ニセ科学バスターと、メディア・リテラシーの親和性

 さて、配偶者あり子供なし、のワタシにとっては「ふーん、児童手当の強化版かー。もちとインフラとかの整備にも回せられないかねー」位の感想しかなかったわけではあるが、

驚愕!子ども手当、出稼ぎ外国人が母国に50人子供いても支給

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厚生労働省のFAQ

Q:母国で50人の孤児と養子縁組を行った外国人にも子ども手当は支給されますか。
A:母国で50人の孤児と養子縁組を行った外国人については、支給要件を満たしませんので、子ども手当は支給されません。

お金ください! 「子ども手当て」に外国人殺到で大混乱

東京都荒川区は人口約20万人のうち、1万5000人が外国人居住者(2009年3月1日現在)。人口の実に約7%を占める。同区役所は最近、子ども手当ての受給を問い合わせる外国人への対応に苦慮しているという。

 児童手当・子ども手当ての給付申請窓口である子育て支援部の職員は「今月初めから外国人居住者の問い合わせが目立つようになりました。窓口に直接押しかけてくる人もいます」と語る。

 職員によると、24日にも30代のネパール人男性が窓口を訪れた。男性の目的は、まだ受付も始まっていない子ども手当ての受給申請。しかし、説明しても日本語が通じず、結局、「男性の知り合い」という別のネパール人男性に電話をかけて事情を説明してもらったという。

 「来訪する外国人のほとんどは中国籍の人。友人と連れだって来たり、『子どもがいればおカネがもらえると聞いた』と言ってくる人や、日本語が話せないのに『子ども手当て』とだけ書いた紙を持参してくる人もいます」

子ども手当「外国人に590人分支給」 「まったくのデマ」で騒ぎに
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一部報道にあった東京・荒川区役所や埼玉県川口市役所でも、問い合わせは数件しかなく、混み合ってもいないという。児童手当の通常業務時と変わらないとしている。荒川区役所では、該当のケースで申請があったのは中国人1人だけだそうだ。

 ザイール大使館員の付き添いのもと、ザイール政府発行の正式証明書を持ったザイール人10人位で子供の合計200人以上登録していった、というツイートもあったが、ザイールという国がない以上(いま、ATOKに怒られた。<<地名変更→コンゴ>>)信頼度を大きく落とすべきであろう。

 さて。
 ここで、この手合いのメディア・リテラシーの鍛え方を、カール・セーガンの「悪霊にさいなまれる世界」の中の「”トンデモ話”を見破る技術」…から採用しようと思ったけど、今回はあえてこっちで。

ニセ科学を10倍楽しむ本

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1)話の出所を確認する
2)誰が言っているのかを調べる
3)キーワードに注目する
4)反論に目を通す
5)数字に注目する
6)理屈で考える
7)実験をやってみる
8)自分の目を疑う
9)願望と事実を区別する
10)正しい科学知識を身につける

 元々これはニセ科学バスターの手法。しかし、メディア・リテラシーの手法としても、以外にも決まってしまったぞ。

1)話の出所
 松沢氏の電凸の結果。

 本日、15時25分、川崎市高津区役所に電話をした。担当の子ども家庭課によると、「まったくのデマです」とのこと。それどころか、不自然な数の申請さえひとつもないそうだ。海外に子どもがいる人たちについての申請も受けておらず、現在その対応を協議中とのこと。デマにもほどがある。

 外国籍の人に児童手当の事が伝わっていなくて、子ども手当がニュース沙汰になって、初めて知った!→市役所へGO!→しかし言葉がわからない…というケースは少なくなさそう。その意味での「混乱」は確かにあるだろうけど。

 ただ、子ども手当は(旧法の)児童手当のパワーアップにしかすぎんことは、wikiでおっけー。

3)キーワードに注目する&
9)願望と事実を区別する
「税金が外国人に払われるのはたまったもんじゃない」

 まぁ、それが「ザイール大使館員付き添い付きで子ども手当請求きた」という、デマ確率が相当に高い(ザイールという国はもう無いよ)につながる、と。

 ところが。

現在の児童手当法では、子どもの出生証明と子どもの監護、つまり実際に子どもを自らの収入で養っているという証明が必要だ。だが、この証明方法が実にいい加減なのだ。

 「海外に子どもがいるなら、現地の銀行の発行した送金通知書などが証明書代わりとなります。ただ、書式が決まっていないので、いくらでも偽造が可能。手渡しで受給する場合はもっとザルで、『国に帰る友人に書類を預けた』と言って、友人のパスポートの出入国記録を見せても、通ってしまう。本当に子どものために使われているのかなんて調べようがありません」(川口市職員)

 すでに児童手当でも、こうした問題が起きているのだが、今に至るまで放置されたままだ。
(参考)

 ということは。
 児童手当でも出ていた「穴」が、より支給額もワクも大きい子ども手当だとより顕在化しやすい。その方向に持って行くのも十二分にありだし、本当はそれが言いたいというわけだろうけど、この記事の書き方は、むしろそこではない。

「外国人に税金が使われる」「税金が騙し取られる」…という
印象部分を強く打ち出してるわけで、そう受け止められるように、誤読させやすくしてある。これはひどい。

「穴」の塞ぎ方だけど

子ども手当:外国人への支給厳格化 年2回帰国面会確認へ

だが面会の立証は困難で、手紙の提示だけでよかったり、証明を求めない自治体もあった。証明書の偽造も可能と指摘されており、不正受給目的の養子縁組の横行などが危惧(きぐ)されていた。

 このため厚労省は、少なくとも年2回以上の面会をパスポートで確認▽約4カ月に1回以上の送金を銀行の送金通知などで確認▽来日前の同居を居住証明書などで確認−−などを、子ども手当の支給要件と定め通知した。

 もちろん現場の事務量はどうよ?という新たな問題点の提示は必要だ。

 しかし、これで「税金が外国人に払われるのはたまったもんじゃない」というネタは後退する。

 しかし、これって、国籍法改正で云々と同じ結末になってもうたな。あれも確かに偽装認知で捕まったのが2組いるのは確かだが、日本に殺到すると言う馬鹿な話は無かったし。