朗読は”心の体操” – 健康からコミュニケーションまで。NPO法人 声物園理事長 吉川様が語る『声の力』

声の力を通じて、人々の心をつなぎ、社会をより豊かにする活動を展開しているNPO法人 声物園。朗読を通じて物語を届けることで、世代を超えたコミュニケーションの創出と、心の健康づくりに貢献している注目の団体です。

今回は理事長の吉川雅子様に、設立の経緯から朗読がもたらす様々な効果まで、詳しくお話を伺いました。コロナ禍での設立、朗読による健康効果、世代間交流の可能性など、朗読が秘める無限の可能性について語っていただきました。子どもから高齢者まで、誰もが気軽に始められる朗読の世界。その魅力と可能性について、吉川様の温かな語り口とともにご紹介していきます。

なお、同団体では朗読講座やオンライン学習なども提供しており、朗読を始めたい方へのサポート体制も充実しています。コミュニケーション力の向上や、心身の健康維持に関心のある方は、ぜひ参考にしていただければと思います。

朗読を通じて物語を届け、心豊かな社会を目指す

ーNPO法人 声物園様の概要と、どのような方を対象にしているのかについて教えてください。

吉川雅子 理事長:私たち声物園は朗読や読み聞かせを通じて、声で物語を届けることを主体的に行っている団体です。子どもたち向けのお話会はもちろん、大人・高齢者向けの朗読会も主催しています。また、地域団体からご依頼をいただいて開催したり、有料の一般向け朗読劇公演なども行っています。

現代社会では、コミュニケーション力の低下が課題となっています。特にコロナ禍を経て、実体験が少なくなっている状況の中で、物語を通じて他者の気持ちや立場、感情を理解することが必要だと考えています。子どもから大人まで、物語に触れてその中の様々な要素を追体験することで、より思いやりのある社会になるのではないかと考え、心豊かな社会づくりに貢献したいと考えています。

社会貢献を目指してNPO法人化へ

ー声物園設立の経緯について教えてください。

吉川:NPO法人の設立には複数名の理事が必要なのですが、私も含めた理事メンバーは、元々それぞれが役者として活動していたり、独自に朗読劇公演を行っていた経験があります。コロナ以前は、1,000円や1,500円程度の会場費を賄う程度のチケット料金で朗読会を開催していましたが、必要経費を確保することは難しく、時には自己負担も発生する状況でした。

長年活動を続けてきた中で、赤字を出しながら細々と活動を続けるよりも、より広く社会貢献できる形にしていきたいと考えました。私たちの年齢も上がっていく中で、社会に対して何ができるかを考えた結果、2020年7月にNPO法人化を決意しました。コロナ禍の真っ只中での船出となりましたが、それぞれが持つ経験を活かしながら活動を展開しています。

柔軟性と幅広い対応力が強み

ー他の朗読団体にはない特徴やアピールポイントを教えてください。

吉川:他にも朗読団体は多くありますが、私たちの特徴は「柔軟性」にあります。プロフェッショナルな方から朗読を始めたばかりの方まで、それぞれのステージで活躍できる場を提供しています。

また、子ども向けのお話会から高齢者向けの朗読会まで、幅広い年齢層に対応できることも強みです。メンバーがそれぞれ異なる経験や専門性を持っているため、オンラインでもリアルでも、様々なニーズに応えることができます。

他の団体では一定のレベルに達しないと発表の機会が得られないこともありますが、私たちは活動の幅を広く設定しています。初心者から朗読のプロフェッショナルまで、それぞれの立場で活躍できる場を提供していることが特徴です。

個性を活かした朗読指導

ー生徒さんを指導する際に特に意識していることはありますか?

