9月4日、日本新聞協会は、優れた報道に送る今年度の「新聞協会賞」の発表をおこなった。選ばれたのは、朝日新聞社の「自民党派閥の裏金問題をめぐる一連のスクープと関連報道」(自民党派閥裏金問題取材班)など計6本だ。
新聞協会は授賞理由として、「政治とカネを巡る構造を多角的に掘り下げ、裏金問題の解明を終始リードし社会に強いインパクトを与えた」「自民党の派閥解体や政治資金規正法の改正などの流れに大きな影響を及ぼし、権力監視の役割を果たした」と評している。
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しかし、大手紙の社会部記者はこう苦笑する。
「新聞協会賞はエントリー制で、要するに自分から手を挙げるんですよ。今回は、社会部次長が自薦しているそうです。しかし、裏金事件はそもそも朝日新聞社のスクープではなく、先に『しんぶん赤旗』が自民党の派閥の政治資金報告書に問題があると報じたことが端緒なんです。
逆に、朝日新聞社の第一報は、東京地検特捜部が捜査に着手することを報じたにすぎません。朝日新聞社内でも、『他人の手柄を横取りするのはよくない』という意見が多かったようです。ただ昨年、ライバル紙である読売新聞が受賞しているので、今年は何としても欲しかったのでしょう。ほかに目立つ報道がないので、応募に踏み切ったようですよ」
確かに、裏金問題が初めて世間に公表されたのは、2022年10月のしんぶん赤旗の報道だった。
「同紙の取材で収支報告書を見た神戸学院大学の上脇博之教授が、パーティー券を買った団体の支出記録と派閥の収入明細を一つ一つ付き合わせたんです。
その結果、主要5派閥で計4000万円を超える収支報告書への不記載が確認できたのです。そして上脇教授がこの資料を東京地検特捜部に持ち込み、政治資金規正法違反で刑事告訴した結果が、朝日新聞社が報じた“捜査着手報道”なんですよ」
実際、Xには朝日新聞の受賞に懐疑的な投稿が相次いだ。
《裏金を見つけ出し、粘り強く発掘し、曝け出したのは、しんぶん赤旗ではなかったの》
《赤旗が日本新聞協会に加入していなくとも、そこは赤旗に出すのがスジじゃねぇのか》
《恥ずかしい連中だな》
さらに“当事者”である「しんぶん赤旗」の社会部長である三浦誠氏は自身のXに、
《『朝日』が自民党裏金報道で新聞協会賞とのことですが、『赤旗』から1年以上遅れた、23年11月に出しています。しかも東京地検特捜部の動きを受けた記事です》
と、9月4日に投稿している。先の大手紙記者がこう続けた。
「裏金問題については、かなり早い時期に事実は掴んでいたようですが、東京地検特捜部の捜査開始を待って報じたのは、自民党に面と向かって喧嘩をする勇気がなかったのではないかとも言われていますよ。直接対峙するのを恐れたともいわれています。
朝日新聞の購読者数はどんどん減少を続けており、現在の発行部数は約340万部です。最盛期の3分の1ですよ。全国にあった通信局は赴任希望者がいない限り、次々に閉鎖されています。これで、他社の手柄を横取りするんですから情けないですね。朝日新聞が着実に弱体化しているという証拠です」
( SmartFLASH )