宇宙感動体験杉本博司
"宇宙視点"の芸術を
創出する
STAR SPHEREでは、一般の方々やアーティスト・クリエイターの方々に、
ソニー製のカメラを搭載した人工衛星(宇宙カメラ)により、宇宙で作品を制作する機会を提供します。
宇宙からの視点に基づく創作活動を進めることで、新しい「”宇宙視点”の芸術」の創出を目指します。
この取組の最初のパートナーとして、精緻な写真作品を中心に多彩な芸術活動を展開し、
人類や文明に対しても深い考察を行ってきた世界的な現代芸術家、杉本博司氏を迎えました。
杉本氏とともに、”宇宙の視点”で人類と文明の未来について思索するとともに、
宇宙カメラを用いた”宇宙の視点”に基づく芸術作品の制作に取り組みます。
「宇宙感動体験×杉本博司」とは?
宇宙カメラを用いた作品制作
宇宙カメラの最初のユーザーとして、杉本博司氏が作品制作を行う予定です。
これまで、「時間」や「物語」の概念を中心としたコンセプチュアルな写真作品を制作してきた杉本氏が宇宙カメラを手にしたとき、一体どのような作品が生まれるのでしょうか?
"宇宙の視点"を思索する対談シリーズ「科学から空想へ」
これまでの宇宙開発は、科学を軸に進められてきました。これに対し、STAR SPHEREでは、美しさや感動など「感性」を軸にした宇宙の利用を進めます。
これは、宇宙における「科学」から「こころ」への価値観のシフトです。
「宇宙の視点」が解放され、人々が科学だけではなく、もう一度こころや空想を通して宇宙を捉えたとき、人類は、文化・芸術は、文明・社会は、どのように発展していくのでしょうか?
現代芸術家・杉本博司氏は、人類とアートの起源に立ち返り、世界、宇宙、自分の距離を図る場所として、1万年後まで続く「未来の遺跡」として、江之浦測候所を作りました。
本対談シリーズでは、江之浦測候所を舞台に、杉本氏が、宇宙カメラを用いた作品制作に向け、「科学から空想へ」をテーマに、現代人が獲得しつつある”宇宙の視点”およびそこから生まれる文化・芸術、文明・社会について、さまざまな分野の第一人者を招き、思索を深めます。
対談シリーズ
"科学から空想へ"
未来へ、宇宙へ、現代人のこころを遺す「宇宙視点の芸術」の創出
人類の誕生から現在にいたるまで、ひとは宇宙に思いを馳せ、さまざまな芸術を生み出してきました。
最古の絵画とされるラスコーの壁画には、2万年前の生活の様子や動物などとともに星座が描かれています。このラスコーの壁画は、古代人が生きた環境そのものだけでなく、彼らが何を敬い、美しいと思っていたか、現代人がその“こころ”を知る貴重な手がかりとなっています。
人類の宇宙到達から60年が経ち、宇宙からのさまざまな映像が人々に届けられるようになりました。それらをデータとして記録するだけでなく、“こころ”を作品化していくことは、古代人がわたしたちに遺したラスコーの壁画のように、未来人や将来出会う地球外生命体に対する貴重な遺産となっていくことでしょう。
古代から続く「地上から宇宙を見上げる視点の芸術」を受け継ぎながら、「宇宙視点に基づく新たな芸術」を創出することを目的の一つに掲げ 、ソニーは宇宙の視点を人々に解放する宇宙感動体験事業を立ち上げました。
そのとき真っ先に思い浮かんだのが、写真家であり現代美術家でもある杉本博司さんでした。
精緻な写真作品を中心に多彩な芸術活動を展開され、人類や文明に対しても深い考察をされている杉本さんに、ソニーの宇宙カメラで作品を制作していただけないか。宇宙視点に基づく人類・文明の変化について考察していただけたらどんなに素晴らしいだろう。そんな想いからご相談させていただき、2018年6月からコラボレーションが始まりました。
舞台は、杉本さんが「”世界や宇宙と自分の距離を測る”測候所」として、「人類とアートの起源に立ち返り、国内外へ芸術を発信する拠点」として、さらに「1万年後まで続く未来の遺跡」として作られた、江之浦測候所です。