吉川:朗読は十人十色です。同じ作品を読んでも、10人いれば10通りの味わいがあって、それぞれが素晴らしいものだと考えています。音楽であれば楽譜通りに演奏することが基本となりますが、朗読は違います。年齢や人生経験によって表現が全く異なってきます。

私たちの指導方針として、お手本を示して「このように読みなさい」という強制はしません。時には参考として読み方を示すことはありますが、基本的には文章の構造や読解、表現の仕方について基本となる考え方をお伝えします。そして、受講生一人ひとりの中から自然に生まれてくるものを大切にしながら、朗読作品として仕上げていくことを心がけています。

例えば、同じ作品でも小学生が読むのと70歳の方が読むのでは、当然ながら表現が異なってきます。また、読書が大好きな方は、朗読の経験がなくても素晴らしい読み方をされることがあります。そういった意味で、その方の中から生まれてくる物語を伝えたいという思いを大切にしています。

多彩な学習機会を提供

ーどのようなコースやプランを提供されていますか?

吉川:最も気軽に始められるのが、オンライン講座です。15本の動画学習に加えて、音声添削とオンラインマンツーマンレッスンがセットになったeーラーニングパッケージを提供しています。アクセントや滑舌、文章読解、日本語の音声表現など、充実した内容を破格の価格で提供しています。

対面での朗読講座も東京と横浜で開催しており、平日夜に実施しています。カルチャースクールと比べても手頃な価格設定で、お得な料金となっています。ですが、質を落としているわけではありません。

私たちの指導スタイルは、「教えてもらう」というよりも、自分で考えて取り組むためのきっかけを提供することを重視しています。高額な受講料を支払って指導を受けるというスタイルではなく、自分で読めるようになるための支援を行っています。

朗読による心と体の健康効果

ー声を発することによる健康効果について教えてください。

吉川:声を出すことは、まず呼吸と発声が密接に関連しています。しっかりとした呼吸がなければ声は出ません。これはヨガや歌唱と同様に、健康に良い影響をもたらします。

特に高齢者にとって重要なのが、嚥下機能の維持です。高齢者施設では以前は脳トレが重視されていましたが、最近では滑舌体操を取り入れる施設が増えています。実際、書店でも高齢者向けの口の体操の本が多く出版されています。

例えば、定年退職後に引きこもりがちになると、会話の機会が減少し、口の動きが鈍くなっていきます。これは発声機能の低下にもつながり、健康状態にも影響を及ぼす可能性があります。声が出て、会話ができることは、健康のバロメーターとも言えます。

さらに、文字を読んで想像力を働かせることは、脳のトレーニングにもなります。また、読書には散歩以上のストレス解消効果があるとも言われています。物語に没頭することで、精神的なリフレッシュも期待できるのです。

世代を超えたコミュニケーションツールとしての朗読

ー今後、より強化していきたい取り組みについて教えてください。

吉川:今年から全国朗読コンテストをスタートさせました。第1回目を夏に開催し、九州から北海道まで多くの方にご参加いただきました。特に嬉しかったのは、親子での参加があったことです。小学生の子どもとお母さんが、それぞれ異なる部門に参加されるなど、世代を超えた取り組みが見られました。

家族が同じテレビ番組を見て団らんするという機会が減少している現代社会において、朗読は世代を超えたコミュニケーションツールになり得ます。物語について家族で話し合ったり、お互いの朗読を聴き合ったりすることで、新しいコミュニケーションが生まれます。

来年も朗読コンテストを開催する予定で、会場も確保済みです。また、来年6月には全国の朗読愛好家をオンラインで繋ぐ企画も計画しています。北海道から九州まで、各地の方々がライブで朗読を披露し合うことで、より多くの方に朗読の魅力を知っていただきたいと考えています。

これから朗読を始める方へのメッセージ

ー最後に、入会を考えている方へメッセージをお願いします!

吉川:朗読は、小学校での音読の延長線上から始められる身近なものです。声を出して物語を読むことには、感情表現やコミュニケーションに必要な要素が多く含まれています。年齢制限もなく、特別な資格や技術も必要ありません。

ただし、一人で読んでいるだけでは物足りなく感じるかもしれません。そこで、様々な人との交流や、人に聞かせる機会を持つことをお勧めします。日本の教育では音声教育が十分ではありませんが、私たちの講座を通じて、新しい可能性に気づいていただければと思います。オンライン講座は、そのきっかけづくりの第一歩として最適です。ぜひ、朗読の世界に触れてみてください。