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室内に自然を持ち込む、“世界の見え方まで変わる”美しき水草水槽の奥深い世界

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こんにちは、マンガ家のタナカカツキと申します。

日本サウナ・スパ協会の公式大使に任命いただき、『サ道』『はじめてのサウナ』などの著書を持つ私ですが、今回はサウナの話ではございません。

世界水草レイアウトコンテスト2013出品作品 制作者:タナカカツキ

世界水草レイアウトコンテスト2013出品作品 制作者:タナカカツキ
© AQUA DESIGN AMANO CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

「水草水槽」、です。

あまりにも面白過ぎるので、皆さまにご紹介したいと思います。

水草水槽は、生きた絵画である

水草水槽とは、「生態系」を水槽内に作り、レイアウトを楽しむものです。水草のみで楽しむこともありますが、多くの場合、熱帯魚も泳がせます。

一般的に水槽を使った趣味と言えば、魚を泳がせることをメインにした「飼育」が想起されるかと思いますが、水草水槽の場合は、水草をメインに、その育成と「レイアウト」を楽しみます。さながら水槽をキャンバスとし、水草や流木など、自然素材で描く「絵画表現」、生きた絵画の創作なのです。

その中でも、ネイチャーアクアリウムというレイアウト技法は、水槽の中で水草や魚、目に見えないバクテリアを渾然一体とさせることで、水槽の中に小さな生態系を生み出し、自然の景色を作り出します。

世界水草レイアウトコンテスト4位入賞 タナカカツキ

そんな水草水槽は、今や世界に広がり毎年60カ国以上参加する世界規模のコンテストが催されています。

この写真は、「世界水草レイアウトコンテスト」というアクアメーカー・アクアデザインアマノ(ADA)が主催するコンテストに出場したときのもの。2016年度のこのとき、私は4位に入賞しました。

世界水草レイアウトコンテスト2016グランプリ作品 制作者:深田崇敬

世界水草レイアウトコンテスト2016グランプリ作品 制作者:深田崇敬
© AQUA DESIGN AMANO CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

こちらは、そのコンテストでグランプリを受賞した深田崇敬氏の作品。

毎年グランプリを狙っておりますが、世界の壁は高く厚いです~。

水草水槽との出会い。“リアル生態系ゲーム”のような面白さに夢中になった

10年ほど前、私はコンテストを主催するADAの水草水槽の画像を初めて見て衝撃を受けました。

「こんなことが水槽内でできるのか!」

きっかけは、自宅の金魚水槽がすぐに汚れてしまうことに悩んでいたとき。よいメンテナンスの仕方はないものかと、水族館などの浄化システムをネットで調べていたんですね。そのとき、水槽内やフィルターの中には目に見えない無数のバクテリアが存在し、それが水を浄化させているんだと知りました。

そうか、だからか~! 金魚を飼ってたとき、水槽を丸洗いしてもすぐに汚れてたのはバクテリアも一緒に洗い流してたのか~!

水槽をこまめに掃除することが、かえって水槽内の環境を悪化させていたことに私は驚きました。そして、そんなときにバクテリアの力で水槽内を極限まで美しく維持管理している水槽の画像を発見。一瞬、自然の風景かと見紛うようなネイチャーアクアリウムの画像を見てしまい、パソコンの前から動けなくなってしまったというわけです。

ど、ど、どうなってるの~~?

水槽内には溢れんばかりの植物が繁茂し、その水の透明度たるや! その美しさは、CGかと見間違うほど。

どうやって作るのか、私にもできるのであればぜひやってみたい。でも、どうやって作るんだろう……アクアリウムに関して知識ゼロだし……。

水草水槽への興味が高まった私は、当時アートディレクションさせていただいていたキリンジのアルバム『BUOYANCY』のジャケットに、「今回のアルバムのメインビジュアルは水草水槽でいきたい!」と、事務所のマネージャー、ならびにご本人たちに提案し、了解を得ることができました。

キリンジのアルバム『BUOYANCY』

それがこのジャケットです

水草水槽の制作は、その世界のプロの方にお願いしました。幸いなことに、CDジャケット撮影の現場で、水草水槽の立ち上げから撮影まで全体を通して関わることができ、おおよその行程、必要な道具を知ることができました。

