――まずはデジタルマーケティングを巡る世界的な動向や課題について整理していただけますか。
ジェフ ユーザーの購買行動はデジタルマーケティングにおいて重要な情報ですが、近年、個人情報がウェブ上でトラッキングされていることに対して、ユーザー側が懸念を抱いているという状況がありました。そうした流れを受けて、EUや米国で消費者のプライバシーを保護する法整備が進み、AppleやGoogleにおいても、サードパーティクッキーの収集を取りやめる発表がなされています。マーケターは、昨今の動向を受けて、従来の手法を見直さなければいけない局面となっているのが現状です。
――サードパーティクッキー規制でマーケティング手法の変化を余儀なくされた結果、どのような動きが起きていますか。
ジェフ 従来、マーケティングはブランドからユーザーにメッセージを届けるものでしたが、今は直接的かつパーソナライズされたテクノロジーにより双方向に発信するものになっています。それに伴い、マーケターも様々なソリューションを検討しています。具体的には、自社で収集・管理したファーストパーティデータやユーザーが明示的にブランドに差し出すゼロパーティデータ、ジェネレーティブAIの活用などです。
清水 昨今、ファーストパーティデータの重要性は高まりを見せていると感じます。CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の活用なども進んでいますが、同時に課題もあるのではないでしょうか。それは、レコメンドされる体験の精度が必ずしも高くないという点。もう1つは、ファーストパーティデータも規制の対象になる可能性があるという点です。そういう意味でも、ユーザーの同意に基づきブランド側に提供されるゼロパーティデータは今後のデジタルマーケティングで重要なカギを握る存在になると考えています。
――ゼロパーティデータにはどのような特徴がありますか。また、ファーストパーティデータとどう違うのでしょうか。
ジェフ ゼロパーティデータとは、Forrester Research社によって提唱された用語で企業がユーザーの同意を得て直接収集した、クッキーに依存しないユーザーのインサイトデータのことを指します。ファーストパーティデータは企業が自社で収集・管理するデータではあるものの、ユーザーが積極的に提供したデータではありませんでした。
これに対してゼロパーティデータは、ユーザー自身が企業にどう認識されたいかを重視している点がポイントです。同意の上で提供するデータであるため情報の精度も高まりますし、顧客理解にもつながるわけです。企業とユーザーが共有するデータと言ってもいいでしょう。
清水 加えて、ゼロパーティデータはユーザーの同意に基づくデータであることから規制対象にならない安全性の高いデータタイプだと言えます。また、ブランドはユーザーに対してゼロパーティデータを通じて、より深くパーソナライズされた体験を提供でき中長期にわたる関係性の構築が可能となります。とくに、会話による接客が可能な「チャットコマース®」を活用すれば、ゼロパーティデータの取得が推進されるだけでなく、マーケティングのパフォーマンスを大きく改善することができます。