マチポンブログ

言葉は生き物ではなく、単なる道具だと思う。

新フォント「しょかきささぶね」リリース(付:手書きと文字コードの問題)

新作の筆文字POPフォント「しょかきささぶね」をリリースすることになりました!

この記事では、フォントの作成時に思ったことについてお話します。

フォントのダウンロードをされたい方は以下リンクよりBOOTHのページに移動してください。(会員登録が必要な場合があります。)

shokaki.booth.pm

手書きと文字コードの問題

手書きで一般的な漢字の形と、印刷で一般的な漢字の形は異なることがあります。

たとえば、「常用漢字表」の考え方では常用漢字「頰」「箋」は「頬」「䇳」と書いても差し支えないことになっています。

が、このような差を、手書きフォントでどう扱うのか、という問題がありました。

私が作っている「手書きフォント」は、手書きという性質上(かつ、書道をやる人間として)、「手書きで一般的な形を標準としたい」という思いがあります。

つまり、「頰」のような字を入力しても「頬」と表示されてほしいのです。

しかし、文字コード上「頰-頬」は区別されているので、両者同形で実装することになってしまい文字コードでの区別に違反(?)してしまう問題が生まれます。

今回のフォント「ささぶね」ではできる限り区別しましたが、行書など伝統的な書体でフォントを作る際は大きな問題となります。

(このような悩みは「しょかき楷月」の記事でも書きました)

手書き文字とIVS

「手書きで一般的な形を標準としたい」という気持ちがある一方で、実用的な面から、「文字コードで定義されている形も使えた方がいい」という思いもありました。

そこで、「ささぶね」ではJIS X 0213:2004で例示字形が変更されたものなど、一部の漢字について、標準(基底)は手書きの形とし、VSを用いて印刷文字の形を表示できるようにすることにしました。

しかし、IVSも基本的には印刷文字を中心とした実装となっているので、手書きでは区別できない差を区別している場合などがあります。

たとえば、「甑」の基底を「曽」のE0100にした場合、手書きの「曾」の形の「甑」はE0101-E0103のどれにあてはまるのか分からない、ということが起きました。(普通そういう実装はしないでしょうが……)

点を払っていないという点から、E0101に収録しましたが、それが適切なのか分かりません。(IVSなどについて理解が不十分な点があるので間違ったことを言っていればお教えください。)

(http://www.unicode.org/ivd/より)

 

このような問題は今のところ上手い解決策がありません。もしいいアイデアがあればTwitterなどでお教えください……。