オンラインアシスタントを活用すれば起業家は得意分野に集中できる
起業初期には、少ない創業メンバーで営業、マーケティング、経理、人事など多くの業務に対応しなければなりません。しかし、アメリカではCEOとCTOの2名がバーチャルオフィスで起業し、バックオフィス業務全てをオンラインアシスタントに依頼する流れがスタンダートです。
オンラインアシスタントを日本でもさらに普及させて、起業家の成功確率の向上に貢献しているのがBPOテクノロジーの山田さんです。
そこで今回の記事では、BPOテクノロジーが提供するオンラインアシスタント「フジ子さん®」(以下、フジ子さん)の特徴や日本企業におすすめしたいオンラインアシスタントの活用方法について、創業手帳の大久保が聞きました。
BPOテクノロジー株式会社 代表取締役社長
金融業界、SE職を経る中で、中小企業の多数の社内システムをプログラミングし業務効率化を実現、その後、機械学習(AI)を用いた動的アルゴリズム生成に携わる。その間、欧米のバーチャルアシスタント事業に興味を持ち、日系大手人材サービス企業に在職中、オンラインアシスタント事業を社内ベンチャーとしてインドネシアで立ち上げ。スピンアウトし2017年に日本で当社設立後、CAGR120%での成長を牽引している。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
インドネシアで4年間の駐在を経て独立
大久保:これまでのご経歴と起業の経緯を教えてください。
山田:起業前は、金融投資関係、SE職等を経験してきましたが、10年以上前に、『「週4時間」だけ働く。(青志社)』という書籍を読み、バーチャルアシスタントというサービスの存在を知り衝撃を受けました。
そこではアメリカでバーチャルアシスタントを活用して、労働時間を短縮しつつ高いアウトプットを出す方法が提唱されており、そのころから現在の弊社のビジョンである「オンラインアシスタントを、日本でも当たり前に」したいという思いが芽生え始めました。
2011年に欧米向け海外アシスタントサービスとして最先端のインドを視察などしましたが、日本語ができないとアシスタント対応は不可能と判断して見送りました。そんな中で日本語が話せる外国人数世界第二位のインドネシアという国に興味を持ち始めました。
それらを背景に「フジスタッフインドネシア」という企業に人材事業責任者として転職し、現地に赴任し4年ほど勤めました。業務を遂行していく中でその会社に誘っていただいたオーナーの方に、私の新規事業に対する思いに共感していただき、そこで社内ベンチャーとして立ち上げました。
大久保:起業というよりも、正確には新規事業の創業者という立ち位置でしょうか?
山田:はい。しかし、その後すぐにスピンアウトする形で独立して、日本でサービスを開始しました。
大久保:事業を譲り受けた、という形になるのでしょうか?
山田:そこまで規模が大きくなかったため、前職の所属会社との契約終了と、私が設立した会社との新規契約を、三者了承の上新たに結びなおす形を取りました。
大久保:限りなく起業に近いような形ですね。企業の新規事業ではなく、外に飛び出す形で起業をしてみてどうでしたか?
山田:最初はWebマーケティングをしながら、自分でテレアポをしていました。何件か電話することで、そのうち何件かは契約につながるとわかってきたため、始めはテレアポでお客様を獲得していきました。
サービス内容も練られ、お客様も一定数増えたころから、Webマーケティングの集客も成果が出始めました。
当初、オンラインアシスタントと言っても理解してもらえず、訪問して説明していましたが、比較的アポイントは取りやすい商材だったと思っています。
勝ちパターンを見つけるまでは外注せずに自分でやる方が最短距離で進める
大久保:多くの企業が困っている領域なのでアポイントは取れやすくても、IT商材なのか何なのかがわからないという感じだったんですね。
山田:電話口で全てを説明するのは難しかったです。
大久保:その他に発見はありましたでしょうか?
山田:私は事業を始めて早々に代理店へテレアポを委託しましたが、勝ちパターンを見つけるまでは、自分でやった方が早いと後になって気がつきました。
起業家の方々にアドバイスをさせていただくとすると、作業を外注する前にまずは自分で勝ちパターンを見つけて、その後に弊社のようなアシスタントサービスに外注するのが期待通りの成果を出す最短距離だと思います。
大久保:BPOテクノロジーが事業開始当初に抱えていた課題について教えていただけますか?
