【意志不要】あなたの脳を「集中モード」に切り替える、3つの方法

勉強している女性

「勉強しなきゃ」とわかっていても、なかなか始められない——。

多くの人は「意志が弱いから」と自分を責めてしまいます。しかし本当の問題は、勉強モードへの「切り替え」にあるのかもしれません。

例えば、

  • 休日丸々2日間あるのに進まない。でも通勤電車の1時間では集中できる。
  • 自宅では気が散るのに、カフェでは捗る。
  • 「今から」と思うと億劫なのに、時間を決めておくと始められる。

これらはすべて「切り替え」の問題です。

今回は、勉強モードに入るための3つの方法をご紹介しましょう。

勉強に集中力できる人は「メリハリ」をつけている

脳内科医で医学博士の加藤俊徳氏は、やらなければならないタスクにすぐ取り組めないのは、「脳のオン、オフの切り替えが上手にできていない」からだと指摘します。*1

加藤氏によると——

「脳のオン、オフを切り替える」とは、「集中している状態」(オン)と「集中から解放されている状態」(オフ)を切り替えることです。これができれば、ラクに集中モードに入れます。*1

つまり、「集中できない」と悩むのは、ゆっくり過ごすプライベートの時間と勉強に集中する時間の切り替えがうまくできないからなのです。一方、勉強の集中力が高い人は、「集中モード」と「リラックスモード」を上手に切り替え、メリハリをつけていると言えるでしょう。

となれば、集中力を高めるための秘訣は「勉強モードに入る」ためのスイッチの入れ方。次項からその方法を紹介しましょう。

スイッチを入れるイメージ

方法1. 書き出して「スイッチを入れる」

勉強モードに入るためには、脳にサインを送ることが大切です。そのためにも、事前に「やること」と「開始時間」を書き出してみましょう。

前出の加藤氏は脳の切り替えをするためには、「自分の脳にオンとオフの指示を出す」ことが効果的だと述べます。指示を出すとはつまり——

「何のために、何を始めるのか」という「目的」と、「何時に、それを始めるのか」「何時に、それをやめるのか」という「時間」を明確にすることです。*1

加藤氏はこの「目的(=何のために始めるのか)」と「時間(何時に始め/終わらせるのか)」を自分自身に言い聞かせるだけでも、オンオフの切り替えがうまくなると述べます。*1 要は「目的と時間」を意識することで、脳に「集中モード」を働きかけるわけですね。

加えて、より効果的なのは「紙に書き出し意識させる」ことです。『あなたの才能を引き出すレッスン 「何事もなんとかなる!」マインドで夢を叶える』の著者であり、ライフコーチのマリー・フォーレオ氏は、「目標を紙に書き出すとより達成率が上がる」研究報告を紹介しています。

ドミニカン大学カリフォルニア校の心理学教授ゲイル・マシュー博士が行なった研究はよく引用されています。その研究によると、自分の目標を書き出せば、それを達成する確率が42%上昇します。*2

フォーレオ氏によると、脳には「情報の中から関心のある物事を取捨選択するフィルター」の役割である「網様体賦活系(RAS/Reticular Activating System)」と呼ばれる神経回路があるそうです。*2

オフィスの雑音のなかで上司の声が聞こえるのも、無数の社員の顔から笑った同僚の顔を探し出すのも——すべては、RASのフィルターを通して情報が入ってくるもの。つまり、紙に書き出せば「関心のある出来事」として、頭の深い場所に入れることができるわけです。

筆者が実践した例を紹介すると……

紙に書き出した実践例

大きな字で書くと、より「勉強しよう!」と意識が高まります。感覚としては壁に「必勝合格」の紙を貼り付けたような……ほどよい圧力です。特に勉強用の読書に関しては、目的をはっきりさせると読書する価値を感じるため集中できました。みなさんもぜひお試しください。

