効率と理解を両立する。ビジネスパーソンのための5つの実践的読書術

秋の読書

「忙しくて読書の時間を確保できない」「本を読んでも内容が頭に残らない」と感じているビジネスパーソンは、少なくないでしょう。

そうした方々のために、この記事では5つの効果的な読書術を紹介します。まずは簡単に説明しましょう。

  • スピードリーディング(速読)は、短時間で多くの情報を吸収できるので、忙しくてもたくさんの本を読みたい方に最適です。
  • アクティブリーディングは、自問、メモ、要約などを行ないながら読む、能動的な読書法です。読んだ内容が頭に残らないと感じる方におすすめ。
  • SQ3R法は、5つのステップで知識を体系的に整理して理解を深め、効率的に記憶を定着させます。試験勉強や深い学びを目指す方にピッタリです。
  • 並行読書は、関連書籍を複数並行して読むことで、知識を比較しながら理解を深めていく方法です。特定分野の知識を広げたい・深めたい方に合うでしょう。
  • ファインマンテクニックは、学んだ内容を他者に教える(教えようとする)ことで、自分の理解も深まり、知識も身につく方法です。

それぞれにいろんな要素があるので、あらゆる目的に対応できるはずです。このあとさらに詳しく説明しましょう。

スピードリーディング(速読)

スピードリーディングとは、その名のとおり速く文章を読むこと。いわゆる短時間で効率的に情報を処理するテクニックです。仕事で多くの本を読まなければならないビジネスパーソンには必要な技術でしょう。

『「週4時間」だけ働く。』(青志社,2011)の著者で、起業家、投資家の Tim Ferriss(ティモシー・フェリス)氏が1998 年にプリンストン大学のセミナーで教えたというスピードリーディングの原則は、以下のとおりです。*1(※カッコ内は筆者の補足)

  • 1行あたりの注視時間を最小限に抑える(特定の単語やフレーズに視線を固定しない)
  • 再確認や逆戻りを減らす(無意識に前の文章に戻らないようにする)
  • 視野を広げる(訓練していないと中央の焦点に集中しがちなので、一度に複数の単語を認識するよう意識する)

ちなみに、読む速度を一定に保ち、読書のペースを自然に速めるにはペンを使ったトレーニングが役立つと Ferriss 氏は説明しています。*1

文字をペンでなぞり、それを視線のガイドにして目で追うだけなので、まずは試しに取り入れてみてはいかがでしょう。

読書スピードが上がれば、忙しいビジネスパーソンも本の知識を仕事に活かす機会が大幅に増えるはず。読書スピードが人よりも遅く、不便さを感じている方もぜひお試しください。

スピードリーディングテクニックが向上したビジネスパーソン

アクティブリーディング

アクティブリーディングは、積極的に内容に関わり、理解を深める方法です。読書中に疑問を持ち、自分の言葉で要点を整理しながらメモをとり、他者に伝えるなどして能動的に読書を進めます。

以下は、プリンストン大学の McGraw 教育学習センターが、アクティブリーディングの戦略として挙げている内容の一部です。*2(※カッコ内は筆者の補足)

  • 読む前に自分への質問を行なう(内容を把握しやすくするため)
    例)このテーマは何か? これの何を知っているか?
  • 蛍光ペンで強調するのではなく、余白にメモやコメントを書く
  • 自分の言葉で要約する
  • フローチャートや図表などの視覚化で理解を促す
  • 内容について自問⇒解答を行なう
  • 学んだことを他者に教える

これにより、ただ読むだけでは得られない深い理解を促進し、読んだ内容を長期にわたり記憶に残すことができるでしょう。「読んでも内容が頭に残らない」「何を読んだかすぐに忘れてしまう」と感じている方に強くおすすめします。 

能動的に本を読むビジネスパーソン

SQ3R法

SQ3R法は、5つのステップ(Survey・Question・Read・Recite・Review)からなる読書法です。文章を体系的に理解しながら、要点を整理することにもなるので、長い文章や複雑な内容を効率よく理解・記憶することが可能です。

