アダルトビデオ(AV)への出演被害を救済する「AV出演被害防止・救済法」の成立・施行から、今月で3年を迎えた。摘発が年々増加する一方で、望まない出演を巡る相談は法施行後も後を絶たない。支援団体は、巧妙な手口の出演誘導に注意を呼びかける。
同法は意図しない出演や、成人年齢の引き下げに伴う若年層の被害を防ごうと、議員立法で令和4年6月15日に成立、同月23日に施行された。制作者側が契約書を交付して内容を説明し、撮影や公開まで一定期間を置くことや、公表後1年間は無条件で契約解除できることなどを定めている。
警察庁によると、同法違反による摘発件数は4年1件、5年11件、6年29件と年々増加。一方、内閣府によると、全国の「ワンストップ支援センター」に寄せられたAV出演を巡る相談件数は4年度(7月以降)164件、5年度218件で、トラブルが顕在化している現状が浮かぶ。
被害者支援を行うNPO法人「ぱっぷす」によると、AV出演であることを隠して路上でスカウトしたり、交流サイト(SNS)で「モデル募集」と広告を出したりする手口が法施行後にも起きているという。
相談の中には、結婚・出産後に子供の保護者会で過去の出演が判明してしまう「身バレ」のケースもある。救済法でインターネット上にある動画の削除要請はしやすくなったが、転載が繰り返され拡散するなど、完全に削除することは困難だ。同法人の金尻カズナ理事長は、「学費の支払いや、ホストクラブ通いなどで貧困状態にある人がターゲットになっている」と指摘。「業者は出演者が『デジタルタトゥー』で苦しんでいくことも分かっていながら、言葉巧みに誘う」と警戒する。