方法2. 「時間の制約」を味方につける

勉強のオンオフを切り替えるためには、スケジュールを見直すことも大切です。前出の加藤氏は「量ではなく時間で区切る」ことをすすめています。

なぜ「量ではなく時間」なのでしょうか? 実は、これには深い理由があります。「パーキンソンの法則」として知られる経験則によると、「仕事は与えられた時間いっぱいまで膨らむ」とされています。この1955年にC.N.パーキンソンが提唱した法則は、私たちの日常の経験とよく一致します。

例えば「休日一日を使って勉強しよう」と考えると、気がついたら一日が終わっているのに進んでいない——こんな経験をした人は多いのではないでしょうか。これは、時間に余裕があると「まだ大丈夫」という気持ちが働き、かえって効率が下がってしまうためです。

また、締切やデッドラインが生産性を高めるという考え方も広く知られています。適度な締切はプレッシャーとして働き、集中力を引き出して効率的にタスクを進める効果があるのです。「締切があるほうがやる気が出る」という感覚を持つ人も多いのではないでしょうか。

実際に筆者も勉強スケジュールを時間で区切ってみました。

スケジュールを時間で区切った様子

【私の時間の区切り方】
画像のスケジュール表をご覧ください。

例えば、朝は8:00から30分、夕方は16:00から40分というように、すべての勉強時間を「○分」と明確に区切っています。

特に気をつけた点は、「長さ」ではなく「時間」で区切ること。30分や40分など、無理のない時間設定にしたことで、「この時間だけ頑張ろう」という気持ちで取り組めます。

実際、「余裕のある時に勉強しよう」と曖昧にしていた頃より、短い時間でも集中して進められるようになりました。時間に余裕がある日ほど、このように明確な時間設定をしてみてください。

よくある失敗パターンと対処法

【パターン1:休日の「どこかで」症候群】

✕ 「休日のどこかでやろう」
→ 結果:一日中「これから始める」と思いながら何もできない
○ 対処法:
  1. 前日夜に「明日の10時から2時間」と決める
  2. 場所も「カフェのカウンター席」と具体的に決める
  3. 勉強道具も前日に用意

【パターン2:「疲れているから休憩」の罠】

✕ 「ちょっと疲れたから、スマホで休憩」
→ 結果:気づいたら1時間が経過
○ 対処法:
  1. タイマーを「25分勉強→5分休憩」に設定
  2. 休憩時は立ち上がって窓際まで歩く
  3. スマホは手に取らない

方法3. 「場所の力」を借りる

自宅では勉強に集中できないのなら、いっそのこと場所を変えてみるのが得策です。「ここなら集中できる」と思う場所を探してみましょう。

実は、カフェのような環境が思考を促進するという興味深い研究結果があります。シカゴ大学の研究では、カフェのような中程度の騒音(約70デシベル)が、静寂な環境や騒々しい環境と比べて、創造的な課題の遂行を助けることが示されています。

このような研究を踏まえて、「サード・プレイス」という考え方に注目が集まっています。「サード・プレイス」とは、1989年にアメリカの社会学者レイ・オルデンバーグ氏が提唱した概念で、自宅(ファーストプレイス)とも職場(セカンドプレイス)とも異なる、自分に合った「第三の居場所」のことです。*4

集中力についての著書のある井上一鷹氏は、この「サードプレイス」でも作業の種類ごとに使い分けることを説明しています。

特に、資格試験勉強のような論理的な作業では、「視野が狭い」「他のものが目に入らない」環境を選ぶことが有効だと指摘します。このことから、以下のような場所が効果的でしょう:

  • カフェのカウンター席(視野が限定され、程よい騒音レベル
  • コワーキングスペース(適度な緊張感のある環境)
  • 図書館の開放スペース(静かすぎない共有スペース)

筆者も実際、カフェの窓に面しているカウンター席で勉強用の読書をする習慣があります。自宅はデスク付近に本やノートが多いため視界が邪魔されますが、カウンター席であれば視野が狭くなるため集中できます。第三の場所を探して、「ここに行けば勉強する」と切り替えてみてくださいね。

***

見方を変えれば、「勉強モード」の切り替えがうまくいくほど、プライベートの時間を楽しめるようになります。「何もしない一日」を「勉強もプライベートも充実した一日」へ変えてみませんか?

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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