わたしたちは、杉本さんと、江之浦測候所において宇宙視点について深く考察するとともに、「宇宙視点の芸術」を代表する作品の制作に取り組んでいきます。
杉本氏からのメッセージ
科学から空想へ
この物語は、江之浦測候所を終生の作品として作り続けるアーティスト、杉本博司と、人類を宇宙へと導く手助けをしようとするソニー、JAXA、東京大学が手を組んで、宇宙からの視点をアーティストに託してみるという初の試みを記録するものです。
今まさに打ち上げが予定されている2022年の宇宙の旅を前にして、人類がこの地点にまで至り得た歴史的過程をもう一度ふりかえり、私たちはこの先何処へと向かえば良いのかを考えてみる手助けとなるような思考の場を持ちたいと思います。
未来が輝いていた前世紀とは打って変わって、私たちの環境そのもの、生存与条件が問題となっている今日この頃、文明の行く末と科学技術の有り様についての思索の旅を宇宙旅行の旅の道連れにしたいと思うのです。
杉本博司
Profile
- 《海景》Sea of Japan, Oki, 1987
- 《放電場》Lightning Fields 128, 2009
- Opticks 008, 2018
©Hiroshi Sugimoto/ Courtesy of Gallery Koyanagi
杉本博司
公式サイト>1948年東京生まれ。1970年に渡米、1974年よりニューヨーク在住。活動分野は写真、彫刻、インスタレーション、演劇、建築、造園、執筆、料理と多岐に渡り、世界のアートシーンにおいて地位を確立してきた。杉本氏のアートは歴史と存在の一過性をテーマとし、そこには経験主義と形而上学の知見をもって、西洋と東洋との狭間に観念の橋渡しをしようとする意図があり、時間の性質、人間の知覚、意識の起源、といったテーマを探求している。世界的に高く評価されてきた作品は、メトロポリタン美術館(NY)やポンピドゥセンター(パリ)など世界有数の美術館に収蔵。代表作に『海景』、『劇場』、『建築』シリーズなど。
2009年に公益財団法人小田原文化財団を設立。2017年10月には構想から20年の歳月をかけ建設された文化施設「小田原文化財団 江之浦測候所」をオープン。古美術、伝統芸能に対する造詣も深く、演出を手掛けた『杉本文楽 曾根崎心中付り観音廻り』公演は海外でも高い評価を受ける。2019年秋には演出を手掛けた『At the Hawk’s Well(鷹の井戸)』をパリ・オペラ座にて上演。
主な著書に『苔のむすまで』、『現な像』、『アートの起源』、『空間感』、『趣味と芸術-謎の割烹味占郷』、『江之浦奇譚』。
1988年毎日芸術賞、2001年ハッセルブラッド国際写真賞、2009年高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)受賞。2010年秋の紫綬褒章受章。2013年フランス芸術文化勲章オフィシエ叙勲。2017年文化功労者。
- 《海景》Sea of Japan, Oki, 1987
- 《放電場》Lightning Fields 128, 2009
- Opticks 008, 2018
©Hiroshi Sugimoto/ Courtesy of Gallery Koyanagi
小田原文化財団 江之浦測候所
公式サイト>類い稀なる景観を保持し、四季折々の変化を肌で感じることができる小田原市片浦地区の江之浦にある現代美術作家・杉本博司氏自らが敷地全体を設計した壮大なランドスケープ「江之浦測候所」は、ギャラリー棟、野外の舞台、茶室などで構成され、人類とアートの起源に立ち返り、国内外への文化芸術の発信地となる場として構想されました。長さ100メートルに及ぶギャラリー棟には杉本博司氏のアート作品が展示され、野外の石舞台、光学硝子舞台では、さまざまなプログラムが開催されています。