12月21日、政府は、新型コロナウイルス対策で厚生労働省所管の独立行政法人に積み上がった剰余金のうち、746億円を国庫に返納し、防衛費の財源に充てることを決めた。
厚労省所管の独立行政法人・国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)には、コロナ対策の病床確保などのための補助金が増え、2法人の剰余金は2021年度時点で計1494億円にものぼっていた。
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コロナ対策の剰余金を防衛費に充てることには、SNSで批判の声が上がった。
《「コロナ対策の剰余金」???政府が庶民から巻き上げた税金だよ。使わなかったら国民に返せ!! ふざけるな!》
《うわぁぁ!本当にやりやがった!勝手に使い道を決めるな!》
立憲民主党の蓮舫参院議員は、12月21日、自身のTwitterにこう書き込んだ。
《そもそも、コロナ対策で剰余金がこれだけ膨れた予算編成を見直し本当に必要なコロナ対策にすべきでしょう。防衛予算の安定財源を安易に増税に求める前に今の防衛予算の中身の総点検を行い、足らざる内容と予算規模をきちんと精査してから国民に示して増税を問うべきです》
不思議なのは、12月16日、岸田文雄首相が「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を閣議決定したあと、続々と防衛費の財源が出てくる点である。
12月16日には、2023年度与党税制改正大綱を決定。防衛費増額の財源として、法人税、所得税、たばこ税の3税を、時期は未定だが、増税する方針が決定した。
「12月18日に共同通信が報じたところによると、国が中長期的な政策の推進のために設け、複数年度にわたって財源を確保できる『基金』の2021年度末の残高は、12兆9227億円。新型コロナウイルス対策や、経済安全保障の強化に向け、既存基金の積み増しや新設が相次ぎ、2020年度末の8兆3357億円から55%増加しています。
さらに政府は、2022年度第2次補正予算で、基金に計8兆9013億円を拠出。補正予算としては過去最大で、補正予算額の約3割にまで膨らんでいます。
国の基金は、予算の単年度主義にしばられず、重要な分野に柔軟に予算配分できる一方で、基金の管理・運営をいわば “丸投げ” することから、責任があいまいになる弊害もあります」(政治担当記者)
12月21日には、12月16日に岸田首相の記者会見で指名されなかった報道機関からの文書による質問に、政府が書面で回答。「東京新聞」が、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛増税をめぐり、具体的な内容を示して国政選挙で信を問うことをせず、国会審議も経ずに決めたことへの見解を求めたのに対し、首相は「プロセスに問題があったとは考えていない」と主張した。
だが、自民党の二階俊博元幹事長はCS番組の収録で、岸田首相が防衛費増額のために増税する方針を決めたことについて批判した。
FNNによると、二階氏は、防衛費の増額について「いまなぜ必要なのか、国民によく理解してもらう努力が先にあって、しかる後に、費用は節約もするが、新たにこういうお金が必要だと、ちゃんと言わなければいけない」と指摘。「政府はいつ説明しようかと思っていたのだろうが、受け取る側は、やはり唐突だという感じはある」とした上で、「順序が逆転してはダメだ」と述べたという。
増税が決定されたあと、約13兆円もの「基金」残高が公表され、防衛装備品の購入に「建設国債」を充てる方針も固められた。これらに対し、岸田首相の「後出しジャンケン」との批判も起きている。これ以上の「後出しジャンケン」が続けば、防衛費増額のための増税に国民は納得しないだろう。
( SmartFLASH )