SKiCCO REPORT

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ファンをランク付けして競争心を煽り金を使わせるなど商売としては下の下である

昨今、アイドルまわりにおけるサービスで、客をランク付けして競争心を煽り金を使わせるネットビジネスが出てきております。
例えば、DeNAが運営する「SHOWROOM(ショールーム)」、ミクシィが運営する「きみだけLIVE」、フォッグが運営する「CHEERZ(チアーズ)」。そしてこれからも出てくるんでしょうね。


これらのサービスは、“アイドルを応援”という名目で、その実はユーザー同士の競争を煽り、金を使わせる手法が取り入れられています。無料で遊べる、といううたい文句ですが、かつての無料ソシャゲと同じで、ユーザーの心の弱みに付け込み金を使わせてるのです。


例えば「SHOWROOM(ショールーム)」では、動画配信を見ながらヴァーチャルなアイテムを購入すると画面上のアバターが目立ちアイドルに注目されたり、配信の最後にユーザーのランキングを発表したりしてユーザー同士の競争を煽ります。金を使ったほうが優位になり、そして一位は一人です。となれば、下位のユーザーは金だけ取られているということになります。
他の2サービスも基本的には同じです。ユーザーは使った金額でランク付けされ、上位になれば目立てる。好きなアイドルに注目されたいというファン心理につけこんで、ユーザー同士の競争を煽り、金を使わせます。「きみだけLIVE」にいたっては、自分のためだけに(Skypeで)ライヴを演ってくれるといいます。「きみだけLIVE」は抽選制度となっていますが、金をかければ応募口数を増やすことができるので、自ずと競争になります。もちろん金を使ったほうが有利です。
また、アイドル同士を競わせることも行われています。たくさんユーザーに金を使わせたアイドルには、大きなイヴェント出演などの“ごほうび”を用意し、アイドルからファンに“お願い”をさせ、金を使わせるのです。
夢と希望を与えるはずのアイドルが、ユーザーに、ファンに、金の使用を促す、なんてことをやらざるを得ない事になってしまうのです。ユーザーの心理を煽って金を使わせるという意味では、少し前にあったソーシャルゲームコンプガチャと同じ問題かもしれません。アイドルたちが「金使ってください」なんて堂々と媚びるようなところなど見とうはなかった。


アイドルとは誰が好きになってもいい存在であり、不特定多数の人に愛されるべき存在です。そのアイドルに、特定少数が金を使うように競争を促すよう仕向ける仕組みは、アイドルにはふさわしくないと言わざるを得ません。


アイドル関連ではAKB48(グループ)が“AKB商法”としてしばしば批判の的となっています。ですが、今回取り上げたネットビジネスはある意味でそれより悪質と言えるかもしれません。
例えば、AKB48では、CDを買えば少なくとも買った分だけの握手はできるわけです。もちろん何十枚、何百枚と買う人はたくさん(長時間)握手できますが、そのせいで1枚しか買わなかった人が握手できないなんてことはありません。人気のあるメンバーではファン一人あたりの購入制限も行われ、同じ人が買い占めてメンバーを独占するようなことはできなくなっています。
一方、先の3サービスでは、相対的に金を使ったものだけがベネフィットを受けられるシステムです。それ以外の“競争に負けたユーザー”は、基本払い損です。金を払った人の引き立て役です。


アイドルに関しては最近クラウドファンディングもしばしば行われており、個人的にはこれもアイドルにはふさわしくないと思ってます。ただクラウドファンディングは、それが成功すれば少なくとも払った分のベネフィットはアイドル側にもファン側にも提供されるわけですし、その内容もあらかじめ明示されています。


アイドルだってそのスタッフだって霞食って生きられるわけじゃないのはわかりますからマネタイズ結構です。しかしアイドルにおけるマネタイズは、全体のパイを大きくした上で、広く薄くかつたくさん払いたい人にはそれ相応のベネフィットを提供する形で行うべきであり、特定少数の人たちを煽って競わせて金を使わせるようなやり方は、アイドルという存在においては不適切です。


何より、払った金が本当にアイドル(及びスタッフ)に還元されてるかも怪しいですし。非常に多くのアイドルがこれらの3サービスに登場してますが、そのおかげでアイドル(運営)が潤ったという話は寡聞にして存じません(儲かってるところは黙ってるのかもしれませんが)。アイドルとファンの間に横から入ってきて、愛も何も無いようなネットビジネス事業者が、ファンがアイドルに払った金を中抜きしてウハウハ言ってるんだとしたら、それは商売として許されるものでしょうか。アイドルたちがアルバイトなどをしながら活動してる一方で、そんなアイドルたちを利用したネットビジネス屋がブイブイ言わせて脚光を浴びるなど、これが理不尽じゃなくてなんでありましょうや。


モノやサービスを売るとき、「買ってください!」なんてダイレクトに言うのは悪手中の悪手です。スーパーなどで試食を行ってる人は、おいしいですとかは言っても、買ってくださいとは言いません。
まして、非日常のエンタテインメントであるアイドルなら、ファンに気持ちよく金を使わせるのがふさわしいのではないでしょうか。


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