キリンジのジャケット撮影時

ジャケット撮影時の様子。撮影を担当してくれた写真家・池田晶紀氏とともに正座で鑑賞

その後、私は水槽と育成に必要な道具一式を購入し、自分でもやり始めることに。

やり始めて気付いたことは、なんといっても水草水槽の美しさ、管理する楽しさ、そして難しさです。

植物は水の中でどのような条件がそろえば育つのか。それを知るには自然科学的な知識が必要であり、これはアクアリウムというか、園芸であること、管理は水質の管理であること、強烈に面白いリアル生態系ゲームのようであること、を実感しました。

全ての条件がそろえば植物はイキイキと育ち始めます。日を追うごとに水槽の水は透明化し、輝き出し、水槽内を植物による光合成で生成された気泡が舞います。そして、その中を優雅に泳ぐ宝石のような熱帯魚たち……。

こんなにも自然、生態系の手応えを得ることができるのか! と、アドレナリン出まくりの興奮と喜びに毎日浸ることができました。

水槽内の気泡と美しい熱帯魚

水景画の描き方

じゃあ、水草水槽ってどう作るの? そんな声が聞こえてきそうなので、ざっくり図案から完成までの行程を一度に見ていただきましょう。

水草水槽工程1:水槽の構図

まず、どのようなものを創るのか、おおまかな構図を決めます。

水草水槽づくり工程2:石や流木の骨格

水槽内に、石や流木で構図の基礎となる骨格を描きます。

水草水槽づくり工程3:水草を植栽

水草を植栽し、霧吹きで水槽内をミスト状にして管理します。

水草水槽づくり工程4:水を投入

1カ月ほどで、草が根を張り地面が固まりますので、そこで初めて水を投入。水槽ヒタヒタになるまで入れます。

水草水槽づくり工程5:バクテリアが活動し始める

水槽内、フィルター内でバクテリアが活動し始めれば、水がどんどんきれいになってゆきます。

世界水草レイアウトコンテスト2015出品作品 制作者:タナカカツキ

世界水草レイアウトコンテスト2015出品作品 制作者:タナカカツキ
© AQUA DESIGN AMANO CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

熱帯魚を入れて、水槽内に小さな生態系をつくれば「水景画」の完成です。

図案を書いてから水景画の完成まで、この作品では、おおよそ9カ月かけています。早い人で3カ月くらいでしょうか。人と自然の営みによる共同作業ですので、それなりの時間がかかります。

また完成と言っても、自然は変化し続けますので、草が伸びてきたらハサミを入れます。ガラス面にコケなども生えてくるので、定期的に水槽の水の何割かを換水し、美しい状態をキープすることが大切です。

水景画制作の始め方 必要な道具

水景画、少しずつ興味が出てきたのではないでしょうか?

これから始めたいと考えている人向けに、制作に必要な道具をご紹介します。先にお伝えしておくと、脅すようですが以下の通り結構道具が必要です。

  1. 水槽
  2. ハサミとピンセット
  3. CO2
  4. 照明
  5. 水草
  6. ソイル
  7. ろ過器
  8. その他

専門店しか取り扱いのない道具もありますが、失敗しないためには、専用のものを使うのが重要。逆に言えば、道具をきちんと用意することが理想の水景画への近道ということです〜。

1.水槽

水槽のサイズには、ある程度規格サイズがあります。水景画でよく使われるサイズは横幅120センチの大型のものになりますが、最初は60センチくらいでもよいです。

できるだけ小型サイズから始めたい人も多いと思いますが、水量が少ないと水槽の中に入れるヒーターや水温計、配管などが目立ってしまいます。外気の影響も受けやすいので水質が安定しづらく、かえって維持管理の難易度が上がるので注意が必要です。

私のオススメのサイズは横幅90センチのスリム型。水量は60センチ水槽より若干少ないですが、ワイドな画面で見応えもあります。

どうしても小型水槽からやりたいという人には、「AQUA-U」をおすすめします。

AQUA-U

写真は「AQUA-U」を使って、私がレイアウトしたものです。左のUタワーと言われる白の四角いボックスに、ろ過フィルターやヒーターなどの配管を全て収納できて、すっきりとした画面を鑑賞できます。

水槽を置く場所は直射日光の入らない、給排水しやすい場所、水道の近くが望ましいです。

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2.ハサミとピンセット

水草を植栽するためにはピンセット、伸びてきた草をカットするにはハサミが必要です。

水草専用ピンセットとハサミ

ピンセットは柄の長いものが使いやすいです。ハサミは水の中で使いますから、一般的なものだと錆びてしまいます。専用のハサミを使いましょう。

おすすめは、ADAが出している「水草専用ピンセット」と「プロシザース・ウェーブ」。「プロシザース・ウェーブ」のお値段は、なんと1万円です。

「水草専用ピンセット」と「プロシザース・ウェーブ」

え! すごい高い! ええ~~~!