山田:お客様がフジ子さんを使いたいと言っていただいているにもかかわらず、オンラインアシスタントの採用が間に合わなかったことです。お客様のニーズと提供できるアシスタントのバランスをとることは、現在も重要なテーマであり、採用しすぎると、先行投資が膨らみ、弊社としてはコストで圧迫されてしまいます。
弊社もまだまだ資本の少ないベンチャー企業ですので、必要以上のバッファは設けずに、適切なラインでお客様を増やすということをやっています。
大久保:スタッフを余らせるとその分コストで圧迫してしまう点は、マッチングビジネスの難しいところですね。
コロナ禍が後押ししてオンラインアシスタントのニーズが爆増
大久保:コロナの影響はありましたか?
山田:コロナ禍になったことは、弊社にとって大きな追い風でした。
コロナ前はオンラインアシスタントへ仕事を頼むことをイメージできないという企業も多かったです。
しかし、コロナ禍にチャットでのやり取りやオンライン会議システムを使い、画面共有をするといったコミュニケーションが一般的になったため、コロナ後の現在はオンラインアシスタントの導入ハードルがかなり下がっています。
大久保:現在、どのような方がオンラインアシスタントとして働かれていますか?
山田:現在、大多数が地方に住んでいる、半日しか働けない、キャリアがあっても割りに合う仕事が見つからない、という方が多く在籍しています。割合としては女性が多いです。
大久保:優秀な女性スタッフが結婚や出産で仕事を離れ、その後、働き口が見つからないということもよく聞きますからね。
山田:はい。パートナーの方が転勤族で、ご自身はキャリアを諦め、子育てに専念しているというところが多いのですが、これまでのスキルを活かした仕事が地方にないという声をよく耳にします。
このニーズを叶える雇用形態をテレワークという形で実現しています。
アメリカでは約7割の企業が採用しているオンラインアシスタントのメリットとは?
大久保:日本でもオンラインアシスタントを利用する企業が増えている印象がありますが、海外ではもっと普及していますか?
山田:アメリカ企業の約7割がオンラインアシスタントサービスを利用しているという統計があり、さらに約2割のコストダウンにも繋がったというデータもあります。
オンラインアシスタントがアメリカの起業家になぜ普及してきたかというと、アメリカではCEOとCTOが2名で共同創業するというシーンが多く、そこにオンラインアシスタントを加えたチームでスタートすることが多々あるからです。
そういった場合、バーチャルオフィスかレンタルオフィスで会社を登記して、CEOとCTOはそれぞれの自宅で作業をすることが一般的です。
大久保:フルリモートで創業することで、固定費を低く抑えて、リスクも下げられますよね。
山田:おっしゃる通りです。フルリモートで経営しつつ、オンラインアシスタントを採用することで、起業にかかる2大コストの賃料と人件費を抑えられます。
賃料に関しては、バーチャルオフィスやレンタルオフィスがあるため、そこまでのコストにはならなくなりました。
しかし、人件費は固定費を引き上げる課題としてまだ残っています。この課題を解決できるのがオンラインアシスタントサービスです。たとえばフジ子さんは1ヶ月10時間からご依頼いただけますし、翌月解約したり、逆にご利用時間を倍にしたりと自由にご活用いただけるので、人件費の変動費化を図ることも可能です。
企業の成長フェーズに合わせて様々な使い方ができる
大久保:他にはどのようなメリットがありますか?
山田:他には、起業直後で採用力がない課題を解決できます。フジ子さんであれば、契約して3営業日後からオンラインアシスタントを導入可能です。
さらに、経営者が事務作業をする必要がなくなっただけでなく、事務作業にまつわる経理や労務に関する勉強をする必要がなくなります。
大久保:フジ子さんは、特にどのフェーズ、どの規模の会社のサポートに強いという特徴がありますか?
山田:我々は様々な規模の企業様のバックオフィス部門を担わせていただいているため、どのタイミングでもご利用いただけます。
例えば、各事業規模に合わせて必要なオペレーションを変更しています。
設立1年目は経理オペレーション、社員1名が加わった時は、人事労務のオペレーション、顧客30名規模になった際は、営業・経理の効率化・システム化という流れです。
フジ子さんは様々なオンラインツールを使いこなせるスタッフが在籍しています。
これほどまでにSaaSが普及しているので、フジ子さんをうまく活用することで、自社の社員に新しいことを勉強させなくてもよい時代になったということをぜひお伝えしたいです。
逆に、自社の社員は「マーケティング・営業」「商品・サービス開発」の2つだけに集中させて、勝ちパターンを掴んだ際には、オンラインスタッフがテレアポすることも可能です。
大久保:競合サービスとフジ子さんの一番の違いはどこでしょうか?
