に知恵がついて、「あかり博士」になった気分! では、あらためて、お店に「調色機能」のある照明器具を買いに行ってきます!
「最後にもう一つ。例えば食卓を照らす明かりの場合、シーリングライトが気に入らなくて、代わりにペンダントライトをつけたいとなったときは、レール式の照明取り付けパーツを買ってきて天井に取り付ければ、レール上の好きな位置にペンダントライト(レール用のタイプ)をつるせます。既存の電源を使うので、電気工事も不要。日曜大工の要領で取り付けられますよ」
ありがとうございます! 「食欲の秋」だけに、明かりで食卓の雰囲気を変えてみるのも楽しそう。ぜひ、検討してみます。
取材に伺った東京・東新橋の「パナソニック リビング ショウルーム 東京」。地下1階「あかり」のコーナーは、展示された照明器具の光でまばゆいばかりの空間だった。スイッチ一つで瞬く間に光の色が変わる様子に、私も編集部のS女史も、思わず声をあげてしまった。
”照明士“の﨑山さんは、ご自宅にもレール式の取り付け器具を自分で取り付けたのだとか。このときも、「どうだ! 自分で取り付けたんだぞ」と、ご家族にドヤ顔をしてみせたと言うので、私もS女史も、笑いをこらえるのに苦労した。﨑山さんの、電球色のように温かみのある説明と、取材に対応いただいた宣伝・広報部の足立さんのツッコミが、まるで息の合った漫才コンビのようだった一時間。取材を終えた私の心は、まるでポッと温白色のLED電球が灯ったように明るく照らされていた。