そうです、高いです。私も最初はびっくりしました。

もちろん、ほかにも商品はありますが、使うとその違いは歴然ですので、まずはこの商品をオススメします。

もう少し価格を抑えた商品だと、同じメーカーの「アクアピンセット」と「アクアシザース」がおすすめです。

ただ、それでも高価と感じられると思います。私は使ったことがないのですが、セットの商品もあるようなので、初心者の方はそういった物をまずは取り入れるのもいいかもしれません。

水草専用ピンセット|株式会社アクアデザインアマノ|¥3,100〜¥4,300
プロシザース・ウェーブ|株式会社アクアデザインアマノ|¥10,000
アクアピンセット/株式会社アクアデザインアマノ/¥1,800〜¥2,500
アクアシザース/株式会社アクアデザインアマノ/¥3,200〜¥3,500
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3.CO2

水中に二酸化炭素を添加すると、水草は元気よく育ちます。ブクブクと泡を発生させる、昔ながらの金魚水槽の「エアレーション」。あれは呼吸に必要な「酸素」を作り出しますが、水草水槽の場合は「二酸化炭素」を添加することで水草の成長を助けます。

手頃なものだと、チャームという専門店が販売する「CO2フルセット チャームオリジナルコンパクトレギュレーターBセット」がおすすめ。CO2添加に必要な機器が全てセットになっているので便利です。

植物は「二酸化炭素」を吸収し、「酸素」を作り出します。「酸素」は魚や微生物の活動に使われます。魚のフンはバクテリアが分解し水草の養分になります。

「二酸化炭素」を添加することで、水槽の中でこうした小さな生態系をサイクルさせることができるのです。

水草の光合成から作られる気泡

ちなみに水草の光合成で作られた酸素は気泡となり、肉眼で見ることができます。水景画制作における、大きな喜びの一つです。

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4.照明

そして重要なのは光です。光合成に必要な波長をカバーできる照明機器が必要です。

さまざまな照明器具がリリースされておりますが、私がオススメする照明はADAの「ソーラーRGB」。水草が元気に育ち、水草の色、発色が良く見栄えが良いです。

もうひとつは、ジェックスというメーカーの「クリア LED POWER X 900」。求めやすい価格で、私も使用しておりますが、コスパもよく、水草も綺麗に育ちます。

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5.水草

そして、主役の水草はどこで買うのかというと、アクアショップで売ってます。ネット通販をされているお店も多くありますが、最初は自分の眼で見て、ショップ店員さんに話を聞いてから購入した方がよいかと思います。

お好みの水草をチョイスして水草水槽を始めよう

どのような水景画を創りたいのかによって必要な水草は異なりますが、参考までに私が絵の具としてよく使う水草の名前をいくつかあげておきます。

  • ニューラージパールグラス
  • キューバパールグラス
  • ウィーピングモス
  • フレームモス、
  • ミリオフィラム各種
  • アヌビアスナナ・プチ
  • ヘアーグラスショート
  • ブセファランドラ
  • エキノドルス・テネルス
  • リシア
  • ブリクサ・ショートリーフ
  • ミクロソリウム各種
ミリオフィラム

ミリオフィラムの群生

どれも、丈夫で育てやすい品種です。

6.ソイル

水草を育てるために必要なのが、この土を粒状に固めたソイルです。養分が含まれていて、水草の成長には欠かせません。ADAの「アクアソイル-アマゾニア」がオススメです。

土を粒状に固めたソイル

値段を抑えたものとしては、マーフィードの「コントロソイル ノーマル(3L)」もあります。

アクアソイル-アマゾニア/株式会社アクアデザインアマノ/¥1,600〜¥5,800
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7.ろ過器

