目次

  1. 台湾有事への備えを求められる日本企業
  2. 日本企業の台湾進出 2024年は2年前から4.4%減少
  3. 最多は製造業 嘉義市は進出増
  4. 台湾進出企業の想定リスク「戦争・テロ」は2割未満

 中国は、台湾の頼清徳総統の就任以降、2024年5、10月に台湾周辺で大規模な軍事演習を展開しており、さらに、ロイター通信は、台湾の頼総統が11月30日から太平洋の周辺国を訪問するのを口実に、中国が台湾周辺で軍事演習を行う可能性があると報じています。

 こうしたなか、台湾に進出している日本企業は「台湾有事」も想定する必要が出てきています。

 帝国データバンクは2024年7月時点の日本企業の台湾進出状況について分析しました。この調査は、帝国データバンクの企業概要データベースなどをもとに、台湾に対して現地法人や関係会社・関連会社の設立及び出資、駐在所・事務所の設置などを通じて進出する日本企業を対象に集計しました。

業種別の台湾進出企業の推移
業種別の台湾進出企業の推移

 その結果、台湾に進出する日本企業は、2024年7月時点で2988社でした。これは、2022年の3124社に比べて136社・4.4%の減少となりました。

 業種別でみると、最も多いのは「製造業」の1156社で、全体の約4割を占めました。次に「卸売業」が877社。「小売業」は373社で、日本食人気を背景にラーメンや居酒屋などで進出が見られました。

地方別の進出企業数
地方別の進出企業数

 進出地をみると、最も多いのは台北市(Taipei)・新北市(New Taipei)・基隆市(Keelung)の3直轄市で構成される「台北都市圏」で、1397社。次いで多い「桃園市(Taoyuan)」(143社)は、製造業の進出が約7割を占め、自動車産業のほか半導体、エレクトロニクス部品などの企業で多く進出が見られました。

 「台中市(Taichung)」、「高雄市(Kaohsiung)」なども、製造業の占める割合が5割を超えていました。

 一方、「嘉義県/嘉義市(Chiayi)」は2022年の6社から倍増の13社となりました。この地域は、主産業となる農業に加え、ドローンセンターの開業、世界最大手の半導体ファウンドリ・TSMC(台湾積体電路製造)が新たな工場を建設するなど半導体産業の集積も進んでいるほか、食品産業や半導体部材関連の企業などで進出がみられるといいます。

 台湾で、ロシアによるウクライナ侵攻以降、サプライチェーン(供給網)の寸断というリスクが経済面で大きな脅威となっています。

企業のBCP(事業継続計画)の策定動向
企業のBCP(事業継続計画)の策定動向

 台湾・中国それぞれに進出している企業のBCP(事業継続計画)を分析したところ、「戦争・テロ」を想定リスクとする企業の割合は、2024年調査で台湾進出企業のうち18.1%、中国進出企業で15.1%でした。2022年よりも下がっているなど、帝国データバンクは有事を含めた危機対応に課題を抱える企業は少なくないと指摘しています。

 そのうえで「台湾在住の駐在員やスタッフの退避計画や、特に半導体関連で強まるサプライチェーンの管理など、万一の事態に備えた退避計画や代替調達・生産案の確保が必要だ」と提言しています。