“カタカナ名前”が日本代表で躍動する時代=アンダー世代の国際化がもたらす可能性

川端暁彦

日本社会の国際化に伴いサッカー界も変化

アンダー世代の代表にはハーフナー・ニッキらを筆頭に“カタカナ名前”の選手がいることが当たり前になってきている 【写真:アフロ】

「30人に1人、親が外国人」

 新聞のこんな見出しを覚えている方もいるかもしれない。2008年に発表された厚生労働省の調査で、06年に日本国内で生まれた子ども(約110万人)のうち、親の少なくとも一方が外国籍であった子どもは約3.2%(35,651人)、つまりおおよそ30人に1人の割合だったことが分かっている。
 
 また、同年に日本国内で出された婚姻届で1人もしくは双方が外国籍だった組み合わせは約6.6%。おおよそ15組のカップルがあれば、1組は片方が外国籍、あるいは双方が外国籍ということになる(このうち、約83%が片親のみ外国籍、約17%が両親ともに外国籍)。日本社会が「国際化」している証しとして、それなりにセンセーショナルな報道があったと記憶している。

 日本はいわゆる移民政策を採用している国ではないが、国際結婚の数自体は決して少なくないし、「日本で働く外国人」自体も少なくない。必然、この国のサッカー界、そして代表チームにもそうした傾向は反映されつつある。この厚労省調査の内容にしても、サッカー、特にユース年代のサッカーに興味を持っている層にとっては今さらの話だったかもしれない。少年サッカーや高校サッカーの大会プログラムなどを見ていれば、必ずと言っていいほど“カタカナ名前”に遭遇していたからで、カレン・ロバート(VVV/オランダ)のようにプロとして活躍する選手も出てきているのだから、それも当然だ。

 もちろん、以前から日本代表には多くの帰化選手がいた。在日韓国・朝鮮人が帰化して日の丸をつけた例はあるし、与那城ジョージやラモス瑠偉、呂比須ワグナーといったブラジルからの帰化選手たちが代表を支えてきた歴史もある。ただ、ここで挙げるのは、大人になって日本国籍を取得した帰化選手ではなく、1人もしくは双方の親が外国にルーツを持ち、生まれたときから日本国籍を持っている選手たちの台頭である。

“カタカナ名前”の選手が全カテゴリーに

 具体的な話がないと分かりにくいかもしれない。簡単に、今年に入ってからの年代別日本代表メンバーリストを見てみよう。実は今年になって活動した全カテゴリーの年代別日本代表にそうした選手がいるのだ。つまり、彼らはもはや少数派ではない。

・U−18日本代表
ハーフナー・ニッキ(名古屋グランパス)

・U−17日本代表
白岡ティモシィ(サンフレッチェ広島ユース)、オビ・パウエル・オビンナ(JFAアカデミー福島)

・U−16日本代表
オビ・パウエル・オビンナ、サイ・ゴダード(トッテナムユース)、川上エドオジョン智慧(浦和レッズジュニアユース)

・U−15日本代表
川上エドオジョン智慧、町田ジェフリー(浦和レッズジュニアユース)

・U−13日本選抜
吉田ディアンジェロ(名古屋グランパスU15)

 ハーフナー・マイク(フィテッセ/オランダ)の弟であるニッキは、日本人としての血統は継いでいないが、両親ともに帰化しているために、生まれたときから日本人という珍しいケースになる。なお一部各代表に重複して選ばれている選手は、両方に載せている。また、実はほかにも載せるべき選手はいるのだが、名前でそれと分からない場合は親の出自をオープンにしたくないといった例もあるので、ここでは伏せさせてもらった。

 ただ、それでも以前に比べて出自をオープンにする選手がはるかに増えてきたのは間違いない。サッカー以外のスポーツでも、例えば高校野球では「日本名」を名乗らせる例も少なくなかったと聞くが、ダルビッシュ有(テキサス・レンジャーズ)のような例も出てきており、確実に風向きは変わってきているようだ。これもまた自分のルーツが異国にあるという子どもが決してマイノリティーではなく、「普通」になってきたことの裏返しではないか。カタカナを使わない名前を名乗っている選手、例えば昨年のU−19日本代表候補だったフィリピン人の母を持つ高橋祐治(京都サンガF.C.)や、同候補でジャマイカ人の父を持つ鈴木武蔵(アルビレックス新潟)にしても、そのことを伏せたりはしていない。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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