反エリート主義型のポピュリズム

各国、各地域で表出しているポピュリズムの形態は同じとは限らない。しかし、先進国における昨今のポピュリズムは、いずれも反エリート主義と結びつく傾向が強い。そう指摘するのは、国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏だ。

モーリー・ロバートソン氏
モーリー・ロバートソン氏

モーリー氏(以下同)「たとえばドイツ。今年、極右政党『AfD(ドイツのための選択肢)』が大躍進しましたが、その背景には、社会的、経済的、政治的要因がそれぞれ絡み合っています。

特に旧東ドイツ地域でAfDが強い支持を集めていますが、これは東西ドイツ統一後、30年以上が経過した今でも旧東側地域のインフラや経済が遅れていること。さらに文化的にも社会的にも“東ドイツ人”は西ドイツ側の人々にずっと見下される傾向があること。そうした構造的格差への抵抗、西側の支配階級層に対する反発も少なからずあったと見られています」

メルケル政権による100万人規模のシリア難民受け入れによる影響は、東側住民により重くのしかかり『自分たちの生活水準がさらに下がる』という強い不満を生むことになった。そんな“東ドイツ人”を、西ドイツ側の人たち、知識層は『不寛容でかわいそうな人たち』と見る向きもあったとも言われている。

「経済難でギリギリの生活を送る東側住民にとって、それは屈辱的な視線であったことでしょう。そうやって積み重ねられた負の感情が渦巻く中で、 “オレたちの代弁者”を装う政治家やデマゴーグが、既存政党への不満やエリート層への憤りを煽った。その結果が、ドイツ東部各州での州議会選挙におけるAfDの躍進に影響を与えました」

反エリート主義型のポピュリズムは、ドイツだけではなく欧州全体、アメリカ、さらに日本でも広がりを見せている。

政治家や官僚などの既存の権力構造に対する不信感が、新しい政治勢力の台頭を促す一方で、そこに付随する過激なメッセージが、社会の分断や対立をさらに深めている。