山田:競合サービスは、誰か1人がアシスタントについてくれるようなサービスが多いと思います。しかし、「フジ子さん」はチーム制を採用していまして、経理・英語対応・テレアポ・ホームページ編集など、なんでもできるという点は、他社にはないイノベーションなところかなと思います。
オンラインアシスタントを活用すれば副業ビジネスの成功確率も上げられる
大久保:実際にフジ子さんを利用している事例を教えていただけますか?
山田:例えば、フジ子さんをご利用いただいている方の中で、1人社長でポケットWi-Fiのレンタル事業、バーチャルオフィスの事業などを運営している人もいます。
さらに起業前の話になりますが、副業を認められている会社も増えてきました。
副業としてバーチャルオフィスを借りて、オンラインアシスタントを活用することで、会社に勤めながら事業を運営することも十分可能になっています。
そして、副業で始めて事業の売上が安定したら独立するという流れも増えており、独立するリスクを軽減させたい方にもオンラインアシスタントをおすすめしたいです。
大久保:アウトソーシングすることをきっかけに、業務の合理化に繋がりそうなイメージがありますが、その点いかがでしょうか?
山田:アウトソースするというより、フジ子さんにおすすめのやり方を聞くという使い方がおすすめです。もちろん起業のタイミングでなくても、すでに事業が軌道に乗っているタイミングで、活用していただくこともおすすめです。
どのフェーズの企業からでも抱えている課題についてご相談いただければ、その課題を解決するための最適な使い方をご提案させていただいています。
起業初期は「営業と経理」をオンラインアシスタントに依頼するのが起業成功の鍵
大久保:割合としては、オンラインアシスタントをどのように使う方が多いのでしょうか?
山田:起業したばかりの方であれば、経理と営業事務としてご利用いただく方が多いです。
経理に関しては、税理士さんを探すところから始まると思いますが、社内でクラウド会計ソフトを入れていれば、比較的安価でやっていただける税理士さんもいます。
キャッシュの使い方も整理され、健全に業務ができるようにサポートさせていただいています。
営業事務に関しましては、請求書を作る、お礼のメールを送るという業務をさせていただきますので、プレゼンテーションや商談など、起業家自身がフォーカスすべきところに時間を使えるようになります。
営業活動の中には、事務的な仕事も半分くらいは含まれていることがあるので、オンラインアシスタントがその業務を担うだけでも、企業として戦力アップしそうですね。
フジ子さんならマニュアル化していない業務も発注可能
大久保:業務を依頼する際には、マニュアルを作ったり、業務指示を明確にしたりする必要がありますか?
山田:頼まれる方の性格によりますが、アシスタントがやりやすいように、1から10までマニュアルを作っていただくこともありますが、もっとシンプルに言っていただいても、我々は対応させていただきます。
逆に、忙しすぎて指示が投げられないという方の場合は、ToDoリストを箇条書きで洗い出していただき、それに対して、どれからやるべきかをこちらから提案することもできます。
大企業の場合は、決められた作業をご依頼期日までに終わらせるというご依頼が多いですが、中小企業では、何をするかを決めることから一緒に考えさせていただきます。
マニュアルがない作業でも一緒に考えながら進めるため、弊社のサービスは特に中小企業に特化した内容とも言えます。
大久保:オンラインアシスタントの中には、作業をする方や作業の優先順位を決める方など、それぞれ役割を持った方がいらっしゃるのでしょうか?
山田:メインアシスタントがお客様の窓口の役割となり、ご依頼・ご要望をお聞きしたうえで業務の効率化などを提案することもあります。また個々のお客様事例の集合知をさらなる提案につなげるプランナーが、チーム全体をコントロールしています。
大久保:今後の展望を教えていただけますでしょうか?
山田:起業するにあたって、レンタルオフィス・バーチャルオフィスが、ごく当たり前の選択肢になっています。それと同じように、人材確保の選択肢として、オンラインアシスタントが当たり前に挙がるようにしたいです。
オンラインアシスタントを活用することで、今よりも起業しやすくなったり、起業の成功率が高まったりして、起業してハッピーになる人が増えれば良いなと思っています。
大久保の感想
創業手帳冊子版は毎月アップデートしており、起業家や経営者の方に今知っておいてほしい最新の情報をお届けしています。無料でお取り寄せ可能となっています。
固定費を抑えながら、自分の強み以外で外に出せるものは外に出していきましょう。コアに集中して、それ以外は外部に出すモデルは、「攻め」にも「守り」にも強い特徴があります。
「攻め」とは早い事業構築のこと。
「守り」とは予想外の場合素早い撤退ができる。
ということです。これがうまくサービスとして整えられているので起業するにはいい時代になったなと思いました。