汚れや有害物質を取り除き、きれいな水を保つためにろ過器も購入しましょう。水槽に取り付けるタイプの水槽サイズに合ったものがおすすめです。

その中でも、耐久性、メンテナンス性も高いのが「エーハイム クラシック2213」。最も水草育成に向いているフィルタです。

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8.その他

そのほか、必要に応じて水槽台、ヒーター、試薬、肥料、24時間プログラムタイマー、水質調整剤(カルキ抜き)、水温計、水換え道具(ホース、バケツ)、石や流木などのレイアウト素材などを購入されるとよいでしょう。

水草水槽のレイアウト素材

ところで、上記の道具をそろえ、いざ水草水槽を始めると、最初につまづくポイントが、水質の安定化です。

水の状態が良くないと、たちまち生態系はうまく機能せず、コケが目立つようになり見るだけでストレスが溜まる水槽に……。

水草水槽の安定化をしないと苔がたまる

コケまみれ~~~

早めの処置で復活はできますが、まずは定期的な換水です。

コケの発生はさまざまな要因が挙げられますが、コケを育てないように照明時間を減らしたり、水草をたくさん植栽することが大切です。魚のエサの与え過ぎもコケが増える原因です。

魚、水草、水質、全てのバランスを整え、管理ができるようになるまで時間がかかりますが経験を積めば、徐々にその感覚がつかめてきます。

それでもコケが生えてしまったときに、人の手だけで掃除するのは大変です。そこで、ヤマトヌマエビを水槽に入れます。

ヤマトヌマエビ

ヤマトヌマエビはコケを食べてくれるのです!

水草水槽とヤマトヌマエビは、ほとんどセットとして考えた方が良さそうです。

水草水槽は、世界の見え方を変える

このように、水景画の作成は今すぐ楽しくできる! という簡単なものではありません。

初期投資もかかりますし、自然科学的な知識も必要です。経験を積まなければ思い通りの絵は描けないでしょう。

しかし昨今、新しい器具の発達、安価になった水草や道具、ネットで無料で手に入る作り方の情報などがそろいました。

一昔前は専門家しかできなかった分野だと考えると、ようやく私のような素人が手を出しても楽しめる時代がやってきたのです。

水草水槽を愛でるタナカカツキ

これからも器具は進化するでしょうし、より便利で安価な道具も流通し、もっと手軽にできる時代が訪れるでしょう。

一方、この現状の「少し難しい」という状態がちょうどいいのかも……という思いもございます。

水槽の中の少し濁っていた水が、生態バランスが徐々に整って、水がキレイに、透明になっていくさま、植物が養分を吸収し、見事に成長していくさま、美しい熱帯魚が群れをなして泳ぐさま、少し難しいからこその達成感を得られます。

植物と水と魚が織りなす美しい世界を作り上げるゲームのような面白さがあるのです。

なにより、そこで得た植物育成の知識は園芸の世界へもつながり、ひいては、地球環境への眼差しとして応用させることもできます。

植物や生き物がイキイキとしてる状態はどんな環境なのか。今まで見ていたなんの変哲もない山や川、里山の風景など、これまでとは少し違って見えることだと思います。

レイアウトを実践し、経験を積んだ眼で味わう京都の石庭などは、眼福この上なしです。

これまでと、「世界の見え方が変化してしまう」のが水景画制作の醍醐味(だいごみ)と言えるのではないでしょうか。

自然の一部を切り取る

部屋の中にまるで自然の一部を切り取って持ってきたような環境。ガラスケースの中で、このような自然の営みをそばで鑑賞、育成する、その癒しの効果は計り知れないです。

これ以上のものがあるのかと、私は大げさではなくそう思ってます。

世界水草レイアウトコンテスト2016出品作品 制作者:タナカカツキ

世界水草レイアウトコンテスト2016出品作品 制作者:タナカカツキ
© AQUA DESIGN AMANO CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

最後に、お役立ちサイトをいくつか。

室内でありながら、すぐそばに自然の息吹がある生活、いかがでございましょう。私からは以上でーす。

著者:タナカカツキ

タナカカツキ

マンガ家
著書に『オッス!トン子ちゃん』、天久聖一との共著『バカドリル』などがある。近年大人気のカプセルトイ「コップのフチ子」の生みの親でもある。
「マンガ サ道」(講談社)発売中〜!

公式サイト :https://www.kaerucafe.com/ Twitter:@ka2ki

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