ハーバード大学の学習支援センターの説明を参考にすると、5つのステップの概要は次のとおりです。*3

  1. Survey(調査):テキスト全体をざっと見渡し、見出しや小見出し、図などを確認しながら全体像をつかむ。
  2. Question(質問):前段階の調査で浮かんだ考えや疑問に関する質問を作成。読書を終えるまでに、それらの質問に答えられるようになることが目標。
  3. Read(読む):ここでやっと読書を開始。重要な部分にマーカーを引く、欄外にメモするなどして、前段階で作成した質問への答えを意識しながら読む。
  4. Recite(暗唱):今度は、読んだ内容に基づいて、先に挙げた質問に対し、声に出して答える練習をする。答えるのが難しい質問をメモしておくと、復習の際に学ぶべきポイントを特定できる
  5. Review(復習):学んだことを振り返る際に、先の質問を別紙に書き換えるなどして、自分の記憶にしか頼れない状態にする(書籍のなかの記憶の手がかりに頼らないようにする)

つまり、最初に概要をつかんで、疑問点を挙げて質問リストをつくり、その答えを探しながら読み始め、答えをまとめながら理解を深め、それを定期的に復習することで、しっかりと記憶に残すわけです。

ちなみに同資料には、SQ3R法が教科書や研究論文を扱う場合に適している読書法であることが説明されています。*3

資格試験の勉強や、専門的な知識を学ぶ際に取り入れてはいかがでしょうか。

SQ3R法を実践する勉強熱心なビジネスパーソン

並行読書

並行読書は、特定の分野で知識を深めたいときに役立つ方法です。複数の書籍や資料を同時に読むことで、同じテーマに対する異なる視点や新しい情報を吸収することができます。この方法は、知識の広がりと深さを同時に得られる点が特徴です。

ベストセラーを多く輩出している明治大学文学部教授の齋藤孝氏も、自身の著書でこの並行読書を推奨。(STUDY HACKER『スピードアップだけじゃない! 「並行読書」をやってみたら、読書の “質” が大きく向上した話。』より)

マイクロソフトの元CEOのビル・ゲイツ氏も、強く関心をもつテーマの場合にこの方法を取り入れるといいます。*4

ちなみに子どもへの教育では、「単元の指導のねらいをよりよく実現するために、共通学習材(通常は教科書教材)と関連させて、本や文章を読むことを位置付ける、指導上の工夫」と説明されています。*5

学びを促進するにあたり、子どもから大人の脳まで役立つ方法なのです。

ただし、情報が入り乱れて混乱する可能性もあるので、読んだ内容をメモにまとめたり、各本の要点を整理したりなどの工夫が必要です。最初からたくさんの本を同時に読もうとせず、無理のない範囲で始めてみてはいかがでしょう。

ファインマンテクニック

ファインマンテクニックは、自分が学んだことを他者にわかりやすく説明することで、本当に理解しているか、まだ曖昧な部分があるかをハッキリさせ、理解を深めていく学習法です。

ファインマンとは、非常に難しいことをわかりやすく説明する能力に長けていたアメリカの物理学者、リチャード・ファインマン氏(1965年にノーベル物理学賞)のこと。(STUDY HACKER『本当に理解できる勉強法「ファインマンテクニック」が効果的。やっぱり丸暗記は無意味だった』より)

実際に説明しなくても、以下のとおり “説明するつもり” でもOKです。

  1. テーマを書く
  2. そのテーマを他者に説明するつもりで書く
  3. 説明できなかった部分を調べて書き足す
  4. それを簡潔に書き直す

読書で得た知識を仕事で活かすなら、しっかりと確実に理解したいもの。こちらの記事『本当に理解できる勉強法「ファインマンテクニック」が効果的。やっぱり丸暗記は無意味だった』で実践しているので、ぜひ参考にしてみてください。

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今回は、5つの読書術を紹介しました。この実践で、みなさまの読書がはかどり、学びが深まれば幸いです。

 

【ライタープロフィール】
Shinya

大学では経済学を専攻。集中力があり、長時間、長期間にわたって勉強し続けることが得意。現在は、資格試験に向けて効率的な勉強法の情報を収集中。心理学にも関心があり、コミュニケーション力の向上を目指してさまざまなメソッドを学び、実践している。

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